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ガレンさんたちの疲労は、ピークに達しているようだった。
あれから何度も、小さな魔物や動物に遭遇した。
そのたびに、コロが元気よく追い払ったり、ルビが威嚇して火を噴きそうになったりした。
俺はその都度、二人を「こら」と叱った。
ガレンさんたちは、その光景を見るたびに、どんどん顔色が悪くなっていった。
「もう……だめだ……。」
「俺の今までの常識が……ガラガラと壊れていく……」
「伝説の魔獣を……『こら』って叱ってる……。」
「しかも、魔獣が『ごめんなさい』って、反省してる……」
二人は森を抜ける頃には、すっかり燃え尽きたようになっていた。
そして、ついに森の出口が見えてきた。
目の前には、高い石壁に囲まれた、大きな町が広がっていた。
「おおー! あれがアリストンですか! すごい!」
俺は異世界らしい光景に、思わず声を上げた。
ルビもコロも、初めて見る大きな建物に興味津々だ。
『わー! おおきい!』
『ひとがいっぱいいるにおいがする!』
『あのおうち、たかーい!』
三匹が、俺の足元ではしゃいでいる。
俺たちは町の入り口、大きな門へと向かった。
門の前には、屈強な兵士さんたちが二人、槍を持って立っていた。
「止まれ! お、ガレン、リーゼ、無事だったか。」
「……ん? その男と……」
兵士の一人が、俺たちに気づいた。
そして、俺の足元にいるルビとコロ、頭の上のぷるんに気づいた瞬間、顔色が変わった。
「ま、魔物だー! なぜ魔物がこんなところに!」
もう一人の兵士も、慌てて槍を俺たちに向けた。
「ひっ! あ、危ないですよ!」
「槍を向けないでください!」
俺は慌てて三匹を、自分のかげに隠した。
まったく、この世界の人たちは、どうしてこうも生き物に対して攻撃的なんだろうか。
『ユウ、あのぼう、こわい!』
『とがってる! やだ!』
ルビとコロが、俺の後ろで怯えている。
「大丈夫だ、二人とも。俺が守ってやるからな」
俺が二人をなだめていると、ガレンさんが慌てて兵士たちの前に立った。
「ま、待て! 落ち着け!」
「この方々は、俺たちの客だ!」
「客だと!? ガレン、お前、正気か!」
「どう見ても、危険な魔獣だろうが!」
「そ、その魔獣が、ユウ殿の『おとも』なんだ! 害はない!」
「害がない!? あの赤いのはドレイクの幼体だぞ!」
「そっちの白いのは、どう見ても高ランクの魔狼……。」
「頭の上のスライムも、普通じゃない!」
兵士さんたちは、すっかりパニックになっている。
一人が、慌てて門のそばにある鐘を鳴らし始めた。
カーン、カーン、と甲高い音が響き渡る。
町の中が、途端に騒がしくなった。
「え、何ですか? 火事ですか?」
俺がのんきに尋ねると、リーゼさんが泣きそうな顔で答えた。
「ち、違いますよ、ユウさん……。」
「魔物襲来の、警報です……。」
「あなたの、せいですよ……」
「ええー!? なんで!?」
「この子たち、こんなに可愛いのに!」
俺が抗議していると、町の奥から、さらに厳つい鎧を着た、背の低いおじさん……ドワーフ、だろうか? が走ってきた。
彼は立派な斧を、背中に背負っている。
「何事だ! 門の前で騒ぐな!」
「ギルドマスター! こ、こいつらが魔物を!」
兵士が俺を指差す。
ギルドマスターと呼ばれたドワーフのおじさんは、俺と三匹を見た。
そして、ピタリと動きを止めた。
その顔が、みるみる険しくなっていく。
「……ガレン、リーゼ。」
「貴様ら、これはどういうことだ。」
「Sランクの討伐対象を、なぜ町の入り口まで連れてきた」
その低い声には、明らかな怒りがこもっていた。
まずい。
この人が一番偉くて、一番怒っている。
「ぎ、ギルドマスター! 違うんです!」
「この方はユウ殿といって……その……」
ガレンさんが必死に説明しようとする。
だが、言葉がうまく出てこないようだ。
仕方ない。
俺が自分で説明しよう。
「あの、はじめまして。俺はユウと言います。」
「職業は、飼育員です」
「しいくいん……?」
「はい。この子たちは、俺が育てている子供たちです。」
「町に迷惑はかけません。」
「ただ、食べ物とか、住む場所を探しに来ただけで……」
俺が一生懸命説明していると、ルビが俺の足元でくしゃみをした。
『ふぇっくしょん!』
ぽすっ、と小さな火の粉が飛んだ。
その瞬間、ギルドマスターと兵士たちが、蜘蛛の子を散らすように飛びのいた。
「「「うわああああっ!」」」
