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第8章:嫁取り物語~

堕落した~~♪

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 1549年6月吉日
 上野国大胡城寝所
 楓(政賢君のお嫁さん。一応ヒロイン)


 大胡に来てびっくりの連続でした。

 由良新田にった(現在の太田)の領地と大胡の領地境から大胡城まで、殆ど隙間なく道の両脇に人々が並び、手を振って喜んでいました。

 口々に
「おめでとうございます」
「幸せになってくださいませ」
「儂ら一同楓様をお守りいたします」
 と、大声で騒いでいました。

 大きな大名家の輿入れの時は、何千人もの行列ができると聞きました。

 由良の家もそれほどではないにしても、3百人余りの兵が護衛の行列を作っておりますが、この大胡の歓迎の様子にびっくりしているようです。

 きっと数千ではきかない数の人々が並んでいるのでしょう。
 老いも若きも老若男女、打ち揃って歓喜の声を上げています。
 なんと領民から慕われているお方なのでしょうか。

 その御方が今、わたくしの目の前で真っ赤になって固まっています。
 何かブツブツ仰っています。

(賢者とおさらば、
 賢者は堕落する、
 謙信に勝てるのか?
 勝っちゃえ。
 勝とう! 
 でも一度はナリタヤ大賢者、
 いあいあ、ここは戦国時代。
 DTは関係ない!)

 まったく意味が解りません。

 側使えの政影様に先ほど耳打ちされましたが、「政賢様の独り言はそのうち慣れます。 独り言に惑わされずに、殿の本当のお姿を見ていただけると幸いです」と伝えてくださいました。

 先の婚儀の場でも鯱張しゃちほこばっておられましたが、きっと女子には慣れておられないのでしょう。

 ちょっと安心いたしました。
 お体も鐘馗様のような方ではなく、小柄である私と同じくらい。

 皆さま
「お似合いですぞ」
「殿が大きゅう見えまする」
「殿がお喋りいたさねば見事な夫婦めおとじゃ」などと囃し立て、一層殿は堅くなられたご様子。

「dddde、でえええ、はははぁはぁ、
 すぴーすぴー……、
 これから……ら~、
 よろよろしくしく……
 頼みまする~」

「こちらこそ不束ものですが、宜しゅうお願いいたしまする。
 お傍にいさせてくださいませ」

 わたくしも初めての事。

 ドキドキいたしておりましたが、子供の様な殿を見てなんだかしっかりせねばと思い、お傍に寄り添うため白無垢の裾を持ちながら立ち上がり、近くに侍ることにしました。







「堕落したのに……

 極楽じゃああああああああああ」

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