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19話『理性の終わる夜』
しおりを挟む唇が触れ、熱と息が混じり合う。
時間の感覚が消えて、ただ彼の呼吸だけが耳の奥で響いていた。
押し寄せる鼓動の中で、レオニスが小さく息を震わせた。
「……愛している」
その言葉が、唇の隙間から零れ落ちた。
熱よりも、痛みに近い響きだった。
――愛してる? わたしを?
そんなはず、ない。
きっと、ただの気の迷い。
この状況に流されてるだけ。
……そうよ、そうに決まってる。
胸の奥がきゅっと締めつけられる。
返す言葉を探す前に、首筋にそっと温もりが触れた。
ひとつ、静かな接吻。
それが、身体中に落ちていく。
胸の奥で何かが崩れる音がした。
抗おうとしていた心の壁が、少しずつ溶けていくように。
――流されたいのは、私の方かもしれない。
そう思った瞬間、怖くなった。
認めたら戻れなくなる気がして。
彼の唇の温もりが腹部で止まる。
その場所が、じんわりと熱を帯びてゆく。
「まって、そこは……」
「おまえの甘い香りがする」
温度の中へと舌先が移り、鼓動がかすかに重なる。
それだけで、体の奥に刺激が走った。
私の吐息は遮られ、卑しい音が部屋中に響き渡る。
声を漏らすのが恥ずかしくて唇を噛み締める。
「あ……ふっ」と、身体が跳ねたと同時に息と共に声が出てしまった。
「今日は泣かぬのか」
……それを今言うの?
「それはレオニスが無理矢理にするから」
泣きそうになりながら私がそう言うと、レオニスは黙り込んだ。
あ……、今言う事じゃなかった?
「では、どうすればいい?」
「きっ、聞かないでよそんな事っ」
「……無理矢理にでなければいいのか?」
低く、冷静すぎる声。
「え……?」
その穏やかさが、かえって抗えない圧を帯びていた。
「優しくしよう」
「そっ、そうじゃ……っ」
熱い。
レオニスの舌先が、蜜をすくいとる。
届きそうで届かない波が永遠と繰り返されて、おかしくなりそうになる。
ただただもどかしくて、身体の芯が熱い。
「こんなにも蜜に溢れかえっているのに、嫌なのか?」
「聞かないでっ」
「恥じらいなのか、嫌なのか、どちらなのかわからない」
「恥ずかし……いです」
「嫌じゃないのか?」
「嫌……じゃない」
そう言った瞬間、腰が浮いて両脚を持ち上げられた。
「待って……レオニスっ」
「おまえの身体がどこが悦ぶのか、調べてみよう」
それまで遠慮がちだったレオニスの目が、完全に正気を失った。
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