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第1章
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あなたみたいな厄介者引き取ってあげただけでも、感謝なさいな。
いいか。この家に迷惑をかけているんだ。自覚しろ。
ああ、これは学園に入学する前の記憶か。
義両親の冷たい言葉を浴びせられて何も反応できない私。
魔法学園に入学しろ。優秀な成績を収めてきたらこの家のものと認めてやろう。
言われたままを信じて私は入学試験のため勉強し、特待生になることができた。
早く家を出たい。義両親に認められたい。…フィオナに会いたい。
そんな必死の思いで勉強した。
なのに、フィオナ。貴女は別の人のところに行ってしまうの?
ーーーー
私は椅子に腰掛け膝に本を置いてうたた寝をしていた。
…変な夢を見た。昔の夢だ。
夢の最後に自分が思ったことがとても恐ろしく感じた。最初、入学式で会った時は無関係であろうとしたこともあったはずなのに。この気持ちは何だ。私は最低じゃないか。どんどん自分がわからなくなっていく。
…あの変な少年ゼノが現れてから数日がたった。
今日は休日。わたしは寮の自室で本を読んでいたところだった。題名は『エクスペリアルの魔女』私が小さい頃によく読んでいた絵本の小説版だ。フィオナは会長と魔法の特訓だ。朝早くに、いってくるねー!と私に声をかけて去って行ってしまった。
私は本を膝の上に伏せ考えた。ゼノのことだ。
わたしの前世の記憶を探ろうとしても全くと言って情報が出てこない。
そういえば、後一人攻略対象が出てきていない。彼は関係あるのだろうか?
いつもなら攻略対象の顔を見るとふわーっとその人物の情報が流れ込んでくるのだが、彼を見ても全くと言っていいほどわからなかった。攻略対象ではないということだろうか。
それに、キリトだ。
昨日、キリトが『デートに行こう』と言った時は、ついに彼の気が狂ったのかと思ったが。なんだかんだで楽しんでしまった。街に買い物に行くなんて初めてのことだ。
あー、ウタウダ考えるのも飽きてきた。
ゼノは何者かわからないし、キリトが買い物に誘った目的もわからない。
最近、悩みも多いせいか魔法の調子さえ悪くなってきた。魔法は精神の不安等で大きく変化するのだ。
私は膝に伏せていた本に再び視線を落とした。今はこの本を読んでしまおう。
私が頭をさげると髪がはらりと顔にかかった。少し邪魔だな。縛ろうかと思った時、異変に気付いた。
「黒!?」
髪が一房黒くなっていた。
私の髪は銀髪。これまでずっとそうだった。そのはずだ。
見間違いかもしれない。私は部屋の隅に置いてある全体鏡に駆け寄った。
黒だ。右側の横髪の一房だけがまるでメッシュを入れたかのように黒になっていた。
そういえば、ゼノが口付けた髪もこの辺だった。
『僕と君は同じ。お揃いだね。』
『印をつけておいた。』
ふとゼノが言っていた言葉を思い出す。
お揃いとは髪の黒で、印とは色が変わったことに関係するのだろうか。
私は魔法で髪の色を戻せないか呪文を唱えた。だが、全くと言って変化がなかった。
私は仕方なく黒の髪が目立たないように編み込んで見た。
少し黒がチラチラ見えるが髪飾りをつければごまかせるだろう。
黒はこの世界で忌避される色。
急に黒色になったら周りの生徒の反応も想像がつく。
私は一体どうなってしまったんだろう。
なんだか精神が不安定だ。
ーーーー
「まあ!シェリア。髪型を変えたのね!とてもよく似合ってる!」
休日が開け、学校へ行く途中。フィオナがそう言って声をかけてきた。
「ええ。気分転換にね。変じゃない?」
「いつものハーフアップも素敵だけど、編みこんだ髪型もとても素敵だよ!」
