動物園の飼育員さん、神様の手違いで死んだので、代わりに最強の魔物たちを育てることになりました~会話できるので、子育ては楽勝です〜

旅する書斎(☆ほしい)

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あの日から、数日が過ぎた。
俺とルビ、ぷるん、コロとの生活は、すっかり安定していた。
朝は森で新鮮な果物やキノコを集め、昼はみんなで遊ぶ。
夜は洞窟で、焚き火を囲んで眠りにつく。
毎日が平和で、とても充実していた。

俺は飼育員の知識を活かして、三匹の栄養バランスを考えた食事を作ることにした。
果物だけでは、成長期の彼女たちには栄養が足りないだろう。
タンパク質も、きっと必要だ。
俺は森の植物たちに聞き込みをして、栄養価の高い木の実を見つけた。
動物たちが好んで食べるという、イモのような植物も見つけ出した。

「よし、これですり潰して、特製のご飯を作ってやるか。」

俺は石を使って木の実やイモを丁寧にすり潰し、ペースト状にしていく。
そこに、甘い蜜を出す花の蜜を少しだけ加えて、味を調えた。
いわば、異世界版の特製離乳食だ。
見た目も、なかなかいい感じだ。

「さあ、できたぞ! 特製のご飯だ。」

俺が完成したご飯を三匹の前に差し出すと、彼女たちはくんくんと匂いを嗅ぎ始めた。
興味津々な、顔をしている。

『わー、すごくいいにおい!』
『あまくておいしそう!』
『はやくたべたいなー!』

三匹の期待に満ちた声が、聞こえてくる。
俺は木のさじを作り、一人前ずつすくって、それぞれの口元へ運んだ。

「どうだ? お口に合うか?」

『んんー! なにこれ、すっごくおいしい!』
『今まで食べた中で、いちばんすき!』
『ユウ、すごい! 天才だ!』

三匹は、大絶賛してくれた。
よほど気に入ったのか、あっという間に平らげて、すぐにおかわりをねだってきた。
飼育員として、これほど嬉しいことはない。
自分の作った餌を、動物たちがおいしそうに食べてくれる。
その瞬間が、俺にとっては何よりの幸せだった。

食事の後は、いつものように森の散策に出かけることにした。
三匹の運動も兼ねて、毎日違う場所を歩くようにしている。
今日は少し遠出して、森の南側に初めて来てみた。
この辺りは、背の高い木が多くて、少し薄暗い雰囲気だ。
地面には、湿った落ち葉が積もっている。

「みんな、俺から離れるなよ。」

『はーい!』
『わかったー!』
『ユウのそばに、ちゃんといる!』

三匹は元気よく返事をすると、俺の周りをちょこちょこと走り回っている。
ぷるんはいつも通り、俺の頭の上が定位置だ。
ひんやりとして、気持ちがいい。
本当に、平和な時間だった。
その時、茂みの奥からガサガサと大きな音が聞こえてきた。

「ん? 何かいるのか?」

俺が警戒していると、茂みの中から緑色の肌をした、醜い生き物が数体現れた。
身長は俺の半分くらいで、とても小さい。
手にはボロボロの棍棒や、錆びた剣を持っている。
あれは、確か……ゴブリンとかいう魔物じゃなかったか。
神様が言っていた、剣と魔法の世界というのを思い出す。
なるほど、ああいうのが本当にいるのか。

ゴブリンたちは俺たちに気づくと、いやらしい笑みを浮かべて、こちらに向かってきた。
まずい。
俺には、戦う力なんてない。
すぐに、ここから逃げないと。

「みんな、こっちだ! 急いで逃げるぞ!」

俺は三匹を連れて、急いでその場を離れようとした。
しかし、ゴブリンたちは思ったよりも足が速い。
すぐに回り込まれて、囲まれてしまった。

「グルルル……」
「ヒヒヒ、獲物ダ。」

ゴブリンたちが、汚い言葉で何か言っている。
意味は分からないが、敵意を持っていることだけは確かだ。
どうしようか。
俺は三匹を背中にかばい、どうやってこの場を切り抜けるか必死に考えた。
木の棒でも、拾うべきか。

すると、俺の前にいたゴブリンの一体が、ルビに向かって棍棒を振り上げた。
危ない!

「やめろ!」

俺が叫ぶのと、ほぼ同時だった。
ルビが、ゴブリンに向かって大きく息を吸い込んだ。

「ふぇっくしょん!」

可愛らしいくしゃみと共に、ルビの口から巨大な火の玉が放たれた。
以前とは比べ物にならない、大きな炎だ。
火の玉はゴブリンに直撃し、轟音と共に爆発した。
ゴブリンは悲鳴を上げる間もなく、一瞬で黒い炭になってしまった。

「え……?」

俺は、目の前の光景が信じられなかった。
他のゴブリンたちも、一瞬何が起きたか分からず、動きを止めている。
その隙を、コロが見逃さなかった。

『ユウをいじめるなー!』

コロはそう叫ぶと、目にもとまらぬ速さで駆け出した。
白い閃光のように、見えた。
彼女はゴブリンたちの間を駆け抜け、リーダー格と思わしき一番体の大きなゴブリンに、思いっきり体当たりした。

ドゴォッ! という鈍い音と共に、リーダーゴブリンはくの字に折れ曲がった。
そのまま、森の奥へと吹っ飛んでいった。
木々を何本もなぎ倒しながら、やがて見えなくなった。

残ったのは、魔術師のようなローブを着たゴブリンだけだった。
彼は恐怖で腰を抜かしながらも、震える手で杖を構えて何かを叫んだ。
すると、彼の杖の先に黒い魔法陣が浮かび上がる。
そこから、闇の矢のようなものが放たれた。

『なんか、おいしそう!』

俺の頭の上にいたぷるんが、そう思った瞬間だった。
ぷるんはぴょんと飛び上がると、闇の矢をぱくりと食べてしまった。
いや、吸収した、と言うべきか。
闇の矢はぷるんの体に吸い込まれ、跡形もなく消えてしまった。

『んー、いまいち!』

ぷるんはまずそうに、体をぶるぶると震わせた。
魔術師ゴブリンは、信じられないという顔で固まっている。
やがて白目をむくと、そのまま気を失ってしまった。

こうして、ゴブリンの集団は一瞬で壊滅した。
俺はただ、呆然とその場に立ち尽くすことしかできなかった。
やがて我に返ると、俺は三匹に向かって駆け寄った。

「こら! お前たち! 危ないじゃないか!」

俺は、三匹を順番に叱りつけた。

「ルビ! 火遊びは危ないって、いつも言ってるだろ!」
「人に向けて、絶対にダメだ!」

『ご、ごめんなさーい……』

ルビはしゅんとして、うつむいてしまった。

「コロもだ! いきなり飛び出したら、危ないだろう!」
「ちゃんと前を見て走らないと、怪我をするぞ!」

『うぅ……ごめんなさい……』

コロも申し訳なさそうに、耳を垂れている。

「ぷるんも! 何でも食べちゃダメだぞ!」
「お腹を壊したら、どうするんだ!」

『はーい……ごめんなさい……』

ぷるんも反省したように、小さく震えた。
まったく、本当に手のかかる子たちだ。
俺ははぁ、と深いため息をついた。
みんなに怪我がなくてよかったが、心臓に悪い。

「分かったらいいんだ。でも、もう二度とやるなよ?」

『『『はーい!』』』

三匹は、元気よく返事をした。
まあ、子供のやんちゃだ。
仕方ない。
それよりも問題は、この後始末だ。
黒焦げになったゴブリンと、気絶しているゴブリン。
それに、なぎ倒された木々。
どうしたものか。

「とりあえず、この炭は土に埋めるか。」
「肥料くらいには、なるかもしれないしな。」

俺がぶつぶつ言いながら後片付けの算段を立てていると、遠くの茂みがガサリと揺れた。
またゴブリンの仲間か?
俺は身構えたが、茂みから出てきたのは、ゴブリンとは違う、人間らしき二人組だった。
彼らは立派な剣と鎧で武装しており、冒険者といった風貌だ。
そして、俺たちの方を見て、信じられないといった表情で固まっていた。
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