乙女ゲームの悪役ボスに生まれ変わったけど、ヒロイン可愛すぎてつらい。

ファネシス

文字の大きさ
35 / 60
第2章

サブストーリー ~俺のものになってよね~

しおりを挟む
「ふふ、やっぱり逃げられちゃったね。」

俺が朝に魔方陣を使って、この部屋に来るとシェリアの姿は見えずもぬけの殻だった。
魔方陣が書き換えられているのも気づいた。恐らくルイスだろう。彼くらいしかこんな真似をできそうな生徒はいない。
俺が彼女につけた足枷。無理に魔法で破った形跡があった。すごい力だなと感心してしまう。

いずれ、シェリアの魔法をこの中で閉じ込めておくのは不可能だろうと思っていた。彼女の魔法の上達はとても早かった。上達するにつれ、魔力の強さも上がっているように見えた。
いかにクレアメンスの結界とて支えきれないだろう。そう、感じていた矢先に逃げられた。

俺はシェリアが使っていたベッドに寝転ぶ。
ふわりと彼女の香りがまだ残っていた。本当は閉じ込めてしまいたかったけれど、仕方がない。

「夢の時間は終わりだね~。」

どこかでこの生活は終わるだろうと直感していた。

……俺はシェリアが好きだ。

子供の時に出会った彼女。最初、あの寂しげな笑顔が気になった。その時はフィオナだと思っていたけれど。

フィオナは周りを癒すような愛らしい笑顔だ。対してシェリアは悟ったような悲しい笑顔。子供なのにどこか大人びて全てを諦めていたような苦しい笑顔。どこか俺を惹きつけてやまなかった。

大きくになるにつれ、フィオナの姿と記憶の中の寂しい笑顔の女の子に違和感を持つようになった。それから事件が起きて彼女とは会えなくなってしまった。

学園でフィオナに会った時はそんな違和感のことなんて忘れて、とても嬉しかった。
だけど、同時にフィオナの様子を伺っていたシェリアが気になった。まさか、その時は彼女たちは双子で、シェリアが気になった少女本人だとは考えもしなかった。

「ああ、欲しいなあ。」

俺は手を空に伸ばし何かを捕まえるように握りしめる。

シェリアが欲しい。どうしても。
大人になった彼女は寂しげな笑顔をしなくなっていたけれど。きっと寂しさを埋める何かができたんだろう。本当はそれに俺がなりたかったな。

でも、彼女はここから出て行った。
俺がそれになることはできない。彼女の寂しさを埋めた者はなんだろう。孤独を埋めたのは誰なんだろう。……わかりきったことか。

「君の大切な者はフィオナちゃんなんだね。」

とても愛おしそうな目でいつもフィオナちゃんの様子を見ていたシェリア。
今、彼女の中はフィオナでいっぱいで満たされているんだろう。試験の日に魔力が暴発したのもフィオナがきっかけだった。
肝心のフィオナはシェリアを双子の姉とわかっていないみたいだけど。

「君はそれで満たされるのかな?」

いくら愛情を注いでも自分のことは思い出してもくれない。それどころかフィオナはスウォンに惚れているようだ。
俺だったら満たされない。好きな人に他の人なんて見て欲しくない。俺だけ見て欲しい。俺しか考えて欲しくない。俺だけ。俺だけを見て。

さて、彼女はここからどうするんだろう。
きっと責任感が強いから自分の魔法を制御して更に極めようとするんだろう。そうすると、必然的にゼノのところへ行く事になる。闇魔法に詳しい奴なんてそういない。シェリアが知る限りで頼れる人物は彼くらいだ。自分をさらおうとしていた奴の所に行くなんて正気の沙汰じゃないと思うけど、彼女ならいきそうだ。

シェリアが取られるかもしれない。
俺の最愛の人。何があっても取られたくない。どうしようか。追いかける?

「いや、もう少しだけ待ってみよう。」

彼女にも選択権はある。
俺の中にある残り少ない理性が捕まえて閉じ込めたいという思いを止める。
彼女が外に出て色んなものを見て、そしてそれでも選んでくれたなら。それは本当に俺のものになってくれた証拠。ならば、少し待とう。彼女が俺を選んでくれるまで。

「しかし、校長へどうやって報告しようかな。」

逃げられたことをどう報告しようか。下手に正直に答えたら、逃げる事を手伝った子達にも被害が及ぶ。また闇属性の力で無理矢理鎖を破ったとなるなら、シェリアが余計に動きづらくなる。

クレアメンスの闇嫌いは相当なものだ。
表向き生徒たちに顔に出さないけれど。きっと、俺が報告なんてしなくても気づくだろうしね。

観察対象のシェリアがいないなら俺がここに留まっても仕方ない。ゼノだって危険人物に変わりはない。ただ、遠くからでも彼女の様子を見たい。

「そうだね、暫くは陰ながら君を見守ろうか。」

彼女に危険が迫るなら、彼女を守ろう。彼女が闇魔法を制御するため頑張るなら、応援しよう。彼女が他の誰かを選ぶなら……。

「その時は殺してしまうかもしれないね。」

くくっと喉から声を出すように笑う。
いつの間にこんなに彼女に夢中になったんだろう。でも、今とても満たされている。

ルッサーレの家を嫌々、継いでから俺は自由でなくなった。学園の教師になったのは半ば無理矢理だ。当主の権限を使ってねじ伏せた。本来なら家で領地の事を管理していればいいのだ。
自由なんてなかった。教師になったのは一つの夢だったから。数年間の間だけだと無理矢理了承させた。

今は皮肉にも教師の立場が煩わしくなってしまっていたが、それもなくなった。

今、俺は自由で何にも縛られない。
その開放感がとても心地良い。
校長への言い訳が少々面倒ではあるが、シェリアの様子を離れた場所で見守ることにした。

「早く俺のものになってよね、シェリア。」

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...