彼女は胸の前で手を組んでまるで宝石でも見るような目で私を褒めてくる。
…少し気恥ずかしい。
「ありがとう。フィオナ。貴女の…」
「?」
私はフィオナのフワフワとした金髪の髪を一筋すくう。
「髪もとても素敵よ。貴女はくせっ毛だからというけれど、このフワフワした髪が天使みたいで素敵。」
「はわわわわわ!シェ、シェリア!?」
彼女は顔を真っ赤にしてあたふたと慌てている姿はとても愛らしく可愛らしい。
レズではないが、何かに目覚めてしまいそうだ。
「き、君たちは何をしているんだ!」
後ろから声が聞こえ振り向くと、同じく顔を真っ赤にしてあたふたとしているルヴィナスがいた。
珍しい。普段は図書館に引きこもって出てこないのに。せっかくのフィオナとの二人きりを邪魔されてしまった。
「あら、ルヴィナス先輩。お久しぶりです。珍しいですね、外に出るなんて。」
私が少しトゲがある物言いをしたが、彼は少し平静さを取り戻したのか、ずり落ちたメガネを指で直しながら言った。
「僕と君たちは同学年だ。先輩などとつけなくてもいい。」
確かに留年して学年は一緒だが、何となく先輩と呼んでいる人が多く私もそれに習っていた。
「では、ルヴィナス。…貴方が外に出て来るなんて、珍しいですがどうしたんですか?というか、何で出てきたんですか?」
「僕が出てきたら悪いのか!」
…久しぶりのフィオナとの時間を邪魔されて私はイラついていた。少しくらい許してもらいたいものである。
…は!私は何を言っているのだろうか。
「こほん、すみません。少々イライラしていたので、当たってしまいました。」
「ま、まあ。虫の居所が悪い時は誰にだってあるからな。」
ルヴィナスは少し引き気味で答えた。
「え、えーと。それでルヴィナスさんはどうしてここに?」
先ほどから黙って様子を伺っていたフィオナが話を戻してくれた。
「ああ、変態教師に今日は中間試験の知らせがあるから絶対に教室に出てこいと言われたんだ。」
「そういえば、そんな時期ですね。」
季節は春も過ぎ徐々に暑くなってきた。
そろそろ中間試験がある。
試験は筆記と実技。筆記は言わずもがな。実技はこの前の四人チームで行われる。毎年課題がありその結果を判定して成績が出される。
「ああ。面倒臭いが仕方ない。お前たちに迷惑をかけるわけにもいかないからな。」
「ありがとうございます。ルヴィナスさん!」
授業に出るのは当たり前のことでフィオナが礼を言うものでもないと思うが…。
文句の1つも言いたいところだが、ここはぐっと我慢しよう。
私たちはルヴィナスを含めた3人で教室に向かうこととなった。
ーーーー
「さて、みんな。もうすぐ、お待ちかねの中間試験があるよ。」
朝のホームルーム。キリトが教壇の前に立っていつも通りの朝が始まる。
…誰も試験を待ち遠しにしている生徒はいないと思う。
「みんな、初めてのテストだから緊張してると思うけど普段通りに頑張ってね。まず、筆記試験はー」
確か、この実技試験でフィオナの光属性が判明する。確か魔法が暴発してしまうのだ。これにより、物語が大きく動き出すはずだ。
「実技試験はそれぞれのチームに課題がー」
課題…は何だったか?
そこまでは思い出せない。
「…ちゃん」
うーん、ここまででかかってるんだけどな。
「シェリア!」
「うわっ!?」
しまった、少し考え込みすぎてた。
「俺の話聞いてたかな~?」
ふと前を見るとニコニコーっと笑っているキリト先生のお姿。
「え!えと…」
「はい、俺が言ってたこと言ってみて?」
「課題の話ですよね。」
「うん、そうだよ。じゃあ、君たちチームの課題は?」
「それは、えと…」
「ちゃんと俺の話聞いててね~?」
「はい、すみません。」
「君たちの課題はズバリ潜入。」
せんにゅう…?そんな内容だっただろうか?
