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【第一部】五章 ロイのポーション屋さんと工房
71 エリクサーと進化1
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「いっけぇ~!!」
僕は『毒の薬玉』を、若旦那さん目掛けて投げ付けた。
「うわっ!」
バシャン!
若旦那さんの首元に命中した薬玉は、はじけて全身に飛び散った。
「なっ、なんだこれ! おい! ロ……ぅィ!?」
振り上げられた若旦那さんの腕が、ビシリと固まった。
驚きで目を見開いた若旦那さんは、まるで錆びた全身鎧でも着たようなぎこちない動き。儘ならない怒りと訳の分からないこの状況に、顔を真っ赤にして僕を睨み付けている。
「これでまともに動くことも喋ることもできないからね!」
「おば……おばえ……ッ!!」
さあ、若旦那さんなんかもうどうでもいい! プラムだ、プラム!!
「プラム!」
『プル……る……』
僕はダラッとしているプラムを抱え棚へと走った。作りすぎてここに押し込めておいた『古王国ポーション』を取ると、栓を抜いてプラムの体にそうっと掛けた。
「プラム、すぐに良くなるからね」
『ぷる……』
これは古王国ポーションなんだもん! きっと傷付いた核だって治せるはずだ、きっと。
少し待つと、薄くなっていたプラムの体の色が徐々に戻ってきた。
ホッとし二本、三本と追加で掛けていく。だけど体の色は完全には戻らず、通常なら核を隠している膜の再生もできていない。傷付いた核が丸見えのままだ。
「どうしよう、このポーションじゃ足りない……? ……あっ! そうだ、さっき【製薬】から【創薬】になったスキルなら、もっと強い新しい薬を作れるかも!」
僕は永久薬草壁をジッと見て、【創薬】スキルに引っ掛かる薬草を探す。だけど【創薬】できそうな薬は閃かない。
「足りない……」
こんなに珍しくて、効力だって高い素材ばかりなのに、だけどここにある素材だけじゃ『古王国ポーション』以上に強力な回復薬は作れない。
「どうしよう……どうしよう! どうしよっ、プラム!!」
その時だった。上階から足音が再び聞こえ、階段を下りてくる足が見えた。
僕はプラムを抱きかかえ睨み見ていると――。
「ロイ!」
「えっ……ギュスターヴさん!? ベアトリスさんも!」
大汗をかいたギュスターブさんが顔を出し、僕たちへ駆け寄った。
ベアトリスさんは、まずこの部屋のに驚いて、次いで床に転がる若旦那さんに気が付くと「あら。このクズ、麻痺しちゃってるのかしらぁ? うふふ」と、恐ろしくも美しい顔で床を見下ろした。
「ロイ、大丈夫か!」
「ギュスターヴさん……ッ!!」
頼れる腕に肩を掴まれた途端、情けないけど僕の視界は涙の膜で一気に歪んだ。プラムごと体を抱き込まれ、すると僕の胸に『ゴリッ』と硬いものが当たった。
胸に下げている守り袋だ。
そして、僕はハッとした。
「そうだ……! ギュスターヴさん、ちょっと、ちょっと放して!」
「ああ?」
僕は襟元から慌ててお守り袋を引っ張り出して、中の結晶を取り出した。
コロリと出てきたのは、翠色と蒼色の二つの結晶。翠のは僕が元々持っていたもので、蒼いのはこの塔でプラムが見付けたものだ。
「これ……今なら分かる。これ、廃棄された『製薬スライム』たちの結晶だ……」
その言葉にギュスターヴさんが息を呑み、向こうにいたベアトリスさんも驚きの顔を見せた。
スキルのおかげだ。
【製薬】スキルの中にあった【素材解】のおかげで、この結晶が何なのかがハッキリと分かる。
「これ、凝縮された魔力の結晶だ……。これ、もしかしたら……!」
何かが僕の頭によぎった。
【創薬】の閃きではないけど、予感、直感。そんなものがキラキラと脳で点滅している。
「ギュスターヴさん! ちょっとプラムを抱えてて!」
「お、おう!」
僕は古王国ポーションの薬玉を棚から持ち出すと、その辺にあったフラスコにどぼどぼ投入した。そして最後に、祈るような気持ちで『蒼色の結晶』をその中に沈めた。
「【創薬】『エリクサー!』」
――『エリクサー』と言ったけど、本物のエリクサーが出来るとは思っていない。
でもきっと、この組み合わせなら僕の進化した【製薬】スキル、【創薬】でそれに近い物を作れるはずだ!!
