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仮想空間でセカンドライフ

第24話 ひろし、おばあさんの活躍を知らない

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 おばあさんは時計台の前に来ると、そのままマユたちのお店へ向かった。

 そして少し歩いてお店に着くと、ナミが1人で店に居たので駆け寄って昨日のお礼を言った。

「ナミさん! 昨日はありがとうございました」

 ナミは恥ずかしそうに頷いた。

 おばあさんはアイテム欄から超回復キノコと赤薬草を選ぶと「置く」を選択した。

 すると、お店のテーブルの上に沢山の超回復キノコと赤薬草が現れた。

「これでまた、たくさん全回復薬が作れるわね」

 おばあさんが笑顔になると、ナミが小さい声で言った。

「洋子ちゃん、ぁりがとう」

「いえいえ、ありがたいのは私のほうですよ。……あ、そうだナミさん。わたし近くの荒野へ行きたいんです。荒野は危ないですか?」

 ナミは少し上を見て考えてから答えた。

「お昼は大丈夫とぉもう」

「あら良かった。じゃあ、ちょっと行ってくるわね」

 おばあさんは本で見た荒野の場所を思い出して、東のほうへ歩きだした。

 ガラガラガラガラ

 すると突然お店のシャッターが閉まる音がすると、ナミがお店から走って来た。

 そして、おばあさんに追いつくと小さい声で言った。

「ぁたしも行く」

「まぁ! 一緒に来てくださるんですか?」

「ぅん」

「あらあら、とっても頼もしいわナミさん。ありがとうございます」

 ナミは下を向いて少し恥ずかしそうにした。


 ー 荒野 ー

 2人は荒野に到着すると、おばあさんは目を閉じて鼻に集中した。

 おあばあさんは、かすかにキノコの匂いを感じたので、匂いのするほうへ行ってみると大きな岩があった。

 そしてよく見ると、大きな岩にキノコが3つくっついていた。

「あ! これだわ、岩キノコ!」

 おばあさんは嬉しそうにキノコを集めると、また目を閉じて鼻に集中した。

「あら? 何かしらこの匂い」

 おばあさんは独特な匂いを感じた。

 おばあさんは気になって匂いのするほうへ行ってみると、3匹のアルマジロが焚火たきびでキノコを焼いていた。

「洋子ちゃん、とまって」

 ナミがおばあさんを制止した。

「ええと……。あれは、アルマジロかしら?」

「ぅん。でも敵じゃなぃ」

 アルマジロは3匹ともおばあさんたちに気付くと固まった。そして目に涙を浮かべると、焼いたキノコを置いて走って逃げ出した。

「ああ! お食事を邪魔してごめんなさい! 待って! キノコあげるから!」

 おばあさんは咄嗟とっさにそう言うと、アルマジロたちは立ち止まって振り返った。

 おばあさんは怖がらせないように静かに近づくと、さっき収穫した岩キノコを3つ置いた。

 アルマジロたちはソロリ、ソロリと戻って来ると、岩キノコを手で掴んだ。

 そしてペコリと頭をさげると、さっきの焚火のところへ戻って行った。

「あぁ、良かったわ」

 ナミも大きく頷いた。

 その後、おばあさんは匂いを頼りに岩キノコをたくさん集め、あっという間に56個も集めてしまった。

「あら、ちょっと集めすぎたかしら」

「洋子ちゃん、すごぃ」

「うふふ、ありがとうナミさん」

 おばあさんはそう答えながら笑顔で再びアルマジロの近くへ行くと、さらに岩キノコを6個置いた。

 アルマジロたちはそれを見ると喜んで飛び跳ねて、ペコリと頭を下げた。

「さっきは、ごめんなさいね」

 おばあさんはそう言って手を振ると、ナミと一緒に荒野を後にした。

 ◆

 2人は村に戻ってくると、お店に向かった。

 少し歩いてお店に着くとマユが全回復薬を店の外に並べているのが見えた。

「こんにちはマユさん」

 マユはおばあさんの声に振り向くと満面の笑顔で答えた。

「超回復キノコと赤薬草、洋子ちゃんでしょ! ありがとう、すごいね!」

「いえいえ。こちらのキノコもどうですか?」

 あばあさんは店の前に収穫した岩キノコを全部置いた。

「あ、岩キノコ! 防御強化薬はこの村で人気なんだ」

「あらあら、それは良かったです。うふふ」

 するとマユは視線を下に移しておばあさんに尋ねた。

「ねぇ洋子ちゃん、そのキノコ持ってるアルマジロって……」

「え?」

 おばあさんは振り向くと、荒野にいた3匹アルマジロたちが並んでキノコを持って立っていた。そして、ナミがしゃがんで1匹を撫でていた。

「あらあら、付いてきちゃったのかしら」

 ナミはウンと頷いた。

 アルマジロたちは持ってきたキノコを店の横に置くと、路地に落ちている木の枝や燃えそうな物を集め始めた。

 そして店の横に集めてまとめると、1匹が口から小さく火を吹いて焚火たきびを始めた。

 アルマジロたちは嬉しそうに岩キノコを手に持つと、焚火でキノコを焼き始めた。

 それを見たマユは笑顔になって呟いた。

「かわいい~! そういえば岩キノコって焼くと美味しいのかなぁ。ははは」

 マユはそう言いながら岩キノコを持って店の奥へ調合しに行った。

 おばあさんはそれを聞いて店の岩キノコを1つ手に取ると、アルマジロの焚火で一緒に焼いてみた。

 そして、ある程度焼けたところでアルマジロと一緒に食べてみると、おばあさんは驚いた。

「大変! これ、とっても美味しいわ! ナミさん食べてみて!」

 ナミはおばあさんから焼いた岩キノコを受け取ると、一口食べてみた。

「ぉいし」

 2人は笑顔になると、おばあさんはナミに言った。

「ナミさん、これも売れるんじゃないかしら?」

「ぅん」

 ナミは笑顔でうなずいた。


 アルマジロたちはお腹いっぱいになると、全回復薬を置いている台に登って日向ひなたぼっこをし始めた。

 おばあさんたちは日向ぼっこをしているアルマジロたちを撫でると、アルマジロたちは気持ち良さそうに寝てしまった。

 防御強化薬を調合し終えたマユはアルマジロが寝ている台に並べ始めると、相場より安い値段と可愛いアルマジロのおかげで人が集まってきた。

「あ、防御強化薬やすい!」
「見て、アルマジロ! かわいい」
「ほんとだ、寝てる!」

 こうしてアルマジロたちのお陰もあって、防御強化薬がどんどん売れていった。


 その頃おじいさんは、バンド練習を終えてアカネとめぐに習字を教えていた。

「そうです、最初は筆の先を置いて少し止めます。そうしたら筆の腹まで付けて……そうです!」

 めぐとアカネは習字の基本の字「永」を練習していた。

「お二人とも、とても上手ですよ」

 するとアカネが嬉しそうに言った。

「じいちゃん、褒め上手だから習字が楽しくなっちゃうよな、めぐ」

「うん、でも実際に上手くなってるよ」

 おじいさんは、2人が習字をする姿を見て笑顔で見守った。

 ブン……ブブン

 その時突然、おじいさんの視界にブロックノイスが現れ、しばらくすると消えた。

「おや?」

「あれれレレレ、レ、レ、なんだコレ」

 アカネの声が一瞬おかしな事になると、みんなは顔を見合わせた。
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