「君達のチームは魔法の力を継続することが困難な子が多いみたいだからね。潜入する系統の魔法は魔力の調整が肝になる。だから、ある場所に潜入して目的のものを持ち出すことが課題だよ。」
確かに、会長は攻撃特化。ルヴィナスもどちらかというと攻撃特化。フィオナの力は未知数。魔法を維持・継続するのは苦手なのかもしれない。
ちなみにルイス副会長は契約リングもそうだが、結界魔法や治癒魔法が得意である。つまり維持・継続が得意なのだろう。
「シェリアちゃんは魔法を維持するのが得意だろう?みんなの力になってあげてね。」
キリトは私の頭をポンポンと叩くとまた教壇へと戻っていった。
ーーーー
「シェリア、最近ぼーっとしたりすること多いけど…今日の魔法練習大丈夫?」
「大丈夫よ。心配しないで、フィオナ。」
私達は前にも練習に使用した場所で魔法練習をすることになった。
今回はルヴィナスも一緒である。
「ルヴィナスが来るとは珍しい。久しぶりに陽の下に出るお前を見た。」
「ふん、僕だってたまには外に出るさ。」
「じゃあ、早速始めましょう。」
潜入ということだから姿を隠す魔法。相手を眠りに誘う魔法。などが有効だろうか。
最近、授業で習ったので使うことに禁止事項はない。
「では、俺が手本を見せよう。」
スウォンがそういって杖を取り出した。
魔法を使うときは杖を利用することもある。杖は精神を集中させるのに有効だ。
もちろん、杖なしでも可能だ。
維持・継続する魔法は魔力を継続させる微調整が必要なので、杖を利用したほうが魔法を使いやすいと言える。
「まずは、眠りの魔法だ。…そうだな、ルヴィナス。お前が被験体になれ。」
「僕がか!?」
「他の二人を眠らせたら手本にならんだろう。お前は問題なく使えるし眠っても構わん。」
「むーー。仕方ない。早く済ませろ。」
私は問題なく使えるのだが、ここは大人しく手本を見ておこう。
「スリーピング」
会長が呪文を唱えると薄ピンクの霧のようなものが、ルヴィナスを囲った。
「ふわ~…。」
ルヴィナスは眠そうに欠伸をすると目を閉じた。眠ったのだろうか。
ぐらりと彼の体が横に私のいる方角に倒れる。
慌てて私は彼の体を支えた。さすがに地面にばったり行くのはかわいそうだなと思って。
「まあ、こんな感じだ。恐らく潜入する場所には敵がいるだろうから、見つかった時に対処できる。」
「なるほど。さすがですね。」
フィオナはふむふむと会長の話を聞いている。
「まずは、スリーピングから完璧に使えるようにしよう。姿隠しの魔法はスリーピングより少し難しいからな。フィオナは俺に魔法をかけてみろ。」
「会長にですか!?…なんだか恐れ多いですが、分かりました!」
「…ルヴィナスはまだ起きないか?」
会長がこちらを見て、ルヴィナスが起きていないかと様子を見る。
「起きないですね。」
「力を強め過ぎたか。…俺はこういった魔法が苦手でな。すぐ起きるよう調節したつもりだったんだが。」
会長の魔力はとても強い。こういった下級の魔法を維持、またさらに弱めるといった調整はかなり困難だと思う。
「起こすのも忍びないので、そこのベンチで彼が起きるのを待ちますね。会長はフィオナと練習を続けてください。」
「すまないな。ルヴィナスが起きたらそちらでも練習してくれ。」
「はい。」
近くにあったベンチまで3人で彼を運び終わった後、フィオナとスウォンは少し離れた場所で練習を始めた。
「スリーピング!」
フィオナが呪文を唱える。だが、
「ふん、全然眠くならんぞ?」
どうやら中々効果が出ないらしく、フィオナは苦戦しているようだ。
いいか。この家に迷惑をかけているんだ。自覚しろ。
ああ、これは学園に入学する前の記憶か。
義両親の冷たい言葉を浴びせられて何も反応できない私。
魔法学園に入学しろ。優秀な成績を収めてきたらこの家のものと認めてやろう。
言われたままを信じて私は入学試験のため勉強し、特待生になることができた。
早く家を出たい。義両親に認められたい。…フィオナに会いたい。
そんな必死の思いで勉強した。
なのに、フィオナ。貴女は別の人のところに行ってしまうの?
