乙女ゲームの悪役ボスに生まれ変わったけど、ヒロイン可愛すぎてつらい。

ファネシス

文字の大きさ
33 / 60
第2章

6

しおりを挟む
「あの変態教師……。」

私がふと目覚めると部屋のベットの上に寝かされていた。どうやら、あれから気を失ってしまったようだ。キリトの姿が見えない。食料の買い出しにでも行ったのだろう。彼は夕方ここを出て、朝にこちらにやってくる。

時刻は夜。
窓の外を見ると星が出ているのがわかった。

「ああ、もう!」

なんでこうなった。
どこで私は物語を歪めてしまったのだろうか。

中間試験で暴走するのは私ではなくフィオナのはず。何故、フィオナの魔法は暴発しなかったのだろうか。

ふと一つ思い当たることがあった。
試験前に魔法がうまく扱えなくて落ち込むフィオナに他人の魔力の増幅をしてはと言ったことがあった。本来のゲームの大筋ではその時点で力の増幅はフィオナは行えない。

「もしかして、あれがきっかけでフィオナが光魔法に耐性をつけたんじゃ……。」

本来、魔法の暴発は慣れない属性の魔力が突如現れ、魔力を扱いきれなくて暴発するものだ。
フィオナは魔法の増幅をすることで光耐性ができた。対して闇魔法の封印が解けて耐性がなかった私の魔法が暴発した。

「……全部私のせいじゃない。」

私の浅はかな行動でこんなに未来が変わるとは思わなかった。

ふと、私は大事なことを思い出す。ゲームで攻略対象の好感度が足りなかったり、選択肢を間違えるとフィオナの光属性が公にならない。
すると、光魔法の鍛錬が足りなかった彼女は魔法を制御しきれないか、または攻略対象の魔力を増幅し過ぎて身体が衰弱して死んでしまう。

私はなんてことをしてしまったんだろう!

自分の浅はかさに腹がたった。唇を噛み締める。私が魔法を暴発させたせいで、フィオナの光魔法は公に知られていない。それは彼女の死を意味する。

「ここから出ないと。」

私は呟いた。
ここから出て自分のしでかしたことを修正しなければ。

私は彼女を守りたいと思っていながら、一番傷つけ危険に晒していた。あの時だってそうだ。

「あの時……?」

自分で言っておいて疑問に思う。
確かにフィオナを傷つけてしまったという思いがあるのに、その時の記憶がない。

『忘れて……。今のあなたには耐えられないから。』

頭の中に女性の声が響く。記憶は全部取り戻した。そう思っていた。だが……。

「私、何か重大なことを忘れている?」

だが、今はそれどころではない。早くフィオナの元へ言って伝えなければ。
貴女は光魔法の使い手なのだと。怪しまれてもいい。だけど、彼女を助けたい。私の最愛の妹だもの。

今なら使える。そんな気がする。
私は杖を構え魔力を集中させる。

「ダーク。」

闇が生まれた。更に集中して力を濃くしていく。そして、足に繋がっている鎖へ放る。鎖に闇が絡まった。

ばぢぢぢぃぃぃ

火花が散るような音がして、鎖が弾け飛んだ。
力にものを言わせて鎖を破ったのである。まあ、なんて野蛮。

「行かなきゃ。」

キリトが帰ってくる前に。
このままここにいたら、本当に閉じ込められてしまう。私は何処か薄々気づいていた。クレアメンス校長が私をここから出す気がない事を。

ゼノと校長の過去に何があったか知らないが、校長はゼノの闇魔法を嫌って、恐れているようだった。なら、私の持つ闇も彼にとっては脅威だろう。事実、私は罪のない生徒を傷つけた。
本当はここにこもっているべきだ。でも、フィオナだけは救いたい。ゼノの動向も気になる。彼がこのまま大人しくしている訳がない。彼も私と同じで準悪役ポジションだ。ルートによって私、シェリアは彼の手を取り、フィオナ達の前に立ち塞がる事もあった。あの時彼の手を取らなくてよかった。

