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がっこうにいこう!
45話「俺の女」
喧嘩大会が行われている所に足を運び、ハゲに声を掛ける。
「そっちの調子はどうだ。」
「へい、もう3人ばかし決まりやした。」
勝ち残ったであろう3人は流石に満身創痍でへたり込んでいた。
「立て!」
俺の号令で痛む身体に鞭打ちながらも全員が立ち上がった。
「これからあっちの女達がアンタたちの飯の食材を買いに行く手筈になっている。アンタらはその護衛と荷物持ちだ、いいな!」
「め、飯? 俺等に・・・・・・食わせてくれるんですかい!?」
「そうだよ。ここに居る全員分の食材が必要だからテキパキと動け。」
横で話を聞いていたハゲが声を張り上げる。
「テメェら!! 姐さんが飯を用意してくださるそうだ! もっと気合入れろ!!」
「「「へい!!!」」」
精が出るようで何よりだ。
台車を3台作り、買い出し部隊を編成してから見送った。
夕食には少し遅くなるかもしれないが、何とかなるだろう。
傍らに控えている元頭に視線を向ける。
「さて、元頭・・・・・・だとちょっと呼びにくいね。」
「では如何致しましょう?」
「そうだなぁ・・・・・・え~と・・・・・・じゃあ、中ボスでいいか。」
聞いた事のない言葉に一瞬怪訝な表情をする。
「ちゅう、ぼす・・・・・・? 一体どのような意味で?」
「下っ端よりちょっと偉い感じ。」
ハゲが話を聞いていたのか割り込んでくる。
「あ、姐さん! こいつは今まで何とかこいつらをまとめてきたんだ! もう少し――」
「良いんだ。・・・・・・団長。【中ボス】謹んで拝命させて頂きます。そして、改めて忠誠を誓わせて頂きます。」
中ボスが跪き、頭を垂れた。
ずいぶん大仰だな。変に楯突かれるよりは楽で良いんだけど。
「ハゲは・・・・・・ハゲでいっか。」
ついでに決める。
「そ、そんな・・・・・・! こ、ここ見て下さいよ姐さん。毛が5本しっかり生えてるんでさぁ!」
確かに、言われてみれば生き残りが数本居る。
「それなら仕方ないか。ハゲは他のやつにしようかな。」
それを聞いたハゲが数秒固まった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っふんぬぅぅぅっっ!!!」
プチプチッ。全滅した。
「団長! 【ハゲ】謹んで拝命させていただきやす!」
涙を流しながらハゲが跪き、頭を垂れた。そんなに惜しいか・・・・・・?
とりあえずハゲは選抜作業に戻らせた。
「・・・・・・じゃあ明日からの事だね。」
「何なりと。」
「まず、選抜した10人は明日から訓練させる。他はとりあえず今まで通りの運用で。何か問題はある?」
中ボスはしばし顎に手を当てて考える。
「10人・・・・・・ですか。縄張りの巡回の方に戦力的な影響が出るかと。今、各勢力は小康状態ですが、いつ小競り合いが起きてもおかしくない状態でもあります。」
「じゃあ再編成して一班の人数を増やそう。巡回は軽く走らせて。班が減った分は訓練も兼ねて速度で補う感じで。編成は任せるよ。」
「畏まりました。娼婦たちは如何致しましょう?」
「それも・・・・・・まだ今まで通りで。」
「承知しました。」
「それから、来月からは全員の稼ぎを全て回収して。」
「全て・・・・・・ですか?」
「その代わり食事を全員に毎日朝夕の二回配給する。大体一日銀貨6枚程度でいけるでしょ? 全部の稼ぎを回収すれば何とかなるんじゃない?」
これなら赤字の日も減るだろう。
「しかし、それですと今までよりも儲けが減少して団長に納める分が減ると思いますが・・・・・・。」
「いや、別に私に納める必要は・・・・・・って、団長って何!?」
なんかさっきからしれっと呼ばれてる気がする!
「団長は団長でしょう? ネコミミ自警団の。」
「いやいや、団長は中ボスがやりなよ!?」
「私は【中ボス】ではないのですか?」
「いや、呼びにくいから適当に呼び名付けただけで・・・・・・。」
役職かなんかだと思ってたらしい。
だから拝命云々言ってたのか・・・・・・。
「どちらにせよ、【団長】は団長にしか務まらないかと。それに一度団長に忠誠を誓った身。お戻りになられるまで学院の前で待たせて頂きます。」
何その地味に効く脅迫!?