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私は椅子に腰掛け膝に本を置いてうたた寝をしていた。
…変な夢を見た。昔の夢だ。
夢の最後に自分が思ったことがとても恐ろしく感じた。最初、入学式で会った時は無関係であろうとしたこともあったはずなのに。この気持ちは何だ。私は最低じゃないか。どんどん自分がわからなくなっていく。
…あの変な少年ゼノが現れてから数日がたった。
今日は休日。わたしは寮の自室で本を読んでいたところだった。題名は『エクスペリアルの魔女』私が小さい頃によく読んでいた絵本の小説版だ。フィオナは会長と魔法の特訓だ。朝早くに、いってくるねー!と私に声をかけて去って行ってしまった。
私は本を膝の上に伏せ考えた。ゼノのことだ。
わたしの前世の記憶を探ろうとしても全くと言って情報が出てこない。
そういえば、後一人攻略対象が出てきていない。彼は関係あるのだろうか?
いつもなら攻略対象の顔を見るとふわーっとその人物の情報が流れ込んでくるのだが、彼を見ても全くと言っていいほどわからなかった。攻略対象ではないということだろうか。
それに、キリトだ。
昨日、キリトが『デートに行こう』と言った時は、ついに彼の気が狂ったのかと思ったが。なんだかんだで楽しんでしまった。街に買い物に行くなんて初めてのことだ。
あー、ウタウダ考えるのも飽きてきた。
ゼノは何者かわからないし、キリトが買い物に誘った目的もわからない。
最近、悩みも多いせいか魔法の調子さえ悪くなってきた。魔法は精神の不安等で大きく変化するのだ。
私は膝に伏せていた本に再び視線を落とした。今はこの本を読んでしまおう。
私が頭をさげると髪がはらりと顔にかかった。少し邪魔だな。縛ろうかと思った時、異変に気付いた。
「黒!?」
髪が一房黒くなっていた。
私の髪は銀髪。これまでずっとそうだった。そのはずだ。
見間違いかもしれない。私は部屋の隅に置いてある全体鏡に駆け寄った。
黒だ。右側の横髪の一房だけがまるでメッシュを入れたかのように黒になっていた。
そういえば、ゼノが口付けた髪もこの辺だった。
『僕と君は同じ。お揃いだね。』
『印をつけておいた。』
ふとゼノが言っていた言葉を思い出す。
お揃いとは髪の黒で、印とは色が変わったことに関係するのだろうか。
私は魔法で髪の色を戻せないか呪文を唱えた。だが、全くと言って変化がなかった。
私は仕方なく黒の髪が目立たないように編み込んで見た。
少し黒がチラチラ見えるが髪飾りをつければごまかせるだろう。
黒はこの世界で忌避される色。
急に黒色になったら周りの生徒の反応も想像がつく。
私は一体どうなってしまったんだろう。
なんだか精神が不安定だ。
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「まあ!シェリア。髪型を変えたのね!とてもよく似合ってる!」
休日が開け、学校へ行く途中。フィオナがそう言って声をかけてきた。
「ええ。気分転換にね。変じゃない?」
「いつものハーフアップも素敵だけど、編みこんだ髪型もとても素敵だよ!」
彼女は胸の前で手を組んでまるで宝石でも見るような目で私を褒めてくる。
…少し気恥ずかしい。
「ありがとう。フィオナ。貴女の…」
「?」
私はフィオナのフワフワとした金髪の髪を一筋すくう。
「髪もとても素敵よ。貴女はくせっ毛だからというけれど、このフワフワした髪が天使みたいで素敵。」
