乙女ゲームの悪役ボスに生まれ変わったけど、ヒロイン可愛すぎてつらい。

ファネシス

文字の大きさ
42 / 60
第2章

サブストーリー ~彼女を見つけた~

しおりを挟む

あれ。
なんで彼女たちがこんな所にいるんだろう。

俺は思わず二度見した。
シェリアはスウォン達の手を借りて学園から脱走した。その後、シェリアとフィオナはゼノの手を借りて別の場所に移ったということは知っていたが。

まさか、こんな所にいるなんて思わなかった。

シェリアをしばらく見守ろうと側に少しでもいようと思い行方を追っていたが、思うようにいかず彼女らの行方は分からなかった。
校長への報告も思ったより時間がかかってしまい捜索を始めるのが遅くなった事もある。半諦めかけていたが、学園近くの森で会えるとは。
学園に戻ろうとしているのだろうか?

「やぁ、二人とも。学園に報告なく無断外泊で遠出するなんて。悪い子達だね。」

俺は二人に声をかけた。
二人の反応は対照的で面白かった。
フィオナは声をかけられて瞬間は驚いていたが俺の顔を見ると安心したような笑顔を見せた。
シェリアは俺の声を聞いた途端から絶望に満ちた顔をしていた。色々やったから警戒するのも当然ではあるけど。あまりに正反対な行動をするものだから少し笑ってしまった。

「何であんたがここにいるのよ。」

シェリアがこっちを射抜くような目で睨みながら言う。相当警戒されてるね。

「それは学校を抜け出した君たちを探すためだよ。」

「あっ!  えと、その件なのですが理由がありまきて……」

フィオナが慌てて事情を説明しようとする。スウォン達はフィオナの不在を幻覚魔法やら何やらで周りをごまかしていたが、俺や学園長までは流石に誤魔化せない。しかし、ほとんどの生徒や教師が騙されていた。将来が楽しみな優秀な生徒達だねぇ。

「うんうん、大体の事情はこちらも察してるよ。大丈夫。」

俺はフィオナを安心させるようにいつもの調子で笑う。
フィオナはホッとしたような顔をしたが、シェリアは相変わらずこちらを睨んでる。

「あのねぇ。貴方の胡散臭い笑顔を見るのはもういいの。」

シェリアが俺に杖を向けながらこちらを睨む。フィオナが驚いた顔でシェリアを止めようとしているが効果はないようだ。

「シェリア、キリト先生に杖なんて向けちゃダメだよ!」

「フィオナ。こいつはクレアメンスに従ってた。事件にだって関わってるかもしれないのよ。口では最もらしいこと言ってるけど、当てにならないわ。」

その言葉にフィオナは肩を落とした。
事件……。中間テストの時だろうか。
校長が何かしているのは感づいているが、ハッキリしたことは本人からは聞いていない。恐らく真っ当な理由ではないことは見て取れたので本人から直接聞いてはいない。

「何を言っているかわからないけど、君達は学校に強制送還だよ。」

校長には二人は見つけ次第、学校に戻すよう伝えられている。大げさにしたくないため、彼女らの行方を捜しているのは数名。見つけてしまった以上、連れ戻さなくては。
恐らくシェリアは学園に戻れず監禁生活を余儀なくされるけど。

「ま、待ってください、キリト先生。私はともかくシェリアは学園に戻る訳には。」

彼女達も感づいているのだろう。シェリアは校長の元で捕まる事を。
シェリアの様子を見ると杖をこちらに構えたまま何か思案しているようだ。俺一人相手なら逃げ切れると思っているのだろうか。

……ふと、馴染みある気配が背後から現れる。どうやら勘付いて彼も来たようだ。

「いや、君たち二人には学園に戻ってもらうよ。」

「クレアメンスさん!」

「学園長。」

二人が同時に声を上げる。
学園長自ら来るなんて少し予想外だった。朗らかな笑みをたたえながら学園長は話し出した。

「シェリア殿。君はゼノと接触して闇に引き込まれそうになっている。それから守るために君を閉じ込める形になってしまった。だが、誤解しないでほしい。これはあくまで君のためなんだ。」

