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第2章
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私はあれから魔力の制御の訓練に勤しんでいた。なかなか順調で、これなら早いうちにここから出る事が可能かもしれない。
最初は出るか出ないかで迷っていたが、今では決意が固くここから一刻も早く出たくて仕方がない。それは、なぜか。
「おはよう、シェリアちゃん。」
「ぎゃああああ! 何で性懲りも無く人の布団に潜り込んでるのよ!」
……キリトが私の睡眠中に布団に潜り込んでくるからだ。
彼は魔法陣で外と行き来しているので夜には自宅に帰還している。彼が帰った後に私もベットで就寝するのだが、決まって朝目が覚めると奴がいる。今もそうだ。
「君があまりに健やかな顔で寝ているから、起こしては悪いと思ってね。」
「だからって布団に入らなくていいでしょう!」
「ふふ、ついね。」
「何が『ふふ、ついね。』よ! 乙女の布団に無断で立ち入るなんて言語道断よ!」
「まあ、細かい事はいいじゃないか。」
「よくない! 私の布団に入るなら女に生まれ直して出直しなさい。」
「うーん。性別を変えるのは流石の俺でも難しいな。」
「じゃあ、入るな!」
こんな押し問答が毎朝行われている。何だか平和ボケしている気がする。
外の世界はどうなっているんだろう。フィオナたち元気かな?
たまに気になるが、仕方ない。早く魔力を制御して堂々とここを出て行こう。私がそんな話をするとキリトは決まって頑張ってねー、なんて棒読み加減で言う。
そしてその後少し困った顔をするのだ。
何だろう何かあるのだろうか?
「今日も訓練するのかい?」
「当たり前よ。」
私は身支度をしながら答える。
キリトにはこっちを見るなと言ってある。出てけと言って理由をつけて出ていかないので仕方なくそうしている。
「そんなに出て行きたい?」
「そうね、ここにいたら変態教師しか顔を合わせないもの。つまらないし、飽きてきたわ。」
「酷いなあ。俺と一緒じゃつまらない?」
「貴方といるとストレスが溜まるのよ。早く外に出て可愛い女の子の顔を見て癒されたいわ。」
この教師は事あるごとにセクハラまがいのことをしてくる。人の布団に潜り込むわ、着替えをしている時に部屋に入ってくるわ、風呂までも邪魔してくる。
しまいにストレスで胃が溶けそうだ。
「可愛い女の子ねぇ……。」
「早く外に出て、私はどこぞの変態教師がいない世界へ旅立つの。」
「あはは、俺もついて行こうかな?」
「絶対やめてちょうだい。」
そんなやり取りをしながら、運動場へと向かうため魔法陣へと向かう。この魔法陣で私が移動できるのは運動場、風呂場、今いる部屋。
キリトは外の学校へつながる場所へ出られるよう設定されているらしい。私だけではここから外の世界へ出て行く事はできず、先ほど述べた場所への移動は自由にできる。
運動場に着くと私は早速杖を構えた。最近は精神が妙に乱れることもなく、調子はいい。魔力を暴走させる事もない。今日は呪文を使ってみる事にした。簡単な属性初期魔法だ。
ファイアー、ウインド、ウォーター、アース、この四つは基本中の基本の魔法で四属性の初期魔法だ。学園に入学して一番初めに覚えさせられる正式な魔法。
そして、光属性の基本魔法はシャイン。闇属性はダーク。今日は呪文を唱えて正式な魔法を発現させる。ちなみにこの話はキリトから聞いた。闇魔法にも呪文が存在するらしい。
「ダーク」
