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始まりの合図 1
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ファッション業界──特に雑誌を発刊する編集部の日常は、多忙ながらも穏やかに過ぎていく。
株式会社『arc-en-ciel』で、編集部員として働く紗耶の一日も例外ではなかった。
出版部署にはカタカタとパソコンを打ち込む音や、ペンを走らせる音が静かに響いていく。
「取材行ってきまーす」
「ここはもう少し捻った方が見栄えするかも」
「誰か手が空いてたらこれ、コピーして!」
そこかしこで事務仕事をする声に混じり、打ち合わせをする声が聞こえてくる。それは紗耶も同じだ。
白いテーブルには今年のトレンドに関する資料や、特集記事用にピックアップされたメイク用品の数々が所狭しと並べられている。
「──そして表紙のタレントの件ですが、人気上昇中の黒木悠牙はどうでしょうか。今期のドラマの宣伝に特集も組めますし、うちとしても早めに手を打っておくのも悪くないかと思うのですが」
紗耶の隣りに座る同僚、英蘭が資料片手にプレゼンをする。
入社してから二年と経たず最前線で活躍する、arc-en-ciel期待のエースだ。
(同じ時期に入社したのに、蘭は本当にすごいなぁ)
紗耶は心の中で独り言ちる。
蘭はファッションセンスは勿論だが、編集部員であり記者としても活躍しているからか、コミュニケーション能力も高い。
(それに比べて私は……)
紗耶は人知れず視線を爪先に向けた。
いつもお洒落で可愛らしい蘭とは違い、自分は地味で冴えない。
いち雑誌編集者と言えど、仮にもファッション業界だ。周りにはたくさんのセンスを持つ人間が居る。
そして、中でも一歩前をいく蘭は素直に凄いと思う。
しかし紗耶はと言えば、他の同僚や後輩たちの影でひっそりと働いているだけ。
艶のある黒髪は邪魔にならないようにひとつにまとめ、どうせ事務仕事だけだからと寒色系の色を好んで身にまとう。
メイクはナチュラルだが、それでも美しく着飾っている女性編集者に比べると見劣りしてしまうだろう。
「そうね、私の方からオファーをお願いしてみるわ。他の皆も何か良い案があれば言って」
副編集長である佐倉千晶が、ゆったりと落ち着きのある声で言った。
「あ、あと一つなんですが」
蘭がすっと手を挙げる。
「どうしたの?」
「白川さんとタッグを組んでも大丈夫でしょうか」
「え」
蘭から肩を摑まれて名指しされた紗耶は、突然の事に短く声が裏返った。
「いや、無理……! 無理だよ、私なんか」
そもそも、どうして自分なのだろう。他にも気の利く人間は、社内にいるはずなのに。
「まぁた『私なんか』って言う。一緒に仕事したい、ってこの前言ってたでしょ? それに、ずっとこのままじゃ何にもならない、って紗耶が言ったんだよ」
「そ、それはお酒を飲んでたから……!」
先週金曜日の、少しお洒落なレストランでの事だった。
飲むペースを間違えていつもより早く酔い、『仕事は順調だけど、このままじゃ私は独身のまま死ぬかもしれない』と愚痴を言ったのは。
紗耶は酒に強い方だと自負している。
けれど、酔った後は必要以上に絡んでしまうという事実に紗耶は気付いていない。
何を言ったのかぼんやりとした記憶はあるが、それでも時と場合にもよるのではないだろうか。
(確かに言ったけど! 何も今ここで言わなくてもいいじゃない!)
