おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

文字の大きさ
202 / 232
王都編 グレイズ、冒険者ギルドに喧嘩を売る

5

しおりを挟む

「へ、陛下!? ななななな、なぜ? このような場所におられるのですか! その恰好……は」

 ハリアーがようやくジェネシスの身分に気付いて、頭を床に擦りつけて平伏していた。

「ハリアー殿、うちのギルドから緊急報告が上がっていたと思うが、ジェネシス陛下はブラックミルズで冒険者として武者修行をされておるのだ」

「は? はぁ!? 陛下が!? サイアス宰相から国王としての見識を広めるために遊学されておると発表はあったが……」

 随分と前にギルド本部に報告書として、ジェネシスの件は伝えてあったはずだが、どうやらハリアーにまで届いていなかったらしい。

 ハリアーに届く前に王国否定派の職員が握りつぶした可能性があった。

「も、もしかしてメラニア様がブラックミルズ公爵家として独立したことも知らないのでは? その婚約者となっているグレイズさんのことも知らないのでは」

 隣でことの成り行きを見守っていたアウリースがそっと俺に耳打ちしてきた。

 やっぱ、アウリースの言う通りそっちも報告が行ってなさそうな気がする。

 気になった俺は一応、ハリアーに確認だけしてみることにした。

「あー、取り込み中悪いが、ハリアー殿に少し聞きたいことが……」

「な、なんだ。グレイズ、今は陛下の相手で忙しいのだぞ! 状況を弁えよ!!」

 平伏していた顔を上げたハリアーが、俺に向かって口から泡を飛ばして怒っていた。

 その様子をジェネシスがニヤニヤして見ている。

 ジェネシスの奴、相当ハリアーに気狂い王って言われたのを根にもっているな。

 とはいえ、確認しておかないと更に問題が発生しそうな気がする。

「あー、すまない。ハリアー殿は、俺がブラックミルズ公爵家の相談役兼公爵の婚約者と認識はしているだろうか?」

「???????」

 ハリアーの顔にクエスチョンマークが多数浮かんだような気がした。

 やっぱ、知らされてなかったみたいだ……。

 となると、俺への認識は商人上がりのおっさん冒険者が、王に引き上げられてギルドマスターになったという認識だったということか。

 メラニアがハリアーの前に出てちょこんと頭を下げると自己紹介を始めた。

「ただいまグレイズ様よりご紹介に預かりました。ブラックミルズ公爵家の当主をさせてもらっているメラニアと申します。元々ヴィーハイブ家でしたが、どうもわたくしの血筋は陛下と同じらしく姉と認めて頂けております。ハリアー殿には今後ともわたくしの婚約者であるグレイズ殿と弟のジェネシスがお世話になると思いますので、よろしくお願いします」

「…………」

 ハリアーの顎が外れたようだ。

 あの顔色を見るにハリアーの中では色々と情報更新が滞っていたらしい。

 自分の周りにYESマンばっかり置いた弊害だったのだろう。

「正確に言うと、余の義兄ということで王位継承権第三位って地位も付随しているんだよね。グレイズ殿は」

 ジェネシスの言葉を聞いたハリアーの顔色が真っ青に変化していた。

 王位継承権は断ったのだが、現状王族で残っているのがジェネシスとメラニアしかいないので、最悪を考えて俺に三番目を務めて欲しいと懇願されて仕方なく受けていた。

「え、ええええっと。グレイズ殿はブラックミルズの一冒険者だと聞いてますが……」

「ああ、俺は一冒険者なんだが……色々と副業しててな……会社経営と商店街連合会とブラックミルズ公爵家相談役と『ギルドマスター』をやらせてもらっている。といっても―――」

「はぁあああああああああああああああああああああああああっ!? そ、そそそそんな話聞いてないぞっ!! 誰だ! グレイズ殿が一介の引退間近のポンコツ冒険者だって私に吹き込んだのはっ!」

 ハリアーが自分の子飼いの部下たちに向けて、怒鳴り散らしていた。

 いやいや、普通、新しくギルドマスターになった人の身上書くらい読むでしょ……。

 ちゃんと俺は経歴や肩書きを書いた身上書も送付していたぞ。

 俺は読んだ上でイキってたと思ってたんだが――

「グレイズ殿、なんで早くソレを言ってくれなかったんですか! いやー、私はただ者じゃないと思っていたんですよー。まさか、陛下の義兄に当たる方とは露知らず無礼の数々、失礼しました。お、おい、すぐに酒宴の支度をさせろ」

 ハリアーの変わり身の早さに、周囲に居た王国否定派も俺たちも呆気に取られていた。

 揉み手までしてしかも低姿勢過ぎる。

 ハリアーの態度が改まったところで、それまで、ニヤニヤしていたジェネシスの目が厳しい光を宿した。

「ハリアー、悪いが余もグレイズ殿も酒宴は要らない。この状況が理解できないのかね」

 ズラリと並んだ反ギルド本部派となったギルドマスターたちが、ハリアーたちに厳しい視線を送り込む。

 最高権力者に喧嘩を売ったハリアーに対し、ジェネシスも容赦はしないらしい。

「へ、陛下!! ちょっとした情報の行き違いがあったようで……担当者はすぐに解任しますので、こたびの件はなにとぞご容赦を!!」

 揉み手をして腰を屈めたハリアーが卑屈に許しを乞うていた。

 アレはジェネシスに対しては逆効果になるんだよな……下に責任押し付けて逃げようとする奴は容赦しないだろうし。

 ジェネシスは、ヨシュアに目で合図を送ると手にしていた紙を読み上げさせた。

「冒険者ギルド本部ギルドマスターハリアー殿への解任動議を発動し、現状グレイズ殿含む十五名の賛同をもらっている。そして王国と冒険者ギルド間で結ばれた規約十五条の第三項の規定により、王国主権者たる国王も一票を投じれることとなっているため、ハリアー殿解任動議は十六票の過半数となり可決されることとなりました」

 ヨシュアが淡々と紙に書かれた内容を読み上げていた。

 その内容を聞いたハリアーが顔を引きつらせている。

「ちょちょちょっとお待ちを……冒険者ギルドの人事は王権が届かない場所と規定されているはず! 十五条の第三項なんて今まで一度も使われなかった規定だぞ!! これは王による冒険者ギルドへの介入だ!!」

「歴代王は使わなかっただけで、余は規定としてあるので使用しただけのことだ」

「ちょちょちょっとお待ちを……私が解任となると全国の冒険者ギルドが動揺すると思うのですが……これでも、万事何事もなく平穏無事に冒険者ギルドを運営し、王国への多額の納税も果たしておりますが」

 ハリアーは自分自身の首が飛ぶと知り、必死になって抗弁していた。

「抗弁は後の査問会議で聞くことにして、とりあえず、解任決議は可決したので、肩書きのない者は早々にこの場より去れ」

 ジェネシスがハリアーを指差して、ヨシュアたちに連れ出すように指示を出していた。

「ま、待って! 待ってくれ! 違うんだ! 頼む! 私は知らなかったんだ! おい、やめろ! やめてくれ! 私は冒険者ギルドの本部ギルドマスターだぞ!」

 ハリアーは必死の抵抗を見せるが、ヨシュアの配下によって円卓会議室から引きずり出されていった。
しおりを挟む
感想 1,071

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。