「あー、こら、ルビ! 危ないだろ!」
「……すみません、この子、ちょっと風邪気味で」
俺がルビの鼻を、持っていた布で拭ってやる。
すると、ギルドマスターは恐る恐る物陰から顔を出した。
彼は、信じられないものを見る目で、俺とルビをじっと見つめている。
「……今……ドラゴンが火を噴いたぞ……」
「え? だから、くしゃみだって言ってるじゃないですか」
「それを……飼育員が……『こら』と……?」
ギルドマスターは、ガレンさんとリーゼさんの方を向いた。
「お前たちが言っていた、『とんでもないの』とは、この男のことか……?」
「「は、はい! まさしく!」」
ガレンさんとリーゼさんが、なぜかビシッと敬礼している。
ギルドマスターは、ふう、と長いため息をついた。
それから、ゆっくりと俺に近づいてくる。
「……ユウ、殿、だったか」
「あ、はい。ユウです」
「わしはこの町の冒険者ギルドをまとめている、ドリンという。」
「……その、『子供たち』は、本当に、お主に懐いているんだな?」
「もちろんです。俺が、親代わりですから」
俺がそう答えると、ドリンさんは何かを決意したように、兵士たちに向き直った。
「門を開けろ!」
「し、しかし、ギルドマスター! 魔物ですよ!?」
「うるさい! この方々は、わしが身元を保証する!」
「アリストンの、大切なお客さまだ!」
「丁重にお迎えしろ!」
「は、はいいい!」
兵士さんたちは慌てて、重そうな門を開け始めた。
え、大切なお客さま?
俺が?
「あ、ありがとうございます、ドリンさん!」
「……礼には及ばん。ただし、ユウ殿。」
「町の中では、決して……その子たちを『遊ばせたり』『くしゃみ』させたりしないでくれ。」
「町の人たちの、心臓がいくつあっても足らん」
「分かりました! ちゃんと言い聞かせておきます!」
俺は三匹に向き直った。
「いいか、お前たち。」
「町の中では、絶対に暴れるなよ? 火も噴くな。」
「いいな?」
『『『はーい!』』』
三匹の元気な返事を聞いて、ドリンさんはまた深いため息をついた。
こうして俺たちは、無事にアリストンの町へと足を踏み入れることになった。
町の人々が、信じられないものを見る目で俺たちを遠巻きにしている。
なんだか、すごく注目されているみたいだ。
あれから何度も、小さな魔物や動物に遭遇した。
そのたびに、コロが元気よく追い払ったり、ルビが威嚇して火を噴きそうになったりした。
俺はその都度、二人を「こら」と叱った。
ガレンさんたちは、その光景を見るたびに、どんどん顔色が悪くなっていった。
「もう……だめだ……。」
「俺の今までの常識が……ガラガラと壊れていく……」
「伝説の魔獣を……『こら』って叱ってる……。」
「しかも、魔獣が『ごめんなさい』って、反省してる……」
二人は森を抜ける頃には、すっかり燃え尽きたようになっていた。
そして、ついに森の出口が見えてきた。
目の前には、高い石壁に囲まれた、大きな町が広がっていた。
「おおー! あれがアリストンですか! すごい!」
俺は異世界らしい光景に、思わず声を上げた。
ルビもコロも、初めて見る大きな建物に興味津々だ。
『わー! おおきい!』
『ひとがいっぱいいるにおいがする!』
『あのおうち、たかーい!』
三匹が、俺の足元ではしゃいでいる。
俺たちは町の入り口、大きな門へと向かった。
門の前には、屈強な兵士さんたちが二人、槍を持って立っていた。
「止まれ! お、ガレン、リーゼ、無事だったか。」
「……ん? その男と……」
兵士の一人が、俺たちに気づいた。
そして、俺の足元にいるルビとコロ、頭の上のぷるんに気づいた瞬間、顔色が変わった。
「ま、魔物だー! なぜ魔物がこんなところに!」
もう一人の兵士も、慌てて槍を俺たちに向けた。
「ひっ! あ、危ないですよ!」
「槍を向けないでください!」
俺は慌てて三匹を、自分のかげに隠した。
まったく、この世界の人たちは、どうしてこうも生き物に対して攻撃的なんだろうか。
『ユウ、あのぼう、こわい!』
『とがってる! やだ!』
ルビとコロが、俺の後ろで怯えている。
「大丈夫だ、二人とも。俺が守ってやるからな」
俺が二人をなだめていると、ガレンさんが慌てて兵士たちの前に立った。
「ま、待て! 落ち着け!」
「この方々は、俺たちの客だ!」
「客だと!? ガレン、お前、正気か!」
「どう見ても、危険な魔獣だろうが!」
「そ、その魔獣が、ユウ殿の『おとも』なんだ! 害はない!」
「害がない!? あの赤いのはドレイクの幼体だぞ!」
