乙女ゲームの悪役ボスに生まれ変わったけど、ヒロイン可愛すぎてつらい。

ファネシス

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第2章

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「でも、シェリア。どうやってゼノさんのところに行くの?」

「それなんだけど……。」

彼の住んでいる場所とか分からない。そもそも固定の場所に住んでいるかどうかも怪しいものだ。でも、何となく予感がある。

「ゼノのことだから、こちらの様子を、伺っていると思うのよね。……なんか呼んだら出てきそうな気がする。」

「そんな適当な。使い魔じゃあるまいし。」

使い魔、動物や魔法生物、魔族を使役した物の総称である。主人が呼び出せばいつでも現れるらしい。便利なものである。

「そうだよ、僕は使い魔じゃないんだからそんな簡単にホイホイ現れたりしないよー。」

「そうですよね。でも何処に住んでるんでしょうか。」

「俺とルヴィナスとかいちょーは姿形もよく知らないしね。黒いってことしか。」

「むむ、確かにそうだな。」

「……。え。ツッコミ待ちなのか、俺が指摘しなければならんのか?」

「フィオナは天然だと思いますけど、後の二人はワザとじゃないですか?」

……。
いつの間に現れたのか黒い影が一人混じっていた。ゼノである。本当に出てきたよ。神出鬼没。

「やほー、初めましての人がほとんどだね。僕の名前はゼノ。んー、でもそこのメガネ君は一度会ったね。再びよろしく!」

ゼノがおどけた調子で優雅に一礼をする。ちなみに今は青年の姿だ。妙に様になっていて、雰囲気があった。

「ゼノというのはお前だったのか!?」

そういえば、一度彼らは会っている。私が何も説明していなかったから、ルヴィナスにとって同一人物と繋がっていなかったのか。

「あの時はごめんねー。攻撃しちゃってさ。ま、生きてるから問題ないよね。」

「問題あるだろう!」

ルヴィナスが怒鳴る。一歩間違えれば死んでいたわけだから無理もない。

「ダメだ。シェリア、こいつがゼノと分かった以上、お前を行かせるわけにはいかない。」

ルヴィナスが慌てて私とゼノの間に割って入る。

「えー。僕とシェリアの邪魔をするの?  どうしようかな。やっぱりあの時殺しておけばよかったね。」

「馬鹿言わないで、ゼノ。」

この調子だと本気でやりかねない。話を逸らそう。

「どうせ話を聞いていたんでしょう?  で、貴方は受け入れてくれるのどうなの?」

「そうだねぇ。本当はシェリアだけが良いけどねー。まっ、そこの子も気になるんだよね。クレアメンスが気にかけている子なんだものね。いいよ、面倒見てあげる。」

「くれぐれも二人とも気をつけろ。油断はするな。」

あっさりと承諾したゼノ。そして、気をつけろと忠告するスウォン。スウォンもあまり表立って止めはしないが、フィオナの事を気にしているはずだ。

「定期的に連絡できるようにするわ。ごめんなさい。フィオナまで巻き込んで。」

「いいえ、私が選んだことだもの。私はシェリアを一人にしたくないの。」

「フィオナ……。ありがとう。」

私とフィオナは手を取り合う。ああ、私はフィオナにこんなにも思われているんだ。幸せだ。

「あー、ごほん。」

ルイスがワザとらしい咳をする。

「むむ。離れるんだ、二人とも。なんだか怪しい気配を感知したぞ。」

ルヴィナスが私とフィオナの手を外す。

私とフィオナの愛の戯れを邪魔するなんて。全く気の利かない人たちである。

「じゃあ、移動するよ。ま、二人のことは僕に任せて。」

ゼノが私とフィオナの手を取る。

「くっ、本当は任せたくなどないが……。」

スウォンが悔しそうに歯がみした。無理もないけれど。

「スウォン先輩。絶対また戻ってきますから。」

