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しおりを挟む華麗なフォームの飛び込みに、ダイナミックなバタフライ泳法。
「すごい! 響也さん、カッコいいです!」
(見ているか、麻衣。私の泳ぎを!)
麻衣の声援に気を良くした響也は、ターンしてさらに泳ぐ。
「響也……さん……?」
何度も何度もターンして、まるでマグロのように延々と泳ぎ続ける響也は、麻衣にカッコいい所を見せたい一心だった。
やがて、ようやくプールから上がって来た響也に、麻衣は恐る恐る声を掛けた。
「大丈夫ですか? 少し、休んだ方が」
「いや。麻衣の、スイミングの特訓をしなくてはな」
にっこり笑うと、響也は今度は静かに水中へ入った。
麻衣は、幼い頃に浴室で足を滑らせ、頭からバスタブへ落ちてしまったことがある。
そのトラウマで、今でも水が怖いのだ。
足をすくませる麻衣に、響也は腕を伸ばした。
「さあ、おいで。怖くないから」
「で、でも」
「大丈夫。私が、しっかり手を握っていてあげるから」
麻衣は、響也の大きな手のひらをつかんだ。
「絶対に、離さないでくださいね。絶対、ですよ!?」
「絶対に、離さないよ」
麻衣の爪先が、そっと水面に降りる。
まるで愛の誓いのような言葉を、二人は気づかないまま交わしていた。
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