そんな心の声は口から出ることなく、虚しく萎む。
「はいはい、お喋りはそのくらいにして。白川さん」
今は仮にも仕事中、それも打ち合わせをしているのだ。
苦笑した千晶が手を叩き、緩みつつある場の空気を引き締めた。
「は、はい」
落ち着いた千晶の声に名指しされ、無意識のうちに背筋が伸びる。
「英さんの傍で新しく仕事を覚えるのも良いんじゃないかしら。ずっと編集だけやっていくって言うなら別だけど……良いものが見られるわよ」
にっこりと微笑む千晶がどこか空恐ろしくて、紗耶は流れるままに了承していた。
誰もいない会議室に移動し、向かい合わせに座って蘭から次の企画に関する説明を受けていた。
なにぶん現場に出た事など皆無で、あったとしても自分から雑用を請け負う事が目に見えている。
(流されてこうなっちゃったけど……本当に私で務まるのかな)
元々、人見知りをする性格ではなかった。
むしろ誰よりも好奇心旺盛で、困った人間がいたら助ける、そんな幼少期を過ごしてきた。
それが大人になった今、真逆な性格になってしまったのはいつからだろう。
いや、とうに原因は分かっている。
未だに巣食う幼い頃のトラウマが、紗耶の心を蝕んでいる所以に自分は変わってしまったのだと。
ある程度の年を重ねた今は、過去を悔やんでも何にもならないと知っているし、今は目の前の事に集中したかった。
(せっかく蘭が気を利かせてくれたんだから。満足できるものにしないと)
「──ざっとこんな感じだけど、何か質問とかある?」
おおかた説明し終えた蘭の視線が、資料から紗耶に向けられる。
「あ、えっと。無い、かな」
「なら良いんだけど。それよりも大丈夫なの? 私が 勢いでああは言ったとはいえ、直接タレントと会うんだよ?」
「大丈夫。こうでもしないと男の人に慣れないし、正直……蘭が組もうって言ってくれて嬉しかった」
編集者として日々の事務仕事や校正に追われて休む暇も無いのは確かだが、中でも蘭の担当している表紙撮影やタレントを起用した企画は、紗耶の苦手な部類だった。
モデルが女性ならばある程度打ち解けられるが、男性ともなると別だ。
(もう忘れないと、なのになぁ)
蘭に気付かれないよう、紗耶はひっそりと溜め息を吐く。
こびりついた悪夢とも言える出来事は、十五年が経ってもなお紗耶の心に巣食っていた。
◆◆◆
『白川ー!』
誰かに呼ばれた気がして、紗耶は振り向く。
『っ』
次いで、バシャンと顔に衝撃が走った。
『ちょっと、何するのよ山岸! 紗耶、大丈夫?』
隣りで並んで歩いていたクラスの友達が、鋭く抗議する。
『え、なに……?』
しかし、少年──山岸泰我に言い返すよりも何よりも、紗耶は自分がされた事に理解が追い付いていなかった。
目の前にいる泰我が紗耶の顔に、どこから持ってきたのか水の入ったバケツをぶちまけたのだ。
『冷た、い』
ぽつりと紗耶は呟く。
そして、ほんの少し鼻につく臭いが遅れてやってくると同時に、完全に理解してしまった。
(もしかして雅も、こんな気持ちだった……?)
つい最近まで泰我とその取り巻きの少年たちに、雅はいじめられていた。
何が発端だったのかは分からないが、ある程度はいじめられる原因に予想がつくのも事実だった。
女子のような可愛らしい顔立ちに、成長途中というのもあってか声は高くほんのりと甘い。
自分の心に灯る感情を認めたくはないのか、雅をいじめる男子たちの感情が『ソレ』だろうことは容易に想像がついた。
いつの時代も好きな子にちょっかいをかけ、気を引こうとするのが男というのだろうか。
最近観たドラマの影響か、紗耶はそこらの感情に理解を示すようになっていた。
だからか、紗耶はいじめられている雅を見過ごせず、男子たちの間に入る事もしばしばあった。
いつもいつだって、紗耶は気付けば仲のいい女子と雅と共に行動するようになっていた。
中学校へ行ってもその先もずっと、雅と過ごせると思っていた。
しかし、二週間前のホームルームの事だった。
唐突に雅は転校してしまい、それを担任からクラスの皆に伝えられた時は空耳かと思ったほどだ。
理由は親の転勤というが、何も言わずにいなくならないで欲しかった。
雅とは今のクラスになってから話すようになった縁だが、一言さよならを言って欲しかった。
いや、仮に言われたとしても、紗耶は取り乱してしまっただろう。
ほとんど毎日雅の傍に居たからか、いつしか紗耶は恋をしていたのだ。
