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LAPD! フリーズ! 2
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「撃ってる!! キャメロン、誰か撃ってる!!」
シャーリーンに言われるまでもなく、オレは道路の右端に車を寄せる。
たった今ミラーに映った後方のパトロールカーは、サイレンを鳴らして通り過ぎて行った。銃声が聞こえてくるのは、そんなに至近距離からじゃない。でも、何が起きるかわからない。いやオレ自身が、いったい何が起こってるのか見当すらつかないんだ。
「シートベルトしたまま、身を低くして! シャーリーン。バックパックを体の前で抱えて、プロテクター代わりに」
オレは道の脇で車を止めて、頭の中を整理しようとした。ふと二〇一六年のときの、UCLAの卒業生がキャンパスで教授を狙撃し、自分も撃って自殺した事件が頭をよぎる。オレはまだ入学してなかったけど、テレビのニュースは一日中キャンパスの様子を中継していた。結局死者は二人だけだったが、頭やべー生徒とかが銃を持ってクラスに突入乱射する事件はアメリカじゃめずらしくなかったから、あの日は事件の詳細が明らかにされるまで大学は閉められた。ものすごい数のLAPDとSWATチームが一度に押し寄せてきて、キャンパス中をくまなく捜査してたんだ。テレビ画面に映る、防弾設備を施した装甲車にしがみついて、それを盾にキャンパスを移動する重装備の警官たちの姿は、並々ならぬ迫力だった。
『セブン・シックスティワン、狙撃してきた!』
『前に、回り込め!』
『サンセット・ストリップに出る前にくい止めろ!』
ヴァンからの拳銃音!
覆面カー、アウディのウインドシールドに、銃弾がめり込む。
アウディの警官から二発の反撃!! 白いヴァンは、車体を大きくスイングしてそれを避ける。
『ナインティーフォー・ナインティーワン、サンセット・ブルバード。次の角は三叉路だ、曲がるつもりだぞ!』
『セブン・トゥエンティシックス、エルム・ドライブ、南から回り込みます』
『ラジャー、全車に次ぐ、メイプル・ドライブにも応援を配置せよ』
ヘリコプターからの指令は、付近の全パトロール車両に無線で送られた。
お、落ち着け! キャメロン。一番大切なことは……シャーリーンを守ること。深呼吸……。ヘリコプターの位置が、真上から少し東のほうへ移動したような気がする。
や、やっぱりさっきのホワイト・ヴァンだよね、怪しいのは。ここからシャーリーンの住むウエスト・ハリウッドまで、回り道をするなら南のサンタモニカ・ブルバードを通るか、北の坂道へ入るかだ。
いや待て、犯人もオレと、全く同じことを考えているとしたら……。もう一度息を深く吸って、オレだったらどうするか……、犯人の立場に立ってよく考えるんだ、キャメロン。
よーし、オレは犯人だ!
右へ曲がるか、左へ行くか。
右はビバリーヒルズの市街地、左は丘、まっすぐ行けばサンセット・ストリップの繁華街……、人の多い道は車も多い。だが丘の坂道は曲がりくねっている。
ビバリーヒルズ警察は、人混みへ向かう犯人を必死でくい止めようとするに違いない。サンセット方面も同じこと、その先にはハリウッドの観光地が続いてる。そっちへ逃げるのも、警察のまっただ中に飛び込むようなものだし。
残る道は丘……、え、丘だって? この辺って、本当に曲がりくねってる?
オレはカーナビの画面を見た。ここは丘のふもと、だから道もまだ、そんなに複雑じゃない! 丘と丘の間には……。
あった、一本だけ! 縦にまっすぐ走ってる道がぁる! それを使えば、北へ抜けてシャーマン・オークスに出られる。そこにあるのは――ハイウェイ101(ワン・オー・ワン)!!