「そっちの白いのは、どう見ても高ランクの魔狼……。」
「頭の上のスライムも、普通じゃない!」
兵士さんたちは、すっかりパニックになっている。
一人が、慌てて門のそばにある鐘を鳴らし始めた。
カーン、カーン、と甲高い音が響き渡る。
町の中が、途端に騒がしくなった。
「え、何ですか? 火事ですか?」
俺がのんきに尋ねると、リーゼさんが泣きそうな顔で答えた。
「ち、違いますよ、ユウさん……。」
「魔物襲来の、警報です……。」
「あなたの、せいですよ……」
「ええー!? なんで!?」
「この子たち、こんなに可愛いのに!」
俺が抗議していると、町の奥から、さらに厳つい鎧を着た、背の低いおじさん……ドワーフ、だろうか? が走ってきた。
彼は立派な斧を、背中に背負っている。
「何事だ! 門の前で騒ぐな!」
「ギルドマスター! こ、こいつらが魔物を!」
兵士が俺を指差す。
ギルドマスターと呼ばれたドワーフのおじさんは、俺と三匹を見た。
そして、ピタリと動きを止めた。
その顔が、みるみる険しくなっていく。
「……ガレン、リーゼ。」
「貴様ら、これはどういうことだ。」
「Sランクの討伐対象を、なぜ町の入り口まで連れてきた」
その低い声には、明らかな怒りがこもっていた。
まずい。
この人が一番偉くて、一番怒っている。
「ぎ、ギルドマスター! 違うんです!」
「この方はユウ殿といって……その……」
ガレンさんが必死に説明しようとする。
だが、言葉がうまく出てこないようだ。
仕方ない。
俺が自分で説明しよう。
「あの、はじめまして。俺はユウと言います。」
「職業は、飼育員です」
「しいくいん……?」
「はい。この子たちは、俺が育てている子供たちです。」
「町に迷惑はかけません。」
「ただ、食べ物とか、住む場所を探しに来ただけで……」
俺が一生懸命説明していると、ルビが俺の足元でくしゃみをした。
『ふぇっくしょん!』
ぽすっ、と小さな火の粉が飛んだ。
その瞬間、ギルドマスターと兵士たちが、蜘蛛の子を散らすように飛びのいた。
「「「うわああああっ!」」」
「あー、こら、ルビ! 危ないだろ!」
「……すみません、この子、ちょっと風邪気味で」
俺がルビの鼻を、持っていた布で拭ってやる。
すると、ギルドマスターは恐る恐る物陰から顔を出した。
彼は、信じられないものを見る目で、俺とルビをじっと見つめている。
「……今……ドラゴンが火を噴いたぞ……」
「え? だから、くしゃみだって言ってるじゃないですか」
「それを……飼育員が……『こら』と……?」
ギルドマスターは、ガレンさんとリーゼさんの方を向いた。
「お前たちが言っていた、『とんでもないの』とは、この男のことか……?」
「「は、はい! まさしく!」」
ガレンさんとリーゼさんが、なぜかビシッと敬礼している。
ギルドマスターは、ふう、と長いため息をついた。
それから、ゆっくりと俺に近づいてくる。
「……ユウ、殿、だったか」
「あ、はい。ユウです」
「わしはこの町の冒険者ギルドをまとめている、ドリンという。」
「……その、『子供たち』は、本当に、お主に懐いているんだな?」
「もちろんです。俺が、親代わりですから」
俺がそう答えると、ドリンさんは何かを決意したように、兵士たちに向き直った。
「門を開けろ!」
「し、しかし、ギルドマスター! 魔物ですよ!?」
「うるさい! この方々は、わしが身元を保証する!」
「アリストンの、大切なお客さまだ!」
「丁重にお迎えしろ!」
「は、はいいい!」
兵士さんたちは慌てて、重そうな門を開け始めた。
え、大切なお客さま?
俺が?
「あ、ありがとうございます、ドリンさん!」
「……礼には及ばん。ただし、ユウ殿。」
「町の中では、決して……その子たちを『遊ばせたり』『くしゃみ』させたりしないでくれ。」
「町の人たちの、心臓がいくつあっても足らん」
「分かりました! ちゃんと言い聞かせておきます!」
俺は三匹に向き直った。
「いいか、お前たち。」
「町の中では、絶対に暴れるなよ? 火も噴くな。」
「いいな?」
『『『はーい!』』』
三匹の元気な返事を聞いて、ドリンさんはまた深いため息をついた。
こうして俺たちは、無事にアリストンの町へと足を踏み入れることになった。
町の人々が、信じられないものを見る目で俺たちを遠巻きにしている。
なんだか、すごく注目されているみたいだ。
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