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俺たちは、ドリンさんに紹介してもらったギルドの旧別館に案内された。
町のはずれにある、石造りの立派な建物だ。
確かに壁は古びているが、とても分厚くて、頑丈そうだった。
これなら、安心して暮らせそうだ。
「ここだ。中は、自由に使ってくれて構わん」
ドリンさんはそれだけ言うと、付け加えた。
「わしは仕事に戻る……。少し、休まねば……」
彼は、ふらふらした足取りでギルド本館の方へ帰っていった。
よほど疲れているみたいだ。
ギルドマスターの仕事は、きっと大変なんだろう。
俺は大きな木の扉を開けて、中に入ってみた。
中は広々としていて、少しほこりっぽい匂いがした。
でも、天井もすごく高い。
これなら、ルビやコロが思いっきり走り回っても大丈夫そうだ。
「おおー! すごいぞ! ここが今日から、俺たちの家だ!」
『わーい! ひろーい!』
『ここでかけっこできるね、ルビ!』
『ユウ、あっちに広いお庭があるよ!』
三匹はさっそく、探検を始めた。
コロとルビは、広いホールを嬉しそうに駆け回っている。
ぷるんは壁をぺたぺたと登って、高い窓から外を眺めていた。
中庭もあって、日当たりもいい。
これなら、ルビの体温調節にも良さそうだ。
「よし、まずは掃除だな。それから、買い出しに行かないと」
この子たちの寝床も、ちゃんと作ってやらないといけない。
それから、ご飯の材料も買わないと。
森で取った木の実も、もうすぐ無くなりそうだ。
「さて、どうしようか。俺が買い出しに行っている間、誰かがこの子たちを見ててくれると助かるんだが……」
俺がそう呟いていると、入り口のドアがノックされた。
「ユウ殿、いるか?」
ガレンさんとリーゼさんの声だ。
二人が、なぜかおずおずと中に入ってきた。
まだ、何か用事があったんだろうか。
「あ、ガレンさん、リーゼさん。ちょうどよかった。実は、ちょっとお願いがあるんですが」
「「(ビクッ!)」」
俺が声をかけると、二人は大げさに肩を震わせた。
そんなに驚かなくてもいいのに。
「あの、俺、これから町に買い出しに行こうと思うんです」
「この子たちのご飯とか、寝床の材料とかを買いに」
「それで、その間、この子たちのことを見ててもらえませんか?」
「つまり、子守りをお願いしたいんです」
「「……え?」」
二人は、信じられないという顔で俺を見た。
ガレンさんは、冷や汗をだらだらと流している。
「こ、この子たちの……子守りを……? お、俺たち二人だけで、か……?」
「はあ。やっぱり、無理ですか?」
「この子たち、ちゃんとお留守番できますよ。ほら、みんな、いい子にしてられるよな?」
俺が呼びかけると、三匹が駆け寄ってきた。
『『『はーい! いい子にしてるー!』』』
三匹が元気よく返事をする。
「ほらね。大丈夫ですって。お利口さんたちですから」
「あ、おやつの時間は三時です。この特製ペーストを、スプーンで一杯ずつあげてください」
「あと、コロは中庭でトイレをさせる必要が……」
俺が飼育マニュアルを説明しようとすると、ガレンさんが慌てて俺の言葉を遮った。
「ま、待て、待て! ユウ殿! 無理だ! 絶対に無理だ!」
「そ、そうです! 私たち二人では、この子たちの『遊び相手』にもなりません!」
「万が一、機嫌を損ねでもしたら……町が……」
リーゼさんも顔面蒼白で、首を激しく横に振っている。
うーん、困ったな。
そんなに嫌だろうか。
この子たちは、こんなに可愛いのに。
「……じゃあ、仕方ないですね。一緒に行きますか? 買い出し」
俺がそう提案すると、二人はさっきと打って変わって、激しく頷いた。
「行く! その方がいい! 町の安全のためにも、我々が同行する!」
ガレンさんが、なぜか力強く宣言した。
よく分からないが、荷物持ちを手伝ってくれるなら助かる。
「分かりました。じゃあ、みんな、お留守番頼むぞ」
「絶対に家を壊したり、火を噴いたりするなよ? 約束だぞ」
『はーい! ユウ、いってらっしゃーい!』
三匹のかわいい声に見送られ、俺はガレンさん、リーゼさんと一緒に、アリストンの市場へと向かった。
市場は活気があって、色々な店が並んでいた。
見たこともない野菜や果物が、山のように積まれている。
ここは、動物園の飼料倉庫より品揃えが豊富だ。
「すごいな……。活気がありますね」
「あの、すみません。この『ガラクの実』っていうのは、栄養ありますか?」