「問題はこの魔法陣ね。」

魔法陣はその式が重要だ。高レベルの人は他の式を足して干渉することもできるらしいが。私にそんな高度な芸当はできない。ルイスなら別かもしれないが。

私がどうするか考えあぐねていると突如と魔法陣が光りはじめた。まさか、キリトが帰って来たのだろうか。昼間の事を思い出しぞくりと背筋が冷えた。だが、現れたのは……。

「ルヴィナス!?」

「シェリア!  本当にシェリアだな。よかった、無事だったんだな!」

現れたのはルヴィナス。
久しぶりに彼の姿を見た。というよりもキリト以外の人間を見たのは久々だ。

また、魔法陣が光る。次に現れたのはスウォン会長。次々に魔法陣が光り、フィオナ、ルイスと現れた。

「フィオナ!」

私は泣きそうになる。よかった。まだ彼女は生きている。

「シェリア!  会いたかった!」

彼女も私に気付くと嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

「でも、どうしてここに?」

「どうしても、シェリアに会いたくて、魔法陣を調べて見たの。」

「お前が無差別に生徒を襲うような人間にも見えないからな。フィオナに感謝するんだな。」

「僕も同じだ。シェリアともう一度話をして、一体何が起きたのか知りたかったんだ。」

「俺は面白そうだからついてきただけだよ~。まあ、天使ちゃんの頼みでもあるしね。」

一人、動機が適当な人もいるが私は心が温かくなるのを感じた。

「……ありがとう。」

私は礼を言う。だが、ここで事態を説明していたらキリトが帰って来てしまう。
彼と鉢合わせたら脱走のチャンスはなくなるだろう。かといって、このまま逃げたらこの四人が責められる可能性もある。

「皆には悪いんだけれど、今悠長に喋っている時間がないの。フィオナに大切な話があるけど、ここにいてはキリトが帰って来てしまうわ。」

「私に話?」

「そうよ、フィオナ。とても大切な話。でも、ここでは話せない。私も貴女のところへ行こうとしていたの。」

「そ、それは脱走しようとしていたという事か?」

「そんな事をすれば、学園にはいられなくなるぞ。今のお前は生徒には知れ渡っていないが、要注意人物として教師側にマークされてる。」

ルヴィナスが驚き、スウォンは冷静に今の状況を分析する。このまま学園にいても居場所はないだろうとは思っていたが……。

「いーよー。俺、匿ってあげても。」

あっさりとそんな事を言うルイス。

「匿うと言っても相手は学園長だぞ。すぐにバレるに決まってるだろう。」

「かいちょー。俺の結界魔法、甘く見てるね。まあ、任せてって。」

軽い調子で頷くルイス。
確かに彼の結界魔法などは他の追随を許さないほど優れている。今は彼を信じるしかないか。

「すみません。ルイス先輩。お願いします。」

私はルイスに頭を下げた。

「とりあえず、ここから出よう。急ぐに越したことはないからな。ああ、そうだ。シェリア、このローブを頭から被っておくんだ。」

ルヴィナスがカバンからローブを取り出し私にかぶせる。そうだ忘れていたが、私の髪は今は真っ黒。この状態で外を歩いたら悪目立ちする。

「ありがとう、ルヴィナス。」

「前にも言ったが、ルヴィと呼んで欲しい。」

そういえば、そんな事を聞いた覚えがある。

「分かったわ。ありがとう、ルヴィ。」

私が言われた通りにルヴィと呼ぶと彼は嬉しそうに目を細めて笑った。そして、私はルヴィにかけてもらったローブをさらに目深にかぶった。

「準備はいいな?  行くぞ。」

スウォンがそう声をかけ魔法陣に足を踏み入れる。

続けてルイス、フィオナと続いていく。私も足を踏み入れる。鼓動が早くなる。本当に学園に出られるのだろうか。

「大丈夫だ。さあ、行こう。」

後ろにいたルヴィが私の背を軽く押す。
まばゆい光が視界を包む。思わず目を閉じた。
しばらくして光が収まり目を開く。

「うわぁ。なんだか校舎がすごく懐かしい。」

閉じ込められてそれ程多くは経ってはいないはずだが、とても懐かしいもののように思えた。

「さて、急ごうか。こんな事になるんじゃないかなと思って、俺の屋敷に防御結界が張ってあるよ。そこでゆっくり話をするといい。スウォン、テレポートお願いね。」

「分かった。フィオナ補佐を頼む。」

「任せてください!」

スウォンの魔法をフィオナが増幅する。
フィオナの魔力が私にとってあまり良くないものだが、そうも言っていられない。

「テレポート。」

会長が呪文を唱えると私達は廊下から姿を消した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

この悪役令嬢には悪さは無理です!みんなで保護しましょう!

naturalsoft
恋愛
フレイムハート公爵家令嬢、シオン・クロス・フレイムハートは父に似て目付きが鋭くつり目で、金髪のサラサラヘアーのその見た目は、いかにもプライドの高そうな高飛車な令嬢だが、本当は気が弱く、すぐ涙目でアワアワする令嬢。 そのギャップ萌えでみんなを悶えさせるお話。 シオンの受難は続く。 ちょっと暇潰しに書いたのでサラッと読んで頂ければと思います。 あんまり悪役令嬢は関係ないです。見た目のみ想像して頂けたらと思います。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった

木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。 今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。 せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。 床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。 その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。 他サイトでもアップしています。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

処理中です...