これだ、犯人の選ぶルートはこれしかない。だとすれば、オレの進むルートは……、その真逆。
「シャーリーン、つかまってて! ヒア・ウィー・ゴー!」
パラパラパラパラ
『ナインティシックス・フィフティ、サンセット・ブルバード。たった今ウィル・ロジャース・メモリアル・パークで右折したピックアップ・トラック、荷台に奇妙な物体あり、追跡を頼む。色はシルバー・メタリック、現在ビバリー・ドライブ、サウス・バウンドを走行中。運転席はダークヘアの男、ブラックジーンズ。助手席はブロンドヘアの女。推定年齢は大学生、シボレー、ライセンスナンバーはファイブCZTワン・シックス……』
『こちらセブン・フォーティスリー、ラジャー』
「キャメロン!」
「……」
「ねえ、聞こえる?」
「聞こえてる」
「私の声じゃなくて……サイレン」
「それも聞こえてるよ。いやもう、さっきから耳にがんがん」
オレは思いっ切りハンドルを回す。
「でも……」
「なに?」
「なんかサイレンが近づいてくるの。ほら、すぐ後ろ」
パトカーのサイレンは、真後ろに迫ってきた。トーンを変えて短く、ヴィッウィッウィッって切れるように何度か鳴らされる。
えええっ、なにこれ!? つまり、止まれってこと?
『シボレー、ピックアップ、路肩に停車しろ!』
げっ、シボレーって、オレの運転してるトラックのこと!? やべー、パトカーからの最後通告だよ。しかもスピーカーから大声で。たとえ犯人だって抵抗しちゃいけないやつ。いえ抵抗するつもりなんて、さらさらありませんけどっ!
オレがトラックを止めると、パトロールカーは一定の距離を置いて停車し、中から拳銃を持った警察官が二人降りてきた。
「LAPD、フリーズ!」
野太い声に、オレたちは震えながらじっとしていた。頭の片隅に、あいつの声が聞こえる。「僕の父はLAPDに顔が効くんだよ」ってセリフが……。う、うそだろ!? ほんとにこれが、奴のリベンジ!?
ど、ど、ど、ど、どうしよう……。
え……と、イグニッションを完全に切る。窓をロールダウン。インテリアライト点灯……っとこれは昼間だから必要ない。
「手にはなにも持たないで、向こうから見えるように、両手を上げてシャーリーン」
こういう時は、何かをつかんだだけで武器だと思われて警官に打たれることもある。警察は「危険を感じた。正当防衛だ」と言い張れば何のお咎めもないんだ。だから絶対に抵抗しちゃダメ。
黒い制服を身につけた雄牛のように豪胆な二人のオフィサーが、銃を構え一歩一歩足を踏みしめて近づいてくる。
おお、神さま!
「外に出ちゃダメだ。言われるまで絶対に」
そういうオレの声は、ものすごく震えていた。警官は銃を構え、オレたちと車の中をにらんでいる。
「ドライバーズ・ライセンス、車両登録証と車両保険証券」
「は、はい」
片手は上げたまま、オレはそろそろともう片方の手をポケットに突っ込んで財布を取り、そこから運転免許証を出して渡した。
「登録証と保険証券は、コンパートメントの中に……あります」
通常、自分では絶対に開けてはいけない。犯罪者が銃を隠すとしたら、この中が一番可能性が高いからだ。許可なく手を突っ込もうものなら、背中から蜂の巣にされるだろう。オフィサーは「開けろ」とオレに顎をしゃくった。まだ右手は上げたまま、コンパートメントからそろりそろりと封筒の中に入った紙を取り出して渡した。デバイスに番号を入力していた警官は「ふむ」とつぶやく。おそらく、盗難車でないことが確認できたのだろう。
オレは、深いため息をつく……つもりだった。
「外に出ろ。ひとりずつだ」
ぎょええっ! これで終わりじゃないんですかぁあ!?