「わ、分かったからそれはヤメテ・・・・・・。」
「【団長】のお望みとあらば。」
「まぁとにかく、儲けが出れば貯金して、稼ぎが足りない時はそこから配給に使うようにして。」
「本当によろしいのですね?」
「構わないよ。」
そんな上納金みたいなの受け取るようになったらホントにヤクザだし・・・・・・。
「貯金が尽きた時はいかがいたしましょう?」
「うーん・・・・・・まぁ、それはその時考えよう。それに、娼婦たちの血色が良くなれば自然と稼ぎも増えると思うし。」
問題はこれだ。
俺が素人目で見ただけでも健康状態が良くないのが分かる。
あれじゃあ客も付かないだろう。
というか、ミアの方が血色が良いのだが・・・・・・。
「あ、そうだ。月の終わりにはその月の利益の・・・・・・半分を分配しよう。取り分は貢献度の高かった人を多めに。稼ぎだけで決めるないようにね。それで残った分を貯金に回そう。」
やっぱり頑張ったらご褒美は必要だよな。
「半分も・・・・・・ですか?」
「少しでも多く貰える方がやる気出るでしょ? まぁ、細かいことは中ボスの方が分かってるだろうから割合は任せるよ。大事なのは全員がちゃんと食事を摂れることね。」
「承知しました。全てそのように取り計らいます。・・・・・・しかし、彼らに訓練させて如何なさるおつもりで?」
「冒険者にするんだよ。」
「お言葉ですが団長。私を含め、冒険者になれるような実力を持った者など殆ど・・・・・・。」
「だから訓練させるんだよ。とりあえず・・・・・・あと五日で仕上げよう。」
「五日で・・・・・・!?」
「春休みがあと少しだし。」
そう、俺にはタイムリミットがあるのだ。
普段でも休日なら来れるが、それも限界がある。
「まぁ、今回は一人でも冒険者になれれば良いかな。あとはその団員の見習いとして登録すればいいし。上手く行けば残りの期間を使って実地訓練にしよう。」
「・・・・・・彼らは地獄を見る事になりそうですね。」
「死んでおけば良かったと思うくらいに頑張ってもらおう。すぐには無理だけど・・・・・・5人のパーティを2つ、一日あたり銀貨3枚を稼げるようになれば、とりあえず食うには困らないでしょ?」
そうこう話している内に買い出し部隊が戻ってくる。
調理班の作業は拙いながらも進み、少し遅い時間に夕食となった。
献立はシチューと固いパン。
使った金額は銀貨4枚と銅貨少々。
思っていたよりも安く済んだらしい。
全員が腹いっぱいという訳にはいかないが、飢え無い程度には食わせてやれそうだ。
焦げ臭いシチューを口に運んだ・・・・・・苦い。
まぁ、慣れないデカイ鍋で調理したのだから仕方ないだろう。
俺だってあんな寸胴鍋とかいうのは料理番組でしかお目にかかった事が無い。
その実物を造るさっきまでは。
火に掛けられて並んでいる鍋達は俺が造った物だ。
こんだけの人数分を賄えるような鍋なんてそうそう置いてない。
ましてやチンピラが集うような所にある筈もなく・・・・・・、部下の持っていた鉄製の武器を取り上げて拵えたのだ。
部下には代わりに土で作った剣を渡しておいた。
しかし、これはどうにかならないか・・・・・・。
俺の前に平伏している調理を担当した娼婦たち。
謝罪の言葉を口々に唱えている。
別に失敗を咎めるつもりはないのだが、最初に脅し過ぎたか。
部下達に問いかける。
「おい、美味いか、お前ら!」
中ボスが先んじて答える。
「美味いです! 団長!」
それに部下達が続いた。
「う、美味いです!」
「美味いです!!」
「美味いですうっ!」
平伏している娼婦たちに視線を戻す。
「だって。次はもっとうまく作ればいいよ。分かったらキミらも食べなよ。」
シッシッと娼婦達を散らす。
周りの部下達にも、娼婦達にもホッと弛緩した空気が流れた。
緩やかな食事の時間が開始される。
「団長、こちらをお納め願えませんか?」
中ボスが差し出してきたのは中々豪奢な装飾が施された剣だ。
「これは中ボスのでしょ?」
「いえ、これは歴代の頭が受け継いできたものです。ですから、これは団長が。」
「その組は潰したからもう関係ないよ。」
「いいえ、その組を潰した団長だからこそ、戦利品としてお受け取り下さい。」
「はぁ・・・・・・分かったよ。じゃあ、それは団の所有物として接収する。倉庫にでもしまっておいて、資金繰りが悪くなったら売っちゃおう。それでいい?」
「はい、そのように。」
豪奢な剣は儀式用の物ではなく、戦闘にも耐えうる様に作られている。
だから普通に使っても良いのだが・・・・・・。
今まで俺は土で作った剣を使い捨ててきたのだ。
今更こんなものを持たされても凄く扱い辛い。色んな意味で。
だって・・・・・・なんか勿体無いだろう?
