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3章
エンチャントお菓子
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宿の部屋にて俺は、疲れた体をソファーに沈める。俺も凛音も講義の後で休憩をする。凛音は座りながらも、買ってきた魔法のアイテムを観察しているのだが。
なぜ、ソファーがある?
「なんか快適になってるな」
「来た時にこんなに家具がなかったよね!」
「リュセラはいつも、持ち歩いている家具を宿で使うのよ」
「こんなでかい家具を?」
「小さく変身して貰ってるの」
座っていた俺にお茶を出してくれたのは鍋だ。少女の姿で給仕する姿は様になっている。
「ありがとう。俺たちまで世話しなくても良いんじゃないか?」
「リュセラに気遣ってくれたからお礼。それとも私たちの仕事の邪魔する?」
「確かにこの人数だと手狭だから、任せた方がいいね」
「なるほど」
「分業だもの。あなたたたちに冒険の方は任せるわ」
部屋の中には静けさがある。リュセラの道具たちは慣れた様子で歩き回り、音を立てずに家事をこなしている。
シンプルな宿はリュセラの家具たちで飾られて、やや豪華になった。それも狭い理由な気がしてきた。
宿のドアが開いてリュセラが帰ってきた。手土産にお菓子が沢山入った袋を持っている。
「だからギルドは苦手なんだ」
手に持っ袋を豪華なテーブルに乗せた。
「二人とも、そのお菓子は食っていいぞ」
「やったー!」
「凛音、夕飯が食えるように腹を空けとくんだぞ」
「悠人って、お母さんみたいなこと言うね」
「でも、凛音は異世界の食べ物我慢できるか?」
「無理、トライしたい!」
「悠人の言う通り、そこそこに食ったら出掛けるぞ」
「どこに?」
「魔法の訓練だ」
「やったー!」
はしゃぎ回る凛音を見ながら俺はリュセラに顔を向けた。彼もこちらに気がつく。
「リュセラ、実はな俺は……」
「魔法が使えないんだろ。魔力で分かった。仕方ない」
「ごめん、俺だけ戦闘では役立たずで」
「そんなことはない、ゴールドボーイを上手く使って戦えている」
「今回は王様が相手だから……」
「確かに見つかるとまずいか」
「ごめん……」
「大丈夫。悠人、私たちが勝って一緒に回復の杖を見つけよう!」
「そうだな」
「それはそうと。リュセラは何を買ってきたんだ?」
「カレーパンという物だ。僕はパンのカレーは食った事がなくてな」
「普通だ」
「でも、異世界の料理だよ!」
袋からカレーパンの包みを取り出した凛音、包みを開くとスパイスの香りが。この世界のものには魔力があるのを思い出した。
「いい。いや待て、危険だ魔法が出るぞ!」
すでに凛音はパンを食べていた。警戒した俺は臨戦態勢になったが何も起こらなかった。
「なぜ平気なんだ?」
「普通の料理で魔法が出るわけないだろ。悠人はいつも掛けすぎなんだよ」
「それはそうか」
アライからもらった冷やしミントも魔法は発動しなかったな。
「えーつまんない! 悠人、シナモン貸して。どのくらいの量で魔法が出るかトライしたい!」
「凛音、それは訓練の後にしてくれ」
「そうだね。目的を果たすのが先。でも、ちょっとだけ、ダメ?」
「リュセラ、持たせてやるのはヤバいか?」
「問題はないんだが……」
「「凛音だからな……」」
「大丈夫だーかーら!」
トライしまくって魔法まみれになっているのが想像できる。彼女もそこまではやらない、はず。
三人揃って休憩した後に、俺はリュセラと凛音を見送った。俺に出来ることが無いのは寂しいが、仕方ない。ソファーに座ってうつ向いているとセレストが帰ってきた。
「居残り?」
「ああ、俺は魔法使えないみたいでな」
「魔力不足でしょ。じゃあ、私と出掛けない?」
「いいぞ。でも何をしに行く?」
「修行!」
セレストに連れられて町に出た。相変わらず町の賑わいは衰えない。一応、俺の鞄と買ったマギアスパイスのセットを持っている。
「修行って、飯を食うのだよな?」
「そう、食べれば使えるようになる」
「どれくらい食べれば良いのかな?」
「うーん、一年分位?」
「無茶すぎ!」
「それでようやく火の玉を出せる。息切れしちゃうけどね」
「先が遠すぎる……」
「気長にやりましょ、ダンジョンでは時間は進んでないから」
「どうして俺を助けてくれる?」
「それは、一緒に回復の杖を手に入れたいからね」
「セレストにも、助けたい人が居るのか?」
「居たよ。ずいぶん昔に」
「そうだったのか。ごめん。辛い事を聴いて」
「良いの。私が今、助けたいのはあなたかもね」
セレストのその台詞に、俺は心臓が跳ねる。からかわれている気がするのに、真に受けてしまいそうだ。ここまでで食べ物をたかられてなければな。
