Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第十一章

第三話 奇妙な生き物の呼び名を皆んなで考える

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「と言う訳で、この奇妙な生き物が仲間になりたそうに付いて来たので、エグザイルドのメンバーに加えることにした」

「まぁ、それは別に構わないですけれど」

 マリーが視線を下げ、俺の足に身体を擦り付けている奇妙な生き物を見る。

「ワタクシは例外でしたけれど、エリをきっかけに追放とは関係なくなっていません? それではエグザイルドというチーム名が、意味を成さないのではなくて?」

「チーム名なんてそんなものだろう? 最初は自分たちを象徴する名前にするけれど、人が集まってくれば最初の結成秘話は薄れてしまう」

「マリーさん。細かいところを考えては墓穴を掘りますよ。マリーさんは追放された側ではなくって、追放した側じゃないですか」

「そこを指摘されると、ワタクシは何も言えませんわね。わかりました。これ以上は変な口出しはいたしませんわ」

 クロエが論破すると、マリーは口を閉ざした。

「今はチーム名よりも、この子の名前を決めるほうが先ではないか? いつまでも奇妙な生き物では可愛げがなくなるからね」

 ミラーカが奇妙な生き物に近づこうとすると、三つの動物の特徴を持つ生き物は、猫のように威嚇した。

 本当に何なのだろうな? 犬のように吠えるし、猫のように威嚇するなんて。

「それでは各自、新しい仲間の名前を考えようか」

「はいはーい! ベラは!」

 それぞれ名前を考えるように言うようと、クロエが手を上げた。そしてメスによくつけられる名前を候補にあげる。

「メスだからベラって言うのは安直すぎないか?」

「いくら何でも、よくある名前は止めといたほうがいいと思いますわ。街中で名前を呼ばれたら、この子が勘違いするかもしれませんもの」

 俺に続いてエリーザが止めておいたほうがいい理由を言う。

「では、ローズはどうです? メスらしい名前ではないですか?」

「マリー、それってもしかして赤いバラから取ったか?」

「えへ、バレてしまいましたか。さすがシロウですわ」

 いや、誰でも気づくだろう。

「私は、リリムがいいと思う」

 続いてミラーカが名前を言う。

「ミラーカらしいと言えばらしいけれど、リリムは女デーモンの名前じゃないか」

「えーとですね。ではわたしはエリザベスで」

 最後にエリーザが提案する。

「略して呼んだときにエリーザが勘違いしそうだな」

「もう、シロウさん! 文句ばかり言うなら、シロウさんの考えた名前を教えてくださいよ」

「いや、俺はみんなが考えた名前から決めるつもりだったのだけど。こういうのは、女の子のほうがセンスあるじゃないか」

 正直に答えると、女性陣からの視線が集まる。だったら文句を言うなと目が訴えていた。

 はぁー、正直名前を考えるのが面倒臭いんだよな。でも、何か言わないといけない空気になっているし、もう適当にするか。

「それじゃあ、俺はキャッツにしよう。頭が猫だからそれで」

 どうせ俺の決めた名前なんて採用されないだろう。だから適当でいいんだ。適当で。

「まぁ、一応これで名前が出揃いましたが、どうやって決めますの?」

「一番は本人に決めさせるのがいいだろうね。離れた位置から名前を呼んで、来た人の名前を採用するのはどうだい?」

 マリーが名前を決める方法を尋ねると、ミラーカがやり方を提案してきた。

「それならみんなも納得しそうだな。よし、早速始めるとするか」

 奇妙な生き物から距離を取ろうとして離れていく。すると置いてけぼりにされたと思ったのか、俺たちの後ろを付いて来た。

「ストップ、ストップ! お前まで来たらダメじゃないか。別に置いて行かないから、ここで待ってくれ」

 えーと、生き物を待機させるときってどんな言葉をかければよかったんだっけ? あ、思い出した。

「おすわり」

『ワン!』

 座るように命じると、奇妙な生き物はその場に座り込んでくれた。

「待て! 待てだからな、待つんだぞ『よし』と言うまでそこにいてくれ」

 右手を前に出してその場に待つように言う。すると指示に従って動こうとはしなかった。

 ある程度の距離を開け、俺たちは一列に並ぶ。

「よし、それじゃあ始め……」

 最後まで言葉を言い切る前に、奇妙な生き物がこちらに歩いてくる。

 そう言えば、言葉の最初に『よし』と言ってしまったな。

「ローズ、ワタクシのところに来てくださいな」

「ベラ、おいで」

「リリム、君は悪魔的な存在だ。この名前がふさわしい」

「エリザベス、わたしのところに来てください」

「キャッツ、この名前が気に入った場合だけ来てくれよ。自分の素直な気持ちに従ってくれ」

 どうせ俺のところには来ないだろうからな。軽く名前を呼ぶ程度に留めて、誰のところに行くのか見守らせてもらおう。

 他の皆んなの様子を見ていると、クロエはポケットから何かを取り出し、地面に置く。

 あれは木の実か? いやいや、そんなものは食べないだろう? そんなので釣られないって。いや、待てよ。あの生き物の耳はキツネだ。もしかしたら食べるのか?

 クロエは地面に置いた木の実を一つ摘み、奇妙な生き物に見せる。

「ほら、美味しそうな木の実だよ。こっちに来たらたくさんあげるからね」

「ちょっとクロエ! それはいくら何でもズルすぎません!」

「別にルールでは、アイテムを禁止していないじゃないですか」

「ほう、一言余計なことを言うが、クロエが機転を利かせるとは思わなかったよ。まさかルールの穴を突いてくるとはね」

「本当に一言余計ですね。それではまるで、私がバカのようではないですか」

 木の実に引き付けられるように、奇妙な生き物はクロエの方に向かっていく。

 これは決まったか? もし、そのままクロエのところに行ったら、安直ではあるけれど『ベラ』で決まりだな。

 奇妙な生き物は、目の前にある木の実の匂いを嗅ぐ。すると身体を反転させて後ろ足で蹴り上げた。

「痛い!」

 蹴り上げた木の実が偶然にもクロエの額に当たり、彼女は額を抑える。

 どうやら木の実は気に入らなかったようだな。

「リリム、そんな木の実よりも私のところに来てくれたのなら、美味しいご飯をブレンドしてあげよう」

 ミラーカが奇妙な生き物に声をかける。その瞬間、猫のように威嚇してきた。

「やれやれ、本当に嫌われてしまったようだね。最初から私の敗北は決まっていたか。リリムは本当にいい名前なのに」

 これでクロエとミラーカの考えた名前は除外されたな。あとはマリーとエリーザの従姉妹対決か。

 そう思っていたが、奇妙な生き物は俺のところに来ると身体を擦り付けてくる。

「おいおい、俺のところに来るってことは、お前の名前はキャッツになるんだぞ。わかっているのか」

『ワン』

「本当にいいのか! キャッツなんて適当な名前で」

『ワン』

「最後の一回だぞ。本当に――」

『ワン』

 最後まで言う前に、奇妙な生き物は吠えて返事をする。

 どうやら本当にキャッツでいいようだ。

 予想していなかった展開に驚くも、この子が決めた以上は文句を言っても仕方がない。

 こうして猫の顔にキツネの耳に犬の尻尾を持つ奇妙な生き物の名前は、キャッツに決まったのであった。
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