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第1章

第74話 変異の始まり

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 帰路は3日目を迎えたが、何故か朝から胸騒ぎがする。背中がゾワッとするんだ。

 特にやる事も無いので、馬車の中でスキルについて考察していた。 俺が真剣な顔で考え事をしている時は、皆俺をそっとしていてくれる。

 あの島では魔物からスキルをほぼ得られなかった。得られたのは棍棒術位だ。

 分かったのはリポップした直後では例外なく種族固有スキルしかない事だった。

 スキルを身に付けるには時間が掛かるようだ。魔物は駆逐され、リポップ待ちになっていたから、スキル持ちには出くわさなかったようだ。

 シロとハインは相変わらず馬車の中で皆にモフられていた。今は産毛が心地良いのだ。俺もモフっていたよ。2羽も気持ち良さそうにしているし、今では大人の小型犬位に迄成長しているから、モフり甲斐が有るってもんだ。皆からの愛情を注がれており、すくすくと大きくなっている。

 今は1度に30m程、高さ5m程行けるようになっていて、時折馬車から飛び出して飛んで行く。

 遊んでいるのか練習しているのか、イマイチ分からないが、戻って来た時には俺とイリアの所に必ず来る。そして飛距離が延びていたりすると誉めちぎるのだが、誉められるとドヤ顔で可愛らしい決めポーズを決めていたりして、皆が更に喜んでいる。あのゼツエイですらにこやかに頭を撫でていた。2羽は褒めれば伸びる仔だ。

 そうしていると、急に空が暗くなり、シロとハインの様子が変わった。急に唸り出したのだ。

 嫌な予感しかない。
 既にムネチカとカナロアは臨戦態勢だ。

 しかし1分位で空が明るくなり、元に戻る。
 但し、遠くに良くない気配を感じる。

 ムネチカとカナロアが馬車に戻ったのを確認したゼツエイが、徐に話し出した。

「変異が始まりおったぞ、気を引き締めろ!」

 やはりか!と思うが、ここではない事が分かる。
 恐らく発生したのはここから馬車で数日の距離だろう。

 カナロアが変異について話し始めた。

 基本的には変異は異世界か、他の星だろうか、何処か別の世界等と空間が繋がり、そこから何かが入って来るのだという。

 そして最後には、向こうの世界から攻め込んでくる事が過去に何度か発生していた。

 最初は空間が小さく、開いている時間も数分から1時間位であり、勝手に閉まる。来るのも小型で、弱いのが多いだろうと。次に開くのは5~10日位後で、回数を重ねる度に段々空間が大きく且つ、長い時間開くのだと。また、次に開くまでの間隔もかなり短くなる。

 最後の時は空間が固定され、何でもかんでも行き来できる。そうなると強い方が生き残る感じだ。空間の裂け目に現れる扉の面積は、体育館程になるそうだ。

 その空間を閉じる事が出来るのは、勇者のみだという。そしてやり方はというと、例外なく空間の裂け目に行けば分かるのだという。過去に現れた勇者達は、皆空間の閉じ方が分からなかったというが、扉の前に行った途端、例外なく理解していたそうだ。

 扉を内側から閉められるのは例外なく異世界人で、この世界の者で動かす事が出来た試しはないそうだ。要は、その扉を内側から閉められるのが唯一異世界人だと。しかも最低2人いるのだと。カナロアが非情な事を告げてきた。むこうの世界にとってこちら側の人々は異世界人で、向こう側に送り込んで、向こう側から閉める手もあると。但し、勇者にはそれができないのだと。こちら側から閉めるしかないと。

 俺は即時却下した。つまり向こうの世界に誰かを置き去りにし、人身御供にする事になるからだ。

 この世界は多くの種族がいるのだが、ミザリアの話だと、変異で別の世界から流れて来た者が根付いたのが始まりだと、それが1番有力な話なのだそうだ。

 俺達は王都を目指す速度を上げる。変異の場所は、今いる所から見て、王都の先だ。

 幸い俺達を襲う奴はいない。いたらまあ、叩き潰すけどね。

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