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第1章
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「最悪よ…!」
私は吐き捨てるように答えた。
今日はやけにキスされる日だ。厄日か。
「そーお?残念。」
ゼノは気分を害する訳でもなくニコニコとしている。
「あのね、魔力を分け与えるなら口移しじゃなくても他に方法があるでしょうが!」
要は触れ合っていればいい。手をつなぐ。体の一部に触れるなどの行為でも可能である。
「えー。だって口の方が一番早くて手っ取り早いでしょ?」
口はお互いの体内が直接交わる。なので、一般的に早い時間で大量の魔力がやり取りできると言われている。
「手っ取り早いからって、乙女の唇、奪っていいわけあるか!」
「乙女って…。君そんな柄かな~?」
ゼノが呆れたような小馬鹿にしたような顔で見てくる。
「でも、確かに体調は良くなったわ。ありがとう。」
「…へぇ。お礼言っちゃうんだ?何かの罠かもしれないのに?」
「罠だったら後でわかった時に文句言うわよ。とりあえず、今は助かったし礼を述べただけよ。」
「変なの。ふふふ。」
ゼノは私の回答が可笑しかったのか、お腹を抱えて笑う。
「でも、今回のはいただけないな。」
急に真面目な顔になり、声のトーンが低くなる。
「あんな至近距離でフィオナの魔法。…他人の魔法を増幅したものであれ、まともに喰らうなんて、君、うっかりすると死んじゃうよ?」
…え?
私は戸惑った。
「体、辛かったでしょう?まるで精神が削られるような感覚。」
確かに。なんだか、私の一部が持っていかれるような感覚があった。魔力を消費する感覚に似ている気もしたが。少し違った。
「光は闇を食う。闇もまた光を食うけど、今回みたいに抵抗せずに食われ続けてたら君の魔力は愚か、命まで食い尽くされて死んじゃうって事だよ。」
「私の得意属性は風よ?闇なんて関係ない。」
「君は、そんなに愚かじゃないだろう?なら、君と魔力の相性がいい僕が只の風属性に見えるのかい?」
「それは…」
「本当は、気づいてるんだろう?思い出さないように記憶に蓋をしてるみたいだけど。そろそろ君の母親がかけた封印も限界だ。僕がちょっかいをかけなくても、近いうちに解けてたさ。」
『シェリア…。最期に、貴女に。』
…いやだ。思い出したくない。
「うるさい!」
「今の君は何を言っても意味をなさなそうだ…。もう少しだけ待ってあげる。またね。シェリア。」
彼は残念そうにそう言ってフッと虚空へと姿を消した。
私は今何を思い出しかけたのだろう。
ーーー
私は急ぎ自室に戻ると、荷造りを始めた。
リュックサックに遠出に必要そうなものを詰め込んでいく。
最近、私自身の様子がおかしい。
自分自身に制御がきかないし、考えている事も支離滅裂。
普段ならもう少し冷静に対応していくはずなのに、やけに感情的になる。
特にフィオナに関してだ。
フィオナが他の男…主にスウォンだが。仲良くしたりして、私以外のもの喋っていると平静でいられなくなる。
前世の記憶が戻った時、死亡ルートを回避しようと意気込んでいたはずなのに。
これではゲームのシェリアと同じ道を進んでしまう。
そして、ゲームの情報を思い返しても全く正体がつかめないあの少年ゼノ。
これは私の推測だが…。
前世のゲームの記憶は完全じゃない。
思い出せないのではく、知らない、のではないだろうか?
ゲームで語られるだけがその世界の物語じゃない。
ゲームではシェリアは徐々に闇落ちし、悪役ぽさを醸し出していた。
だが、闇落ちし堕ちていったその過程は?
どうして、最愛の妹を憎むまでになったのか?ゲーム内では語られていない。
恐らくそのキーはゼノ。彼が関係している。
このままでは私は悪役としてその一生を終える事になりそうだ。
そんなのは嫌だ。フィオナとキャッキャウフフして幸せな人生を謳歌したい!
そのためには前世の記憶を頼りにのんびり待ち構えてルートに流されるのではなく、ルートの先を見据え先手を打たなければ。
その為には、ゼノの言った通り、記憶を思い出すのが良いと思われる。
私は荷造りを終えたリュックを背負った。
目的地は旧ルースフォース領。
私とフィオナの生まれた家。
私、シェリアの幼い時の記憶の手がかり。きっと、何か見つかるはず。
ゼノにカマをかけられた時、思い出したくないと反射的に思った記憶。
そんなにトラウマになっているのなら、重要な手がかりなはず。
私は瞬間移動の魔法を唱える。ルースフォース領まではとおい。何回か魔法を使用し中継しながら向かっていく事になる。
最近、魔法の調子の悪いのが不安要素だが、思い当たったが吉日。明日から学校は休日。行くっきゃない!
