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しおりを挟む(ひとつ、志乃くんのお母さんの背中を、後押しする方法はあるんだけどな)
ソファで志乃と寄り添い、温かいホットココアを飲みながら、章は考えていた。
いや、彼女の手術のためだけではない。
志乃の離職を巡って、極道の加瀬と渡り合った末に、急激に浮かんできた思いだ。
「志乃くん」
「ん? 何?」
「あの、その。わ、私と……」
「私と、何?」
「こ、こ、こんや……」
婚約してください、と言おうとした章だったが、その途端、志乃に平手で肩を叩かれた。
「もう、ヤだな! 章さんの、エッチ!」
「え? え!?」
「……今夜、したい。だなんて。元旦からさっそく、姫初め?」
「あ……」
違うんだ、と訂正したかったが、口がうまいこと回らない。
お風呂に入ってからね、とバスルームへ行ってしまう志乃の背中に腕を伸ばすが、届かない。
「ああ。私って、ダメだなぁ」
誰かに自分の背中も後押しして欲しい、章だった。
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