俺は果物屋の店主に尋ねた。
ごつごつした、石みたいな実だった。
「あ、お客さん。そいつは止しときな」
「ガラクの実は、石みたいに硬くて、とても食えたもんじゃないよ」
「オークとかが好んで食うらしいがね。人間には無理だ」
「へえ、オークが。でも、栄養はありそうですね」
俺は実を一つ手に取り、重さや匂いを確かめる。
「よし、これをください。たくさんお願いします」
「え? お客さん、本気かい?」
俺はガラクの実を、大きな袋に詰めてもらった。
コロなら、あのフォレストベアの爪を砕いた頭だ。
きっと、この実も噛み砕けるだろう。
「次は……あ、あれは『シビレ花』ですか?」
「以前、植物に聞いたら、蜜が甘いって言ってましたね」
「すみません、あれもください」
「は!? お、お客さん! シビレ花は猛毒だよ!」
「触っただけで、大人の男でも手が痺れるんだ!」
「え、そうなんですか? でも、甘いなら、ルビが喜ぶかもしれません」
「大丈夫です、毒抜きくらいは知ってますから」
俺は前世の知識を適当に思い出しながら答えた。
動物によっては、毒が効かないやつもいるしな。
ガレンさんとリーゼさんは、俺の後ろで何か小声で話している。
「おい、リーゼ……。あいつ、オーク用のエサと、猛毒の花を買ってるぞ……」
「ええ……。あれで、あの特製ペーストを作るというの……? 恐ろしい……」
次に、俺は寝具屋に向かった。
三匹には、快適な寝床を用意してあげたい。
「すみません。丈夫な布が欲しいんですが」
「できれば、燃えにくいやつがいいです」
「うちの子、ちょっと寝相が悪くて、熱を出すことがあるんで」
「熱を出す? ははあ。それなら、この『火トカゲの革』か、『石綿の布』だね」
「どっちも鍛冶屋が使うやつで、火には滅法強いよ」
「おお、素晴らしい! じゃあ、この石綿の布を三枚ください!」
俺が買い物を終える頃には、ガレンさんとリーゼさんの両手は、荷物でいっぱいになっていた。
彼らの顔は、市場に来た時よりも、青白くなっている気がする。
「ありがとうございます、二人とも。本当に助かりました」
「い、いや……。これも、ギルドマスターの命令だからな……」
ガレンさんが、乾いた声で答えた。
俺たちは大量の荷物を抱えて、ギルドの別館へと戻る。
これで、あの子たちに、もっと快適な環境を用意してやれる。
俺は飼育員として、やる気に満ちていた。
町のはずれにある、石造りの立派な建物だ。
確かに壁は古びているが、とても分厚くて、頑丈そうだった。
これなら、安心して暮らせそうだ。
「ここだ。中は、自由に使ってくれて構わん」
ドリンさんはそれだけ言うと、付け加えた。
「わしは仕事に戻る……。少し、休まねば……」
彼は、ふらふらした足取りでギルド本館の方へ帰っていった。
よほど疲れているみたいだ。
ギルドマスターの仕事は、きっと大変なんだろう。
俺は大きな木の扉を開けて、中に入ってみた。
中は広々としていて、少しほこりっぽい匂いがした。
でも、天井もすごく高い。
これなら、ルビやコロが思いっきり走り回っても大丈夫そうだ。
「おおー! すごいぞ! ここが今日から、俺たちの家だ!」
『わーい! ひろーい!』
『ここでかけっこできるね、ルビ!』
『ユウ、あっちに広いお庭があるよ!』
三匹はさっそく、探検を始めた。
コロとルビは、広いホールを嬉しそうに駆け回っている。
ぷるんは壁をぺたぺたと登って、高い窓から外を眺めていた。
中庭もあって、日当たりもいい。
これなら、ルビの体温調節にも良さそうだ。
「よし、まずは掃除だな。それから、買い出しに行かないと」
この子たちの寝床も、ちゃんと作ってやらないといけない。
それから、ご飯の材料も買わないと。
森で取った木の実も、もうすぐ無くなりそうだ。
「さて、どうしようか。俺が買い出しに行っている間、誰かがこの子たちを見ててくれると助かるんだが……」
俺がそう呟いていると、入り口のドアがノックされた。
「ユウ殿、いるか?」
ガレンさんとリーゼさんの声だ。
二人が、なぜかおずおずと中に入ってきた。
まだ、何か用事があったんだろうか。
「あ、ガレンさん、リーゼさん。ちょうどよかった。実は、ちょっとお願いがあるんですが」
「「(ビクッ!)」」
俺が声をかけると、二人は大げさに肩を震わせた。
そんなに驚かなくてもいいのに。
「あの、俺、これから町に買い出しに行こうと思うんです」
「この子たちのご飯とか、寝床の材料とかを買いに」
「それで、その間、この子たちのことを見ててもらえませんか?」
