乙女ゲームの悪役ボスに生まれ変わったけど、ヒロイン可愛すぎてつらい。

ファネシス

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第2章

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「まぁ、僕の事なんてどうでもいいじゃない。で、首謀者がわかってどうするの?  学園で元の生活に戻るなんてほぼ不可能だよね。」

ゼノは最初から分かっていて、魔法を教えたのだろうか。暴走させてフィオナを傷つけることはなくとも私に行き場所がない事を知っていて。

「そうね……。まず、フィオナだけは学園に戻すわ。あの子は普通にやっていけるでしょうしね。」

フィオナはスウォンの側にいる事を望むはずだ。彼女にとって大切な人だから。

「そう。君はそれでいいんだね。僕はてっきりフィオナを自分の手元に置いておこうとすると思ったよ。」

「本当ならそうしたかったけど、でも、そんな事してもフィオナは幸せになれないもの。きっと私のこと恨むわ。」

「誤魔化す方法なんていくらでもあると思うけどね。ま、僕は君の判断を応援するよ。」

フィオナになんて伝えようか。
彼女はきっと二人で元の学園生活に戻れると思っているだろうから、簡単には納得してくれないだろう。

「あ、あの。どういうこと。シェリア…。」

そこにはいないと思っていた彼女の声。
慌てて振り返るとドアの隙間からフィオナがいた。

「ごめんなさい、盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど。」

申し訳なさそうな顔をするフィオナ。
どこから話を聞いていたんだろうか。というか、ゼノは気づいていたはずだ。ふと彼のいる方向を向き直るとそこには影も形も姿がなかった。あの野郎。

「え、えっと……。どこまで話を聞いてたのフィオナ?」

私は慌てて彼女に問う。

「クレアメンスさんがあの事件の首謀者でフィオナが学園に戻れないというところから。」

という事は私達が双子という部分は聞いていないということか。今話すのは彼女を余計に混乱させそうだ。残念だが、またにしよう。

「そう。……中間試験の事件、私はてっきりゼノだと思っていたんだけど。どうやらクレアメンス校長の仕業がみたい。」

「……。」

「狙いはおそらく私。私の闇魔法が気に入らないみたい。昔、ゼノとなんかあった関係みたいね。」

「クレアメンスさん、ゼノさんとお友達だったって言ってた。でも、ゼノさんの裏切りで疎遠になったって……。」

「そう……。」

「ねぇ、シェリア。あなたを傷つけたクレアメンスさんを許せなんて言えない……。こんなことを言うのはおこがましいかもしれないけれど、少し時間をちょうだい。クレアメンスさんは私にとって命の恩人で迷っていた私に光を指し示してくれた大切な人なの。」

フィオナも色々悩んでいるのだろう。私に対して言葉を選びながら話しているのがうかがえる。

彼女にとってクレアメンスは重大な人物だ。彼なくしてはフィオナはここに存在しない。幼い時、命を救ったのもクレアメンス。家が大変なことになり記憶も薄れ落ち込むフィオナを救ったのも彼。そして学園に導いたのも彼。

「クレアメンスさんのおかげで私は前に進めた。クレアメンスさんみたいな立派な魔法使いになって……私の両親の敵を見つけたいの……。」

彼女の立派な魔法使いになりたいという夢は、家の事件を解明したいという理由もあるらしい。

「尊敬するクレアメンスさんが傷つけるような真似すると思えない。だから私、直接話を聞きたい。」

まて、それは俗に言う死亡フラグでは。
彼女の気持ちは分からなくもないが、あんまり危険な事はしてほしくはない。とはいってもフィオナを気に入っているクレアメンス。そう無体な真似はしないとは思う。彼女に任せるのも手かもしれない。

「私は家を傷つけた魔法使いを許せない。クレアメンスさんがそんな人達と同じような人間にはどうしても思えないの。お願い、シェリア。私に行かせて!」

「……。分かったわ。」

私は間を空けて頷いた。本当なら何も知らせず安全に学園生活を送っていて欲しかったのだが。彼女が何かを成すことを望むなら私はそれを手助けしたい。フィオナが望むなら何でもしてあげたい。