紗耶が現れると申し訳なさそうに謝罪して、小さく礼を述べる雅に。
その柔らかい笑顔が紗耶の心をときめかせる事に本人は気付かないまま、紗耶も伝える事はないまま、離れ離れになってしまった。
(雅がいなくなったから、次は)
けたけたと笑う男子たちの声が遠くから聞こえる。
雅が転校してからというもの、毎日この調子だ。
ターゲットを雅から紗耶に変え、『お遊び』を楽しんでいる。
それはきっと、ちょっかいという生易しいものではないだろう。
担任に一言伝えればいじめも無くなるという話だが、その経緯を辿ると雅にも行き着く。
転校して平和な学校生活を送っているであろう雅に、もう一度嫌な思いをして欲しくはなかった。
今度は自分が守られる側に、我慢する側になった。ただ、それだけの事だった。
そう頭では分かっているのに、次第に視界が潤んでぼやけてくる。
『う、うぅ……っ』
気付けば紗耶はしゃがみこみ、ぼろぼろと涙を零していた。
背負っているランドセルが、水で濡れたワンピースが、やけに重く感じて更に涙が溢れた。
だからか、その後の事はあまり覚えていない。
ただ、その時の紗耶を見下ろして笑う泰我の表情だけが、ずっと記憶の奥深くに残っていた。
株式会社『arc-en-ciel』で、編集部員として働く紗耶の一日も例外ではなかった。
出版部署にはカタカタとパソコンを打ち込む音や、ペンを走らせる音が静かに響いていく。
「取材行ってきまーす」
「ここはもう少し捻った方が見栄えするかも」
「誰か手が空いてたらこれ、コピーして!」
そこかしこで事務仕事をする声に混じり、打ち合わせをする声が聞こえてくる。それは紗耶も同じだ。
白いテーブルには今年のトレンドに関する資料や、特集記事用にピックアップされたメイク用品の数々が所狭しと並べられている。
「──そして表紙のタレントの件ですが、人気上昇中の黒木悠牙はどうでしょうか。今期のドラマの宣伝に特集も組めますし、うちとしても早めに手を打っておくのも悪くないかと思うのですが」
紗耶の隣りに座る同僚、英蘭が資料片手にプレゼンをする。
入社してから二年と経たず最前線で活躍する、arc-en-ciel期待のエースだ。
(同じ時期に入社したのに、蘭は本当にすごいなぁ)
紗耶は心の中で独り言ちる。
蘭はファッションセンスは勿論だが、編集部員であり記者としても活躍しているからか、コミュニケーション能力も高い。
(それに比べて私は……)
紗耶は人知れず視線を爪先に向けた。
いつもお洒落で可愛らしい蘭とは違い、自分は地味で冴えない。
いち雑誌編集者と言えど、仮にもファッション業界だ。周りにはたくさんのセンスを持つ人間が居る。
そして、中でも一歩前をいく蘭は素直に凄いと思う。
しかし紗耶はと言えば、他の同僚や後輩たちの影でひっそりと働いているだけ。
艶のある黒髪は邪魔にならないようにひとつにまとめ、どうせ事務仕事だけだからと寒色系の色を好んで身にまとう。
メイクはナチュラルだが、それでも美しく着飾っている女性編集者に比べると見劣りしてしまうだろう。
「そうね、私の方からオファーをお願いしてみるわ。他の皆も何か良い案があれば言って」
副編集長である佐倉千晶が、ゆったりと落ち着きのある声で言った。
「あ、あと一つなんですが」
蘭がすっと手を挙げる。
「どうしたの?」
「白川さんとタッグを組んでも大丈夫でしょうか」
「え」
蘭から肩を摑まれて名指しされた紗耶は、突然の事に短く声が裏返った。
「いや、無理……! 無理だよ、私なんか」
そもそも、どうして自分なのだろう。他にも気の利く人間は、社内にいるはずなのに。
「まぁた『私なんか』って言う。一緒に仕事したい、ってこの前言ってたでしょ? それに、ずっとこのままじゃ何にもならない、って紗耶が言ったんだよ」
「そ、それはお酒を飲んでたから……!」
先週金曜日の、少しお洒落なレストランでの事だった。
飲むペースを間違えていつもより早く酔い、『仕事は順調だけど、このままじゃ私は独身のまま死ぬかもしれない』と愚痴を言ったのは。
紗耶は酒に強い方だと自負している。
けれど、酔った後は必要以上に絡んでしまうという事実に紗耶は気付いていない。
何を言ったのかぼんやりとした記憶はあるが、それでも時と場合にもよるのではないだろうか。
(確かに言ったけど! 何も今ここで言わなくてもいいじゃない!)
