動物園の飼育員さん、神様の手違いで死んだので、代わりに最強の魔物たちを育てることになりました~会話できるので、子育ては楽勝です〜

旅する書斎(☆ほしい)

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馬車に揺られて二日が過ぎた。
旅は、驚くほど順調だった。
最高級の馬車は、揺れがほとんどない。
シートもふかふかで、まるで高級ホテルのソファに座っているみたいだ。
ルビとコロは、窓にへばりついて、外の景色を楽しそうに眺めている。

『ユウ、みて! あそこに牛さんがいる!』
『あっちには、おっきな鳥さんがとんでるよ!』

二匹が何か見つけるたびに、俺に報告してくる。
そのたびに、俺は「そうだな」「大きいな」と相槌を打つ。
平和な家族旅行そのものだ。
後ろの台車にいるクマ子とツバサも、快適に過ごしているようだ。
時々、クマ子が『ごしゅじんさま、おやつはまだですか?』と念話を送ってくる。
俺は窓から身を乗り出して、干し肉や果物を投げてやる。
クマ子は見事なキャッチを見せ、ツバサも器用に空中で咥える。
それを見た護衛の騎士たちが、「ヒィッ!」と小さな悲鳴を上げるのが、少し気になったが。

お昼時になり、俺たちは街道沿いの広場で休憩をとることにした。
ここから先は、少し道が細くなるらしい。
深い森の中を抜けるルートだ。

「ユウ殿。この先の森は、『盗賊』が出ると噂の場所です」
「我々騎士団がついていますから、問題はないと思いますが」
「念のため、警戒を厳重にします」

ベルドさんが、真剣な顔で報告に来た。
盗賊か。
物騒な世の中だ。
でも、まあ大丈夫だろう。
俺には、頼りになる騎士さんたちがついているし、何よりみんながいる。

「分かりました。気をつけて進みましょう」

休憩を終え、馬車が森の中に入ると、辺りは急に薄暗くなった。
鬱蒼とした木々が、太陽の光を遮っている。
鳥の鳴き声もなく、不気味な静けさが漂っていた。
ルビやコロも、窓から離れて俺のそばに寄ってきた。

『なんか、やな感じがする』
『変な匂いがいっぱいするよ、ユウ』

コロが鼻をひくひくさせている。
野生の勘というやつだろうか。
俺は、みんなを安心させるように頭を撫でた。

その時だった。
ヒュンッ!
鋭い風切り音とともに、馬車の前方に何かが飛んできた。
それは、一本の矢だった。
矢は、先頭を走っていた騎士の足元に、深々と突き刺さった。

「敵襲ーーッ!!」
「全員、戦闘態勢をとれ!!」

ベルドさんの叫び声が響き渡る。
馬車が急停車した。
森の茂みから、薄汚れた格好をした男たちが、わらわらと飛び出してきた。
手には剣や斧、弓を持っている。
その数、三十人以上。
顔つきは凶悪で、明らかにただの旅人ではない。

「へっへっへ! 待ちくたびれたぜ!」
「豪華な馬車に、たっぷりの荷物! いいカモだ!」
「騎士が護衛とは生意気だが、こっちには切り札があるんだよ!」

盗賊のリーダーらしき男が、下卑た笑みを浮かべて叫んだ。
彼が指笛を吹くと、森の奥からズシン、ズシンと大きな足音が近づいてきた。
現れたのは、身長三メートルはありそうな、巨大な一つ目の巨人だった。
サイクロプスだ。
手には、大木を引っこ抜いて作ったような棍棒を持っている。

「げっ! サイクロプスだと!?」
「そんな馬鹿な! こんな街道沿いに!」
騎士たちが動揺している。
これは、まずい状況かもしれない。
俺は、馬車の扉をそっと開けた。

「ユウ殿! 出てはいけません! 中にいてください!」
ベルドさんが叫ぶ。

「いえ、じっとしているわけにはいきません」
「話し合いで解決できるかもしれませんから」

俺は、飼育員としての信念を持っていた。
どんな相手でも、まずは対話を試みるべきだ。
俺は馬車から降りて、盗賊たちの前に進み出た。
ルビとコロ、ぷるんも、俺の後ろについてくる。

