動物園の飼育員さん、神様の手違いで死んだので、代わりに最強の魔物たちを育てることになりました~会話できるので、子育ては楽勝です〜

旅する書斎(☆ほしい)

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盗賊騒ぎからさらに一日。
ついに、俺たちの目の前に、王都グランセルの姿が見えてきた。
アリストンとは比べ物にならない、巨大な城壁がそびえ立っている。
その奥には、天を突くような白い塔を持つ、美しい王城が見えた。

「おおー! あれが王都か! すごい迫力だ!」
俺は思わず声を上げた。
ルビたちも、初めて見る大都会の景色に釘付けだ。

『でっかい! アリストンよりずっとおっきい!』
『壁が高いねー。登れるかな?』
『ごしゅじんさま、あの城には、きっと素敵な殿方が住んでいるに違いありません!』

みんな、それぞれの感想を口にしている。
馬車は、王都の正門へと近づいていく。
門の前には、長い行列ができていた。
商人や旅人たちが、入国審査を受けているようだ。
重厚な鎧を着た衛兵たちが、厳しい目で荷物をチェックしている。

「ユウ殿。我々は王家の招待客ですから、あちらの専用ゲートを通ります」
ベルドさんが、行列の横にある、装飾された特別な門を指差した。
さすがVIP待遇。
待ち時間なしで入れるのは助かる。

俺たちの馬車が専用ゲートに近づくと、門番の兵士たちが敬礼をして出迎えてくれた。
しかし、後ろの台車に乗っているクマ子と、空を飛んでついてきているツバサを見た瞬間、彼らの動きが凍りついた。

「な、なんだあれは!?」
「巨大な黒い熊と……ワイバーン!?」
「敵襲か!? いや、騎士団が護衛しているぞ!」

門番たちがざわめき始める。
槍を構えようとする者もいる。
また、このパターンか。
俺は、慣れた手つきで馬車の窓を開けた。

「こんにちは! 怪しいものじゃありません!」
「王様の招待で来ました、ユウです!」
「この子たちは、俺の家族です! おとなしいですよ!」

俺が笑顔で手を振ると、門番たちは顔を見合わせた。
そこへ、ベルドさんが馬で駆け寄り、通行許可証を見せた。

「控えろ! こちらは国王陛下の賓客、ユウ殿とそのご一行だ!」
「速やかに門を開けよ!」

「は、はい! し、しかし……」
門番の隊長らしき男が、恐る恐るクマ子を指差した。
「あの熊……どう見てもBランク以上の魔獣に見えるのですが……」
「それに、あのワイバーンも……。王都の中に、魔物を入れるわけには……」

まあ、当然の反応だ。
こんな大きな動物を、そのまま町中に入れるのは危険だと思われるだろう。
俺は、馬車から降りて説明することにした。

「ご心配なく。この子たちは、ちゃんとトイレのしつけもできてますし、人には噛みつきません」
「ほら、クマ子。ご挨拶は?」

俺が声をかけると、クマ子は台車の上で優雅に立ち上がり、スカート(履いてないが)の裾をつまむような仕草で、綺麗にお辞儀をした。

『ごきげんよう、兵隊さんたち』
『わたくしはクマ子と申します。以後、お見知り置きを』

もちろん、兵士たちには「グオオーン(優雅な唸り声)」としか聞こえていない。
だが、その洗練された所作と、ピカピカに輝く毛並み、そして何より知性を感じさせる瞳に、兵士たちは圧倒された。

「お、お辞儀をした……?」
「なんて気品のある熊なんだ……。貴婦人のようだ……」
「それに、あの毛並み……。黒い宝石みたいだ……」

兵士たちの警戒心が、驚きと称賛に変わっていく。
さらに、俺の肩に乗っていたぷるんが、門番の足元に落ちていたゴミを、さっと吸収して綺麗にした。
コロは、兵士の足にすり寄って愛想を振りまく。
ルビは、俺の後ろで「いい子」のポーズで座っている。

「こ、これは……」
「本当に、よくしつけられている……」
「いや、しつけというレベルを超えているぞ……」

門番の隊長さんは、冷や汗を拭いながら、ついに道を譲った。
「わ、分かりました。騎士団長の保証もあることですし、通ってよし!」
「ようこそ、王都グランセルへ!」

ギギーッ!
重い門が、ゆっくりと開かれる。
その先には、石畳の広い大通りと、活気あふれる街並みが広がっていた。
色とりどりの屋根、見たこともないお店、たくさんの人々。
アリストンとは比較にならないほどの賑わいだ。

「わあ……! すごい!」
「みんな、見たか? これが王都だぞ!」

俺が振り返ると、みんなも目を輝かせていた。
こうして、俺と最強の家族たちは、ついに王都への足を踏み入れた。
これからどんな出会いが待っているのか。
王様はどんな動物の相談をしてくるのか。
俺の胸は、期待で高鳴っていた。
通り行く人々が、クマ子たちを見て「ヒィッ!」と叫んで道を開けてくれるおかげで、俺たちの馬車は王城へと一直線に進んでいった。

王城の正門前で、一人の少女が俺たちを待っていた。
豪華なドレスを着て、たくさんの侍女に囲まれている。
金色の髪に、宝石のような青い瞳。
彼女は、俺たちの馬車を見つけると、パァッと顔を輝かせた。
そして、王族とは思えないような行動に出た。
護衛を振り切って、俺たちの馬車に駆け寄ってきたのだ。

「お待ちしておりましたわ! 伝説のモフモフ使い様!」
「さあ、わたくしに! その素晴らしいモフモフたちを、触らせてくださいまし!」

「え?」
俺が呆気にとられていると、少女は俺の手をガシッと握りしめた。
どうやら、この王都でも、俺の平穏な日々は遠そうだ。
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