すでに歩く途中でココアを奢っているのだ。
「とにかく食うしかないか、魔法を使えるようになるために」
「そうそう、あのソフトクリーム屋とかどう?」
セレストが指差したのは出店で羽の生えた牛が描かれている。
「この世界の動物すごいな。取り敢えず頼んでみよう」
店に立ちよった俺はソフトクリームを買った。そして、上にひたすらハチミツを掛ける。
この世界で買ったハチミツなので魔法を得てしまうかもしれないが、俺はドラゴンに変身しているので、あまり変わらない気もする。
俺が他の事を考えていると横から手が延びてきて、俺の手に触れた、そのままセレストが近づいて来たので俺は硬直する。こんなに近い距離に女の子が居たことが無かったから。
固まった俺の目の前でセレストはハチミツがたっぷりのソフトクリームを一口だけ食べる。
「うん、美味しい」
「急に近づかないでくれ。それと俺のだぞ」
「一緒に歩いているのに急に止まる悠人が悪いんですー! 冷たいなー。ソフトクリームよりも」
セレストは手をこっちに向けた。すると彼女の手が輝き細い光の筋が出てきて俺の体に当たった。
「いてっ!」
「今回は雷だったみたい」
「当てることないだろ」
「フフッ。悠人も試してみたら? ソフトクリームを一口食べてみて」
俺もソフトクリームを食べてみた。挑発に乗って食べた。するとバリバリと大きな音が聞こえた。音源を探したけど見当たらない。
「何が起きたんだ?」
「それはね」
俺の胸元を指差したセレストはツンと触れた、バリバリと音が鳴り、光の筋が俺に吸い込まれる。痛みを覚悟したが何も起こらない。
「これって……」
「エンチャントお菓子は一口でも魔法が使える。お菓子一つにつき一つだけ魔法が発現するものなの」
「電気の魔法を得たから、電気は効かなくなる」
「一口だけでも同じ魔法が使えるのか」
「そう、子供の遊び位しか使い道無いけどね」
「いや、味見をすれば効果が分かるんだ」
「でも。お菓子って日持ちしないから」
「日持ちするのお菓子を作れば良いんだな」
「それは考えたこと無かった……」
「試したい事がある、付き合ってくれるか?」
俺は持っているソフトクリームを完食した。そして、セレストを連れて宿へと戻る。途中で全粒粉小麦粉や、食材、マジカル調味料を買い足した。見えてきた俺の魔法の使い方を試すために。
待っていてくれ皆。俺も一緒に戦えるように頑張るから。
それはそうと、このドラゴンの手で料理できるかな?
なぜ、ソファーがある?
「なんか快適になってるな」
「来た時にこんなに家具がなかったよね!」
「リュセラはいつも、持ち歩いている家具を宿で使うのよ」
「こんなでかい家具を?」
「小さく変身して貰ってるの」
座っていた俺にお茶を出してくれたのは鍋だ。少女の姿で給仕する姿は様になっている。
「ありがとう。俺たちまで世話しなくても良いんじゃないか?」
「リュセラに気遣ってくれたからお礼。それとも私たちの仕事の邪魔する?」
「確かにこの人数だと手狭だから、任せた方がいいね」
「なるほど」
「分業だもの。あなたたたちに冒険の方は任せるわ」
部屋の中には静けさがある。リュセラの道具たちは慣れた様子で歩き回り、音を立てずに家事をこなしている。
シンプルな宿はリュセラの家具たちで飾られて、やや豪華になった。それも狭い理由な気がしてきた。
宿のドアが開いてリュセラが帰ってきた。手土産にお菓子が沢山入った袋を持っている。
「だからギルドは苦手なんだ」
手に持っ袋を豪華なテーブルに乗せた。
「二人とも、そのお菓子は食っていいぞ」
「やったー!」
「凛音、夕飯が食えるように腹を空けとくんだぞ」
「悠人って、お母さんみたいなこと言うね」
「でも、凛音は異世界の食べ物我慢できるか?」
「無理、トライしたい!」
「悠人の言う通り、そこそこに食ったら出掛けるぞ」
「どこに?」
「魔法の訓練だ」
「やったー!」
はしゃぎ回る凛音を見ながら俺はリュセラに顔を向けた。彼もこちらに気がつく。
「リュセラ、実はな俺は……」
「魔法が使えないんだろ。魔力で分かった。仕方ない」
「ごめん、俺だけ戦闘では役立たずで」
「そんなことはない、ゴールドボーイを上手く使って戦えている」
「今回は王様が相手だから……」
「確かに見つかるとまずいか」
「ごめん……」
「大丈夫。悠人、私たちが勝って一緒に回復の杖を見つけよう!」
「そうだな」
「それはそうと。リュセラは何を買ってきたんだ?」
「カレーパンという物だ。僕はパンのカレーは食った事がなくてな」
「普通だ」
「でも、異世界の料理だよ!」
袋からカレーパンの包みを取り出した凛音、包みを開くとスパイスの香りが。この世界のものには魔力があるのを思い出した。