「あの、すみません。俺たちは急いでいるんです」
「道を空けてもらえませんか?」
「通行料なら、少し払いますから」

俺が穏やかに提案すると、盗賊たちは顔を見合わせて大笑いした。

「ギャハハ! なんだこの優男は!」
「通行料だと? 寝ぼけたこと言ってんじゃねえ!」
「俺たちはな、荷物も、馬車も、お前らの命も、全部いただくんだよ!」
「やっちまえ! サイクロプス!」

リーダーが命令すると、巨人が俺に向かって棍棒を振り上げた。
話し合いは、決裂したようだ。
残念だ。
巨人の棍棒が、唸りを上げて振り下ろされる。
騎士たちが悲鳴を上げた。

だが、その棍棒が俺に届くことはなかった。
俺の頭の上から、ぷるんがぴょんと飛び出したからだ。
ぷるんは空中で体を大きく広げ、盾のような形に変形した。
ドゴォッ!
棍棒がぷるんに直撃する。
しかし、ぷるんの体はゴムのように衝撃を吸収し、びくともしなかった。
逆に、弾力で棍棒を弾き返した。
巨人は「ウオッ!?」とバランスを崩し、よろめいた。

『ユウに、手を出すな!』
今度は、コロが動いた。
白い疾風となって、巨人の懐に飛び込む。
そして、巨人の足を支えるアキレス腱あたりに、軽く頭突きを入れた。
コツン、という軽い音がしただけに見えた。
だが、巨人の巨体が、まるで積み木が崩れるように宙に浮いた。
ズドォォォン!
巨人は背中から地面に倒れ込み、白目をむいて気絶してしまった。

「な、なにぃぃぃ!?」
「サイクロプスが一撃で!?」
盗賊たちが驚愕している隙に、今度はルビが前に出た。
彼女は、面白そうに目を輝かせている。

『わーい! わたしもやる! わたしも!』
『ねえねえ、おじさんたち! あったかいの、好き?』

ルビは、盗賊のリーダーに向かって、にっこりと笑った。
そして、口から「ふー」と息を吐いた。
それは、お風呂を沸かす時に練習した、絶妙な「とろ火」だった。
しかし、ドラゴンのとろ火は、人間にとっては火炎放射器だ。
ボワッ!
リーダーの髪の毛と服が、一瞬で燃え上がった。

「あちちちち! 助けてくれぇぇ!」
リーダーは地面を転げ回って火を消そうとする。
他の盗賊たちも、パニックになって逃げ出そうとした。
だが、逃がさない影があった。
後ろの台車から降りてきた、クマ子だ。
彼女は、ピカピカに磨き上げられた黒い毛並みを揺らしながら、仁王立ちした。

『あら? わたしの美しさを見ずに帰る気?』
『そんな失礼な人たちには、お仕置きが必要ね』

クマ子は、その太い腕を軽く振るった。
ブンッ!
風圧だけで、数人の盗賊が吹き飛んで木に激突した。
ツバサも空に舞い上がり、上空から急降下して、逃げる盗賊たちの進路を塞いだ。

あっという間の出来事だった。
数分もしないうちに、三十人の盗賊と一匹の巨人は、全員が地面に伸びていた。
騎士たちは、剣を抜く暇さえなかった。

「あーあ。みんな、やりすぎだぞ」
「手加減しろって、いつも言ってるのに」

俺は、ため息をつきながらみんなを叱った。
気絶している盗賊たちを、とりあえず縄で縛ることにする。
ベルドさんたちが、震える手で手伝ってくれた。

「……ユウ殿。これは……」
「あ、すみません。うちの子たち、ちょっと遊びたかったみたいで」
「怪我はさせてませんから、大丈夫ですよ。気絶してるだけです」

俺が説明すると、ベルドさんは乾いた笑い声を上げた。
「は、はは……。遊び……。これが、遊び……」
「魔王軍と戦争になっても、勝てるんじゃないか……?」

俺たちは、捕まえた盗賊たちを木に縛り付け、後で衛兵に引き渡す手配をした。
サイクロプスは、起き上がったら森へ帰るように、ルビが「説得(ちょっと火を見せた)」していた。
こうして、俺たちの旅の障害は、あっさりと取り除かれた。
再び馬車に乗り込むと、みんなは満足そうにおやつを食べていた。
俺は、頼もしい家族を持ちすぎて、少しだけ将来が心配になった。
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