乙女ゲームの悪役ボスに生まれ変わったけど、ヒロイン可愛すぎてつらい。

ファネシス

文字の大きさ
39 / 60
第2章

サブストーリー ~可愛い猫ちゃん~

しおりを挟む
シェリアの特訓はその後も続きました。
ゼノさんが言うには心の乱れが魔法の暴走に繋がるそうです。なぜ、シェリアの魔法の暴走が私が要になっているのかはよくわかりません。でも、シェリアは優しいから頼りない私を心配してくれているからかもしれません。

ゼノさんから私の魔法も危険だと言われてとても驚きました。他人の魔力を増幅する事はとても危険な事だったんですね。
今まで暴走しなくて良かった。

私も訓練をしたいとゼノさんに申し出たのですが、君は心配いらないと断られてしまいました。

「君には思う人がいるだろう?」

シェリアが魔力を使い果たして、横になって眠っていた時の事です。私はシェリアの頭を膝に乗せて寝かせていました。ゼノさんが私に話しかけてきました。

「思う人……?」

思う人。どういう意味でしょうか。

「好きな想い人がいるだろう。君はそれによって心の安寧を得てる。だから、魔法が暴走する危険性はない。」

「!」

思う人。スウォン先輩……。
確かにそうかもしれません。スウォン先輩が微笑むだけで、私の心はとても満たされます。そういう意味では心の安寧を得ているという事でしょうか。

「その想い人関連の事で問題が起きれば君の魔法も暴走する危険性が伴われるけど。今のところそんな事はなさそうだ。だから君は大丈夫。」

要は心の問題という事なんでしょうか?
魔法とは難しいものですね。

「ゼノさんは魔力を暴走させた事はあるんですか?」

いつも飄々として余裕のありそうなゼノさん。聞けばシェリアと同じ闇属性だとのこと。この人はなぜ魔力が暴走しないんでしょうか?
何かコツがあればシェリアも安定するのではないのかなと思い聞いてみました。

「ずっと昔にはそんな事もあったけど、今はそんな事はないよ。」

昔を思い出したのでしょうか。少し悲しげな顔で遠い目をしながら答えるゼノさん。
クレアメンスさんと対峙していた時は怖いとさえ思ったのですが、今はそんな雰囲気がありません。むしろ庇護してあげたくなるような、そんな、雰囲気です。怪我をした動物みたいな。

「僕はね。フィオナ。君達には僕達みたいな事になってほしくないんだ。だから、魔力の制御について教える。でも、それだけしか僕にはできない。後は君たち次第だから。」

ゼノさんは寝ているシェリアの髪をそっと撫でながら言いました。

「本当は彼女を僕のものにしたかったけど、彼女は前に向かって進もうとするし。こちらに全然なびいてくれやしない。ちょっかいをかけても自分を見失わなかった。その上、僕を寂しい人とか言ってくるし。」

後半は私に向けてというよりも、ゼノさん自身に言い聞かせているように聞こえます。
彼もまた何かに悩んでいるのでしょうか。

「その内、花嫁にしようとか思えなくなっちゃったよ。彼女は前に進むべきだ。」

ゼノさんは撫でていたシェリアの髪から手を離すと振り切るように立ち上がりました。

「そろそろ、シェリアも起きるだろうし練習再開だね。」

「んん……?」

まるでゼノさんの言葉を聞いたみたいにシェリアが起き上がりました。

「あれ、私寝てた?」

「少しだけよ。そんなに時間経ってないから大丈夫。」

目をこすりながら尋ねるシェリアに言葉を返します。
少し眠そうに目を細めるシェリアは猫みたいで可愛いな。そんな事を本人に言ったら貴女の方が可愛いとかいって押し問答になってしまうけど。

「じゃ、練習を再開しようか。」

ゼノさんがそう言って広場の真ん中の方へ移動します。シェリアもそれに伴って移動しました。

「いたっ。」

移動するシェリアの後ろ姿を見守っていると少し頭痛がしました。最近、シェリアを見ていると時折強い既視感に襲われることがあります。自分でもよくわからなくて。でも、すぐに治るので誰にも言っていません。シェリアを見ているとどこか懐かしい感覚にとらわれます。心地よいような、でも痛むような。

シェリアは順調に魔力を杖の先に安定ささているようです。ふと気づくとゼノさんが私の目の前に来ていました。

「ちょっと我慢してね?」

そう言うと私のおでこにチュッと音を立てて口付けました。結構、恥ずかしいのですが、シェリアの修行に重要のことらしいので我慢です。

ボンッ!

