おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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第二部 第一七章 弾劾裁判

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 アルガドの一つ目の悪事が衆目に晒されたところで、アルガドの父親であるデルガドは歯ぎしりをしてこちらを見ていた。

 逆にサイアス宰相の方は余裕そうな顔を浮かべ、息子の不始末をデルガドの失脚に最大限利用してようとしているように見えている。

「サイアス宰相閣下、アルガド殿の行った悪事はまだありますので、引き続き罪状の報告をさせてもらってよろしいか?」

「ああ、すまなかった。話の腰を折ってしまったようだ。続けてくれたまえ。グレイズ君」

「では、続けさせてもらいます。二つ、アルガド・クレストンは冒険者ギルドのギルドマスターという地位を利用し、冒険者ギルドの売り上げを改ざんし、本来なら国庫へ納めるべき税額を過少に申告し、得た利益を自らの口座に納めさせ私腹を肥やしてしていた。これは、国法に定めるところの徴税法に反する行為であり、すでに改ざんして得た資金は口座に1億ガルドを越えており、金額からかなり悪質な税金逃れと見て取れます。税逃れは本来徴税額+追徴課税でおおよそ脱税額の三~四倍の相当の課税がされ、主犯格は数年の労役が課せられるとされております」

 俺は二つ目のアルガドの行った悪事を暴く。

 ギルドの不正会計で国に納めるための税額を誤魔化した罪を暴露した。

 詰めかけた住民や冒険者からはアルガドに向けて、罵声が飛び始めている。

 一部の冒険者の中では、アルマの政策を堅持してアルガドは生活を安定させたギルドマスターと見られていたため、その裏で不正蓄財をしてことを知り、怒りを感じている者が多数にのぼっていた。

 もちろん、俺とともに深層階から帰還していた冒険者たちは、アルガドの不正を知っており、ざまぁみろと言いたげな顔をしていた。

 俺としてはアルマが関わっている事件であるため、厳しい追及はしたくないのだが、彼女自身が罪を認め、キチンと罪を償いたいと申し出ていたので、ウヤムヤにすることなく証人として呼び出すことにした。

「証人を前へ」

 さきほどと同じように指を鳴らすと、ヴィケットとは違い、縄で縛られていないアルマが前に出てきた。

「ブラックミルズ冒険者ギルド職員、アルマと申します。グレイズさんが申し上げられた通り、私は上司であるアルガド・クレストン様よりギルドの売り上げを改ざんするように指示され、拒否することをせずに言われるがまま、改ざんした帳簿を冒険者ギルド本部に送る報告書とともに作成しました。そして、こちらの帳簿が実際の売り上げを示した帳簿となっております。これを見れば、アルガド様の指定した口座の資金と一致するようになっており、改ざんして浮かせたお金の流れが分かるようになっております。こたびは私もこの犯罪に加担しており、自らの罪を認め、刑に服することは覚悟しております」

 裏帳簿の存在を探していたサイアスの目がギラリとアルマに注がれた。

 クレストン家の嫡男アルガドを葬り去るため、ダメ押しとなる証拠としてマリアンに命じて探していた物である。


「グレイズとやら、その証人が持つ、帳簿を見せて欲しいのだがよろしいか?」

「我が家の領地から上がった利益であれば、クレストン家の収入としてキチンと国に税を納めておるはずだっ! それを脱税と称して我が家の息子をつるし上げるつもりか。認めぬぞ。このような茶番など認めぬぞっ!」

