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しおりを挟む「志乃くん……かな?」
頭を上げて章を見た彼の笑顔は、とても爽やかだった。
「章さん! 会えてよかった!」
そして軽やかに立ち上がると、すぐに章の腕に、自分の腕を絡ませた。
「今日は、楽しみにしてたんだよ? 嬉しいな。どこに、行こっか?」
その積極的で大胆なスキンシップや言葉に、章は戸惑った。
だが、悪い気はしない。
自分も、精一杯の笑顔を志乃に向けた。
「じゃあ、まずはランチにしようか」
「賛成!」
すぐに志乃は、応じてくれた。
「章さん、何が食べたい? 僕は、何でもいいよ」
「あ……」
「どうかした?」
「い、いや。ごめん。実は、もう予約してあるんだ」
これは失敗した、と章は思った。
志乃が、何が食べたい? と訊いてくれたように、自分もその日その場で、彼に尋ねるべきだったのだ。
だが志乃は、章の心中など知らぬ様子で、浮き浮きと声を掛ける。
「じゃあ、そのお店に行こう? どんなお料理かな。僕、楽しみ!」
「ああ、うん。ありがとう」
(どうか、志乃くんの気に入るランチでありますように!)
胸の内で祈りながら、章はレストランへと足を向けた。
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