エリクサーとかはラスボスでも使わないタイプなんだ、俺は。
「でも、これが無いと中ボスが丸腰になるんじゃない?」
「つきましては、皆と同じ剣を授けて頂けないでしょうか。」
「うーん、下っ端と中ボスが同じ武器ってのもなぁ・・・・・・。そうだ、中ボスはこれにしよう。」
地面から【ト】に似た形の棒を二本引き抜く。
「あの、それは・・・・・・?」
「トンファーって武器だよ。こういう感じで殴ったり、防御したりしているのを見たことがある。頑張って使いこなして。」
「はっ、必ずや!」
片膝を着いた中ボスにトンファーを授ける。
「姐さん、中ボスだけズルいですぜ!」
ハゲだ。確かに一応役職に就いているし、下っ端と同じなのは恰好がつかないか。
「じゃ、さっきの剣貸して。」
「へい!」
剣を受け取り、形を変える。
その凶悪な形に周囲が息を飲んだ。
「姐さん、それは一体・・・・・・?」
出来上がったものをハゲに渡す。
「釘バット。見た目通りの凶悪な武器だよ。」
釘の部分も土で出来ているが。
「ど、どうやって扱うんで?」
「それでぶん殴るだけだよ。ハゲでも使えるでしょ?」
「わ、分かりやした!」
*****
食事も落ち着いてきた所で、中ボスに号令を掛けさせた。
「食いながらで良いから聞け! 明日からの予定を伝える!」
中ボスが前に進み出て、説明を始める。
「まず最初に報告しておく! 私は先程、団長より【中ボス】を拝命賜った! 以後、留め置くように!」
それから中ボスが先程話した内容を部下達に伝えた。
「――以上だ!」
何かしらの反発があるかと思ったが、意外とすんなりと受け入れられたようだ。
話が終わると、松葉杖をついた少女とその妹が俺の前に出てきた。
地に伏して両手を差し出す。二人の手には銅貨3枚と、銅貨1枚が乗っている。
「どうぞ、お納めください。」「おさめください。」
「全額回収は来月からだよ。」
「い、いえ、私達のものは心も身体も生命も全て姫騎士様に捧げます。」「ささげます。」
ゾロゾロと他の娼婦たちが姉妹の後ろに列を作る。
「おい、テメエら! 有り金全部ここに出せ!」
ハゲが男達から金の回収を始める。台詞は強盗そのものだが。
「実施は来月からだって! あと集めるのは稼ぎ分だけだよ!」
「飯はちゃんと食えるんでしょう、姐さん! だったら来月からと言わず、今からやりやしょう!」
話を聞かないハゲが、広げた風呂敷に財布をひっくり返すとジャラジャラと銅貨が音を立てた。
銅貨で出来あがった山には数枚の銀貨が顔を覗かせている。
周囲の部下達からは「おぉっ!」と歓声が上がった。
そして続けと言わんばかりに銅貨が積み重なっていく。・・・・・・数えるの面倒くさそう。
混乱を避けようとクッション期間を置くつもりだったのだが、彼らには必要なかったようだ。
まぁ、その頭の・・・・・・フットワークの軽さも長所と呼べるだろう。
「はぁ・・・・・・明日から出来る、中ボス?」
「お任せ下さい。・・・・・・聞け、お前達!」
騒いでいた部下達がピタリと止まった。流石今まで纏めていただけのことはある。
「我らはこれより団長の元にて生まれ変わる! 全てをここに吐き出せ! 食事の配給は明日から、月末の分配は来月からとする! 異論は無いな!?」
拍手と歓声が起こる。
ちゃっかりと稼ぎの分配を来月末からにしているのが抜け目ない。
まぁ、蓄えはあった方が良いからな。
まだ両手を差し出している姉妹から銅貨を受け取る。
「全てを捧げると言ったね。明日からしっかりと働いてもらうよ。」
「・・・・・・はい。」
「とりあえず、お客を取るのは禁止。」
姉の方が絶望の表情を見せる。
「そ、そんな・・・・・・!」
「その足だとお客なんて取れないでしょ? もしくは買い叩かれるのが関の山じゃない?」
「も、申し訳ございません・・・・・・ううっ。」
地に伏したままの姿勢で涙を流す。
「泣く必要はないよ。もっと適任の仕事があるから、そっちをやって貰うし。」
「私に、何ができるのでしょうか・・・・・・。」
「時間の空いた部下と娼婦たちに文字の読み書きと計算を教えて。妹にもキッチリね。」
妹の方も教師役に出来れば効率も上がるだろう。
「それだけで・・・・・・宜しいのですか?」
「それだけって言うけど・・・・・・人に教えるのは難しいよ?」
俺も散々苦労しているんだ。ニーナとかサーニャに。
「い、いえ・・・・・・ですがその、お金を・・・・・・お納め出来ません。」
「あぁ、そんな事。別にお金を稼いで来るだけが仕事じゃないよ。キミが持っている”知識(もの)”の価値は分かっているから、まずは私の言う通りにやってみて。良い?」
「はい、ありがとうございます・・・・・・うぅっ。」
「それからもう一つ。私にすべてを捧げるって言ったんだし、何時如何なる時でも要求に答えられるように健康状態は保っておくこと。そっちの妹ちゃんもね。」
俺は中ボスの居る方へ向き直る。
