長身令嬢ですが、王太子妃の選考大会の招待状が届きました。

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　学園は十五歳になる年に入学し、四年間学び十八歳で卒業する。貴族の令息令嬢は幼い頃より家庭教師に学び学園へ入学するが、貴族でない者は家の都合により五歳から十歳には初等教育校へ入学し、数年間字や計算などを学び、成績優秀者やお金のある商家の子供などが学園へと入学する。
　全寮制で、いかに高位の貴族でも侍女や侍女、メイドなどを伴う事はできない決まりだ。もちろん王族でも。

　学園は一学年が春期、秋期、冬期の三月期制で、春期と秋期の間に約二ヶ月の夏季休暇、秋期と冬期の間、冬期と春期の間にそれぞれ約二週間の冬期休暇、春期休暇がある。
　
　一年生を終えて、現在、春期休暇中のシャーロットとマリアは一週間後の新学期には二年生となり、その年の夏期休暇の間に王太子妃候補の選考が行われるのだ。

「私は去年生徒会のサポートメンバーだったでしょ？そして王太子殿下…ユリウス殿下は生徒会の副会長。だから噂は色々聞いたのよ『結婚を嫌がっている』とか『選り好みが激しい』とか『女嫌いなんじゃないか』とか。他にもあったけど…」
　マリアがシャーロットの部屋でお茶を飲みながら言う。マリアは侍女だが、シャーロットの友人であり、今は休憩時間中だ。

　生徒会には生徒会長、副会長二名、書紀、会計の役員の他に各学年から男女一名づつ指名されたサポートメンバーがおり、舞踏会や卒業パーティーなどの大きな行事の前には手伝いをすることになっている。その一年生女子のサポートメンバーをマリアがしていたのだ。

「そうなんだ～」
　同じく紅茶のカップを持ったシャーロットが言うと、マリアは悪戯っぽい表情で言う。
「ユリウス殿下、ロッテより背が高いわよ？」
「え？そうなの？」
　遠くから見て背が高そうだな～とは思ってたけど…そうかそんなに高いんだ。
「どう？『王太子妃選び』頑張る気になった？」
「は？王太子がいくら背が高くたって私に何の関係もないわよ？」
　心底不思議そうに言うシャーロット。
「そうね。ロッテの相手はあんな気難しそうな人じゃなく、もっと筋骨隆々の騎士みたいな人が良いわね」
　うん。ビジュアル的に釣り合うのはそういう人ね。でも騎士様も普通の女の子が好きなのよ。マリア。

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　転生、中世ヨーロッパの様でそうではない世界、貴族、王族、王太子妃選び。
　これだけキーワードが並べば「ここは恋愛シミュレーションゲームの世界か、ライトノベルやコミックの世界か！？」ってトコなんだろうけど、私、前世でどれにも縁がなかったんだよね。
　もちろんゲームもやったし、漫画も読んだけど、ゲームは◯リオ、あつ◯だし、漫画はマー◯レット、フ◯ンドだし、ここが何の世界なのかサッパリ予想もつかない。
　わかるのは、私は主要登場人物ではない、その他大勢、いわばモブだろうと言う事。

「あ…確かに私より背が高いかも」
　新学期の始業式、学園長の挨拶の後、講堂の壇上に現れたのは、新生徒会長のユリウスだ。
　この世界では王族は例外なく紫色の髪と瞳を持つ。赤寄りや青寄り、色の濃い薄いの違いはあるが、紫なのには違いはない。
　王太子である第一王子ユリウス・ルーセントも、青寄りの濃い紫色の髪と瞳だ。
　背は高いけど、ヒョロくはなさそう。王太子だし鍛えてるだろうから細マッチョなのかも。
　顔が綺麗。切れ長の眼に高い鼻と薄い唇。
　まじまじと見たのは初めてだけど、王族ってやっぱり美形だわ。遠目に見る分には目の保養にはなる。　

　もしもここが所謂乙女ゲームの世界なら、王太子ユリウスは間違いなく攻略対象者だわ。しかもタイトルイラストの中央に描かれるような。
　となると、ヒロインはどんな女の子だろう？
　清楚で可憐な女の子なのは間違いないけど。

「ロッテ？」
　マリアに声を掛けられてハッと我に返るシャーロット。
　講堂からザワザワと生徒たちが出て行っている。
　…もう始業式終わったのね。妄想しすぎたわ。
「ぼーっとし過ぎてたわ。行こ。マリア」
「うん」
　
　壇上の幕の影から、人の少なくなった講堂の中で、一際背が高い女生徒の後姿を紫の瞳が捉えた。
「あれは…」
　背が高くて濃茶の髪の女性。
　あの女性ひと？
　いや、しかし、彼女は俺より年上だから…
「あれは、誰だ？」