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2 エルフの村

14 賞賛を受けるべき人物

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「サザン……!!」

 目の前にいるのは紛れも無いサザンだ。

 私は勝手なことをしたのに……それでも助けに来てくれた。

 こんなにも優しいサザンを、私のせいで危険な目に合わせてしまうのは嫌だ。
 ここでクイーンワームに殺されてサザンに会えなくなるのも嫌だ。
 村が壊滅して、大事な人がいなくなるのも嫌だ。

 今この一瞬……私は世界で一番欲深い存在になっているんだと思う。
 それでも、サザンなら全てを叶えてくれる。そう感じたんだ。

「助けてくれ……サザン……! 私も! 村も! そして……絶対に死ぬな!」

「まったく、要求が多いな。まあパーティメンバーのお願いとあれば、聞き入れないわけにはいかないよな」

 サザンはクイーンワームに向き直ると、その突進を素手で止めた。
 そしてポーチから短刀を取り出し、なにかしらのエンチャントをかけてクイーンワームに突き刺した。
 突き刺された場所からクイーンワームの体は腐り落ちていき、数秒後には最初から何事も無かったかのような静寂が辺りを満たした。

「終わったな……。あ、村の方も大丈夫。ここに来る前に片付けておいたから」

「そう、か……」

 私が願わなくとも、サザンは既に事を終えていたのだ。もしかしたら、昼の時点で私にまだ未練が残っていることを見抜いていたのかもしれない。

「ありがとう……本当に!」

「気にするな。パーティメンバーなら助けあって当然だろ?」

 こうして、またも私はサザンに救われた。そして、今後もたくさん救われるのだろう。それに対して、私が返してやれることはなんだろうか……?
 助けられっぱなしって言うのはパーティーメンバーとしてよろしくないな。何か考えねば……。




「英雄のお帰りだ!」

「サザン様!」

 村へ入ると、それはもうお祭り騒ぎであった。俺はエルフの村を救った英雄として祭り上げられてしまったわけだ。
 だが、俺は言っておかなければいけないことがある。ランの帰る場所を取り戻すためにもね。

「皆に言っておきたいことがある。俺は確かにこの村を救った。だがそれは善意でもなんでも無く、ランのためだ。ランがこの村を救おうとしたから、俺もそれを手助けした。つまり、真に賞賛されるべき人物は俺じゃない……だろ?」

 俺はランの方を見る。彼女も自身の中で何かが吹っ切れたのか、昼間のような暗い表情では無くいつものランに戻っていた。

「ランがいなければ、俺はクイーンワームを討伐する気は無かったんだ。この村を救ったのは君だよ、ラン」

「……そうだよ、追放が何だ! ランはこの村の英雄だ!」

「……ああ。ランは俺たちの英雄……そこになんの問題もねえよな!」

 村人は次々にランを讃えだす。何も知らない者が見ればどの口が言ってんだか……ってなもんだが、生憎と俺は答えがわかっているのでね。

「黙れえぇぇぇ!! 黙れ黙れ黙れぇぇぇぇ!!」

「そ、村長……?」

 案の定村長は騒ぎ出したか。まあ予定通りだ。

「決して許さぬぞ……何が英雄か! 所詮は追放されたエルフ族の面汚しだ!」

「で、でも……村を救ってくれた相手にそんなこと言うのはあまりにも……」

「この程度、我らだけでどうにかできた。余所者の力なんぞ借りなくともな」

「それは言い過ぎですよ村長! 恩を仇で返すのですか!?」

「我に、逆らうと言うのか……?」

 村長が昼間と同じく威圧感を露わにした。途端に、今まで行われていた英雄コールが止む。
 やはりそうか。

「村人の様子があまりにもおかしいと思ったら、やっぱり使ってたんですね。洗脳スキル」

「なんだと?」

「昼間に村を追い出される際、彼らは攻撃を行おうとする顔ではありませんでした。なので、あの後内密に村人から情報を貰っていたんですよ」

「……」

 村長は村人の方を見回す。どうやらその密告者を探しているようだ。早めにケリを付けないと協力者が危ないな。

「あなたが洗脳スキルを使っているか確かめるために、特定のスキルを発動したことを知らせるエンチャントをかけてたんですよね」

「ハッタリだ。そんなもの聞いたことも無い」

「ええ。ですが私はエンチャンターであり、レベルは100を超えています。作れるんですよ。新しい付与魔法」

 村長は少し動揺した様子で後ずさりをした。

「ふ、ふざけるんじゃない! レベル100超えなどありえるはずが無いだろう!?」

「ではクイーンワームを瞬殺した私の実力を見て、どう思います? それもハッタリですか?」

 村長はますます後退りをし、気付けば門から外に出ていた。

「仮にそうだとして、何が悪い! 村も村人も、我のために存在しておるのだ! 我の思うように動かない者など必要ない! 我の育てた村の名を汚すなどもっての外だ!!」

「この外道が……!」

 俺は死なない程度の神経毒を短刀に付与して、村長に向かって投げようとした。 
 しかし俺が短刀を投げるより早く、大きな幼虫の魔物が村長を食らった。
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