「聞いてたな? 中ボス。」
「はい、そのように手配しておきます。」
こいつ便利だわー。
*****
さて、とりあえず当初の目標を達成しておかないとな。
その為にここまで頑張ったのだ。
「聞け! お前達に一つ言っておく事がある!」
今までずっと後ろに控えさせていたミアを前に出す。
「今からこいつは、えーっと・・・・・・俺の女だ! 手を出したら命は無いものと思え! 分かったな!!」
「「「わ、分かりやした!!」」」
これでミアの件は一先ずは片付いたな。一先ずは。
「団長、お話は分かりましたが、彼女は・・・・・・。」
奴隷である。何処かの誰かの。
こっちも方を付けないと駄目だろう。
結局のところ、今は誰かの所有物なのだ。
「あぁ、分かってるよ。そっちは近日中にどうにかする。とりあえずは杖姉妹・・・・・・リタとリコの所で一緒に勉強させておいて。」
「そのように致します。」
少し疲れた俺は、皆とは少し離れた所で一息いれる事にした。
コーヒーで、と言いたいところだが、水しかないのが残念だ。酒は流石に飲めないしな。
寮に戻った時の言い訳をどうしようか頭を抱えていると、ミアがやってきて隣に座った。
「あ、あの・・・・・・アタシの為にここまでしてくれたの? ・・・・・・どうして?」
「ミアも私の事を助けようとしてくれたじゃない。」
「アタシの身体なんて・・・・・・その、こんなんだし・・・・・・そのまま逃げてくれても良かったんだよ?」
「でも、泣いてたしね。」
「そうだけど・・・・・・、それにあいつらはやっつけてくれたよ?」
「放っておけばその後、もっと酷い目に遭わされたかもしれないし。」
例えば・・・・・・殺されてしまったり。そういう展開は俺も望んではいない。
別に嫌いな話ではないが、そんな悲劇の物語はフィクションだけで良いのだ。
「根本から変える必要があったんだよ。壊滅させるだけじゃ他の勢力に代わるだけで、結局変わらないしね。」
「その、難しい事は分かんないけど・・・・・・ありがとう。」
ミアがそっと俺の腕を抱いて寄り添ってくる。
ドクン、と心臓の音が大きくなる。
「それから、その・・・・・・これから、宜しくおねがいします。えーっと・・・・・・旦那さま?」
「・・・・・・は? ・・・・・・え? だ、旦那さま?」
「ふふっ、だって・・・・・・”俺の女”って。」
確かに言ったような気がします・・・・・・。
「アタシは、その・・・・・・本妻じゃなくて、一番最後の愛人で良いから・・・・・・ちゅ。・・・・・・チュ。」
頬そして唇に触れるようなキスをされる。心臓が暴れ出す。
同時に何かが脳内に警鐘を鳴らす。何か違和感を訴える。
更にミアの唇が襲い掛かり、ゆっくりと押し倒される。
「んっ・・・・・・ふっ・・・・・・ちゅ・・・・・・。」
ヌルリ、と俺の唇を割ってミアの舌が挿し込まれた。
ねっとりと彼女の舌が口内を蹂躙していく。
舌を伝ってきたミアの唾液が浸透する。・・・・・・甘い。
・・・・・・警鐘が脳内に響いてくる。何だ?
ポタリと暖かい雫が俺の頬を濡らした。
ミアが泣いている。ポロポロと彼女の瞳から溢れる涙が何度も頬を叩く。
「ぁ・・・・・・んっ。ご、ごめん・・・・・・ね・・・・・・んっ・・・・・・ちゅぷ・・・・・・。だんな、さま・・・・・・ちゅ・・・・・・まだ・・・・・・ちっちゃい、のに・・・・・・んぁっ。」
ミアの手が太ももを撫で、スカートをたくし上げながら登ってくる。
「だめ、なの・・・・・・止められ、・・・・・・ぁんっ・・・・・・ないの・・・・・・。どうして・・・・・・んぅっ・・・・・・好き、なのに・・・・・・ぁ・・・・・・んっ・・・・・・。だんな、さま・・・・・・ごめんっ、なさい・・・・・・ちゅ・・・・・・。」
いや・・・・・・、どうするんだこの状況。
押し退けるのは簡単だが、こんなに泣きじゃくっている子を突き放すような真似はしたくないし・・・・・・。
だからと言ってこのままでは俺の貞操の危機が危険で危ない。
いや・・・・・・あれ? よく考えたら別に危機じゃなくね?
俺のDTは哀しい事にもう捨てることが出来ないのだ。
故に魔力がDTと共に喪失するようなことはありえない。
危ないとすれば処女の方だが・・・・・・、それを失ったところで魔力には何の影響も無いのである。
そう考えれば処女くらい、こんな可愛い子になら別にくれてやっても・・・・・・。
そこまで考えたところで、今までの俺の経験が、幾度と無く繰り返された疑似恋愛の経験が警告を発する。
いや、いやいやいやいや、違う、違うぞ!
そう、それは違う。間違っている。
俺なら分かるだろう! この選択肢は罠だ! バッドエンドに行く感じのやつだ!
せめてノーマルエンドの選択肢を選ぶんだ!
どうする俺!?
ミアの手が最後の防壁(布製)に掛かり、そのまま今度はゆっくりと下ろされる。
いやあぁぁ! ズボンを履いてくるんだった! スカートってなんかスースーするよ!?
