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21話『水底の夢のあと』
しおりを挟む溺れてしまった。
揺らぐ水面の淵で意識がゆらりとほどける。
触れられるたび、心の輪郭が溶けていく気がして、その意味を考えることさえできなくなっていた。
認めたくない想いを抱えたまま、抗うこともできず、ただ寄せては返す波に身を預けるように、レオニスの熱へ沈んでいく。
断ち切れない快楽は、まるで水底へゆっくりと沈んでいく光の帯のようだった。
気づけば私は、その深みへどっぷりと沈み込んでいた。
昼前だろうか。
グレイが部屋を訪ねてきて、レオニスが低く追い返す声がして、その音に引き戻されるように私は目を覚ました。
ぼんやりと視界が明るむ。
昨夜の余韻がじんわりと身体に残っていて、思い出した瞬間、胸の奥がひゅっと縮む。
「……っ」
耐えきれず、私は手探りでシーツを引き寄せ、そのまま頭の上までかぶってしまった。
顔どころか、呼吸さえ見られたくない。
足音がゆっくりと近づいてくる気配がする。
次の瞬間、シーツ越しに低い声が落ちてきた。
「……起きたのか」
昨夜のことを思い返すだけで、胸の奥がじんと熱くなる。
――どうしてあんなふうに流されてしまったのか。
自分でもわからない。わかりたくもない。
ばさりとシーツが動く気配がして、そっと沈んだ寝台が、誰かの重みでわずかに揺れた。
「……セレーネ」
低く落ち着いた声がすぐ近くに降ってくる。
シーツの中で、心臓が跳ねた。
返事ができずに沈黙していると、ふわりとシーツの端が持ち上げられ、ひやりとした空気の隙間からレオニスの影が差し込んだ。
思わずさらに潜ろうとしたのに、するりと腕を取られて引き戻される。
次の瞬間、柔らかい腕にそっと抱き寄せられる。
隠れていたはずの頭上からふわ、と額に温かいものが触れる。
キスだ、と気づいた途端、恥ずかしさが一気に込み上げ、シーツの内側でさらに縮こまる。
「そんなに隠れなくてもいい」
布越しで笑うような声。
昨夜の獣のような熱ではなく、静かで、包み込むような優しさだけがそこにあった。
と、文学的な文章でお気持ち表現をしましたが。
一言で言うと。やってしまった。
嗚呼あああああああ!!
隠れたんじゃないです!自己嫌悪してるんです!!
どっ、どうしよう……。
「食事の後出発する」
「は、はい」
「まだこうしていたければ、急がないが」
「いえ、大丈夫です」
スン、と私は無表情で相槌を返した。
「痛くはないか。どこか辛いところは?」
静かな問いが、胸の奥の恥ずかしさを溶かしていく。
やめて、優しくしないで。
後ろめたさで、レオニスに目が合わせられなくて視線が泳いでしまう。
「大丈夫です」
嘘です、下半身が痛イテぇです。
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