乙女ゲームの悪役ボスに生まれ変わったけど、ヒロイン可愛すぎてつらい。

ファネシス

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第2章

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フィオナに拒否される。それは私にとって世界から拒否されるのも同義だ。
何故、こんなに貴女が愛しいのか。何故こんなに貴女が大切なのか。何故こんなに貴女を思うだけで胸が苦しくなるのか。

両親が亡くなった今。血縁はあの子だけだからかもしれない。
一人で寂しくて仕方なかった塔で、あの子が天使のような笑顔で遊びに来てくれたのがたまらなく嬉しかったからかもしれない。

どうしても彼女が恋しくなる。手に入れたくて仕方なくなる。閉じ込めてしまいたくなる。

「はは……。これじゃ、変態教師と変わらないじゃない。」

空へとこぼす言葉は空虚に空に消える。あの子が欲しい。でもあの子は受け入れない。あの子が私を拒否した。それが事実。

「フィオナ……。あなたが大好きで憎くて仕方ないわ。」

私を拒否してスウォンの元に行くなんて許せない。思考が飛躍する。きっとフィオナはスウォンの隣で笑うようになるんだろう。私のことなんて忘れて。だってゲームでもそうだったもの。シェリアという存在は悪役のラスボス。結局、貴女とは対立する運命なんだわ。

フィオナは私のことを忘れて他の人と幸せになるなんて事しないわよ。きっと私を受け入れてくれる。許してくれる。

頭の何処かで理性的なものが私を止める。いつもはそこで我に返って抑えられる負の感情。でも、今日は止まらなかった。今まで押さえ込んでた分、溢れ出ているのかもしれない。止められなくなる黒い私の嫌な感情。
フィオナが、私の元を離れて別の所へ行ってしまう。

耐えられない!
そんな事、許せない。

なら、それならいっそ。
受け入れさせればいいじゃない。
受け身になることなんてない。力でねじ伏せればいい。自分を受け入れないものを。

「ふふ、あはは。」

ゼノがやったみたいに力でねじ伏せればいい。私がフィオナを手にかければ、それで彼女は一生私のモノになる。

その時、完全に私の理性は消え去っていた。
フィオナを私だけのものにしたい。ただ、それだけの感情で動いていた。

「でも、少し時間が必要ね。」

まだ彼女を私のモノにするには色々足りない。あの子を永遠に私のモノにするんだ。最高の演出が必要だ。普通にあの子を貰っても満たされない。

「もう少しだけ待ちましょう。」

頃合いになったら、彼女がスウォンのモノになる直前に私が奪ってやる。そうしよう。私は決めた。悪役のラスボスらしく奪ってやろう。物語の終末に向けて歯車は動き出す。

その時、誰かが中庭から走ってくるのが見えた。可愛らしい私の天使。フィオナだ。

「シェリア!」

彼女の愛らしいその顔は涙で濡れていた。
全力で走ってきたのだろう。息を切らして私の前まで来る。そして、口を開く。

「ごめんなさい!」

フィオナは私に全てを思い出した事を伝える。泣きじゃくりながら。何度も何度も謝罪をしながら。

私は笑顔で大丈夫、思い出してくれてありがとうと言う。

少し前の理性ある私ならきっと喜んだだろう。フィオナと和解できた事に。彼女と同じように涙を流しながら。

でも、今の私には彼女と和解できた事に心は響かない。和解しても、いずれフィオナはスウォンのところに行くんでしょう?

