営業部のイケメンエースは、さわやかなヘンタイでした。

入海月子

文字の大きさ
42 / 57

こんなのずるい②

 ご飯を終えたら二十一時を過ぎていた。除夜の鐘をつけるのは二十二時半からだというので、私たちはお寺へ向かうことにした。
 お寺が近づくにつれて、人が多くなってきて、櫓のような鐘楼には列ができていた。その最後尾に並ぶ。
 まだ開始には早かったので、それほど並んでなくてよかった。

「宇沙ちゃん、寒くない?」
「大丈夫です」
「寒くなったら言ってね。温めてあげるから」
「結構です!」

 うっかりうなずいたら、きっとろくでもないことになる。

「残念だなぁ」

 そう言いながら、木佐さんがつないでる手の指で、私の甲を撫でた。その手つきがエロティックで、それだけで、かぁああっと体温が上がる。
 やっぱりろくでもなかった。

「木佐さんっ!」
「ん?」 

 咎めるように見上げたけど、彼はまったく意に介していなかった。妙に意識している私がおかしいのかもしれない。
 そんなやり取りをしていると、列が動き始めた。
 
 ゴ~ン

 除夜の鐘が鳴りはじめる。
 近くにいるからかなり迫力のある音だ。
 見ていると、鐘楼の狭く急な階段を一組ずつ上っていき、鐘をついたら、下りてきて、次の組が上るという方式だった。

「足もと、気をつけて」

 私たちの番が来て、木佐さんに支えられながら階段を上る。私がすっぽり入ってしまいそうな鐘が吊り下がっていて、お坊さんが一人待機していた。

「合掌して一礼をお願いします」

 お坊さんの指示に従って、鐘に向かって一礼する。

「お二人でこちらの紐を持って、ゆっくり後ろに引いてからついてください」

 木佐さんと撞木についている紐を持ち、後ろに引っ張った。目を見合わせて、息をそろえて鐘をつく。
 撞木が鐘に触れたとき、硬い手応えとともに、ゴ~ンと鐘が鳴った。
 重々しい厳かな音がお腹に響く。
 一瞬、俗世の憂さを忘れた、気がした。

 私たちはまた一礼して、次の人に場所を譲った。

「除夜の鐘をつけて、よかったです! 連れてきてくれて、ありがとうございました」
 
 一瞬のことだったけど、初めてついた鐘の感触がまだ手に残っていて、高揚感がある。
 本堂に向かいながら、興奮気味に言うと、「か~わいい」と頭を撫でられた。

「どういたしまして。俺も興奮してる宇沙ちゃんを見て興奮してる」
「な、なに言ってるんですか!」

 除夜の鐘をついたばかりなのに、煩悩まみれの木佐さんをあきれた目で見た。
 ますます木佐さんが楽しげになる。

(ダメだ。なにしても喜ばせるだけみたい)

 私は溜め息をついた。

 本堂でお参りをすると、甘酒が振る舞われた。
 紙コップに入った甘酒は温かく、冷えた身体に染みた。
 ほっと息を吐く。
 
「あったまるね」
「はい。有難いですね」

 私たちは微笑みを交わすと、こくりとまた甘酒を飲んだ。

  
感想 0

あなたにおすすめの小説

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389