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連載2

新たなる旅立ち4

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 シャルル王子の言葉に、思わず息を呑む。

 そうだ。トリアスもルトーも、人が作った神。
 強い人の信仰が、力ある神を創造した。
 ならば同じような存在が、他国に存在していたとしても不思議はないんだ。

「アニリドの進行に伴い、父上はマーナアルハの森とその近辺の村一帯の警備を強化する為、様々な事情で空席だった辺境伯の地位を復活させることにしました。けれどこの場合の辺境伯は、他国のように地位に相応しいだけの利益が保障された役職ではありません」

「……それは、どういう意味ですか?」

「一般的な辺境伯のように、領地を所有することによる経済的な恩恵は得られないということです。領地の運営法に問題がない以上、上の立場になったからという理由で与えていた領地を没収して、現在の領主の立場を脅かすわけにはいけません。辺境伯の仕事はあくまで国境警備だけで、その収入は王からの賃金のみである必要があります。国境を警備する際に、他貴族からの反発を押さえ込めるだけの高い身分でなければいけませんが、その身分を笠に着て私服を肥やすことは許されないのです」

 王から支払われる賃金の額にもよるけれど……ルシトリアにおける辺境伯というのは、高い身分のわりにはずいぶんと労が大きくて、割りにあわない立場みたいだ。
 父様のように騎士団に所属していたような人間じゃなければ、そんな大変な役職になりたがるような人はいないんじゃないか……って、え?

「もしかして、その辺境伯って……」

「さすが聖女様。理解がお早い」

 まさか、そんなことが……いや、でも。合理主義のあのライオネル陛下ならやりかねない。

「聖女様がお察しの通り「……まさか父様が辺境伯に?」
この度私が、父上から辺境伯に命じられました」

「…………へ?」

 完全に予想外過ぎるシャルル王子の言葉に、思わず変な声が出た。

 シャルル王子が辺境伯? 父様ではなく?

「……いや、そりゃあお父様が辺境伯の立場を引き受けてくださるのなら、父上も喜んで任命したかもしれませんが、普通に考えて無理でしょう。私も父上も、お父様からはそれなりに恨まれていますし」

「でもシャルル王子……剣とか全然でしたよね。それなのに国境の警備なんて……」

「辺境伯の仕事は国境警備の監督であって、私自身が剣を取る訳じゃありませんから」
 
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