おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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最終章 そして、伝説へ

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 口先と尻尾を失いながらもエンシェントドラゴンは抵抗を止めず、のしかかりや踏み付けを俺に対してしかけてきていた。

「そんな、動きじゃ俺には当たらない」

 踏みつけてきたエンシェントドラゴンの後ろ足をかわすと、渾身の力を込めた右の正拳突きを放つ。

 ゴブリンキングの時のように、自身の力がつ強すぎて拳がぶっ壊れないように回復魔法を同時発動しておいた。

 おかげで、エンシェントドラゴンの堅い鱗を殴っても拳がグシャグシャにならずに打撃の威力を内部に打ち込めている。

「ギャアアオアアアィイイ!!!!」

「今日の俺の拳は特別製だぞ。そら、もう一発味わえ」

 さらに続けて、左の正拳突きを放つ。

 エンシェントドラゴンの後ろ足からボキリという骨が砕けた感触が伝わった。

 折れたエンシェントドラゴンの足は巨体の自重を支えられなくなり、膝を突くような格好でほとんど動けなくなっていた。

「動けなくなったところ悪いが、とどめは刺させてもらうからな」

 身体を強化する魔法を発動させ、自身の能力を更に一段階強くすると、いったんエンシェントドラゴンから距離をとった。

 そして、深く息を吸うと地面を蹴ってエンシェントドラゴンの心臓めがけて飛び込んでいった。

 さすがに魔法で身体能力をあげると、空気がまとわりついてくるようになるな。

 きっと、今の俺はファーマでも目で捉えることができてないはずだ。

 神器の腕輪を外し、人外の力を発動している状態で身体能力を向上させる魔法を発動させたため、周りの時間経過はさらに一段と遅くなっている。

 エンシェントドラゴンの動きもほとんど止まって見えるのだ。

「もらったっ!!」

 一気に心臓があると思われる胸の前まで近づくと、勢いを利用して拳を前に突き出した。

 そして、ドゥーンという衝撃波ともにエンシェントドラゴンの胸にはどでかい穴が出現していた。

「きゅ、急にエンシェントドラゴンの胸に穴が開いたぞ! ど、どうなってるんだ!」

「ファーマも薄っすらしかみえなかったけど、多分開けたのはグレイズさんかなー」

「マジで、ぱねぇっす。ダンジョン最強とも言われるエンシェントドラゴンとタイマンして一方的勝利とかぱねぇっすよ」

「そりゃあ、グレイズさんだもの。エンシェントドラゴンの一匹くらいソロ狩り達成できなきゃ、伝説の男にならないでしょ」

「メリーの言う通り、グレイズは神様になる予定の男。これくらいできて当然」

「グレイズ様の武勲は詳細にわたくしが書き留めて領内に普及させますのでご安心を」

「メラニア様、私もそのお手伝いさせてもらいますね」

「わふぅう(アクセルリオン神様、見てますか? 見えてますよね? グレイズさんがようやくやる気を見せてくれてますよ。死後は最強の武神として天なる国ヘブンスにお連れしますのでポストをちゃんとご用意してくださいね)」

「メラニアー、エンシェントドラゴンの肉を焼いて食べていいー?」

 地面に降り立つと、門の方でも戦闘が終わったようで俺がエンシェントドラゴンのソロ討伐に成功したのを見てやんやの喝さいがあがっていた。

 そして、エンシェントドラゴンは胸から大量に黒い血を噴き出すと、その巨体がゆっくりと地面に倒れていた。

「ふぅー勝ったな。けど、魔力も結構使ったし、それに身体がこいつの血で真っ黒になっちまった。いったん休憩にして身体洗ってさっぱりしたいな」

 俺は全身真っ黒になった身体を見て、深いため息を吐いた。


 それから、俺はいったん広場に戻ると絶望都市の浅い階層の探索を他のパーティーに任せ、身体と装備を綺麗にしていた。

 その間にも門では探索に入っているパーティーたちが入れ替わりで出入りしている。

 エンシェントドラゴンの血を水場から汲んだ水で洗い流し終え、広場に戻ってきた俺にメリーが走り寄ってきた。

「グレイズさん、探索で入ってるパーティーからの報告だと、さっき門の前に集まってた魔物たちがいないおかげで、中はほとんどもぬけの殻らしいわ。罠もまだそこまで酷くないらしい。それにローマンが最深部への道案内をしてくれてるから、無駄に広範囲な探索をせずにすんでるのいい方に動いてるみたい」

「ダンジョンの深化はまだほとんど起きてないってことか」

「そうみたい。監獄のダンジョン化でかなり力を使ったんではというのがみんなの見立てだけど……」

「罠の方はどうだ?」

「そっちもまだほとんど……元々、年数の浅いダンジョンだったし、急激な成長であったけど罠を作り出すには至っていない様子とのことよ」

「つまり、ローマンたちが使ってたD地区へいく最短順路はまだ使えるってことか」

「現状、B地区まではファーマちゃんとハクを含んだ先行偵察パーティーでその順路を踏破してるから、きっとまだ使えると思うわ」

 俺が装備と身体を綺麗にしている間、先行で出した探索特化のパーティーがすでにB地区まで踏破していた。

 ファーマとハクさえいれば、よっぽど強力な魔物でもない限り奇襲を受けることはないし、それ以外のメンバーもダンジョン探索に慣れたベテランたちを編制して送り出していた。

 そんな探索特化のパーティーにローマンの道案内がついていれば、踏破スピードの速さも頷ける結果だった。

「ダンジョンが深化してなくてよかった……これなら、ダンジョン主まではたどりつけるはずだ。あとは倒すだけだな」

「そうね。きっとグレイズさんと私たちならダンジョン主でも簡単に蹴散らしちゃいそうね」

 確かにメリーの言う通り、過去にも強いダンジョン主が冒険者によって何度も討伐されてきた歴史がある。

 絶対に倒せないという存在ではないのだ。

 なぜなら、彼らは神の悪戯で超常の力を与えられた元人間だからだ。

 神に等しい力を与えられ、力に狂った者の末路がダンジョン主だと知っている俺としては、いささか複雑な気分になる。

 一歩間違えば俺もダンジョン主という存在になっていたかもしれないのだ。

 ここまで俺がダンジョン主という邪悪な存在にならなかったのは、ブラックミルズの街の連中やメリーを始めとする天啓子のおかげであると言って過言ではない。

「メリー、ありがとな。これからもよろしく頼む」

「あら、照れ屋のグレイズさんにしては珍しく素直なお礼の言葉ね。そういうのはダンジョン主を倒してからでいいわよ。さぁ、これ飲んで!」

 少し顔を赤くしたメリーが俺にグイッと魔力回復薬を押し付けてきた。

「ああ、そうだったな。よし、休憩はここまでだ。俺たちも先行したファーマたちに追いつくぞ」

「おっけ、みんなの準備は整っているわ」

 俺はメリーが差し出した魔力回復薬を飲み干すと、絶望都市へ繋がる門へと駆け出していった。
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