防壁を剥ぎ取ったミアの手はまた太ももを登り始める、今度は護るもののない俺の――
「団長、こちらで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺とミアの情事を目撃した中ボスが固まった。見られた俺達も固まった。
正解の選択肢は【時間切れ】だったか・・・・・・。
「だ、だんなさま・・・・・・ごめんなさい!」
正気に戻ったミアが泣きながら走り去っていく・・・・・・ところを触手で捕らえた。
「きゃぅっ・・・・・・! な、何!?」
とりあえずミアは捕らえたままにしておく。
「・・・・・・お、お邪魔をしてしまいました。申し訳ありません。」
「いや、良い。助かった。要件は何だ?」
「明日からの配給の件、滞り無く。早朝から娼婦と部下たちを使わせて頂きます。それと、ミアン嬢の件も問題ありません。」
「そう、ご苦労さま。・・・・・・ねぇ、中ボス。ミアが奴隷だという以外の情報は何か知ってる?」
「いえ、ただ娼婦たちとも・・・・・・関係を持っていたようです。」
「分かった、ありがとう。」
「では失礼致します。こちらには人を近づけさせませんので。・・・・・・それと、お召し物を直された方がよろしいかと。」
ひざ下数センチまでずり下ろされた、とあるキャラクターがプリントされたパンツを上げた。
気が利くね、全く。
「そっちの調子はどうだ。」
「へい、もう3人ばかし決まりやした。」
勝ち残ったであろう3人は流石に満身創痍でへたり込んでいた。
「立て!」
俺の号令で痛む身体に鞭打ちながらも全員が立ち上がった。
「これからあっちの女達がアンタたちの飯の食材を買いに行く手筈になっている。アンタらはその護衛と荷物持ちだ、いいな!」
「め、飯? 俺等に・・・・・・食わせてくれるんですかい!?」
「そうだよ。ここに居る全員分の食材が必要だからテキパキと動け。」
横で話を聞いていたハゲが声を張り上げる。
「テメェら!! 姐さんが飯を用意してくださるそうだ! もっと気合入れろ!!」
「「「へい!!!」」」
精が出るようで何よりだ。
台車を3台作り、買い出し部隊を編成してから見送った。
夕食には少し遅くなるかもしれないが、何とかなるだろう。
傍らに控えている元頭に視線を向ける。
「さて、元頭・・・・・・だとちょっと呼びにくいね。」
「では如何致しましょう?」
「そうだなぁ・・・・・・え~と・・・・・・じゃあ、中ボスでいいか。」
聞いた事のない言葉に一瞬怪訝な表情をする。
「ちゅう、ぼす・・・・・・? 一体どのような意味で?」
「下っ端よりちょっと偉い感じ。」
ハゲが話を聞いていたのか割り込んでくる。
「あ、姐さん! こいつは今まで何とかこいつらをまとめてきたんだ! もう少し――」
「良いんだ。・・・・・・団長。【中ボス】謹んで拝命させて頂きます。そして、改めて忠誠を誓わせて頂きます。」
中ボスが跪き、頭を垂れた。
ずいぶん大仰だな。変に楯突かれるよりは楽で良いんだけど。
「ハゲは・・・・・・ハゲでいっか。」
ついでに決める。
「そ、そんな・・・・・・! こ、ここ見て下さいよ姐さん。毛が5本しっかり生えてるんでさぁ!」
確かに、言われてみれば生き残りが数本居る。
「それなら仕方ないか。ハゲは他のやつにしようかな。」
それを聞いたハゲが数秒固まった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っふんぬぅぅぅっっ!!!」
プチプチッ。全滅した。
「団長! 【ハゲ】謹んで拝命させていただきやす!」
涙を流しながらハゲが跪き、頭を垂れた。そんなに惜しいか・・・・・・?
とりあえずハゲは選抜作業に戻らせた。
「・・・・・・じゃあ明日からの事だね。」
「何なりと。」
「まず、選抜した10人は明日から訓練させる。他はとりあえず今まで通りの運用で。何か問題はある?」
中ボスはしばし顎に手を当てて考える。
「10人・・・・・・ですか。縄張りの巡回の方に戦力的な影響が出るかと。今、各勢力は小康状態ですが、いつ小競り合いが起きてもおかしくない状態でもあります。」
「じゃあ再編成して一班の人数を増やそう。巡回は軽く走らせて。班が減った分は訓練も兼ねて速度で補う感じで。編成は任せるよ。」
「畏まりました。娼婦たちは如何致しましょう?」
「それも・・・・・・まだ今まで通りで。」
「承知しました。」
「それから、来月からは全員の稼ぎを全て回収して。」
「全て・・・・・・ですか?」
「その代わり食事を全員に毎日朝夕の二回配給する。大体一日銀貨6枚程度でいけるでしょ? 全部の稼ぎを回収すれば何とかなるんじゃない?」
これなら赤字の日も減るだろう。
「しかし、それですと今までよりも儲けが減少して団長に納める分が減ると思いますが・・・・・・。」
「いや、別に私に納める必要は・・・・・・って、団長って何!?」
なんかさっきからしれっと呼ばれてる気がする!
「団長は団長でしょう? ネコミミ自警団の。」
「いやいや、団長は中ボスがやりなよ!?」
「私は【中ボス】ではないのですか?」
「いや、呼びにくいから適当に呼び名付けただけで・・・・・・。」
役職かなんかだと思ってたらしい。
だから拝命云々言ってたのか・・・・・・。
「どちらにせよ、【団長】は団長にしか務まらないかと。それに一度団長に忠誠を誓った身。お戻りになられるまで学院の前で待たせて頂きます。」
何その地味に効く脅迫!?