僕は『毒の薬玉』を、若旦那さん目掛けて投げ付けた。
「うわっ!」
バシャン!
若旦那さんの首元に命中した薬玉は、はじけて全身に飛び散った。
「なっ、なんだこれ! おい! ロ……ぅィ!?」
振り上げられた若旦那さんの腕が、ビシリと固まった。
驚きで目を見開いた若旦那さんは、まるで錆びた全身鎧でも着たようなぎこちない動き。儘ならない怒りと訳の分からないこの状況に、顔を真っ赤にして僕を睨み付けている。
「これでまともに動くことも喋ることもできないからね!」
「おば……おばえ……ッ!!」
さあ、若旦那さんなんかもうどうでもいい! プラムだ、プラム!!
「プラム!」
『プル……る……』
僕はダラッとしているプラムを抱え棚へと走った。作りすぎてここに押し込めておいた『古王国ポーション』を取ると、栓を抜いてプラムの体にそうっと掛けた。
「プラム、すぐに良くなるからね」
『ぷる……』
これは古王国ポーションなんだもん! きっと傷付いた核だって治せるはずだ、きっと。
少し待つと、薄くなっていたプラムの体の色が徐々に戻ってきた。
ホッとし二本、三本と追加で掛けていく。だけど体の色は完全には戻らず、通常なら核を隠している膜の再生もできていない。傷付いた核が丸見えのままだ。
「どうしよう、このポーションじゃ足りない……? ……あっ! そうだ、さっき【製薬】から【創薬】になったスキルなら、もっと強い新しい薬を作れるかも!」
僕は永久薬草壁をジッと見て、【創薬】スキルに引っ掛かる薬草を探す。だけど【創薬】できそうな薬は閃かない。
「足りない……」
こんなに珍しくて、効力だって高い素材ばかりなのに、だけどここにある素材だけじゃ『古王国ポーション』以上に強力な回復薬は作れない。
「どうしよう……どうしよう! どうしよっ、プラム!!」
その時だった。上階から足音が再び聞こえ、階段を下りてくる足が見えた。
僕はプラムを抱きかかえ睨み見ていると――。
「ロイ!」
「えっ……ギュスターヴさん!? ベアトリスさんも!」
大汗をかいたギュスターブさんが顔を出し、僕たちへ駆け寄った。
ベアトリスさんは、まずこの部屋のに驚いて、次いで床に転がる若旦那さんに気が付くと「あら。このクズ、麻痺しちゃってるのかしらぁ? うふふ」と、恐ろしくも美しい顔で床を見下ろした。
「ロイ、大丈夫か!」
「ギュスターヴさん……ッ!!」
頼れる腕に肩を掴まれた途端、情けないけど僕の視界は涙の膜で一気に歪んだ。プラムごと体を抱き込まれ、すると僕の胸に『ゴリッ』と硬いものが当たった。
胸に下げている守り袋だ。
そして、僕はハッとした。
「そうだ……! ギュスターヴさん、ちょっと、ちょっと放して!」
「ああ?」
僕は襟元から慌ててお守り袋を引っ張り出して、中の結晶を取り出した。
コロリと出てきたのは、翠色と蒼色の二つの結晶。翠のは僕が元々持っていたもので、蒼いのはこの塔でプラムが見付けたものだ。
「これ……今なら分かる。これ、廃棄された『製薬スライム』たちの結晶だ……」
その言葉にギュスターヴさんが息を呑み、向こうにいたベアトリスさんも驚きの顔を見せた。
スキルのおかげだ。
【製薬】スキルの中にあった【素材解】のおかげで、この結晶が何なのかがハッキリと分かる。
「これ、凝縮された魔力の結晶だ……。これ、もしかしたら……!」
何かが僕の頭によぎった。
【創薬】の閃きではないけど、予感、直感。そんなものがキラキラと脳で点滅している。
「ギュスターヴさん! ちょっとプラムを抱えてて!」
「お、おう!」
僕は古王国ポーションの薬玉を棚から持ち出すと、その辺にあったフラスコにどぼどぼ投入した。そして最後に、祈るような気持ちで『蒼色の結晶』をその中に沈めた。
「【創薬】『エリクサー!』」
――『エリクサー』と言ったけど、本物のエリクサーが出来るとは思っていない。
でもきっと、この組み合わせなら僕の進化した【製薬】スキル、【創薬】でそれに近い物を作れるはずだ!!
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