 デルガドは息子の悪事が暴かれ、サイアスに対して劣勢に陥ったと感じているのか、強硬な姿勢を見せていた。

 だが、その姿は周囲の者たちに対して悪感情しか抱かせなかった。

「デルガド殿、ご忠告させてもらうなら冒険者ギルドの売り上げはたとえオーナー管理下にあっても、ギルドごとに課税されるはずですが。よもや、お忘れではありませんな?」

 サイアスは長年に渡って権勢の座を争ってきたデルガドの失脚を狙う突破口ができたとほくそ笑んでいるようだ。

「ぐぬぬっ! おのれ、サイアス! 成り上がり貴族の癖にいい気になりおって!」

「これは、大貴族たるクレストン公爵家の当主の言葉とは思えぬ暴言」

 いがみ合う二人に対して、裏帳簿に書かれていた売り上げの写しを書いた物と冒険者ギルド本部に正規の売り上げ報告として提出された報告書の写しを手渡す。

「お静かに。こちらが書類の写しとなっております。ご検分のほどを」

 写しをもらった二人は食い入るように紙を眺め始めた。

「これは、数字が一致しておりますなぁ。困ったことになりますぞ。デルガド殿」

「ぐぬぬっ!!」

 デルガドが息子であるアルガドに向け、怒りの表情を見せて睨みつけていた。

 父親から睨みつけられたアルガドは何か抗弁したそうであったが、猿轡によって言葉を発することができずにただ喚いているだけだった。

 アルガドはよほど父親が怖いのか、顔を始め全身から脂汗を滝のように流して、衣服が濡れている。

「以上、二件ともアルガド・クレストンが『ギルドマスター』としての地位を利用して犯した罪です。では、ここからは本人の意見陳述を」

 そう俺が言うと、メリーがアルガドの猿轡を外した。

 口が自由になったアルガドは、すぐに今までの罪状を否認する言葉を発する。

「わたしは無実だっ! これは、グレイズが仕掛けた陰謀である。貴族であるわたしを妬んで陥れるための弾劾裁判だっ! こんなのは公平な裁判とは言えないっ! 無効だ! 無効!」

 アルガドは黙っていれば自らの有罪が確定すると分かっているため、自己弁護を盛大に行って保身を図っていた。

「闇市の件もフラマー商会のヴィケットが、勝手にわたしの名を出して闇市を開催していたのだ。それに衛兵隊の施設を利用させたのは、闇市に関係する者たちを一網打尽にするべく内定調査を進めていたところであったのだぞっ! それをこのグレイズが台無しにしたのだ! 闇市開催の犯罪者として裁かれるのはヴィケットのみだぞ!」

「アルガド様っ!! 私を見捨てるのですかっ! 貴方の指示で私は犯罪に加担させられたんですぞっ! それにフラマー商会からも多数の報酬をアルガド様の口座に振り込んでいるじゃないですかっ! この場での言い逃れは見苦しいですぞ。いつも、貴方はそうやってご自分を守るために他人を切り捨てようとされる。私は長くお仕えしているので、何人もそうやって罪を着せられた者を知っておりますっ!」

 ヴィケットも自分の命がかかっているため、アルガドの威圧に対して委縮することなく言い返していていた。

 普段からの力関係が崩れ、部下に言い返されたアルガドが顔を赤くして怒りを露わにする。

「ヴィケットっ! 貴様っ! 裏切ったな! 誰がその地位に就けてやったと思っているっ!」

「うるさいっ! あんたの尻拭いはもうこりごりだっ!」

「二人とも罪を認めなさいっ! ここにいる私たちは全員罪を犯しているですよ。それにアクセルリオン神の前で嘘を吐けば呪われると知らないのですかっ!」

 ヴィケットとアルガドはお互いに罪を擦り付け合っていると、アルマが大声で二人を制した。

 神殿は聖域であるため、アクセルリオン神に見守れていると思われており、この場所での偽証行為は呪いを受けると信じられている場所でもあった。

「ぐぬぅうう! アルマ、お前も散々目をかけてやったのに、わたしの恩を仇で返すのかっ! ギルドの裏帳簿も、お前の政策を維持するための資金集めためだったんだぞ! それを」

「いいえ、貴方は私腹を肥やすためにギルドを利用しました。私がギルドマスター代理時代に採用した冒険者への依頼報酬上乗せ案を領主に無許可で行ったため、それを黙っておくための取引として裏帳簿作成を頼まれました。私も自らの職と生活を守ろうとアルガドの誘いにのってしまったことを悔いております」

 アルマは自らの罪を自覚しているため、アルガドとは対照的に冷静な態度を見せていた。

「いい子ぶるなっ! アルマ、お前は自分の身がかわいいんだろうがっ!」

 自らの罪を認めようとしないアルガドに対して、詰めかけていた住民や冒険者たちからは罵声が浴びせかけられていく。

 アルガドが自己弁護に終始したため、会場にはアルガドが主導して二つの犯罪が行われたと認知が広がり始めていた。
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