「テレポート!」
そして、私は愕然とした。
テレポートを使ったのだが…。
「校門までしか移動できない…。」
私は調子がいい時、テレポートは数十キロ先まで移動する事ができる。
「時間はかかるけど、馬を使うしかないわね。」
学園にはテレポートが満足に使えない子のために馬小屋がある。
そのうちの一頭を借りる手続きをして、馬を借り私はルースフォース領へと急いだ。
ーーー
「馬に乗るなんて久々ね。たまにはいいかもしれない。」
馬の背に乗り風を受けながら走るのもなかなか気分が良い。
馬の為に休憩を挟みつつだが、夜通しほぼ走り通し、翌日の昼にはルースフォース領に入る事ができた。
「無理させてごめんね。」
私はそう言いながら、馬の鼻面を撫でた。
ブルルッ
馬は鼻を鳴らし、平気さとでも言うように首を振った。なかなかタフな馬だ。
街に入ってからは馬の手綱を引いて歩いていく。馬を連れた人間は珍しいのか通り過ぎる人がチラチラとこちらを見てくる。
屋敷についての情報を集めておきたい。
私は人の良さそうな女の人に声をかけた。
「すみません。このお屋敷に行きたいんですが…。」
私は女性に地図を見せ、場所を指で指し示した。
「えぇ!あんた。こんなとこ行くのかい?ここは10年くらい前に不幸な事故が起きて廃墟になってるよ。」
「悪いこたぁいわねぇよ。最近じゃ、幽霊が出るって話もある。」
周りの人も話に反応してぞろぞろと集まってくる。
「ガラの悪い連中もいるって話だよ。」
どうやら、今は廃墟になり治安もよろしくないらしい。
「みなさん、ありがとうございます。どうしても調べたい事がありますので危険は承知で行ってみようと思います。…では、失礼します。」
私はペコッと頭を下げ先を急いだ。
学校が始まる前までには戻らなくては。
街を抜けた先に森があり更にそこを抜ける。少し小高い丘陵地の頂上に屋敷があった。
「う、噂通り…というか以上ね…。」
かつて巡覧豪華だったお屋敷は完全に廃墟となり、見る影もない。庭師が手入れしていた庭は雑草が生い茂り、使用人達がせっせと拭いていた窓は1つ残らず割れている。建物も崩れたりしたのか、天井が崩れ部屋の中が丸見えになり、外壁にはヒビが入っている。
…私が入った途端崩れやしないかと不安になる。
「たった10年でここまで荒れるものかしら。」
私は馬の手綱を木に結び、屋敷へと入った。
あまりに昔と違いすぎるからか、それとも他の理由なのか。
ここに来たら記憶を思い出すだろうと考えていたが、全く何も手がかりがつかめない。
「これじゃ、来た意味ないじゃない…。」
うーん、がっくし。
勢いだけで来てしまったけど、少し考えなしだったかも。
ため息をついてそこらの草むらに仰向けに寝転ぶ。そして、空を見上げると屋敷からちょっと離れた位置に塔が立っているのが見えた。
食料庫か何かだろうか?貴族の屋敷にはこう言った物置の塔が立っていることは珍しくもない。特に何の変哲もないモノなのにとても気になった。
行ってみよう。
私は塔の方へ歩き出した。
歩きながら、気づいた事があった。
建物の崩壊は塔を軸とし放物線状に崩壊が激しい。
まるで、塔から崩壊が始まったかのように。
その癖、塔自体は年月をやや経て古びているが崩壊などの損傷は無いようだ。
怪しい。
塔の入り口は赤いドアで閉ざされている。
私はそっと押してみると、キィ…と呆気なく開いた。
ドアを開けた先は螺旋状の階段があり、上へと伸びているようだ。食料庫などの作りではない。やはり、ただの塔ではないようだ。
私は階段を伝い上へ目指すことにした。
螺旋状の階段を上りきるとピンクの可愛らしいドアがあった。
私の部屋のドアだ。
直感的に思った。
この扉を開ければ私は全てを思い出せる。
私は扉を開けようとドアノブに手をかけたが、途中で開けるのを一瞬ためらった。
しっかりしろ!シェリア。開けるんだこのドアを!
私は一回ドアノブから手を離し、両手で顔をパンっと叩いた。
よしっ!
私はドアをゆっくりと開けた。
するとそこには、可愛らしい女の子の子供部屋が広がっていた。ぬいぐるみや絵本、絨毯も可愛らしい絵柄だ。
部屋の奥にはこれまた可愛らしいソファーが置いてあり、私から背を向け誰かが座っていた。
え?
こんなとこに人?
ま、ままままままさか。幽霊?!
『悪いこたぁいわねぇよ。最近じゃ、幽霊が出るって話もある。』
街の人の話を思い出す。冗談じゃない。幽霊だとしたら物理攻撃も魔法も効かないじゃないか!
「やあ。まさか君がこんなところまで来るほど行動的だと思わなかったよ。」
「幽霊が喋ったあああああああ!!」
「え?」
私は思いっきり声をあげて後ずさった。
幽霊はこちらを振り返り呆気にとられた顔でこちらをみている。
幽霊の姿は20歳くらいの男だろうか。
黒い長い髪を腰あたりでゆるく結んでおり、瞳の色は黒。服装は真っ黒なコート。夏も近づいてるのに季節感ない。全身マックロクロスケである。
だが、この顔は見覚えが…。
「あ、あなた。ゼノ!?」
「あれ。この姿で会うのは初めてだけどよくわかったね。」
「そんな真っ黒な格好した怪しい奴なんて世界中探してもあんたくらいよ。」
「えー。」
そしてこの男の姿を見て私はデジャビュみたいなのが思い起こされた。
今までゲームの攻略対象を見ると感じた例のあれだ。
ゼノ。隠し攻略キャラ。
交流会までにヒロインが誰とも親密にならないと現れる攻略対象。
謎な言動が多く飄々としていてよくわからないキャラクター。
ラストの攻略キャラはお前だったんかい!
ゲームの中では子供の姿で現れる事がなかった。そのため、いまいち思い出せなかったのだろう。
「まぁ、でも幽霊じゃなくてよかったね?」
口元に手を当てクスクスと笑う。
子供の時と仕草が同じだ。
「さてと。ここまで来たんだ。記憶を思い出そうと決心したんでしょう?」
「ま、まあね。」
「なら、思い出話をしようよ。シェリア。」
私は吐き捨てるように答えた。
今日はやけにキスされる日だ。厄日か。
「そーお?残念。」
ゼノは気分を害する訳でもなくニコニコとしている。
「あのね、魔力を分け与えるなら口移しじゃなくても他に方法があるでしょうが!」
要は触れ合っていればいい。手をつなぐ。体の一部に触れるなどの行為でも可能である。
「えー。だって口の方が一番早くて手っ取り早いでしょ?」
口はお互いの体内が直接交わる。なので、一般的に早い時間で大量の魔力がやり取りできると言われている。
「手っ取り早いからって、乙女の唇、奪っていいわけあるか!」
「乙女って…。君そんな柄かな~?」
ゼノが呆れたような小馬鹿にしたような顔で見てくる。
「でも、確かに体調は良くなったわ。ありがとう。」
「…へぇ。お礼言っちゃうんだ?何かの罠かもしれないのに?」
「罠だったら後でわかった時に文句言うわよ。とりあえず、今は助かったし礼を述べただけよ。」
「変なの。ふふふ。」
ゼノは私の回答が可笑しかったのか、お腹を抱えて笑う。
「でも、今回のはいただけないな。」
急に真面目な顔になり、声のトーンが低くなる。
「あんな至近距離でフィオナの魔法。…他人の魔法を増幅したものであれ、まともに喰らうなんて、君、うっかりすると死んじゃうよ?」
…え?
