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第十三章

第二話 ケモノの町に向かいます。

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 ~シロウ視点~



「ありがとうな。お前のお陰でこの町を破壊されずに済んだ」

 ガーベラを倒したあと、俺はベオと握手を交わしていた。

「これも依頼の一環だからな。俺は仕事をしたにすぎない」

「とにかく改めて礼をしよう。俺の家に来てくれ。親父が報酬金を用意してくれる」

「分かった」

 繋いだ手を離し、ベオの隣を歩いて彼の家に向かう。

 ガーベラたち魔族は、マリーたちの家にあった玉を探している。もし、この町に同じものがあれば、また同じように襲撃をされるかもしれないな。

「なぁ、この町にはガーベラが持っていたような玉があったりするのか?」

「玉? ああ、お前が必死に取り返そうとしていたアレか。どうだろうな。俺は知らないが、もしかしたら親父なら何かを知っているかも知れない。聞いておこう」

 ベオと話していると彼の家に着き、応接室に案内される。

「適当に座っていてくれ、親父を呼んでくる」

 俺たちを案内したあと、ベオは一旦離れて父親を連れてくる。

「お待たせしました。これが報酬です」

 テーブルの上に札束が置かれ、受け取ると金額を確認した。

 一、二、三…………九十九、百。うん、ちょうど百万ギルあるな。

「ありがとうございます」

「何を言いますか。礼を言うのは私たちの方です。この町を守ってくださりありがとうございます」

「なぁ、親父。この町に水晶のように透き通った玉なんて物あったか?」

「水晶?」

「ああ、シロウたちがこの町にあったりするのかって聞いたからよ。親父なら何か知らないかと思って」

 ベオの問いに、町長さんは顎に手を置いて思案顔を作る。

「そう言えば、東の島国にあるケモノ族の町に、水晶関係の言い伝えがあるのを聞いたことがある」

「そこにはどうやって行けば!」

 水晶のヒントがあることを知り、思わず立ち上がって町長さんに行き方を尋ねる。

「港に行けば、東の島国に向かう船があります。到着した後は西の方に向かうと、ケモノ族の町に辿り着くかと」

「ありがとうございます。さっそく明日、港に向かいます」

「また船に乗りますの!」

 船と言う言葉を耳にして、エリーザが驚く。

 そう言えば、彼女は船が嫌いだったなぁ。嫌かも知れないけれど、そこは我慢してくれ。





 翌日、俺たちは町を出ると数日かけて港に向かう。そして船に乗り、一週間ほどかけて東の島国に到着した。

「ほら、海に落ちる心配がないところまで歩いたのだから、いい加減に離れてくれないか」

 船に乗っている間、エリーザは殆どの時間、俺にくっ付いて離れようとはしなかった。困っている俺の気持ちを察してマリーたちがどうにか引き剥がそうと説得をしてくれたものの、殆ど効果がなかった。

「はぁ、せっかく海が苦手であることを逆手にとって、シロウさんと引っ付いていましたのに、何も起きませんでしたわ」

「今何か言ったか?」

「いえ、何も言っていませんわ」

 エリーザが何か言ったような気がしたけれど、気のせいだったか。

『ワン、ワン、ワン』

 エリーザに気を取られていると、遠くの方でキャッツの声が聞こえた。声のしたほうを見ると、俺たちから離れた場所にいる。

 キャッツが俺たちから離れているなんて珍しいなぁ。しかもあの方角はケモノ族の町がある。もしかして、場所を知っているのか。

「みんな、キャッツの後を着いて行こう」

 俺たちが近づくと、キャッツは再び走る。そして一定の距離を空けると、足を止めて振り返った。

 やっぱり間違いない。キャッツはケモノ族の町を知っている。と言うことは、もしかしてキャッツはこの島出身なのか?

 導かれるまま付いて行くと、町に着いた。だけどここはまだケモノ族の町ではない。

「今日はこの町で一泊しようか。キャッツ、道案内ありがとう。また明日頼むよ」

 キャッツを抱き抱え、俺たちは宿屋を探す。

「そう言えば、昔はケモノ族のことを獣人って呼んでいたよね? どうしてケモノになったのだろう?」

 クロエが突然疑問に思ったことを口に出した。

「それは、獣人のことを細かく分けるように法律が変わったからだ。獣人にはケモ度と言うもので分別される。ケモ度一が、俺たち人間に耳や尻尾が生えた状態の生き物だ。このタイプが一番多いな」

「そして昔ながらの獣人はケモ度三に値しますわ。これは獣が二本足でたち、人間のように振る舞っている生き物を差す言葉になっておりますの」

 俺に続いてマリーが獣人の説明をする。

「へぇーそうなんだ」

「クロエさん。言いたくはありませんけれど、これ一般常識ですわよ。小さい子供ならともかく、百六十歳のあなたが知らないのはどうかと」

「エリちゃんにツッコまれた! バカでごめんなさい」

「これで一つ賢くなったと思えばいいさ。知性のある生き物は、恥を掻いて成長するものだからね。何なら、私が作った記憶力増強の秘薬を飲んでみるかい? ちょうどモルモット……じゃなかった。被験者が欲しかったんだ」

「ありがとうミラーカさん。でも、薬のほうは遠慮しとくよ」

 仲間たちの話を聞きながら歩いていると、反対側から一人の男性が歩いて来た。

 黒と白のツートンカラーの髪だなんて珍しいな。目立っているから嫌でもつい見てしまう。

 男性を見ていると彼と目が合い、こちらにやって来る。

 見ていたことに気づいて機嫌を悪くしたかな。その時は謝らないと。

 そんなことを考えていると、彼は歩くスピードを上げ、そしてついに走り出した。

「んんん~ん。やっぱりキャスコだ!」

 彼はいきなり俺に抱きつくと力強く抱きしめる。

 キャスコって誰! 俺違うぞ!
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