「いい。いや待て、危険だ魔法が出るぞ!」
すでに凛音はパンを食べていた。警戒した俺は臨戦態勢になったが何も起こらなかった。
「なぜ平気なんだ?」
「普通の料理で魔法が出るわけないだろ。悠人はいつも掛けすぎなんだよ」
「それはそうか」
アライからもらった冷やしミントも魔法は発動しなかったな。
「えーつまんない! 悠人、シナモン貸して。どのくらいの量で魔法が出るかトライしたい!」
「凛音、それは訓練の後にしてくれ」
「そうだね。目的を果たすのが先。でも、ちょっとだけ、ダメ?」
「リュセラ、持たせてやるのはヤバいか?」
「問題はないんだが……」
「「凛音だからな……」」
「大丈夫だーかーら!」
トライしまくって魔法まみれになっているのが想像できる。彼女もそこまではやらない、はず。
三人揃って休憩した後に、俺はリュセラと凛音を見送った。俺に出来ることが無いのは寂しいが、仕方ない。ソファーに座ってうつ向いているとセレストが帰ってきた。
「居残り?」
「ああ、俺は魔法使えないみたいでな」
「魔力不足でしょ。じゃあ、私と出掛けない?」
「いいぞ。でも何をしに行く?」
「修行!」
セレストに連れられて町に出た。相変わらず町の賑わいは衰えない。一応、俺の鞄と買ったマギアスパイスのセットを持っている。
「修行って、飯を食うのだよな?」
「そう、食べれば使えるようになる」
「どれくらい食べれば良いのかな?」
「うーん、一年分位?」
「無茶すぎ!」
「それでようやく火の玉を出せる。息切れしちゃうけどね」
「先が遠すぎる……」
「気長にやりましょ、ダンジョンでは時間は進んでないから」
「どうして俺を助けてくれる?」
「それは、一緒に回復の杖を手に入れたいからね」
「セレストにも、助けたい人が居るのか?」
「居たよ。ずいぶん昔に」
「そうだったのか。ごめん。辛い事を聴いて」
「良いの。私が今、助けたいのはあなたかもね」
セレストのその台詞に、俺は心臓が跳ねる。からかわれている気がするのに、真に受けてしまいそうだ。ここまでで食べ物をたかられてなければな。
すでに歩く途中でココアを奢っているのだ。
「とにかく食うしかないか、魔法を使えるようになるために」
「そうそう、あのソフトクリーム屋とかどう?」
セレストが指差したのは出店で羽の生えた牛が描かれている。
「この世界の動物すごいな。取り敢えず頼んでみよう」
店に立ちよった俺はソフトクリームを買った。そして、上にひたすらハチミツを掛ける。
この世界で買ったハチミツなので魔法を得てしまうかもしれないが、俺はドラゴンに変身しているので、あまり変わらない気もする。
俺が他の事を考えていると横から手が延びてきて、俺の手に触れた、そのままセレストが近づいて来たので俺は硬直する。こんなに近い距離に女の子が居たことが無かったから。
固まった俺の目の前でセレストはハチミツがたっぷりのソフトクリームを一口だけ食べる。
「うん、美味しい」
「急に近づかないでくれ。それと俺のだぞ」
「一緒に歩いているのに急に止まる悠人が悪いんですー! 冷たいなー。ソフトクリームよりも」
セレストは手をこっちに向けた。すると彼女の手が輝き細い光の筋が出てきて俺の体に当たった。
「いてっ!」
「今回は雷だったみたい」
「当てることないだろ」
「フフッ。悠人も試してみたら? ソフトクリームを一口食べてみて」
俺もソフトクリームを食べてみた。挑発に乗って食べた。するとバリバリと大きな音が聞こえた。音源を探したけど見当たらない。
「何が起きたんだ?」
「それはね」
俺の胸元を指差したセレストはツンと触れた、バリバリと音が鳴り、光の筋が俺に吸い込まれる。痛みを覚悟したが何も起こらない。
「これって……」
「エンチャントお菓子は一口でも魔法が使える。お菓子一つにつき一つだけ魔法が発現するものなの」
「電気の魔法を得たから、電気は効かなくなる」
「一口だけでも同じ魔法が使えるのか」
「そう、子供の遊び位しか使い道無いけどね」
「いや、味見をすれば効果が分かるんだ」
「でも。お菓子って日持ちしないから」
「日持ちするのお菓子を作れば良いんだな」
「それは考えたこと無かった……」
「試したい事がある、付き合ってくれるか?」
俺は持っているソフトクリームを完食した。そして、セレストを連れて宿へと戻る。途中で全粒粉小麦粉や、食材、マジカル調味料を買い足した。見えてきた俺の魔法の使い方を試すために。
待っていてくれ皆。俺も一緒に戦えるように頑張るから。
それはそうと、このドラゴンの手で料理できるかな?
応援ありがとうございます!
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