動物園の飼育員さん、神様の手違いで死んだので、代わりに最強の魔物たちを育てることになりました~会話できるので、子育ては楽勝です〜

旅する書斎(☆ほしい)

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俺たちはドリンさんに導かれ、アリストンの町の中を歩いていた。
石畳の道は、とてもきれいに整備されている。
道を行く人々は、俺たちに気づくと目を丸くした。
そして面白いように、サーッと引いていく。
まるで俺たちを中心に、大きな円形の空間ができたみたいだ。

「わあ……すごい人だかりですね」

俺がそう呟くと、ガレンさんが引きつった顔で訂正した。

「……ユウ殿。あれは人だかりではないぞ」
「警戒態勢、というんだ」

そうなんだろうか。
みんな、ずいぶん遠くから俺たちを指差している。
何かヒソヒソと、話し合っているようだった。

「おい、見ろよ。ギルドマスターが直々に、案内してらっしゃるぞ」
「あのトカゲは、本物のドレイクじゃないか。なんで町の中に、あんな化け物が……」
「あの男、平然と頭にスライムを乗せてるぞ。正気なのか、あれは……」
「子犬もいるな。いや、あれは本当に子犬なのか。雰囲気が、尋常じゃないぞ」

人々の不安そうな声は、俺のスキルには入ってこない。
でもその表情は、恐怖と好奇心でいっぱいだった。
まあ、確かにトカゲとスライムと子犬を連れていれば、目立つかもしれない。
動物園でも、ふれあいコーナーはいつも人気だったな。

『ユウ、あの人たち、なんであんなに遠くにいるの?』

コロが不思議そうに、小さな首を傾げた。
その仕草が、とても愛らしい。

「さあな。この町には、恥ずかしがり屋さんが多いのかもしれないな」

『ふーん、そうなの?』

俺が適当に答えると、コロは納得したように前を向いた。
ぷるんは俺の頭の上で、町の景色を楽しそうに見回している。
ぷるぷると、心地よさそうに震えていた。
ルビは少し緊張しているのか、俺の足にぴったりとくっついている。
その小さな体が、小刻みに震えているのが分かった。

「大丈夫だぞ、ルビ。怖くないからな」

俺はルビの頭を、そっと撫でてやった。

やがて、ひときわ大きな建物が、俺たちの目の前に現れた。
立派な木の看板には、剣と盾のマークが描かれている。
ここが冒険者ギルドらしい。

「ここだ。さあ、入ってくれ、ユウ殿」

ドリンさんに促され、俺はギルドの中へと足を踏み入れた。
中は酒場のようになっていて、とても広々としている。
たくさんの冒険者たちが、テーブルを囲んで騒いでいた。
しかし、俺たちが入った瞬間。
さっきまでの騒がしさが、ウソのように消え去った。

しん、と静まり返ったホールには、大勢の視線があった。
全員が、酒ジョッキやナイフを持ったまま、固まっている。
まるで時間が、止まってしまったかのようだ。

「「「……」」」

ものすごい視線が、俺と三匹に突き刺さる。
俺はとりあえず、ぺこりとお辞儀をしてみた。

「お、お邪魔します。森で動物の世話をしています、ユウです」

俺の挨拶に、誰も答えてはくれなかった。
それどころか、何人かがゆっくりと剣の柄に手をかけている。
まずい。
空気が、とてもピリピリしていた。
動物園の猛獣エリアよりも、ずっと緊張感がある。

「貴様ら! 武器をしまえ! この方々は、わしの賓客だぞ!」

ドリンさんの一喝が、ギルドホールに響き渡った。
その声には、ものすごい迫力があった。
冒険者たちは、びくっと体を震わせる。
そして慌てて、武器から手を離した。
さすがギルドマスターだ。
威厳が、本当にすごい。

「奥の部屋へどうぞ、ユウ殿」

「あ、はい。失礼します」

俺はドリンさんに続いて、ギルドの奥にある立派な部屋に通された。
ガレンさんとリーゼさんも、なぜか一緒に入ってくる。
部屋には重そうな机と、ふかふかのソファが置いてあった。

「どうぞ、お座りください」

俺はソファに腰掛け、ルビとコロを膝の上に乗せた。
二人とも、まだ少し緊張しているみたいだ。
ぷるんは俺の頭の上で、丸くなって様子をうかがっている。
ドリンさんは、重々しい顔で俺の向かいに座った。

「さて……ユウ殿。単刀直入に、お聞きしたいことがある」

「はい。なんでしょうか」

「その……『子供たち』は、一体、何者なのだ?」

ドリンさんは、真剣な目で俺を見つめてきた。
ガレンさんとリーゼさんも、固唾をのんで俺の答えを待っている。
さっきも、森で同じことを聞かれたな。

「ですから、この子たちはトカゲとスライムと子犬です」
「森で拾ったんですよ。まだ、生まれたばかりの赤ちゃんなんです」

俺がそう答えると、ドリンさんは大きなため息をついた。
その顔には、深い疲れが見えた。

「ユウ殿。ガレンたちから、報告は全て聞いている」
「……その『トカゲ』は、ゴブリンの集団を火炎で一瞬で炭にした、と」

「え!? 本当か、ルビ!」

俺が驚いてルビを見ると、ルビは『あ、バレた』という顔をした。
そして、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
こいつ、またやったのか。
火遊びは、絶対にダメだとあれほど言ったのに。

「それから、その『子犬』は」
「Bランクモンスターであるフォレストベアの爪を、頭で受け止めた」
「そして、粉々に砕いた、と」

「えええ!? コロまで、そんなことを!?」

俺がコロを見ると、コロはバツが悪そうに俺の服に顔をうずめた。
小さな体が、もぞもぞと動いている。

『だって、ユウがあぶなかったんだもん……』

「むぅ……。それから、その『スライム』は」
「ゴブリンシャーマンの闇魔法を、食べた、と」

「ぷるん、お前もか!」

『だって、あの黒いの、まずそうだったんだもん……』

ぷるんが俺の頭の上で、申し訳なさそうに小さく震えた。
俺は頭を抱えたくなった。
なんてことだ。
俺がちょっと目を離した隙に、この子たちはそんな危険なことをしていたのか。
飼育員として、これ以上の失態はない。

「ドリンさん、すみません!」
「うちの子たちが、とんでもないことをしでかしました!」
「特にクマさんには、なんてお詫びをしたら……」
「治療費は、俺が必ず全額お支払いします!」
「近くに、腕のいい動物病院はありますか!?」

俺は勢いよく立ち上がって、深く頭を下げた。
ドリンさんたちは、ぽかんとした顔で固まっている。

「「「……」」」

「え? あの……?」

「……ユウ殿。お主……本気で、そう言っているのか?」

「本気も何もありません!」
「人様の……いえ、クマ様の爪を折ってしまったんですよ!?」
「飼い主として、謝罪と弁償をするのは当然のことです!」

飼育員として、管理する動物が他者に危害を加えた。
その場合、全責任は飼育員にある。
これは前世からの、俺の揺るぎない信条だった。

「……いや。治療費は……いらないんだ」
「フォレストベアは魔物だ。冒険者が、討伐する対象だからな」

「でも、怪我をさせたのは事実です。それに、ゴブリンさんたちにも……」

「……その件は、もういい。よく、わかった」
「お主が、本当に……ただの『飼育員』だということが、心底よくわかった」

ドリンさんは、なぜかすごく疲れた顔でそう言った。
彼は何かを諦めたように、長い息を吐いた。

「ユウ殿。お主たちの住む場所だが、ギルドで用意しよう」

「え! 本当ですか!?」

これは、とてもありがたい申し出だ。

「うむ。ギルドの旧別館が、ちょうど空いている」
「古いが、頑丈さだけが取り柄の建物だ。中庭もある」
「そこなら、その子たちが多少『遊んで』も、問題はあるまい」

「あ、ありがとうございます!」
「ドリンさん、なんて親切な方なんですか!」

俺はもう一度、深く頭を下げた。

「ただし、条件がある。宿代などは、一切いらない」

「え、そんな、悪いですよ! お金はちゃんと払います!」

「いいんだ。その代わり……頼むから、町の中で、その子たちを『しつけ』たり、『遊ばせたり』はしないでくれ」
「頼む。わしの心臓が、持たないんだ……」

ドリンさんは、心底疲れた、という顔で俺に頼み込んできた。
よく分からないが、この子たちがいると、ドリンさんは疲れてしまうらしい。
仕方ない。
お世話になる以上、迷惑はかけられない。

「分かりました。できるだけ、おとなしくさせておきます」

『『『はーい!』』』

俺と三匹が元気よく返事をすると、ドリンさんは机に突っ伏してしまった。
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