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1984年、中3

もういいや、この学校で

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「小野っち、高校決めた?」

隣の席に座る、杉下という女子が聞いてきた。

「いや、まだ。ウチ、オヤジが都立に行け!ってウルセーんだよ!私立だと金かかるからって」

「で、何処の高校にすんの?」

「んー、都立は大体決まったんだけど、滑り止めの私立が何処にしようかわからなくってさぁ。何処がいいかな?」

「アタシに聞いても知らないよ(笑)」

「出来れば、電車で通学したいな」

「えぇ~、朝なんて満員電車じゃん!」

「何か、電車で通学してみたくて」

こんなやり取りをしていた記憶はある。

前の席で、波多野は僕らの会話を聞いていたらしく

「小野っち、アタシと同じ学校にする?」

と後ろを振り返り、僕に聞いた。

「一緒って、何処の高校だよ?」

「アタシはF高校に受験するよ」

F高校か…僕の偏差値なら大丈夫っぽいかなぁ。

波多野と同じ高校になるなら、そこにしよう!
こんな邪な考えで、僕は第一志望校をF高校に決めた。

となると、問題は滑り止めの高校だ…

僕は都内の私立校で、入学金がなるべく安い学校を探した。

(なんだよ、全部男子校じゃないか…)

共学の私立校はあまり無く、あっても偏差値がかなり高いところだったり、入学金が無茶苦茶高い高校しか無かった。

当時はそんな感じだったし…

F高校一本に絞って勉強をすれば良かったのだが、落ちた事を考えると、滑り止めの高校も受けた方がいい。

僕はその夜、オヤジに入学金に負担がかからないような学校を選ぶから、滑り止めの高校を受けさせて欲しいと頼んだ。

「そうならないように、さっさと勉強しろ!」

オヤジは渋々承諾してくれたけど…

と言っても、まだ何処の高校にするかは決めてなかった。

入学金が安く、電車で通える高校。
今思えば何故、電車通学が必要だったのだろうか…

翌朝、僕は一緒に登校する高橋に、何処の高校を受けるのか聞いてみた。

「オレはST学園にしたよ」

「ST学園?こっからだと、かなり距離あるんじゃないか?」

ST学園は都内で有数の歓楽街にあるじゃん!そこ良い!

「オレ、そこに単願で入るから」

高橋はST学園だけ受験、即ち単願で入る予定だった。
ただその高校は特種な学校で、ある科目を専門としていた珍しい高校だった。

単願だと、偏差値が多少低くても合格出来るからな。

併願で受けても僕の学力なら大丈夫そうだし。
でも、僕はその学校の科目を習おうとは思わなかった。

何故なら、全く興味が無いからだ。

「そうか。じゃあ、他の学校にしようかな」

僕はその高校なんかに行っても意味が無いと思い、何処にしようか頭の中で考えていたが、全く思い付かない。

「だったら兄弟校として、S学院があるからそこに受ければいいじゃん?それに、早く入学願書もらいに行かないと」

兄弟校?何の事やら分からない僕は、高橋に詳しく聞いた。

どうやら、道を隔てて向かい合って各校舎があって、グランドは同じという、何だか僕にとっては一緒にしてしまえばいいのに、って感じの兄弟校らしい。おまけに男子校だ…

「S学院てのは普通科?」

僕はその学校の名前すら聞いた事も無いし、同じ都内とはいえ、ここから電車で一時間程かかる繁華街だ。

「普通科と工業科と商業科があるみたいだけど、もし願書もらいに行くなら一緒に行くよ」

そんなやり取りで、僕はS学院を滑り止めで受ける事に決めた。

ホントどうでもいい理由で決めて、後で後悔するんだけど…

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