そんなスウォンにフィオナは笑顔で答えた。

そして空間がぐにゃりと歪み、気がつくと私達は古い民家の中にいた。他の三人の姿はない。ゼノが魔法で移動したのだろう。

「フィオナ、体調大丈夫?」

ゼノの魔法なら闇属性。フィオナが体調が悪くなってもおかしくない。私は慌てて彼女を見遣った。

「え?  私、平気だよ?」

予想に反してフィオナは元気そうだ。私の問いかけの意味がわからないという顔をしている。

「ふふ。シェリアは心配性だね。僕が使ったのは確かに闇魔法の一種だけど、フィオナには影響はないよ。……まぁ、おいおい説明するよ。」

ゼノは笑ってそういった。
どういう事だろうか。私はクレアメンスの移動魔法で具合が悪くなったというのに。

「君達は『属性』にこだわっているね。本来、魔力はすべからく一つのものを指している。根本は同じなんだよ。」

「そんな話聞いた事ないけど。」

「教科書に載っている話だけが真実じゃないさ。僕のように『正当な道』とやらを踏み外したからこそ見えるものがあっただけだよ。」

ゼノは皮肉めいた笑みを浮かべた。

「クレアメンスは『正当な道』に拘って生きてきたみたいだけどね。全てを知った僕にはそれはとても阿呆らしく、滑稽なものに思えるよ。」

「クレアメンスさんは立派な人です。滑稽だなんて事ありません!」

フィオナは尊敬するクレアメンスがそのように言われたのが、我慢できなかったらしく眉を吊り上げ反論した。彼女にとっては命の恩人で学園の後見人。複雑な感情があるのだろう。

「ふん。常に『正当な道』が真に正しい道とは限らないさ。」

ゼノは小馬鹿にした笑みでフィオナを見た。
ゼノもクレアメンスには複雑な感情を抱いているようだ。昔は仲が良かったらしいから、余計に複雑なのだろう。

「ま、まあまあ。二人とも。で、ゼノ。魔力は根本で同じってどういう事?」

このままではラチがあかないので適当に止めに入る。彼も気になる言葉を言っていたし、続きが聞きたいのもある。

「簡単な話だよ。元々、魔力という不可思議な力は一つの巨大な力を指している。そこから細分化されていって今の四属性、闇と光があるわけだね。だから、元の魔力は同じ。少し力への呼びかけを変えるだけで何の色にも変えられる。勿論、それ相応の技量は必要だけどね。」

昔、ゼノに教えてもらった姿変えの呪文。確かに一風変わった代物だった。問いかけ、と言えば確かに誰かに語るような口ぶりの呪文だった気もする。

「ま、早い話が通常の呪文を書き換えて魔力の属性を無にしたわけだ。僕の力は強すぎる。うっかりするとフィオナが死んでしまってもおかしくないからね。」

さらっと恐ろしい事実を言う。

「む、難しいお話ですね。ゼノさんの言うとおりだったとすれば、学校で教わる魔法歴史学を根本から否定する事になります。」

フィオナが頭をひねりながら考え込む。

……。魔法歴史、その名のごとく、この世界の魔法の歴史の授業だ。
この世界は四つの属性で成り立っている。それぞれに火の精霊、水の精霊、土の精霊、風の精霊がいると言われ、魔力は彼らの力を借りている。光と闇はよく分かっておらず、公式に教科書に載る事はない。ただ、あくまで俗説だが。
光は神の力。闇は魔族の力。そう言われている。

「僕が知っている事は今の君達に理解するのは少し難しいと思うよ。これから僕が教えてあげる。フィオナ、君もだ。どうせ、クレアメンスは君の才能にも気づいていなかったんだろう。それか、気づいて無視していたのかもね。あいつは事なかれ主義だからさ。」

ゼノはやれやれと手を振りながら言葉を続ける。

「こうして僕の元に来てくれたんだ。君達には僕が培った知識を分け与えてあげる。」

ゼノは楽しそうに嬉しそうに笑った。
その顔には邪気もなく、本当に心から嬉しそうな笑顔だった。
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