26 / 60
第2章
1
しおりを挟む「さて、シェリアちゃんには魔法を制御する訓練をしてもらいます。」
「訓練ですか。」
私たちは今運動場のような広い空間にいた。どうやら、私が寝ていた部屋は魔法陣が敷かれておりそれを利用して特定の場所へ移動できるらしい。
私が起きた時、キリトが気配なく突然現れたのはこのためらしい。
ちなみに私についている足枷はまだ健在である。これはキリトの魔法らしく念の為の逃亡防止らしい。魔法なので重さも感じなければ、縦横動き回っても絡まることもない。部屋から移動しても何処からか鎖が繋がっており、日常生活に支障をきたす事はないそうだ。
「うん。闇の魔法だって使い方次第では毒にも薬にもなる。良い事にも悪い事にも使えるよ。つまり、闇に飲まれずに見事に魔法を扱えるようになったらここから出ていけるというわけ。」
「なるほど。でも、あの時私は必死で魔法を使ったけど、今、使えと言われても発動できるかどうか……。」
あの時、フィオナを傷つけるものから救いたくて体が勝手に動いていた。冷静になって考えてみるとどうやって使ったのかよくわからない。
「闇魔法を扱う人は珍しいからね。そこが難しい所だけど、少しずついろんな事を試していくしかないね。まあ、まずは基本の魔力集中だね。杖を使ってやってみて。」
「わかりました。」
魔法は一点に魔力を集中してそこから発生させるものだ。なので、まずは自分の魔力を一ヶ所に集める所が基本中の基本だ。
私は杖の先に魔力を乗せるように集中した。黒い魔力の塊が杖の先に現れる。
「流石だね。いつもと違う感じはあるかな?」
「そうですね、何だか質が重い感じがします。」
闇魔法とやらの封印が解ける前は風の透き通った感じの魔力をいつも感じていた。
「封印が解けて属性が変化したからかもしれないね。君の魔法はオフィーリア様に封印されていたみたいだから。」
オフィーリア。私とフィオナの母親の名前だ。フィオナとそっくりな容姿の持ち主でいつもニコニコと笑っていたのを覚えている。そうだ、彼女に魔法を封印されていたんだ。あの人の最期の時に。
最期……。
あれ、何で封印されたんだっけ?
「シェリア!」
キリトの声が聞こえた。ふと杖の先を見ると拳くらいの大きさだった魔力の玉が膨らんで一メートル位まで達していた。
「しまっ……!」
「マジック・チェーン=ホーリー。」
聞いた事のない呪文だ。
キリトの方から鎖が現れ私の周りを囲む。ピカッと鎖がひときわ輝いたかと思うと、私の魔力球は消え去っていた。
「……今の呪文なんですか?」
「俺の魔法と校長の魔法を合わせたものだよ。俺は縛る事に特化した魔法が得意でね。」
「さすが変態教師。」
魔法の力は正式な魔法以外にも多数ある。いわゆるオリジナル。魔力を練って別の物の形で今回は鎖のように具現化する事も可能だ。本人が使いやすい方に魔力を練るという感じだろうか。
そんな使い方をできる人はとても優秀な一部の一握りだが。
「……。ともかく俺の魔法は効果を持続、増幅させることが得意なんだ。これを見てごらん。」
キリトは手の平から薄黄色に輝く綺麗な結晶を見せた。ガラスのように透明感がありとても綺麗だ。
「綺麗ですね……。」
思わずため息がもれる。本当にとても綺麗だ。
「これは校長が作った魔石。校長の光属性の魔力が詰まってる。この石から校長の魔力を引き出して君の闇魔法を中和したって事だよ。」
「そんなものがあるんですね。」
……そういえば、物語終盤でフィオナが自分の魔力石を作って相手キャラにもたせていた気がする。
「とまあ、そういう事で君が万一魔力を暴走させてしまっても大丈夫。安心して失敗してね?」
「いや、失敗したらダメでしょう。」
思わず突っ込む。でも、とりあえず安心した。もし失敗して前みたいな事になってしまったら嫌だ。
「とりあえず、練習あるのみですね。頑張ります。」
「うんうん、やる気があるのはいい事だね。頑張れ~!」
何だか応援が適当な気がするが、私はその日一日安定して魔力を維持する事をひたすら練習した。
ーーーー
「つ、つかれた……。」
あれからひたすら魔力を維持させるのに集中した。こんなに魔力を使ったのは久々だ。
「お疲れ様、シェリアちゃん。お水飲むかい?」
地面に座り込む私に水を差し出すキリト。
とてもありがたい。今、私の喉はカラカラだった。
「ありがとう。」
私は受け取って水をぐいっーと一気に飲み干した。
「ふふ。いい飲みっぷりだね。」
「とっても喉が渇いてたから。ねぇ、先生。」
「ん、何かな?」
私は気になっていた事を聞いた。
「フィオナ達は、元気?」
私は彼女達を傷つけてしまった。怖くて今まで聞けなかったが、気になっていた事も事実。私に怒っているだろうか、それとも怖がっているだろうか。
「みんな、元気だよ。怪我をした子はたくさんいるけど、死人は出てない。」
私が気になっている事がわかるのか、キリトは簡潔に情報を述べた。
「そう。ありがとう。」
死人は出ていない。だが、けが人は多数出た。私は人を傷つけた。
「ほら、そんな顔をしないで。」
キリトが私の顔を両手で包み込むように触れる。
「!」
「君は今、ここで二度と同じ過ちを繰り返さないために訓練しているんだろう。なら、大丈夫。」
そういって、彼はにこりと微笑んだ。
根拠もないのに大丈夫な気がしてきて、私は少し笑った。
0
あなたにおすすめの小説
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。
お嬢様の悩みは…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴッドハンドで世界を変えますよ?
**********************
転生侍女シリーズ第三弾。
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる