おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

文字の大きさ
220 / 232
最終章 そして、伝説へ

14

しおりを挟む
「足元に罠三つ、奥から毒矢がくるってやつねー。全部撃ち切らせる?」

 監獄棟に入ってすぐに先行するファーマが罠の仕掛けられた場所を地図を覚えていたようで、罠を無効化するか尋ねてきた。

 他の冒険者たちもここを通過してでしか絶望都市には入れないから全部撃ち尽くさせて解除した方がいいな。

「ああ、撃ち切らせよう。メリー、すまないが盾を貸してくれるか?」

「グレイズさんだから毒矢には当たらないと思うけど、カーラの矢避けの魔法はちゃんとかけてね」

「グレイズ、すぐに矢避けの魔法をかける。しばらく、待て」

 隣にいたメリーの大盾を借り受けると、カーラが矢避けの魔法をかけてくれていた。

 淡い燐光が俺の身体を包み込み、飛んでくる矢を逸らしてくれるようになった。

「ありがとな。みんなはちょっと離れた場所で待機しててくれ」

 みんなを通路の陰に退避させると、メリーの大盾を持って、毒矢の罠がある床を思いっきり踏み鳴らした。

 通路の奥の壁が開くと、数十発の毒矢が一斉に撃ち出された。

 独房に仕掛けられてる罠にしては殺傷力高すぎる気がするんだが……。

 普通に生活してる時に踏んだら、死体がいっぱい転がることになってたと思うぞ。

 飛んでくる毒矢の数に収監されていた者たちへの待遇の一端が見て取れた。

「探索先も地獄、監獄も地獄ってことか……。一度入れば、二度と入りたくない監獄だと思うだろうな」

 飛んできた矢を大盾と素手で打ち払いながら、ここで生活していた者たちの様子を想像していた。

 その後、何度か床のスイッチを踏んでみたが、仕込まれていた毒矢は装填されていた弾数を撃ち尽くしたようで動かなくなった。

 監獄がダンジョン化しているため、自動で給弾されるかと思ったが、機械式の罠はやはり自動では給弾されないらしい。

「ふぅ、メリーありがとな。毒だらけになったが返しておくぞ」

「結構な数の毒矢が飛んできてたけど……ここの監獄は収監者を殺す気満々なようだったのね」

「作ったのはあのクレストン家だしな。更生させるための施設というよりも探索を拒否しないように恐怖を与えていたのかもしれん」

「グレイズさん、次の罠があるからねー。って思ったけど、ゾンビの気配するー」

「わふう(こっちに気付いたのか階下から上がってくるみたいです)」

 俺が毒矢を撃ち尽くさせると同時にファーマとハクは更にフロアの探索を進めており、次の罠と階下の敵が上がってきてると報告していた。

 罠にゾンビにって駐留兵士居室棟に比べると忙しいな。

 なるべく体力も魔力も温存して進みたいところだが……。

 俺が少し思案顔をしていると、カーラが袖を引いてきた。

「グレイズ、確かこのフロアには落とし穴の罠があったはず、ゾンビをそっちに誘導して落とした方が効率的」

「その提案に乗った。ファーマ、発見したのは落とし穴だったよな?」

「うん、落とし穴ー」

「じゃあ、ハクと一緒にゾンビをその罠に誘導してくれ。罠に落ちたゾンビを俺たちが処理する」

「わふうう(了解ー! ファーマちゃん、いくよ)」

「ああ、待ってーハクちゃん」

 罠の位置を覚えているファーマと敵の匂いを感知できるハクのコンビが階下から上がってくるゾンビたちを誘導するため、独房フロアの奥へ消えていった。

 しばらくすると、再び戻ってきたファーマとハクの背後には二〇体近いゾンビを引き連れていた。

「大量ですね……。落とし穴に落ちた後、私が火球を放り込んだ方がいいかも」

 意外にも多かったゾンビの量を見たアウリースが落とし穴に落ちた後の処理の提案をしてくれた。

 そっちの方が効率的かもしれないな。

 再生成されるとはいえ火葬してやった方が収監者や駐留兵士だった者も多少は浮かばれるだろうし。

「そうだな。落とし穴に落ちた後のゾンビはアウリースに任せるとしようか」

 そう言ってる間にもファーマとハクが大量のゾンビを引き連れて戻ってきている。

 ゾンビはまだ亡くなって日が浅いため、身動きは軽やかで生前の能力を失ってはいなそうであった。

「グレイズさん、連れてきたよー。今から落とし穴の上を通るけど、準備いい?」

「おぅ、大丈夫だ。任せておけっ!」

「わふう(では、行きますっ!)」

 ファーマとハクが落とし穴の起動スイッチのある場所をジャンプして飛び越えると、背後からついてきていたゾンビの先頭がそのままスイッチを踏んで進んできた。

 ゴゴゴという爆音とともにゾンビたちの足元の床が消失していく。

「かかったぞっ! アウリース」

「承知しました。行きますっ! 火球ファイヤーボール!」

 ボトボトと落とし穴の下に落ちたゾンビは底に張り巡らされた鉄杭によって体がズタズタにされていたが、アウリースの放った火球によって全てのゾンビが綺麗に焼かれて消え去っていった。

「ゾンビどもが丸焼けになっていくのは壮観なのじゃ。メラニア、妾は仕事がないからここでおやつ食べながら観戦するのじゃ」

「クィーンちゃん、勝手におやつタイムにしてちゃダメですよ」

「ええ!? お腹空いたのじゃー。おやつ、おやつがないと妾は死んでしまうのじゃ」

 最近、魔力や生命力を吸うよりもお菓子や食事をねだることが多くなったクィーンであるが、あれはもうノーライフキングではない別の生物に変化しているのかもしれなかった。

 半分生身だしな……食べた分成長してるみたいだし。

 主にお腹周りの方だが……。

「クィーン、探索はまだ続くからおやつはまだ早いぞ。暇そうにしてるなら、俺と一緒に罠の探索を手伝ってくれ」

「ええ!? 妾も仕事するのか? めんどくさいのじゃ」

「最近、メラニアがクィーンが食べ過ぎで太ってきたから運動させて欲しいって言われてるんだ。悪いが手伝ってくれよ」

「ですわね。わたくしも甘やかし過ぎたと反省しております。クィーンちゃん、ダイエットしましょう」

「嫌じゃー。働きたくないのじゃー。メラニア、後生なのじゃ、おやつ、おやつを一口だけー」

「次のフロアが終わったらおやつにするから、我慢するんだ。さぁ行くぞ」

 探索を嫌がるクィーンを掴まえると、俺はファーマとハクとともに床が抜け落ちたフロアを飛び越え、奥のフロアの探索を始めることにした。
しおりを挟む
感想 1,071

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。