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人形の啓子と処女妻の啓子
暴徒に囲まれ(1)
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後になって啓子はこの時期には扶桑帝国の敗色が濃厚であり、国内の治安も急速に悪化していた、という事は知った。しかしその時は何が起きているのか全く知らなかった。「結婚」してから外部の情報が全く分からなかったためだ。それは一般国民も同じで扶桑帝国の絶対的な正義と不敗神話を信じていたから同じようなものである。
でも、生活苦はいかんともしがたい庶民の不満は貴族などの支配階級に向かうのは自然なことのようだ。だから啓子一行は暴徒に取り囲まれていた。
パーティー会場から橘花宮公邸まで一時間かかるが、暴徒に取り囲まれたのは途中にある貧民街に面した道であった。ここの住民は特に不満がくすぐっており、たまたま警備の手薄な貴族所有の車が立ち往生していたので、自然発生的に襲撃したようだ。
「はやく、逃げてください!」
警備兵に誘導されて啓子は焦っていた。こんな・・・人形の姿で死ぬわけにはいかないと。でも、表情なんてわからないんだろうなと冷めた思いもあった。そのときだった、暴徒の一人から信じがたい声がした。
「人形が動いているぞ! 気持ち悪いからやっつけてしまえ!」
啓子は気持ち悪いならそっとしてほしいし、手出ししてほしくないと思ったが、勢いづいた暴徒は激しく追尾した。ふと、振り返ってみると先ほどまで乗っていた車が暴徒によって略奪にあって、原型を失いつつあった。もし捕まったらタダでは済まないと思うと啓子は恐怖心でいっぱいになった。
でも、生活苦はいかんともしがたい庶民の不満は貴族などの支配階級に向かうのは自然なことのようだ。だから啓子一行は暴徒に取り囲まれていた。
パーティー会場から橘花宮公邸まで一時間かかるが、暴徒に取り囲まれたのは途中にある貧民街に面した道であった。ここの住民は特に不満がくすぐっており、たまたま警備の手薄な貴族所有の車が立ち往生していたので、自然発生的に襲撃したようだ。
「はやく、逃げてください!」
警備兵に誘導されて啓子は焦っていた。こんな・・・人形の姿で死ぬわけにはいかないと。でも、表情なんてわからないんだろうなと冷めた思いもあった。そのときだった、暴徒の一人から信じがたい声がした。
「人形が動いているぞ! 気持ち悪いからやっつけてしまえ!」
啓子は気持ち悪いならそっとしてほしいし、手出ししてほしくないと思ったが、勢いづいた暴徒は激しく追尾した。ふと、振り返ってみると先ほどまで乗っていた車が暴徒によって略奪にあって、原型を失いつつあった。もし捕まったらタダでは済まないと思うと啓子は恐怖心でいっぱいになった。
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