すると、先程まで安定していたシェリアの魔法が弾けるように爆発しました。

「あーあ。また、ダメだったねぇ。」

どうやら、失敗に終わったようです。
先程から似たような事が続いています。ですが、少しずつ徐々に安定していっている気がします。最初はもっと派手に闇の玉が膨張しこちらも身の危険を感じる程だったのですが、今は力が霧散する感じで。暴走しても威力が落ち着いている感じです。

「くっ、もう一度……!」

シェリアは悔しそうに歯がみするとまた杖の先に魔力を込め出しました。
さっきも魔力枯渇で倒れたばかりなのに、大丈夫かな。あまり無理しないでほしいけれど。

「やれやれ、シェリアは頑張り屋さんだね。」

ゼノさんは呆れたような声を出しました。練習をしてからかなりの時間が経過しています。ゼノさんもシェリアをそろそろ休ませたいと考えているのでしょう。今度は私にちょっかいを出さずにシェリアの方へ向かって行きました。

シェリアはどうしてあんなに必死になって魔力を制御しようとしているのでしょうか。
勿論、魔法が暴走したら危険だというのは重々承知しているのですが、それ以外にも理由がありそうな気がします。なんとなく勘なのですが。こんなことを言っていたらスウォン先輩に怒られてしまいますね。スウォン先輩は現実主義ですから。

スウォン先輩。あの人のことを思うだけで心が満たされます。スウォン先輩の役に立ちたい。私ももっと魔法を自在に操れるようになりたい。

ふと、シェリア達の方を見ると何か言い合っている様子が伺えました。ゼノさんが休憩を促しているのをシェリアがまだ続けると言い合っているみたい。
私もシェリアに無理をしてほしくない。シェリアに休憩するように私からも伝えよう。二人の元へ私も向かいます。

「もう少しやれるってば。」

「さっきも倒れたばかりでしょ。もう君は休むべきだ。」

「あと少しだけだって!」

「君は強情だな。」

二人の元に着くとシェリアに向かって声をかけます。

「あの、シェリア。少し頑張りすぎだよ。少し休もう?」

「フィオナがそう言うなら休むわ。」

「僕とフィオナに対しての態度違いすぎない!?」

どうやら休んでくれるみたいです。
ゼノさんは何やらブツブツと呟いていますが……。

「ああ、でもフィオナ。お願いがあるんだけど……。」

「なあに?」

シェリアからお願いだなんて珍しいなあ。一体なんだろう?

「……さっき、みたいに。」

「?」

声が小さくてよく聞こえない。シェリアは少しもじもじしながら告げる。

「膝枕して欲しいな?」

少し頬を染めながらそういったシェリアが可愛らしく思えて。思わず少し笑ってしまった。
時折、シェリアは可愛らしいことを言う。

「勿論。私の膝でよければいつでもかすよ。」

私がそう返すと、シェリアは嬉しそうに微笑んだ。

「ついてけないよ。」

少し離れたところでゼノさんが呆れた風にこちらを見ていました。何かおかしかったのかな。
私は学園に来る前も周りに同世代の女の子がいなくて。女友達の距離感がよく分からない。でも、シェリアが喜んでいるからいいかな。

ゼノさんがここに来た時のように空に手を振ると周りの風景が変わり、サンドイッチを食べた部屋に戻った。
一体呪文も唱えずにどうやってやっているんだろう。ゼノさんはすごい人なんだなあ。

そのあと、私は約束通りシェリアに膝枕をした。シェリアは嬉しそうに横になっていてまるで猫みたいで可愛かった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...