私は戸惑った。
「体、辛かったでしょう?まるで精神が削られるような感覚。」
確かに。なんだか、私の一部が持っていかれるような感覚があった。魔力を消費する感覚に似ている気もしたが。少し違った。
「光は闇を食う。闇もまた光を食うけど、今回みたいに抵抗せずに食われ続けてたら君の魔力は愚か、命まで食い尽くされて死んじゃうって事だよ。」
「私の得意属性は風よ?闇なんて関係ない。」
「君は、そんなに愚かじゃないだろう?なら、君と魔力の相性がいい僕が只の風属性に見えるのかい?」
「それは…」
「本当は、気づいてるんだろう?思い出さないように記憶に蓋をしてるみたいだけど。そろそろ君の母親がかけた封印も限界だ。僕がちょっかいをかけなくても、近いうちに解けてたさ。」
『シェリア…。最期に、貴女に。』
…いやだ。思い出したくない。
「うるさい!」
「今の君は何を言っても意味をなさなそうだ…。もう少しだけ待ってあげる。またね。シェリア。」
彼は残念そうにそう言ってフッと虚空へと姿を消した。
私は今何を思い出しかけたのだろう。
ーーー
私は急ぎ自室に戻ると、荷造りを始めた。
リュックサックに遠出に必要そうなものを詰め込んでいく。
最近、私自身の様子がおかしい。
自分自身に制御がきかないし、考えている事も支離滅裂。
普段ならもう少し冷静に対応していくはずなのに、やけに感情的になる。
特にフィオナに関してだ。
フィオナが他の男…主にスウォンだが。仲良くしたりして、私以外のもの喋っていると平静でいられなくなる。
前世の記憶が戻った時、死亡ルートを回避しようと意気込んでいたはずなのに。
これではゲームのシェリアと同じ道を進んでしまう。
そして、ゲームの情報を思い返しても全く正体がつかめないあの少年ゼノ。
これは私の推測だが…。
前世のゲームの記憶は完全じゃない。
思い出せないのではく、知らない、のではないだろうか?
ゲームで語られるだけがその世界の物語じゃない。
ゲームではシェリアは徐々に闇落ちし、悪役ぽさを醸し出していた。
だが、闇落ちし堕ちていったその過程は?
どうして、最愛の妹を憎むまでになったのか?ゲーム内では語られていない。
恐らくそのキーはゼノ。彼が関係している。
このままでは私は悪役としてその一生を終える事になりそうだ。
そんなのは嫌だ。フィオナとキャッキャウフフして幸せな人生を謳歌したい!
そのためには前世の記憶を頼りにのんびり待ち構えてルートに流されるのではなく、ルートの先を見据え先手を打たなければ。
その為には、ゼノの言った通り、記憶を思い出すのが良いと思われる。
私は荷造りを終えたリュックを背負った。
目的地は旧ルースフォース領。
私とフィオナの生まれた家。
私、シェリアの幼い時の記憶の手がかり。きっと、何か見つかるはず。
ゼノにカマをかけられた時、思い出したくないと反射的に思った記憶。
そんなにトラウマになっているのなら、重要な手がかりなはず。
私は瞬間移動の魔法を唱える。ルースフォース領まではとおい。何回か魔法を使用し中継しながら向かっていく事になる。
最近、魔法の調子の悪いのが不安要素だが、思い当たったが吉日。明日から学校は休日。行くっきゃない!
「テレポート!」
そして、私は愕然とした。
テレポートを使ったのだが…。
「校門までしか移動できない…。」
私は調子がいい時、テレポートは数十キロ先まで移動する事ができる。
「時間はかかるけど、馬を使うしかないわね。」
学園にはテレポートが満足に使えない子のために馬小屋がある。
そのうちの一頭を借りる手続きをして、馬を借り私はルースフォース領へと急いだ。
ーーー
「馬に乗るなんて久々ね。たまにはいいかもしれない。」
馬の背に乗り風を受けながら走るのもなかなか気分が良い。
馬の為に休憩を挟みつつだが、夜通しほぼ走り通し、翌日の昼にはルースフォース領に入る事ができた。
「無理させてごめんね。」
私はそう言いながら、馬の鼻面を撫でた。
ブルルッ
馬は鼻を鳴らし、平気さとでも言うように首を振った。なかなかタフな馬だ。
街に入ってからは馬の手綱を引いて歩いていく。馬を連れた人間は珍しいのか通り過ぎる人がチラチラとこちらを見てくる。
屋敷についての情報を集めておきたい。
私は人の良さそうな女の人に声をかけた。
「すみません。このお屋敷に行きたいんですが…。」
私は女性に地図を見せ、場所を指で指し示した。
「えぇ!あんた。こんなとこ行くのかい?ここは10年くらい前に不幸な事故が起きて廃墟になってるよ。」
「悪いこたぁいわねぇよ。最近じゃ、幽霊が出るって話もある。」