「わ、分かったからそれはヤメテ・・・・・・。」
「【団長】のお望みとあらば。」
「まぁとにかく、儲けが出れば貯金して、稼ぎが足りない時はそこから配給に使うようにして。」
「本当によろしいのですね?」
「構わないよ。」
そんな上納金みたいなの受け取るようになったらホントにヤクザだし・・・・・・。
「貯金が尽きた時はいかがいたしましょう?」
「うーん・・・・・・まぁ、それはその時考えよう。それに、娼婦たちの血色が良くなれば自然と稼ぎも増えると思うし。」
問題はこれだ。
俺が素人目で見ただけでも健康状態が良くないのが分かる。
あれじゃあ客も付かないだろう。
というか、ミアの方が血色が良いのだが・・・・・・。
「あ、そうだ。月の終わりにはその月の利益の・・・・・・半分を分配しよう。取り分は貢献度の高かった人を多めに。稼ぎだけで決めるないようにね。それで残った分を貯金に回そう。」
やっぱり頑張ったらご褒美は必要だよな。
「半分も・・・・・・ですか?」
「少しでも多く貰える方がやる気出るでしょ? まぁ、細かいことは中ボスの方が分かってるだろうから割合は任せるよ。大事なのは全員がちゃんと食事を摂れることね。」
「承知しました。全てそのように取り計らいます。・・・・・・しかし、彼らに訓練させて如何なさるおつもりで?」
「冒険者にするんだよ。」
「お言葉ですが団長。私を含め、冒険者になれるような実力を持った者など殆ど・・・・・・。」
「だから訓練させるんだよ。とりあえず・・・・・・あと五日で仕上げよう。」
「五日で・・・・・・!?」
「春休みがあと少しだし。」
そう、俺にはタイムリミットがあるのだ。
普段でも休日なら来れるが、それも限界がある。
「まぁ、今回は一人でも冒険者になれれば良いかな。あとはその団員の見習いとして登録すればいいし。上手く行けば残りの期間を使って実地訓練にしよう。」
「・・・・・・彼らは地獄を見る事になりそうですね。」
「死んでおけば良かったと思うくらいに頑張ってもらおう。すぐには無理だけど・・・・・・5人のパーティを2つ、一日あたり銀貨3枚を稼げるようになれば、とりあえず食うには困らないでしょ?」
そうこう話している内に買い出し部隊が戻ってくる。
調理班の作業は拙いながらも進み、少し遅い時間に夕食となった。
献立はシチューと固いパン。
使った金額は銀貨4枚と銅貨少々。
思っていたよりも安く済んだらしい。
全員が腹いっぱいという訳にはいかないが、飢え無い程度には食わせてやれそうだ。
焦げ臭いシチューを口に運んだ・・・・・・苦い。
まぁ、慣れないデカイ鍋で調理したのだから仕方ないだろう。
俺だってあんな寸胴鍋とかいうのは料理番組でしかお目にかかった事が無い。
その実物を造るさっきまでは。
火に掛けられて並んでいる鍋達は俺が造った物だ。
こんだけの人数分を賄えるような鍋なんてそうそう置いてない。
ましてやチンピラが集うような所にある筈もなく・・・・・・、部下の持っていた鉄製の武器を取り上げて拵えたのだ。
部下には代わりに土で作った剣を渡しておいた。
しかし、これはどうにかならないか・・・・・・。
俺の前に平伏している調理を担当した娼婦たち。
謝罪の言葉を口々に唱えている。
別に失敗を咎めるつもりはないのだが、最初に脅し過ぎたか。
部下達に問いかける。
「おい、美味いか、お前ら!」
中ボスが先んじて答える。
「美味いです! 団長!」
それに部下達が続いた。
「う、美味いです!」
「美味いです!!」
「美味いですうっ!」
平伏している娼婦たちに視線を戻す。
「だって。次はもっとうまく作ればいいよ。分かったらキミらも食べなよ。」
シッシッと娼婦達を散らす。
周りの部下達にも、娼婦達にもホッと弛緩した空気が流れた。
緩やかな食事の時間が開始される。
「団長、こちらをお納め願えませんか?」
中ボスが差し出してきたのは中々豪奢な装飾が施された剣だ。
「これは中ボスのでしょ?」
「いえ、これは歴代の頭が受け継いできたものです。ですから、これは団長が。」
「その組は潰したからもう関係ないよ。」
「いいえ、その組を潰した団長だからこそ、戦利品としてお受け取り下さい。」
「はぁ・・・・・・分かったよ。じゃあ、それは団の所有物として接収する。倉庫にでもしまっておいて、資金繰りが悪くなったら売っちゃおう。それでいい?」
「はい、そのように。」
豪奢な剣は儀式用の物ではなく、戦闘にも耐えうる様に作られている。
だから普通に使っても良いのだが・・・・・・。
今まで俺は土で作った剣を使い捨ててきたのだ。
今更こんなものを持たされても凄く扱い辛い。色んな意味で。
だって・・・・・・なんか勿体無いだろう?
