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第十三章
第三話 キャッツの名はキャスコ
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「あなた、いったい誰ですの!」
「シロウさんが嫌がっているよ。離れてよ」
髪が白と黒のツートンカラーの男に抱き締められ、身動きが取れないでいると、クロエが俺から離れるように彼に訴える。
「んんん~ん。これは失礼しました。つい、感情が昂ってしまいましたので。でも、まさかこんなところでキャスコと出会えるとは思ってもいませんでしたよ」
「あのう、そのキャスコって?」
「あなたが抱き抱えている珍獣ですよ。この子は僕のところから逃げ出した商品だったのです。ねぇ、キャスコ」
白黒のツートンカラーの髪色の男がキャッツを見る。
『ウー、ワン! ウー、ワン』
彼が声をかけると、キャッツは吠え出す。
「おやおや、久しぶりの再会だと言うのに冷たいですね。キャスコ」
「えーと?」
「これは申し遅れました。僕の名はトーマン、移動ペットショップを経営しながら世界中を旅している商人です。この度は逃げ出したキャスコと再会させてくださりありがとうございました。どうやら懐かれているようですしどうでしょう? 本当は一千万ギルのところを半額の五百万ギルで販売します」
困惑していると、男はトーマンと名乗った。そしてキャッツを買わないかと言って来る。
「んんん~ん。そうだ。買っていただけるのでしたら、これもおつけしましょう」
トーマンがポケットから半透明の石を取り出すと、俺に手渡した。
「これはペットのお家の役割をしてくれます。キャスコをこの中に入れ、必要なときに呼び出すことができます。この中にいる生き物は仮死状態となるため、餌代もかかりませんよ」
彼が見せた石には見覚えがある。
この石は! 野盗の頭が使っていた召喚石じゃないか!
「お前が野盗の頭にデスファンゴを売っていたのか」
トーマンの手渡したものが召喚石だと言うことに気づき、身構える。
「んんん~ん。野盗の頭かどうかわかりませんが、確かにデスファンゴを売ったことがあります。何でも強い生き物が欲しいとのことでしたので」
「お前が売った魔物のせいで、野盗の頭は殺されたんだぞ」
「おや? そうでしたか。それはお気の毒だ。しかし、野盗だったのだからよかったではないですか。人様から物を奪い、それで生きているようなゴミクズは、死んで当たり前なのですから。厄介者がいなくなり、僕の懐も潤った。まさにウイン、ウイン」
「何だと!」
この男、いったいどんな神経をしやがる。お前が危険な魔物だと分かって販売しなければ、あの男は死なずに済んだ。俺たちが倒し、憲兵に引き渡して更生させることもできた。
「んんん~ん。そう怒っても困りますよ。ちゃんと販売許可は取っております。魔族だって、ワイバーンを愛玩動物にしているじゃないですか? ね! 魔族のお嬢さん」
「確かに……そうだな」
ミラーカは気まずそうに答える。
「そんなことよりも、キャスコを買ってくれませんか? 半額ですよ、半額。こんなサービスは滅多にしませんよ」
「買うわけがないだろう!」
「買わない? では、キャスコをお返しくださると? まぁ、それもよろしいでしょう」
「お前なんかに金を払う価値はない! キャッツが逃げ出したのだって、お前が酷い仕打ちをしたからに決まっている!」
キャッツを抱き締めていた腕に力を入れる。
「んんん~ん! それは困った。流石にタダでお譲りする訳にはいきません。これはどうしたものか……こうなっては仕方がありませんね。せっかくキャスコを連れて来てくださったあなたたちを、犯罪者にするのは可哀想だ。ここは力付くでも奪い返させてもらいましょう」
懐から召喚石を取り出し、トーマンは空に向けて投げた。すると上空から魔物たちが現れる。
「きゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「魔物だ! 魔物が現れた!」
「どうして街中に魔物が現れる! 誰か早く衛兵に連絡しろ!」
突然魔物たちが現れ、街中は大混乱に陥る。
『ブヒヒ、やっと外に出られた。人間発見、久しぶりにぶっ潰せる』
鋭利な牙を持つイノシシの頭部に、膨れ上がった筋肉、片手には棘のある棍棒を握っている魔物が人の言葉を話す。
『キキキ、キキキキキ!』
サルの顔にコウモリの羽、両手には横笛を持っている獣が鳴く。
『お前たち、ストラテジストである俺の指示をちゃんと聞けよ。でなければ、またあの石の中に封じ込められる。あんな孤独の世界に戻りたくはない』
通常の何倍も大きいスライムが、人の言葉で指示に従うように命令を下す。
召喚石から現れたのはデスファンゴとロアリングフルート、それにマネットライムだ。
「Bランク以上の魔物たちばかりですわ!」
「でも、一度は倒したことがある魔物ばかりだよ」
「もちろん、シロウなら弱点も知っている。早くこいつらを倒して、町民を安心させてやろう」
「頑張ってください。わたしもポーターとして全力で支援しますわ!」
『ワン、ワン、ワン』
「んんん~ん。抵抗しますか。それも良いでしょう。ですが、キャスコは絶対に返してもらいますよ! やれ!」
『ブヒヒ! 細切れにしてくれる!』
『キキキ、キキキキキ!』
『まずはポーターのあの女から倒せ! サポート役さえいなければ、何も怖くない!』
トーマンが右手を前に出すと、魔物たちが一斉に襲いかかって来た。