杖の先に一メートルほどの闇の玉ができる。この間は慌てて暴走させてしまいそうだったが、今はおとなしく私の言うことを聞いてくれている。
「成功だね。」
私が発動している闇魔法を見ながら淡々と言うキリト。もうちょっと喜んでくれても良いんじゃないと思うのは私のわがままか。
彼は私が魔法に成功してもあまり喜ばない。むしろ、機嫌が悪くなったりする。意味がわからない。
「この調子ならすぐに外に出られそうね。」
私は魔法を収束させ満足げに頷きながら言った。
「……。君は本当に外に出たいの?」
「当たり前でしょ。」
ほら、機嫌が悪くなる。毎日顔を突き合わせているのだ、以前より顔の表情、言葉の感じから彼のことがわかるようになった。
今、彼はニコニコと笑ってはいるが声に抑揚がなく淡々としていて冷たささえ感じる。
まったく、一体なんだというのだ。彼だってずっと私のお守りなんか嫌だろうに。
……いや、閉じ込めておきたいみたいな発言をしていたしよく分からないが。
そんなことを考えているといつの間にかキリトが私の眼の前に来ていた。本当に目の前。思わず目を見開いた。
「ちょっと、何よ。近いってば。」
「君は外に出たい。俺は君をここに閉じ込めておきたい。前にも言ったね。」
前の出来事は思い出すと恥ずかしくなるから、考えないようにしていたのに。キリトもまるで何もなかったかのように振る舞っていたから。
「魔法の練習なんてやめて俺の事だけ考えてくれたら良いのに……。」
「……っ!」
あまりにも真剣に切なげに言うから驚いた。彼にこんな表情ができるのか。
でも、こんなことを言われるたび私は疑問に思う。いつ彼にこんなに思われるようになったのか。検討もつかない。分からない。それが私を不安にさせる。
「貴方の気持ちをなかった事にはしない。けど、私は貴方にこんなに思われる程の事したかしら。むしろ、最初はフィオナの方に執着していなかった?」
素朴な疑問だ。本来ここはフィオナの立ち位置で、私ではない。なぜ彼がこんなに私に好意を持っているのかがわからない。
「君は昔のことをどこまで覚えている?」
「昔?」
「そう。フィオナちゃんと共に屋敷で暮らしていた時のこと。」
「ええと……。」
急にそんなことを言われても。
大抵のことは思い出したとは思うが曖昧な部分もある。母親のオフィーリアが私の魔力を封印した時なんて特に曖昧で靄がかかったように思い出せない。
「質問を変えるね。君は塔から出た事はある?」
塔。私が屋敷で暮らしていた場所だ。
確かずっと外に出た事はなかったと思う。ああ、でも一度だけ。一度だけ外に出たことがある。
「確か……一度だけフィオナと入れ替わって外に出たことがありますけど……。」
幼い頃どうしても外に出てみたくて、フィオナと姿形を似せて入れ替わって外の世界に出たことがある。
私がそう言うとキリトはやはりなと呟いた。
「君がフィオナちゃんと双子だと言ったその時から、おそらくと思っていたけど。」
「え、えと? 話がわからないんですけど……。」
「君が先程言った通り、俺は最初フィオナちゃんに執着していたよ。それには昔約束した事があるからだ。」
約束?
そういえば、ゲームの設定でフィオナとキリトは幼い頃結婚の約束をしたというのがあった気がする。
「でも、それはフィオナちゃんとした約束ではないと徐々にわかってきた。約束した彼女と今の彼女の姿に違和感を覚えたから。」
「幼い頃の約束でしょう? 姿形、性格が変わってもおかしくないんじゃない?」
「いや、違うよ。俺が惚れた彼女はあんな天使みたいに笑う子じゃなかったから。」
幼い頃から惚れてたの?フィオナに?