「つまり、子守りをお願いしたいんです」
「「……え?」」
二人は、信じられないという顔で俺を見た。
ガレンさんは、冷や汗をだらだらと流している。
「こ、この子たちの……子守りを……? お、俺たち二人だけで、か……?」
「はあ。やっぱり、無理ですか?」
「この子たち、ちゃんとお留守番できますよ。ほら、みんな、いい子にしてられるよな?」
俺が呼びかけると、三匹が駆け寄ってきた。
『『『はーい! いい子にしてるー!』』』
三匹が元気よく返事をする。
「ほらね。大丈夫ですって。お利口さんたちですから」
「あ、おやつの時間は三時です。この特製ペーストを、スプーンで一杯ずつあげてください」
「あと、コロは中庭でトイレをさせる必要が……」
俺が飼育マニュアルを説明しようとすると、ガレンさんが慌てて俺の言葉を遮った。
「ま、待て、待て! ユウ殿! 無理だ! 絶対に無理だ!」
「そ、そうです! 私たち二人では、この子たちの『遊び相手』にもなりません!」
「万が一、機嫌を損ねでもしたら……町が……」
リーゼさんも顔面蒼白で、首を激しく横に振っている。
うーん、困ったな。
そんなに嫌だろうか。
この子たちは、こんなに可愛いのに。
「……じゃあ、仕方ないですね。一緒に行きますか? 買い出し」
俺がそう提案すると、二人はさっきと打って変わって、激しく頷いた。
「行く! その方がいい! 町の安全のためにも、我々が同行する!」
ガレンさんが、なぜか力強く宣言した。
よく分からないが、荷物持ちを手伝ってくれるなら助かる。
「分かりました。じゃあ、みんな、お留守番頼むぞ」
「絶対に家を壊したり、火を噴いたりするなよ? 約束だぞ」
『はーい! ユウ、いってらっしゃーい!』
三匹のかわいい声に見送られ、俺はガレンさん、リーゼさんと一緒に、アリストンの市場へと向かった。
市場は活気があって、色々な店が並んでいた。
見たこともない野菜や果物が、山のように積まれている。
ここは、動物園の飼料倉庫より品揃えが豊富だ。
「すごいな……。活気がありますね」
「あの、すみません。この『ガラクの実』っていうのは、栄養ありますか?」
俺は果物屋の店主に尋ねた。
ごつごつした、石みたいな実だった。
「あ、お客さん。そいつは止しときな」
「ガラクの実は、石みたいに硬くて、とても食えたもんじゃないよ」
「オークとかが好んで食うらしいがね。人間には無理だ」
「へえ、オークが。でも、栄養はありそうですね」
俺は実を一つ手に取り、重さや匂いを確かめる。
「よし、これをください。たくさんお願いします」
「え? お客さん、本気かい?」
俺はガラクの実を、大きな袋に詰めてもらった。
コロなら、あのフォレストベアの爪を砕いた頭だ。
きっと、この実も噛み砕けるだろう。
「次は……あ、あれは『シビレ花』ですか?」
「以前、植物に聞いたら、蜜が甘いって言ってましたね」
「すみません、あれもください」
「は!? お、お客さん! シビレ花は猛毒だよ!」
「触っただけで、大人の男でも手が痺れるんだ!」
「え、そうなんですか? でも、甘いなら、ルビが喜ぶかもしれません」
「大丈夫です、毒抜きくらいは知ってますから」
俺は前世の知識を適当に思い出しながら答えた。
動物によっては、毒が効かないやつもいるしな。
ガレンさんとリーゼさんは、俺の後ろで何か小声で話している。
「おい、リーゼ……。あいつ、オーク用のエサと、猛毒の花を買ってるぞ……」
「ええ……。あれで、あの特製ペーストを作るというの……? 恐ろしい……」
次に、俺は寝具屋に向かった。
三匹には、快適な寝床を用意してあげたい。
「すみません。丈夫な布が欲しいんですが」
「できれば、燃えにくいやつがいいです」
「うちの子、ちょっと寝相が悪くて、熱を出すことがあるんで」
「熱を出す? ははあ。それなら、この『火トカゲの革』か、『石綿の布』だね」
「どっちも鍛冶屋が使うやつで、火には滅法強いよ」
「おお、素晴らしい! じゃあ、この石綿の布を三枚ください!」
俺が買い物を終える頃には、ガレンさんとリーゼさんの両手は、荷物でいっぱいになっていた。
彼らの顔は、市場に来た時よりも、青白くなっている気がする。
「ありがとうございます、二人とも。本当に助かりました」
「い、いや……。これも、ギルドマスターの命令だからな……」
ガレンさんが、乾いた声で答えた。
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