「はわわわわわ!シェ、シェリア!?」
彼女は顔を真っ赤にしてあたふたと慌てている姿はとても愛らしく可愛らしい。
レズではないが、何かに目覚めてしまいそうだ。
「き、君たちは何をしているんだ!」
後ろから声が聞こえ振り向くと、同じく顔を真っ赤にしてあたふたとしているルヴィナスがいた。
珍しい。普段は図書館に引きこもって出てこないのに。せっかくのフィオナとの二人きりを邪魔されてしまった。
「あら、ルヴィナス先輩。お久しぶりです。珍しいですね、外に出るなんて。」
私が少しトゲがある物言いをしたが、彼は少し平静さを取り戻したのか、ずり落ちたメガネを指で直しながら言った。
「僕と君たちは同学年だ。先輩などとつけなくてもいい。」
確かに留年して学年は一緒だが、何となく先輩と呼んでいる人が多く私もそれに習っていた。
「では、ルヴィナス。…貴方が外に出て来るなんて、珍しいですがどうしたんですか?というか、何で出てきたんですか?」
「僕が出てきたら悪いのか!」
…久しぶりのフィオナとの時間を邪魔されて私はイラついていた。少しくらい許してもらいたいものである。
…は!私は何を言っているのだろうか。
「こほん、すみません。少々イライラしていたので、当たってしまいました。」
「ま、まあ。虫の居所が悪い時は誰にだってあるからな。」
ルヴィナスは少し引き気味で答えた。
「え、えーと。それでルヴィナスさんはどうしてここに?」
先ほどから黙って様子を伺っていたフィオナが話を戻してくれた。
「ああ、変態教師に今日は中間試験の知らせがあるから絶対に教室に出てこいと言われたんだ。」
「そういえば、そんな時期ですね。」
季節は春も過ぎ徐々に暑くなってきた。
そろそろ中間試験がある。
試験は筆記と実技。筆記は言わずもがな。実技はこの前の四人チームで行われる。毎年課題がありその結果を判定して成績が出される。
「ああ。面倒臭いが仕方ない。お前たちに迷惑をかけるわけにもいかないからな。」
「ありがとうございます。ルヴィナスさん!」
授業に出るのは当たり前のことでフィオナが礼を言うものでもないと思うが…。
文句の1つも言いたいところだが、ここはぐっと我慢しよう。
私たちはルヴィナスを含めた3人で教室に向かうこととなった。
ーーーー
「さて、みんな。もうすぐ、お待ちかねの中間試験があるよ。」
朝のホームルーム。キリトが教壇の前に立っていつも通りの朝が始まる。
…誰も試験を待ち遠しにしている生徒はいないと思う。
「みんな、初めてのテストだから緊張してると思うけど普段通りに頑張ってね。まず、筆記試験はー」
確か、この実技試験でフィオナの光属性が判明する。確か魔法が暴発してしまうのだ。これにより、物語が大きく動き出すはずだ。
「実技試験はそれぞれのチームに課題がー」
課題…は何だったか?
そこまでは思い出せない。
「…ちゃん」
うーん、ここまででかかってるんだけどな。
「シェリア!」
「うわっ!?」
しまった、少し考え込みすぎてた。
「俺の話聞いてたかな~?」
ふと前を見るとニコニコーっと笑っているキリト先生のお姿。
「え!えと…」
「はい、俺が言ってたこと言ってみて?」
「課題の話ですよね。」
「うん、そうだよ。じゃあ、君たちチームの課題は?」
「それは、えと…」
「ちゃんと俺の話聞いててね~?」
「はい、すみません。」
「君たちの課題はズバリ潜入。」
せんにゅう…?そんな内容だっただろうか?
