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3話『紅い花弁』
しおりを挟む目が覚めた瞬間、頭が痛かった。
二日酔いでもないのに、世界がやけに眩しい。
そりゃそうだ。太陽の位置は高く、おそらくもう昼を過ぎているだろう。
窓の外では、夜の雨が嘘みたいに止んでいる。
光を受けたカーテンの縁が金色に光って、やけに現実感がある。
隣を見ると、レオニスが静かに眠っていた。
寝顔は穏やかで、昨夜のあの“暴風”のような表情は微塵もない。
夜明けすぎまで抱かれ、気を失ったように眠ったからいつ寝たかも覚えていない。
「なんなの一体」
声にならない悲鳴を飲み込んで、枕に顔をうずめる。
体の節々が痛い。情緒も崩壊寸前だ。
リディアには奥手すぎてキスもろくに出来なかった童貞だとは思えないほどの激しい夜だった。
セレーネの記憶の中にも、昨日のようなレオニスとの激しい夜伽はなかった。
でも、いいか悪いかと言ったら、そこまで良くはない。
「盛りのついたお猿さんじゃあるまいし」
丁寧さもないし、勢い任せの夜伽なんてまっぴらごめんだ。
怖すぎる。こんなの耐えれない。
早々に寝室を別にしてもらおう。
二度と御免だ!!
小説では浮気されたレオニスに同情していたけど、やる事ちゃんとやっといてセレーネではなくリディアを選んだコイツに同情の余地はない。
そんなのは真実の愛でもなんでもないんじゃあああい!
女バカにすんなよお!!
と、いう事で私はそそくさと寝室から出て自室へと戻った。
そうそう何度も黙って男に捨てられてたまるものか。
「奥様、昼食のご準備が出来ております」
「ありがとう」
侍女が知らせにやってきて、着替えをしようと肌をあらわにした瞬間。
「お、奥様」
「え?」
顔を赤らめた侍女を見てから鏡をみると、無数の赤い印が……。
「……」
「旦那様に愛されてますね」
なわけあるかい。
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