周りの人も話に反応してぞろぞろと集まってくる。
「ガラの悪い連中もいるって話だよ。」
どうやら、今は廃墟になり治安もよろしくないらしい。
「みなさん、ありがとうございます。どうしても調べたい事がありますので危険は承知で行ってみようと思います。…では、失礼します。」
私はペコッと頭を下げ先を急いだ。
学校が始まる前までには戻らなくては。
街を抜けた先に森があり更にそこを抜ける。少し小高い丘陵地の頂上に屋敷があった。
「う、噂通り…というか以上ね…。」
かつて巡覧豪華だったお屋敷は完全に廃墟となり、見る影もない。庭師が手入れしていた庭は雑草が生い茂り、使用人達がせっせと拭いていた窓は1つ残らず割れている。建物も崩れたりしたのか、天井が崩れ部屋の中が丸見えになり、外壁にはヒビが入っている。
…私が入った途端崩れやしないかと不安になる。
「たった10年でここまで荒れるものかしら。」
私は馬の手綱を木に結び、屋敷へと入った。
あまりに昔と違いすぎるからか、それとも他の理由なのか。
ここに来たら記憶を思い出すだろうと考えていたが、全く何も手がかりがつかめない。
「これじゃ、来た意味ないじゃない…。」
うーん、がっくし。
勢いだけで来てしまったけど、少し考えなしだったかも。
ため息をついてそこらの草むらに仰向けに寝転ぶ。そして、空を見上げると屋敷からちょっと離れた位置に塔が立っているのが見えた。
食料庫か何かだろうか?貴族の屋敷にはこう言った物置の塔が立っていることは珍しくもない。特に何の変哲もないモノなのにとても気になった。
行ってみよう。
私は塔の方へ歩き出した。
歩きながら、気づいた事があった。
建物の崩壊は塔を軸とし放物線状に崩壊が激しい。
まるで、塔から崩壊が始まったかのように。
その癖、塔自体は年月をやや経て古びているが崩壊などの損傷は無いようだ。
怪しい。
塔の入り口は赤いドアで閉ざされている。
私はそっと押してみると、キィ…と呆気なく開いた。
ドアを開けた先は螺旋状の階段があり、上へと伸びているようだ。食料庫などの作りではない。やはり、ただの塔ではないようだ。
私は階段を伝い上へ目指すことにした。
螺旋状の階段を上りきるとピンクの可愛らしいドアがあった。
私の部屋のドアだ。
直感的に思った。
この扉を開ければ私は全てを思い出せる。
私は扉を開けようとドアノブに手をかけたが、途中で開けるのを一瞬ためらった。
しっかりしろ!シェリア。開けるんだこのドアを!
私は一回ドアノブから手を離し、両手で顔をパンっと叩いた。
よしっ!
私はドアをゆっくりと開けた。
するとそこには、可愛らしい女の子の子供部屋が広がっていた。ぬいぐるみや絵本、絨毯も可愛らしい絵柄だ。
部屋の奥にはこれまた可愛らしいソファーが置いてあり、私から背を向け誰かが座っていた。
え?
こんなとこに人?
ま、ままままままさか。幽霊?!
『悪いこたぁいわねぇよ。最近じゃ、幽霊が出るって話もある。』
街の人の話を思い出す。冗談じゃない。幽霊だとしたら物理攻撃も魔法も効かないじゃないか!
「やあ。まさか君がこんなところまで来るほど行動的だと思わなかったよ。」
「幽霊が喋ったあああああああ!!」
「え?」
私は思いっきり声をあげて後ずさった。
幽霊はこちらを振り返り呆気にとられた顔でこちらをみている。
幽霊の姿は20歳くらいの男だろうか。
黒い長い髪を腰あたりでゆるく結んでおり、瞳の色は黒。服装は真っ黒なコート。夏も近づいてるのに季節感ない。全身マックロクロスケである。
だが、この顔は見覚えが…。
「あ、あなた。ゼノ!?」
「あれ。この姿で会うのは初めてだけどよくわかったね。」
「そんな真っ黒な格好した怪しい奴なんて世界中探してもあんたくらいよ。」
「えー。」
そしてこの男の姿を見て私はデジャビュみたいなのが思い起こされた。
今までゲームの攻略対象を見ると感じた例のあれだ。
ゼノ。隠し攻略キャラ。
交流会までにヒロインが誰とも親密にならないと現れる攻略対象。
謎な言動が多く飄々としていてよくわからないキャラクター。
ラストの攻略キャラはお前だったんかい!
ゲームの中では子供の姿で現れる事がなかった。そのため、いまいち思い出せなかったのだろう。
「まぁ、でも幽霊じゃなくてよかったね?」
口元に手を当てクスクスと笑う。
子供の時と仕草が同じだ。
「さてと。ここまで来たんだ。記憶を思い出そうと決心したんでしょう?」
「ま、まあね。」
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