「君達のチームは魔法の力を継続することが困難な子が多いみたいだからね。潜入する系統の魔法は魔力の調整が肝になる。だから、ある場所に潜入して目的のものを持ち出すことが課題だよ。」
確かに、会長は攻撃特化。ルヴィナスもどちらかというと攻撃特化。フィオナの力は未知数。魔法を維持・継続するのは苦手なのかもしれない。
ちなみにルイス副会長は契約リングもそうだが、結界魔法や治癒魔法が得意である。つまり維持・継続が得意なのだろう。
「シェリアちゃんは魔法を維持するのが得意だろう?みんなの力になってあげてね。」
キリトは私の頭をポンポンと叩くとまた教壇へと戻っていった。
ーーーー
「シェリア、最近ぼーっとしたりすること多いけど…今日の魔法練習大丈夫?」
「大丈夫よ。心配しないで、フィオナ。」
私達は前にも練習に使用した場所で魔法練習をすることになった。
今回はルヴィナスも一緒である。
「ルヴィナスが来るとは珍しい。久しぶりに陽の下に出るお前を見た。」
「ふん、僕だってたまには外に出るさ。」
「じゃあ、早速始めましょう。」
潜入ということだから姿を隠す魔法。相手を眠りに誘う魔法。などが有効だろうか。
最近、授業で習ったので使うことに禁止事項はない。
「では、俺が手本を見せよう。」
スウォンがそういって杖を取り出した。
魔法を使うときは杖を利用することもある。杖は精神を集中させるのに有効だ。
もちろん、杖なしでも可能だ。
維持・継続する魔法は魔力を継続させる微調整が必要なので、杖を利用したほうが魔法を使いやすいと言える。
「まずは、眠りの魔法だ。…そうだな、ルヴィナス。お前が被験体になれ。」
「僕がか!?」
「他の二人を眠らせたら手本にならんだろう。お前は問題なく使えるし眠っても構わん。」
「むーー。仕方ない。早く済ませろ。」
私は問題なく使えるのだが、ここは大人しく手本を見ておこう。
「スリーピング」
会長が呪文を唱えると薄ピンクの霧のようなものが、ルヴィナスを囲った。
「ふわ~…。」
ルヴィナスは眠そうに欠伸をすると目を閉じた。眠ったのだろうか。
ぐらりと彼の体が横に私のいる方角に倒れる。
慌てて私は彼の体を支えた。さすがに地面にばったり行くのはかわいそうだなと思って。
「まあ、こんな感じだ。恐らく潜入する場所には敵がいるだろうから、見つかった時に対処できる。」
「なるほど。さすがですね。」
フィオナはふむふむと会長の話を聞いている。
「まずは、スリーピングから完璧に使えるようにしよう。姿隠しの魔法はスリーピングより少し難しいからな。フィオナは俺に魔法をかけてみろ。」
「会長にですか!?…なんだか恐れ多いですが、分かりました!」
「…ルヴィナスはまだ起きないか?」
会長がこちらを見て、ルヴィナスが起きていないかと様子を見る。
「起きないですね。」
「力を強め過ぎたか。…俺はこういった魔法が苦手でな。すぐ起きるよう調節したつもりだったんだが。」
会長の魔力はとても強い。こういった下級の魔法を維持、またさらに弱めるといった調整はかなり困難だと思う。
「起こすのも忍びないので、そこのベンチで彼が起きるのを待ちますね。会長はフィオナと練習を続けてください。」
「すまないな。ルヴィナスが起きたらそちらでも練習してくれ。」
「はい。」
近くにあったベンチまで3人で彼を運び終わった後、フィオナとスウォンは少し離れた場所で練習を始めた。
「スリーピング!」
フィオナが呪文を唱える。だが、
「ふん、全然眠くならんぞ?」
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