そんな心の声は口から出ることなく、虚しく萎む。
「はいはい、お喋りはそのくらいにして。白川さん」
今は仮にも仕事中、それも打ち合わせをしているのだ。
苦笑した千晶が手を叩き、緩みつつある場の空気を引き締めた。
「は、はい」
落ち着いた千晶の声に名指しされ、無意識のうちに背筋が伸びる。
「英さんの傍で新しく仕事を覚えるのも良いんじゃないかしら。ずっと編集だけやっていくって言うなら別だけど……良いものが見られるわよ」
にっこりと微笑む千晶がどこか空恐ろしくて、紗耶は流れるままに了承していた。
誰もいない会議室に移動し、向かい合わせに座って蘭から次の企画に関する説明を受けていた。
なにぶん現場に出た事など皆無で、あったとしても自分から雑用を請け負う事が目に見えている。
(流されてこうなっちゃったけど……本当に私で務まるのかな)
元々、人見知りをする性格ではなかった。
むしろ誰よりも好奇心旺盛で、困った人間がいたら助ける、そんな幼少期を過ごしてきた。
それが大人になった今、真逆な性格になってしまったのはいつからだろう。
いや、とうに原因は分かっている。
未だに巣食う幼い頃のトラウマが、紗耶の心を蝕んでいる所以に自分は変わってしまったのだと。
ある程度の年を重ねた今は、過去を悔やんでも何にもならないと知っているし、今は目の前の事に集中したかった。
(せっかく蘭が気を利かせてくれたんだから。満足できるものにしないと)
「──ざっとこんな感じだけど、何か質問とかある?」
おおかた説明し終えた蘭の視線が、資料から紗耶に向けられる。
「あ、えっと。無い、かな」
「なら良いんだけど。それよりも大丈夫なの? 私が 勢いでああは言ったとはいえ、直接タレントと会うんだよ?」
「大丈夫。こうでもしないと男の人に慣れないし、正直……蘭が組もうって言ってくれて嬉しかった」
編集者として日々の事務仕事や校正に追われて休む暇も無いのは確かだが、中でも蘭の担当している表紙撮影やタレントを起用した企画は、紗耶の苦手な部類だった。
モデルが女性ならばある程度打ち解けられるが、男性ともなると別だ。
(もう忘れないと、なのになぁ)
蘭に気付かれないよう、紗耶はひっそりと溜め息を吐く。
こびりついた悪夢とも言える出来事は、十五年が経ってもなお紗耶の心に巣食っていた。
◆◆◆
『白川ー!』
誰かに呼ばれた気がして、紗耶は振り向く。
『っ』
次いで、バシャンと顔に衝撃が走った。
『ちょっと、何するのよ山岸! 紗耶、大丈夫?』
隣りで並んで歩いていたクラスの友達が、鋭く抗議する。
『え、なに……?』
しかし、少年──山岸泰我に言い返すよりも何よりも、紗耶は自分がされた事に理解が追い付いていなかった。
目の前にいる泰我が紗耶の顔に、どこから持ってきたのか水の入ったバケツをぶちまけたのだ。
『冷た、い』
ぽつりと紗耶は呟く。
そして、ほんの少し鼻につく臭いが遅れてやってくると同時に、完全に理解してしまった。
(もしかして雅も、こんな気持ちだった……?)
つい最近まで泰我とその取り巻きの少年たちに、雅はいじめられていた。
何が発端だったのかは分からないが、ある程度はいじめられる原因に予想がつくのも事実だった。
女子のような可愛らしい顔立ちに、成長途中というのもあってか声は高くほんのりと甘い。
自分の心に灯る感情を認めたくはないのか、雅をいじめる男子たちの感情が『ソレ』だろうことは容易に想像がついた。
いつの時代も好きな子にちょっかいをかけ、気を引こうとするのが男というのだろうか。
最近観たドラマの影響か、紗耶はそこらの感情に理解を示すようになっていた。
だからか、紗耶はいじめられている雅を見過ごせず、男子たちの間に入る事もしばしばあった。
いつもいつだって、紗耶は気付けば仲のいい女子と雅と共に行動するようになっていた。
中学校へ行ってもその先もずっと、雅と過ごせると思っていた。
しかし、二週間前のホームルームの事だった。
唐突に雅は転校してしまい、それを担任からクラスの皆に伝えられた時は空耳かと思ったほどだ。
理由は親の転勤というが、何も言わずにいなくならないで欲しかった。
雅とは今のクラスになってから話すようになった縁だが、一言さよならを言って欲しかった。
いや、仮に言われたとしても、紗耶は取り乱してしまっただろう。
ほとんど毎日雅の傍に居たからか、いつしか紗耶は恋をしていたのだ。
紗耶が現れると申し訳なさそうに謝罪して、小さく礼を述べる雅に。
その柔らかい笑顔が紗耶の心をときめかせる事に本人は気付かないまま、紗耶も伝える事はないまま、離れ離れになってしまった。
(雅がいなくなったから、次は)
けたけたと笑う男子たちの声が遠くから聞こえる。
雅が転校してからというもの、毎日この調子だ。
ターゲットを雅から紗耶に変え、『お遊び』を楽しんでいる。
それはきっと、ちょっかいという生易しいものではないだろう。
担任に一言伝えればいじめも無くなるという話だが、その経緯を辿ると雅にも行き着く。
転校して平和な学校生活を送っているであろう雅に、もう一度嫌な思いをして欲しくはなかった。
今度は自分が守られる側に、我慢する側になった。ただ、それだけの事だった。
そう頭では分かっているのに、次第に視界が潤んでぼやけてくる。
『う、うぅ……っ』
気付けば紗耶はしゃがみこみ、ぼろぼろと涙を零していた。
背負っているランドセルが、水で濡れたワンピースが、やけに重く感じて更に涙が溢れた。
だからか、その後の事はあまり覚えていない。
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