エリクサーとかはラスボスでも使わないタイプなんだ、俺は。
「でも、これが無いと中ボスが丸腰になるんじゃない?」
「つきましては、皆と同じ剣を授けて頂けないでしょうか。」
「うーん、下っ端と中ボスが同じ武器ってのもなぁ・・・・・・。そうだ、中ボスはこれにしよう。」
地面から【ト】に似た形の棒を二本引き抜く。
「あの、それは・・・・・・?」
「トンファーって武器だよ。こういう感じで殴ったり、防御したりしているのを見たことがある。頑張って使いこなして。」
「はっ、必ずや!」
片膝を着いた中ボスにトンファーを授ける。
「姐さん、中ボスだけズルいですぜ!」
ハゲだ。確かに一応役職に就いているし、下っ端と同じなのは恰好がつかないか。
「じゃ、さっきの剣貸して。」
「へい!」
剣を受け取り、形を変える。
その凶悪な形に周囲が息を飲んだ。
「姐さん、それは一体・・・・・・?」
出来上がったものをハゲに渡す。
「釘バット。見た目通りの凶悪な武器だよ。」
釘の部分も土で出来ているが。
「ど、どうやって扱うんで?」
「それでぶん殴るだけだよ。ハゲでも使えるでしょ?」
「わ、分かりやした!」
*****
食事も落ち着いてきた所で、中ボスに号令を掛けさせた。
「食いながらで良いから聞け! 明日からの予定を伝える!」
中ボスが前に進み出て、説明を始める。
「まず最初に報告しておく! 私は先程、団長より【中ボス】を拝命賜った! 以後、留め置くように!」
それから中ボスが先程話した内容を部下達に伝えた。
「――以上だ!」
何かしらの反発があるかと思ったが、意外とすんなりと受け入れられたようだ。
話が終わると、松葉杖をついた少女とその妹が俺の前に出てきた。
地に伏して両手を差し出す。二人の手には銅貨3枚と、銅貨1枚が乗っている。
「どうぞ、お納めください。」「おさめください。」
「全額回収は来月からだよ。」
「い、いえ、私達のものは心も身体も生命も全て姫騎士様に捧げます。」「ささげます。」
ゾロゾロと他の娼婦たちが姉妹の後ろに列を作る。
「おい、テメエら! 有り金全部ここに出せ!」
ハゲが男達から金の回収を始める。台詞は強盗そのものだが。
「実施は来月からだって! あと集めるのは稼ぎ分だけだよ!」
「飯はちゃんと食えるんでしょう、姐さん! だったら来月からと言わず、今からやりやしょう!」
話を聞かないハゲが、広げた風呂敷に財布をひっくり返すとジャラジャラと銅貨が音を立てた。
銅貨で出来あがった山には数枚の銀貨が顔を覗かせている。
周囲の部下達からは「おぉっ!」と歓声が上がった。
そして続けと言わんばかりに銅貨が積み重なっていく。・・・・・・数えるの面倒くさそう。
混乱を避けようとクッション期間を置くつもりだったのだが、彼らには必要なかったようだ。
まぁ、その頭の・・・・・・フットワークの軽さも長所と呼べるだろう。
「はぁ・・・・・・明日から出来る、中ボス?」
「お任せ下さい。・・・・・・聞け、お前達!」
騒いでいた部下達がピタリと止まった。流石今まで纏めていただけのことはある。
「我らはこれより団長の元にて生まれ変わる! 全てをここに吐き出せ! 食事の配給は明日から、月末の分配は来月からとする! 異論は無いな!?」
拍手と歓声が起こる。
ちゃっかりと稼ぎの分配を来月末からにしているのが抜け目ない。
まぁ、蓄えはあった方が良いからな。
まだ両手を差し出している姉妹から銅貨を受け取る。
「全てを捧げると言ったね。明日からしっかりと働いてもらうよ。」
「・・・・・・はい。」
「とりあえず、お客を取るのは禁止。」
姉の方が絶望の表情を見せる。
「そ、そんな・・・・・・!」
「その足だとお客なんて取れないでしょ? もしくは買い叩かれるのが関の山じゃない?」
「も、申し訳ございません・・・・・・ううっ。」
地に伏したままの姿勢で涙を流す。
「泣く必要はないよ。もっと適任の仕事があるから、そっちをやって貰うし。」
「私に、何ができるのでしょうか・・・・・・。」
「時間の空いた部下と娼婦たちに文字の読み書きと計算を教えて。妹にもキッチリね。」
妹の方も教師役に出来れば効率も上がるだろう。
「それだけで・・・・・・宜しいのですか?」
「それだけって言うけど・・・・・・人に教えるのは難しいよ?」
俺も散々苦労しているんだ。ニーナとかサーニャに。
「い、いえ・・・・・・ですがその、お金を・・・・・・お納め出来ません。」
「あぁ、そんな事。別にお金を稼いで来るだけが仕事じゃないよ。キミが持っている”知識(もの)”の価値は分かっているから、まずは私の言う通りにやってみて。良い?」
「はい、ありがとうございます・・・・・・うぅっ。」
「それからもう一つ。私にすべてを捧げるって言ったんだし、何時如何なる時でも要求に答えられるように健康状態は保っておくこと。そっちの妹ちゃんもね。」
俺は中ボスの居る方へ向き直る。
「聞いてたな? 中ボス。」
「はい、そのように手配しておきます。」
こいつ便利だわー。
*****
さて、とりあえず当初の目標を達成しておかないとな。
その為にここまで頑張ったのだ。
「聞け! お前達に一つ言っておく事がある!」
今までずっと後ろに控えさせていたミアを前に出す。
「今からこいつは、えーっと・・・・・・俺の女だ! 手を出したら命は無いものと思え! 分かったな!!」
「「「わ、分かりやした!!」」」
これでミアの件は一先ずは片付いたな。一先ずは。
「団長、お話は分かりましたが、彼女は・・・・・・。」
奴隷である。何処かの誰かの。
こっちも方を付けないと駄目だろう。
結局のところ、今は誰かの所有物なのだ。