ロリコンじゃないか。やはり、こいつは相当な変態だ。
というか、仮にも惚れたその女の子に対して天使じゃないってちょっと失礼なのでは。いろいろ思うことはあるが、おとなしく彼の話を聞く。
「俺があの時惚れた女の子は君だ。シェリア。」
………。
「人違いでは。」
「冷たいね。シェリア。」
淡々と進んでいく会話。
「少し位は思い出そうとしてくれないかな。」
ううむ。そんな悲しそうな顔をされると何だか私が悪人みたいではないか。
えーと、確か昔フィオナと双子だから入れ替わってみようよと入れ替わって……。
私は昔の記憶を思い出そうと頭をひねった。
最初は出るか出ないかで迷っていたが、今では決意が固くここから一刻も早く出たくて仕方がない。それは、なぜか。
「おはよう、シェリアちゃん。」
「ぎゃああああ! 何で性懲りも無く人の布団に潜り込んでるのよ!」
……キリトが私の睡眠中に布団に潜り込んでくるからだ。
彼は魔法陣で外と行き来しているので夜には自宅に帰還している。彼が帰った後に私もベットで就寝するのだが、決まって朝目が覚めると奴がいる。今もそうだ。
「君があまりに健やかな顔で寝ているから、起こしては悪いと思ってね。」
「だからって布団に入らなくていいでしょう!」
「ふふ、ついね。」
「何が『ふふ、ついね。』よ! 乙女の布団に無断で立ち入るなんて言語道断よ!」
「まあ、細かい事はいいじゃないか。」
「よくない! 私の布団に入るなら女に生まれ直して出直しなさい。」
「うーん。性別を変えるのは流石の俺でも難しいな。」
「じゃあ、入るな!」
こんな押し問答が毎朝行われている。何だか平和ボケしている気がする。
外の世界はどうなっているんだろう。フィオナたち元気かな?
たまに気になるが、仕方ない。早く魔力を制御して堂々とここを出て行こう。私がそんな話をするとキリトは決まって頑張ってねー、なんて棒読み加減で言う。
そしてその後少し困った顔をするのだ。
何だろう何かあるのだろうか?
「今日も訓練するのかい?」
「当たり前よ。」
私は身支度をしながら答える。
キリトにはこっちを見るなと言ってある。出てけと言って理由をつけて出ていかないので仕方なくそうしている。
「そんなに出て行きたい?」
「そうね、ここにいたら変態教師しか顔を合わせないもの。つまらないし、飽きてきたわ。」
「酷いなあ。俺と一緒じゃつまらない?」
「貴方といるとストレスが溜まるのよ。早く外に出て可愛い女の子の顔を見て癒されたいわ。」
この教師は事あるごとにセクハラまがいのことをしてくる。人の布団に潜り込むわ、着替えをしている時に部屋に入ってくるわ、風呂までも邪魔してくる。
しまいにストレスで胃が溶けそうだ。
「可愛い女の子ねぇ……。」
「早く外に出て、私はどこぞの変態教師がいない世界へ旅立つの。」
「あはは、俺もついて行こうかな?」
「絶対やめてちょうだい。」
そんなやり取りをしながら、運動場へと向かうため魔法陣へと向かう。この魔法陣で私が移動できるのは運動場、風呂場、今いる部屋。
キリトは外の学校へつながる場所へ出られるよう設定されているらしい。私だけではここから外の世界へ出て行く事はできず、先ほど述べた場所への移動は自由にできる。
運動場に着くと私は早速杖を構えた。最近は精神が妙に乱れることもなく、調子はいい。魔力を暴走させる事もない。今日は呪文を使ってみる事にした。簡単な属性初期魔法だ。
ファイアー、ウインド、ウォーター、アース、この四つは基本中の基本の魔法で四属性の初期魔法だ。学園に入学して一番初めに覚えさせられる正式な魔法。
そして、光属性の基本魔法はシャイン。闇属性はダーク。今日は呪文を唱えて正式な魔法を発現させる。ちなみにこの話はキリトから聞いた。闇魔法にも呪文が存在するらしい。
「ダーク」
杖の先に一メートルほどの闇の玉ができる。この間は慌てて暴走させてしまいそうだったが、今はおとなしく私の言うことを聞いてくれている。
「成功だね。」