「でも、フィオナ。クレアメンス校長があなたを傷つけるとは思えないけど、危険なことには変わりない。事情を話してスウォン先輩達に手伝ってもらって。」

「分かった。スウォン先輩に話してみるよ!」

フィオナは元気よく頷いた。

「話はついたのかな?」

何もない空間からゼノがふっと現れた。

「ゼノさん、私を学園まで連れて行って下さい。」

「構わないよ。でも、僕の魔力波動はクレアメンスに警戒されている。学園から少し離れた所までしか連れて行けないよ。」

「それで構いません。お願いします!」

準備ができたら声をかけてとゼノが言うとフィオナは自室に戻り荷物をまとめに行った。

「ゼノ、貴方都合が悪いと姿消して……」

「君達二人の方が話しやすいと思ったんだよ。僕なりに気を使ったんだ。それより、良かったの?」

「何が?」

「君達二人が唯一無二の肉親だってこと言わなくてさ。」

「今はそれどころじゃないでしょう。全部終わってから、ゆっくりと話すわ。」

「そう、手遅れにならないといいけどね。」

ゼノが不吉なことを言う。

「ちょっと嫌なこと言わないでちょうだい。クレアメンスがフィオナに傷つけるような真似する訳ないわ。」

「そっちじゃないよ。クレアメンスはフィオナは傷つけないさ。大事な弟子だからね。シェリア、君は覚えていないのかな?」

ゼノは人を煙に巻くような物言いが好きなようだ。話していると要領が得なくてイラっとする。

「何?  私はほとんど記憶を取り戻してるわよ?」

「いや、肝心なことを思い出してない。」

少し思い当たらないでもない。何か私は肝心なことを忘れている。一番大切な何かを。母親に魔法を封印されたのにも関わらず、その辺を一切覚えていない。きっとその事をゼノは指しているのだろうが。

「その記憶を思い出した時、君は君でいられないかもしれない。」

「まどろっこしい言い方しないで。はっきり言えばいいじゃない。」

「僕の口から言うべきことじゃない。君が自分で思い出そうとしなきゃダメだ。その為にオフィーリアも強固な封印を施したんだろう。」

思いがけず母親の名前が出てきて驚く。
加えて見たこともない位、真剣な表情でゼノがこちらを見るものだから言葉を告げなくなってしまう。

「君が壊れないように。」

私が?

ガチャ

その時、フィオナの部屋のドアが開く音がしてリュックを背負った彼女が出てきた。

「準備ができました。ゼノさん。すみませんがお願いします。」

「……オーケー。シェリア、君はどうする?」

「フィオナが安全な場所に着くまでは送っていくわ。」

「了解。」

ゼノは空へと手を振る。
それだけで周りの景色が歪み、周りに木々が生い茂る森に変わる。時刻が朝なのもあり、鳥が活動し始めちゅんちゅんと鳴いている声が辺り一帯からする。

「あ、学園の塔の一角が見えますね。」

フィオナが遠くを指さす。
魔法学園は建物自体とても大きく、遠くからでも塔が見える事もある。さして離れた場所ではないということか。

「僕はここで一旦戻るよ。クレアメンスは僕の魔力にストーカー並みに聡いからね。じゃ、気をつけてね。」

そう言ってゼノはまた姿を消した。
ストーカー並みって、もうちょい表現の仕方はなかったのだろうか。

「シェリア、行こう?」

フィオナが笑顔でこちらを見て手を差し伸べてきた。

手をつなぐということだろうか。
フィオナと手をつなぐ……!

私はフィオナの手をとって学園へと歩き出した。幸せだ。

このまま朝の森をフィオナと永遠に散歩し続けられたらいいのに。

でもそんな願いは届かない事を私は知っている。
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