私はフィオナを抱きしめながら、和解できた事を喜ぶフリをする。フィオナは相変わらず泣きじゃくっていたけど、安心したような顔をしていた。

ごめんなさいね、あなたを騙すような事をして。少し罪悪感。でも少しだけ。だって、いずれあなたにもっとひどい事をするんだもの。
今、この時だけは二人だけで抱き合っていたい。

私達は日が落ちて辺りが暗くなるまでその場で抱き合っていた。

ーーー

それからしばらく日にちが経って。
私達は元どおりの学園生活に戻りつつあった。私が長期間休んだ事は病気という事になっていて、最初クラスメイトが数人心配して声をかけてきた。

授業が終わるとフィオナはスウォンと魔法の練習をしに行く。その甲斐あってかどんどん魔法は上達しているみたい。

「行ってくるね、シェリア!」

「ええ、頑張ってね。フィオナ。」

この日も私はフィオナの後ろ姿を見送った。表面は穏やかな笑顔で。私達が姉妹だと学園で知るのはスウォン達やルヴィナス、キリト、ルイスといった事件の関係者だけ。まあ、ゲームの攻略対象達だけだ。他の一般生徒には知らせてない。変に騒がすのも面倒だという事で伏せたのだ。

もう一人事情を知っているゼノはあれから姿を見ていない。一体どうしているのか少し気になるところだが、どうやら彼は自分の居場所が特定できないように周りを撹乱しているらしい。校長殺害の罪で方々から追われているが目撃情報が一切ないのだ。

後、リィナ先生はフィオナがスウォンに話した時、医務室にいた事もあり事情を知っているらしい。彼女なら口も硬そうだし大丈夫だろう。

フィオナを見送り、私も帰り支度をする。
フィオナとスウォンの仲はどんどんと進展して行っている。ベストエンド目前といったところだろうか。そろそろ頃合いだろうか。

「シェーリーアー。」

変な抑揚をつけて私の名前を呼ぶ声が聞こえて振り返る。そこにはキリトが立っていた。ニコニコと笑顔で。

元の生活に戻ってからキリトは私に好意という名の狂気をぶつけてくる事は無くなった。彼もクレアメンスが亡くなるという不測の事態により教師に戻った。その為、教師と生徒という周りの目からか大人しくなったのだ。正直助かっていた。あの昏い目を見るのは怖い。

しかし、何の用だろう。周りに誰もいないが、こうして個人的に声をかけてくるのは珍しい。

「……何か用かしら、キリト先生。」

私は彼を睨みつけながら応える。
警戒していますよとアピールするように距離をとる。

「そんな警戒しないでよ。まあ、色々あったししょうがないか。」

他人事みたいに言うが、お前が原因だろうと突っ込みたくなる。

「あのねぇ、私は貴方の事、大っ嫌いなの。話しかけられるのも億劫なんだけど。」

「はは、酷いなぁ、シェリア。」

酷いのはどっちだ。

「まぁ聞いてよ。ねぇ、シェリア。最近君の様子はどうかと気になってね。どう、元気?」

なんだろうこの質問は。一瞬、考えている事がバレているのかと動揺する。でも、色々事件に巻き込まれた生徒を案じる先生のようにも見える。

「ええ、まあ……。元気だけど。」

とりあえず普通に答えておく。
この教師のことだから内容通りの言葉じゃないだろう。勘が鋭いから何か気づいているのかもしれない。

「そう、元気なら良かったよ。」

そういってニコニコと笑うキリト。一体何がしたいんだ、こいつは。彼の考えが読めなくてイライラとする。早く去ってくれないだろうか。

「俺の気のせいなら良いんだけど……。君、最近様子がおかしいように思えてね?」

……。
私は普段通りに過ごしているつもりだが、何かおかしい点があっだだろうか。今までの行動を思い起こすが特に不審な点は見当たらないと思う。

「先生の気のせいでは?」

淡々と返す。胸の内を悟られてはいけない。動揺させて揺さぶっているのかもしれない。

「君、最近。フィオナちゃんに対して優しくなったよね。」

「私は前からフィオナには優しいと思っていたんですが、先生からはそうは見えなかったのでしょうか?」

「そうだね、言葉に語弊があったね。もちろん君は前から彼女に対して優しかったよ。今でも変わらない。」

じゃあ何がおかしいというんだ。

「何だか、……そうだな。違和感を感じる。今まではもっとフィオナちゃんに執着していたのに最近は緩和されてる感じがする。今日だって彼女を笑顔でスウォンの元に見送った。それが俺には不自然に思えて仕方ないんだ。」
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