動物園の飼育員さん、神様の手違いで死んだので、代わりに最強の魔物たちを育てることになりました~会話できるので、子育ては楽勝です〜

旅する書斎(☆ほしい)

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アリストンの町は、突然の出来事にパニックに陥っていた。
空の王者、Bランクモンスターのグリフォンが、二頭も、町の真上を旋回し始めたからだ。

「うわあああ! グリフォンだ! なぜ、こんな町の中心に!」
「魔物襲来だ! ギルドに知らせろ! 冒険者を呼べ!」
「いや、あれはBランクだぞ! 誰が戦えるんだ!」

門番の兵士が、慌てて警鐘を鳴らし始める。
町中が、阿鼻叫喚の大騒ぎになった。
買い物客は店に逃げ込み、住民は家に鍵をかける。
ギルドからは、武器を持った冒険者たちが飛び出してきた。
その中には、ガレンさんとリーゼさんの姿もあった。

「くそっ! グリフォンの番(つがい)だと!? どういうことだ!」
「こんなの、Aランクパーティーでも、どうやって戦えばいいのよ……」

誰もが絶望的な顔で、空を旋回する二頭の影を見上げていた。
その時、ギルドの扉が、勢いよく開いた。
ドリンさんが、真っ青な顔で飛び出してきた。

「馬鹿者ども! 慌てるな! 陣形を組め!」

ドリンさんは空のグリフォンを睨みつけ、そして、すぐに気づいた。
グリフォンの背中に、何か、見慣れた人影があることに。

「……ん? あれは……。まさか、な……」

二頭のグリフォンは、威嚇する様子もなく、ゆっくりと高度を下げてきた。
そして、ギルドの目の前の広場に、ふわりと優雅に着地した。
砂埃が舞う中、冒険者たちは息をのむ。
やがて、オスグリフォンの背中から、一人の青年がひょいと飛び降りた。
その頭にはスライムが乗っている。
腕には子犬を抱えている。
足元には小さなトカゲが走り回っていた。

「ただいま戻りましたー!」

俺は、ドリンさんに向かって、元気よく手を振った。
広場は、水を打ったように静まり返った。
冒険者も、町の人々も、ドリンさんも、ガレンさんもリーゼさんも、全員が固まっている。

「……あ、あの……ドリンさん? どうかしましたか?」

俺が声をかけると、ドリンさんは、わなわなと肩を震わせ始めた。
その手は、必死に胃薬の小瓶を握りしめている。

「ユウ……殿……」
「お主……今度は……一体、何を、したんだ……?」

「え? 何って、Bランクの依頼を達成してきましたよ」
「これが、頼まれていたグリフォンの卵の殻です。ガンツさん、喜んでくれますかね?」

俺は、背負っていた大きな袋を、ドサリと地面に置いた。
袋からは、最高品質のSランク素材である、卵の殻が山のように溢れ出ている。

「それから、この子たちは、俺の新しい友達です」

俺がそう紹介すると、オスグリフォンが、堂々と胸を張った。

『グギャ!(そうだ! ユウ殿は、我ら夫婦の命の恩人だ!)』
『妻の深刻な栄養失調を、見事に治してくれた! 彼は最高の医者だ!)』

グリフォンの威厳ある声が、広場に響き渡る。
もちろん、他の人には「グギャ!」という鳴き声にしか聞こえていない。
だが、その堂々とした態度と、俺との親密そうな雰囲気は、誰の目にも明らかだった。

「「「……」」」

ドリンさんは、ついに白目をむいて、後ろに倒れそうになった。
ガレンさんとリーゼさんが、慌ててその体を支える。

「ギルドマスター! しっかりしてください! 意識を保って!」
「ま、また、ユウ殿が、我々の想像を、とんでもない方向で超えていった……」

「栄養失調……? 治した……?」
「あのFランク、グリフォンを『健康診断』しに行ったって、本当に言ってたぞ……」
「しかも、手なずけて帰ってきたぞ……」
「いや、あれはテイムじゃない……『友達』だ、って言ってる……」

冒険者たちが、ざわざわと囁き合っている。
俺は、そんな周囲の混乱には気づかず、グリフォン夫婦に向き直った。

「今日は、ここまで送ってくれて、本当にありがとうございました」
「奥さん、特製ペースト、ちゃんと毎日食べるんですよ」

『グギャ!(ああ、分かっている! ユウ殿、本当にありがとう!)』
『また、いつでも定期検診に来てくれ! 歓迎するぞ!』

「はい! また近いうちに、様子を見に来ますね!」

グリフォン夫婦は、満足そうに頷くと、再び翼を広げた。
そして、アリストンの人々が呆然と見守る中、優雅に大空へと帰っていった。
町の上空を二、三回旋回し、挨拶のように一声鳴いてから、西の山へと消えていった。

俺は、卵の殻の袋を担ぎ直した。
「さて、と。ガンツさんのところに、これ、届けに行かないと」

俺がギルドに入ろうとすると、受付のお姉さんが、泣きそうな顔で引き止めた。

「ゆ、ユウさん! あ、依頼達成、おめでとうございます! 報酬は、えーっと……」
「Sランク素材の、大量納品……Bランク依頼の特殊達成……」
「あ、ああ、もう! ギルドマスターの許可も取ります! これ、金貨二十枚です! お願いですから、今日はもう、休んでください!」

お姉さんに、すごい勢いでお金の袋を渡された。
「え? 金貨二十枚も! こんなにもらえるんですか? やったー!」

俺が素直に喜んでいると、ギルドの柱の陰から、ガンツさんがひょっこり顔を出した。
彼は、さっきからずっと、様子をうかがっていたらしい。

「ユウ殿! よくやった! やはりお主は持っている!」
「その殻だ! わしが求めていた、純粋な魔力触媒!」

ガンツさんは、子供のように目を輝かせて、卵の殻を一枚一枚、愛おしそうに撫でている。
「よし、これとルビ殿の炎があれば、わしの最高傑作が、また生まれるぞ!」

「それはよかったです。ルビ、また火力調整、よろしくな」
『うん! まかせて! わたし、もっと強くなる!』

こうして、俺はまたしても、ギルドと町に大きな衝撃を与えてしまったらしい。
アリストンでは、「Fランク飼育員ユウ、空の王者グリフォンと友達になり、専属の栄養士になる」という、新しい伝説が爆誕した。

俺は、そんなこととは露知らず、もらった金貨の重みを確かめていた。
「さて、みんな。このお金で、何を買おうか」
「クマ子のために、専用の巨大なブラッシングブラシを、ガンツさんに特注するのもいいかもしれないな」

『わーい! ごはん! ごはん!』
『おやつ! ユウ、わたし、お肉がいい!』
『(ぷるぷる! ぷるるる!)』

俺たちの別館での生活は、ますます賑やかになっていきそうだ。
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