「いい加減にして。そんなの建前でしょう。貴方は闇魔法を使うものを極端に嫌ってるだけじゃない。」

「そんな事はない。どうか私を信じてほしい。」

「学園長、貴方ですよね。中間試験で生徒を操っていたのは。」

シェリアが俺に構えていた杖をクレアメンスに向ける。

あの事件はクレアメンスから、一般に公表された顛末は犯人がゼノという事だった。
他ならぬ大賢老とされるクレアメンスの口にした事だ。誰も疑うものはいなかった。

「何を言うのだ、シェリア殿。あれはゼノの仕業だよ。あいつは昔から享楽主義だからね。私の事が気に入らなくて学園に悪影響を与えようとしたのだろう。」

「あれはゼノの仕業じゃないわ。」

「本人がそう言ったのかな?  だとすれば、君は彼に毒されているのだろう。」

シェリアの言葉に取り合う気はないのだろう。
校長は闇魔法を忌み嫌っている。きっと彼にとって存在そのものが目障りなのだ。

「まあ、落ち着いてください。校長。」

俺は校長に声をかけた。このまま、なし崩しに彼女が監禁生活をおくるのも可哀想かなと思ったのだ。シェリアを俺の元に置いておきたいのは事実だけど、彼女の意思できて欲しい。校長なんかの言いなりじゃなくて。

「なんだね、キリト先生。」

煩しげにこちらを見る校長。その目には邪魔をするなという意思表示がありありと見て取れた。

「どんな理由があれ、教師は生徒の話を聞くのが仕事です。頭ごなしに否定していては生徒の成長の妨げになります。」

「君はもう少し賢いと思っていたんだがね。……グロウス。」

瞬間、校長の周りの魔力の流れが変わった。
まずいと思って俺は立っている場所から慌てて離れる。

俺が立っていた場所は周りの草木が急成長し絡まりあっていた。
あそこに立っていたら植物に動きを封じられていただろう。やれやれ、殺気立っているなあ校長は。

「クレアメンスさん!?」

フィオナが驚いた声を上げている。
彼女にとって穏やかなクレアメンスがこの様な事をするのは予想外だったんだろう。

「フィオナ。闇魔法を持つものは危険なんだよ。私はそれを身を以て知っている。」

校長の魔力は相変わらず荒れている。
何を仕掛けてくるかわからない。俺は下手に動く事ができずにいた。

「ゼノの起こしたあの事件を私は生涯忘れる事はないだろう。……それに比べて私が起こした中間試験の事など小きもの。」

これ以上、誤魔化すのは無理だと感じたのか。それとも他の理由か。
先程まで否定していた事をあっさりと認める校長。

校長の魔力が濃く荒れる。まるでここだけ重力が強くなったみたいだ。これほどの魔力を持っているとは。ふと、シェリアを見ると辛そうに少しよろめいているのが見て取れた。校長との魔力相性が悪いので余計に負荷がかかっているのかもしれない。

だが、俺もフィオナも似た様なものだ。
校長の魔力に当てられて身動きが取れない。

「ああ、憎むべき闇。破壊の力。混沌の力。人を傷つけ、死に至らしめるだけしか力を発揮できない。そんなものこの世から失せて仕舞えば良い。」

校長が今までに見た事のない形相をしていた。
はは、ここまで校長が闇魔法を憎んでいるとは思わなかった。

「フィオナ。君は私と同じものを持っている。世界を救う光だ。本当は真実を知った者は消してしまおうと思っていたのだが。君がいなくなってしまうと予定が狂うからね。」

校長が動けないフィオナに近づき頭に手をかざす。何か魔法を仕掛ける気だ。
それに気づいたシェリアが校長の邪魔をしようと杖をかざす。

「フィオナに手を出さないで。」

「無駄な事だよ。」

校長があっさりとシェリアの杖を折ってしまう。この状況下で杖なしで魔法を放つのは困難だろう。

「さあ、眠るんだ。フィオナ殿。起きた頃には全て忘れている。」

「う、うう。」

フィオナが苦しそうにうめき声を上げる。
記憶操作の魔法か。

ああ、くそ。
結局俺には何もできないのか。
昔と変わらない。肝心な時に何もできない。

「あは。クレアメンス。相も変わらず君は性格が悪い。ねじ曲がっているよね。」

突如現れた声。この声は聞き覚えがある。

「ゼノ!」

シェリアが声の主に気づき声を上げた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

この悪役令嬢には悪さは無理です!みんなで保護しましょう!

naturalsoft
恋愛
フレイムハート公爵家令嬢、シオン・クロス・フレイムハートは父に似て目付きが鋭くつり目で、金髪のサラサラヘアーのその見た目は、いかにもプライドの高そうな高飛車な令嬢だが、本当は気が弱く、すぐ涙目でアワアワする令嬢。 そのギャップ萌えでみんなを悶えさせるお話。 シオンの受難は続く。 ちょっと暇潰しに書いたのでサラッと読んで頂ければと思います。 あんまり悪役令嬢は関係ないです。見た目のみ想像して頂けたらと思います。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった

木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。 今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。 せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。 床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。 その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。 他サイトでもアップしています。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

処理中です...