「あぁ、分かってるよ。そっちは近日中にどうにかする。とりあえずは杖姉妹・・・・・・リタとリコの所で一緒に勉強させておいて。」
「そのように致します。」
少し疲れた俺は、皆とは少し離れた所で一息いれる事にした。
コーヒーで、と言いたいところだが、水しかないのが残念だ。酒は流石に飲めないしな。
寮に戻った時の言い訳をどうしようか頭を抱えていると、ミアがやってきて隣に座った。
「あ、あの・・・・・・アタシの為にここまでしてくれたの? ・・・・・・どうして?」
「ミアも私の事を助けようとしてくれたじゃない。」
「アタシの身体なんて・・・・・・その、こんなんだし・・・・・・そのまま逃げてくれても良かったんだよ?」
「でも、泣いてたしね。」
「そうだけど・・・・・・、それにあいつらはやっつけてくれたよ?」
「放っておけばその後、もっと酷い目に遭わされたかもしれないし。」
例えば・・・・・・殺されてしまったり。そういう展開は俺も望んではいない。
別に嫌いな話ではないが、そんな悲劇の物語はフィクションだけで良いのだ。
「根本から変える必要があったんだよ。壊滅させるだけじゃ他の勢力に代わるだけで、結局変わらないしね。」
「その、難しい事は分かんないけど・・・・・・ありがとう。」
ミアがそっと俺の腕を抱いて寄り添ってくる。
ドクン、と心臓の音が大きくなる。
「それから、その・・・・・・これから、宜しくおねがいします。えーっと・・・・・・旦那さま?」
「・・・・・・は? ・・・・・・え? だ、旦那さま?」
「ふふっ、だって・・・・・・”俺の女”って。」
確かに言ったような気がします・・・・・・。
「アタシは、その・・・・・・本妻じゃなくて、一番最後の愛人で良いから・・・・・・ちゅ。・・・・・・チュ。」
頬そして唇に触れるようなキスをされる。心臓が暴れ出す。
同時に何かが脳内に警鐘を鳴らす。何か違和感を訴える。
更にミアの唇が襲い掛かり、ゆっくりと押し倒される。
「んっ・・・・・・ふっ・・・・・・ちゅ・・・・・・。」
ヌルリ、と俺の唇を割ってミアの舌が挿し込まれた。
ねっとりと彼女の舌が口内を蹂躙していく。
舌を伝ってきたミアの唾液が浸透する。・・・・・・甘い。
・・・・・・警鐘が脳内に響いてくる。何だ?
ポタリと暖かい雫が俺の頬を濡らした。
ミアが泣いている。ポロポロと彼女の瞳から溢れる涙が何度も頬を叩く。
「ぁ・・・・・・んっ。ご、ごめん・・・・・・ね・・・・・・んっ・・・・・・ちゅぷ・・・・・・。だんな、さま・・・・・・ちゅ・・・・・・まだ・・・・・・ちっちゃい、のに・・・・・・んぁっ。」
ミアの手が太ももを撫で、スカートをたくし上げながら登ってくる。
「だめ、なの・・・・・・止められ、・・・・・・ぁんっ・・・・・・ないの・・・・・・。どうして・・・・・・んぅっ・・・・・・好き、なのに・・・・・・ぁ・・・・・・んっ・・・・・・。だんな、さま・・・・・・ごめんっ、なさい・・・・・・ちゅ・・・・・・。」
いや・・・・・・、どうするんだこの状況。
押し退けるのは簡単だが、こんなに泣きじゃくっている子を突き放すような真似はしたくないし・・・・・・。
だからと言ってこのままでは俺の貞操の危機が危険で危ない。
いや・・・・・・あれ? よく考えたら別に危機じゃなくね?
俺のDTは哀しい事にもう捨てることが出来ないのだ。
故に魔力がDTと共に喪失するようなことはありえない。
危ないとすれば処女の方だが・・・・・・、それを失ったところで魔力には何の影響も無いのである。
そう考えれば処女くらい、こんな可愛い子になら別にくれてやっても・・・・・・。
そこまで考えたところで、今までの俺の経験が、幾度と無く繰り返された疑似恋愛の経験が警告を発する。
いや、いやいやいやいや、違う、違うぞ!
そう、それは違う。間違っている。
俺なら分かるだろう! この選択肢は罠だ! バッドエンドに行く感じのやつだ!
せめてノーマルエンドの選択肢を選ぶんだ!
どうする俺!?
ミアの手が最後の防壁(布製)に掛かり、そのまま今度はゆっくりと下ろされる。
いやあぁぁ! ズボンを履いてくるんだった! スカートってなんかスースーするよ!?
防壁を剥ぎ取ったミアの手はまた太ももを登り始める、今度は護るもののない俺の――
「団長、こちらで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺とミアの情事を目撃した中ボスが固まった。見られた俺達も固まった。
正解の選択肢は【時間切れ】だったか・・・・・・。
「だ、だんなさま・・・・・・ごめんなさい!」
正気に戻ったミアが泣きながら走り去っていく・・・・・・ところを触手で捕らえた。
「きゃぅっ・・・・・・! な、何!?」
とりあえずミアは捕らえたままにしておく。
「・・・・・・お、お邪魔をしてしまいました。申し訳ありません。」
「いや、良い。助かった。要件は何だ?」
「明日からの配給の件、滞り無く。早朝から娼婦と部下たちを使わせて頂きます。それと、ミアン嬢の件も問題ありません。」
「そう、ご苦労さま。・・・・・・ねぇ、中ボス。ミアが奴隷だという以外の情報は何か知ってる?」
「いえ、ただ娼婦たちとも・・・・・・関係を持っていたようです。」
「分かった、ありがとう。」
「では失礼致します。こちらには人を近づけさせませんので。・・・・・・それと、お召し物を直された方がよろしいかと。」
ひざ下数センチまでずり下ろされた、とあるキャラクターがプリントされたパンツを上げた。
気が利くね、全く。
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