「必ずキャッツを守り抜く! ファイヤーボール!」
「シロウさんが嫌がっているよ。離れてよ」
髪が白と黒のツートンカラーの男に抱き締められ、身動きが取れないでいると、クロエが俺から離れるように彼に訴える。
「んんん~ん。これは失礼しました。つい、感情が昂ってしまいましたので。でも、まさかこんなところでキャスコと出会えるとは思ってもいませんでしたよ」
「あのう、そのキャスコって?」
「あなたが抱き抱えている珍獣ですよ。この子は僕のところから逃げ出した商品だったのです。ねぇ、キャスコ」
白黒のツートンカラーの髪色の男がキャッツを見る。
『ウー、ワン! ウー、ワン』
彼が声をかけると、キャッツは吠え出す。
「おやおや、久しぶりの再会だと言うのに冷たいですね。キャスコ」
「えーと?」
「これは申し遅れました。僕の名はトーマン、移動ペットショップを経営しながら世界中を旅している商人です。この度は逃げ出したキャスコと再会させてくださりありがとうございました。どうやら懐かれているようですしどうでしょう? 本当は一千万ギルのところを半額の五百万ギルで販売します」
困惑していると、男はトーマンと名乗った。そしてキャッツを買わないかと言って来る。
「んんん~ん。そうだ。買っていただけるのでしたら、これもおつけしましょう」
トーマンがポケットから半透明の石を取り出すと、俺に手渡した。
「これはペットのお家の役割をしてくれます。キャスコをこの中に入れ、必要なときに呼び出すことができます。この中にいる生き物は仮死状態となるため、餌代もかかりませんよ」
彼が見せた石には見覚えがある。
この石は! 野盗の頭が使っていた召喚石じゃないか!
「お前が野盗の頭にデスファンゴを売っていたのか」
トーマンの手渡したものが召喚石だと言うことに気づき、身構える。
「んんん~ん。野盗の頭かどうかわかりませんが、確かにデスファンゴを売ったことがあります。何でも強い生き物が欲しいとのことでしたので」
「お前が売った魔物のせいで、野盗の頭は殺されたんだぞ」
「おや? そうでしたか。それはお気の毒だ。しかし、野盗だったのだからよかったではないですか。人様から物を奪い、それで生きているようなゴミクズは、死んで当たり前なのですから。厄介者がいなくなり、僕の懐も潤った。まさにウイン、ウイン」
「何だと!」
この男、いったいどんな神経をしやがる。お前が危険な魔物だと分かって販売しなければ、あの男は死なずに済んだ。俺たちが倒し、憲兵に引き渡して更生させることもできた。
「んんん~ん。そう怒っても困りますよ。ちゃんと販売許可は取っております。魔族だって、ワイバーンを愛玩動物にしているじゃないですか? ね! 魔族のお嬢さん」
「確かに……そうだな」
ミラーカは気まずそうに答える。
「そんなことよりも、キャスコを買ってくれませんか? 半額ですよ、半額。こんなサービスは滅多にしませんよ」
「買うわけがないだろう!」
「買わない? では、キャスコをお返しくださると? まぁ、それもよろしいでしょう」
「お前なんかに金を払う価値はない! キャッツが逃げ出したのだって、お前が酷い仕打ちをしたからに決まっている!」
キャッツを抱き締めていた腕に力を入れる。
「んんん~ん! それは困った。流石にタダでお譲りする訳にはいきません。これはどうしたものか……こうなっては仕方がありませんね。せっかくキャスコを連れて来てくださったあなたたちを、犯罪者にするのは可哀想だ。ここは力付くでも奪い返させてもらいましょう」
懐から召喚石を取り出し、トーマンは空に向けて投げた。すると上空から魔物たちが現れる。
「きゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「魔物だ! 魔物が現れた!」
「どうして街中に魔物が現れる! 誰か早く衛兵に連絡しろ!」
突然魔物たちが現れ、街中は大混乱に陥る。
『ブヒヒ、やっと外に出られた。人間発見、久しぶりにぶっ潰せる』
鋭利な牙を持つイノシシの頭部に、膨れ上がった筋肉、片手には棘のある棍棒を握っている魔物が人の言葉を話す。
『キキキ、キキキキキ!』
サルの顔にコウモリの羽、両手には横笛を持っている獣が鳴く。
『お前たち、ストラテジストである俺の指示をちゃんと聞けよ。でなければ、またあの石の中に封じ込められる。あんな孤独の世界に戻りたくはない』
通常の何倍も大きいスライムが、人の言葉で指示に従うように命令を下す。
召喚石から現れたのはデスファンゴとロアリングフルート、それにマネットライムだ。
「Bランク以上の魔物たちばかりですわ!」
「でも、一度は倒したことがある魔物ばかりだよ」
「もちろん、シロウなら弱点も知っている。早くこいつらを倒して、町民を安心させてやろう」
「頑張ってください。わたしもポーターとして全力で支援しますわ!」
『ワン、ワン、ワン』
「んんん~ん。抵抗しますか。それも良いでしょう。ですが、キャスコは絶対に返してもらいますよ! やれ!」
『ブヒヒ! 細切れにしてくれる!』
『キキキ、キキキキキ!』
『まずはポーターのあの女から倒せ! サポート役さえいなければ、何も怖くない!』
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「必ずキャッツを守り抜く! ファイヤーボール!」
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