私が発動している闇魔法を見ながら淡々と言うキリト。もうちょっと喜んでくれても良いんじゃないと思うのは私のわがままか。
彼は私が魔法に成功してもあまり喜ばない。むしろ、機嫌が悪くなったりする。意味がわからない。
「この調子ならすぐに外に出られそうね。」
私は魔法を収束させ満足げに頷きながら言った。
「……。君は本当に外に出たいの?」
「当たり前でしょ。」
ほら、機嫌が悪くなる。毎日顔を突き合わせているのだ、以前より顔の表情、言葉の感じから彼のことがわかるようになった。
今、彼はニコニコと笑ってはいるが声に抑揚がなく淡々としていて冷たささえ感じる。
まったく、一体なんだというのだ。彼だってずっと私のお守りなんか嫌だろうに。
……いや、閉じ込めておきたいみたいな発言をしていたしよく分からないが。
そんなことを考えているといつの間にかキリトが私の眼の前に来ていた。本当に目の前。思わず目を見開いた。
「ちょっと、何よ。近いってば。」
「君は外に出たい。俺は君をここに閉じ込めておきたい。前にも言ったね。」
前の出来事は思い出すと恥ずかしくなるから、考えないようにしていたのに。キリトもまるで何もなかったかのように振る舞っていたから。
「魔法の練習なんてやめて俺の事だけ考えてくれたら良いのに……。」
「……っ!」
あまりにも真剣に切なげに言うから驚いた。彼にこんな表情ができるのか。
でも、こんなことを言われるたび私は疑問に思う。いつ彼にこんなに思われるようになったのか。検討もつかない。分からない。それが私を不安にさせる。
「貴方の気持ちをなかった事にはしない。けど、私は貴方にこんなに思われる程の事したかしら。むしろ、最初はフィオナの方に執着していなかった?」
素朴な疑問だ。本来ここはフィオナの立ち位置で、私ではない。なぜ彼がこんなに私に好意を持っているのかがわからない。
「君は昔のことをどこまで覚えている?」
「昔?」
「そう。フィオナちゃんと共に屋敷で暮らしていた時のこと。」
「ええと……。」
急にそんなことを言われても。
大抵のことは思い出したとは思うが曖昧な部分もある。母親のオフィーリアが私の魔力を封印した時なんて特に曖昧で靄がかかったように思い出せない。
「質問を変えるね。君は塔から出た事はある?」
塔。私が屋敷で暮らしていた場所だ。
確かずっと外に出た事はなかったと思う。ああ、でも一度だけ。一度だけ外に出たことがある。
「確か……一度だけフィオナと入れ替わって外に出たことがありますけど……。」
幼い頃どうしても外に出てみたくて、フィオナと姿形を似せて入れ替わって外の世界に出たことがある。
私がそう言うとキリトはやはりなと呟いた。
「君がフィオナちゃんと双子だと言ったその時から、おそらくと思っていたけど。」
「え、えと? 話がわからないんですけど……。」
「君が先程言った通り、俺は最初フィオナちゃんに執着していたよ。それには昔約束した事があるからだ。」
約束?
そういえば、ゲームの設定でフィオナとキリトは幼い頃結婚の約束をしたというのがあった気がする。
「でも、それはフィオナちゃんとした約束ではないと徐々にわかってきた。約束した彼女と今の彼女の姿に違和感を覚えたから。」
「幼い頃の約束でしょう? 姿形、性格が変わってもおかしくないんじゃない?」
「いや、違うよ。俺が惚れた彼女はあんな天使みたいに笑う子じゃなかったから。」
幼い頃から惚れてたの?フィオナに?
ロリコンじゃないか。やはり、こいつは相当な変態だ。
というか、仮にも惚れたその女の子に対して天使じゃないってちょっと失礼なのでは。いろいろ思うことはあるが、おとなしく彼の話を聞く。
「俺があの時惚れた女の子は君だ。シェリア。」
………。
「人違いでは。」
「冷たいね。シェリア。」
淡々と進んでいく会話。
「少し位は思い出そうとしてくれないかな。」
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