やむをえず言われるままにドアを開け、オレは足を踏み出した。銃口はこっちの動きを、一挙一動のがすことなく追っている。ことはオレだけじゃ済まなかった。シャーリーンまでも外に出るように言われてしまう。二人は、二人は……、いま並んで後ろ向きにホールドアップさせられている。
「ゲット・ダウン・オン・ユア・ニーズ」
じ、地面に膝をつけって……。信じられない。ああ、ごめんシャーリーン、こんなことに巻き込んじゃって。口を聞くことが許されないオレは、心の中でそう唱えた。言われるままに膝をつく。警官の一人が銃を向けたまま、もう一人はオレたちの体を調べて、武器を持ってないか確認した。
うぁ、こういう時ってアクシデントで銃が暴発してしまう、最も危険な瞬間でもあるんだ。たとえ向こうに撃つ気が無くても……だ。
「前を向いて、そこに座れ」
武器を所持してなかったオレたちは、とりあえず地面に座らされた。
もうひとりの警官は、車の中を調べている。彼の目が、とある物体の上に止まった。
「何だ?」
助手席にあった細長い包みを銃で指している。警官は怪しいものには決して手を触れない。
うへっ、やっば、見ようによってはライフルにも見えるよね。
「バ、バゲットです」
シャーリーンが答える。
「開けろ」
彼女が立ち上がり、銃に震えながら車の中の袋を開ける。いちおう武器を持ってないことは証明されたから、オフィサーは銃に手をかけているが銃口は彼女に向けられていない。とはいえ、すぐにでも発射できる体勢ですごまれれば、普通の女の子だったら怖がって動けないかも。
包みの中には……、こんがりときれいな焼き色のバゲットが店の紙袋に入っていた。不幸中の幸いというか、彼女は地面に座らずそのまま立っていることを許された。その後バックパックの中身も確かめ、オフィサーは荷台にまわる。
そこで……! 端が少し剥がれかかってたブルーシートを完全にめくった。
「これは……?」
警官が聞く。
「え?」
オレは立ち上がらされ、トラックの後ろまで誘導された。荷台にあったのは……、木製の箱だ。
「し、知りません。これって……オレ、いや僕の車じゃないんです。寮の友人、ダニエルから借りていて……」
オレは、財布からUCLAのIDを取り出して渡した。運転免許証と車両登録証のファミリー・ネームが違うから、借りてるって話の裏付けにはなるはず。それで学生証を見せたら、ここの近くの寮に住んでるって証明にもなるかと思ったんだ。警官は車両登録証の名前と見比べ、またデバイスに何か入力していた。車両登録証はダニエルの親父さんの名前だけど、大学生の息子がいそうな年齢だということは立証されただろう。
オフィサーは荷台に視線を戻した。
「その中身は何だ?」
「き、聞いてません」
「開けろ」
だって、どうしよう、オレ怖いよ。
「オ……、僕が、開けるんですか?」
「彼女に開けてもらうか?」
「い、いえ、自分でやります」
まさかシャーリーンにやらせるわけにはいかない。
中身は爆発物かもしれないから、必ず持ち主が自分で開けさせられるんだけど、こんな大きな箱の中が爆発物だったら、まちがいなく全員、いや近所中ぶっ飛んでるよぉ。それにオレ、持ち主じゃなくてただの友人だし。匂いはしないけどさ、この箱に入ってる中身っていったら、決まってるじゃん。
「早くしろ!」
「は、はい」
ああ、だめだ。オレが焦らすから、よけい怪しまれてる。ええいっ、どうにでもなれっ!
恐る恐る、木の蓋に手をかけた。
――怖いのは、危険物が入ってることを疑ってるからじゃない。
――怖いのは……。
ああ、ダニエル、何だってこんなもの、トラックの荷台に置いとくんだよ。
か……、棺桶なんて。
指先に力を込めて持ち上げる。……と意外にも蓋は軽く上がり、カランと音を立てて荷台の上に落ちた。な、中は、中身はぁ……ぁああ!
「か、か、か……」
空っぽだった。カラだ、空っぽだよ、何も入ってないっ! うわぁああ!
心の中で思いっきり叫んだおかげで少し落ち着きを取り戻したオレは、その内側をぐるりと目で追った。ん? 角んところの接合が妙にぎこちないな。木の板の内側は、材木がそのままむきだしの部分もあって、シルクがすげえ雑に張ってある。普通はシルクにギャザーを寄せて、丁寧な内装のはず……。それに、端から木工用ボンドがはみ出して、透明に固まってるし。ああ、なんだろう、ひしひしと伝わって来るこの手作り感……。
「あっ……!」
オレの反応に、オフィサーのサングラスがキラリと光る。
「そういえばダニエル、劇場の小道具を作る仕事を引き受けたって……」
確かに、外側だけそれらしく見えればいいんだし。観客席からなら、これでも十分本物の棺桶に見えるだろう。
警官はしばらく手で触れていたが、どう見てもプロの手による売り物の棺桶ではないと納得したのだろう。ようやく銃をフォルダーに収めてくれた。
ごめん、シャーリーン。さっきまで地面に座らされて……きっと冷たかっただろうね。
そのとき、パトロールカーに無線が入った。オフィサーは外から頭を突っ込んで応答する。
『セブン・フォーティスリー、こちらセブン・トゥエンティシックス、ホワイト・ヴァンの男二人を逮捕した』
それにオフィサーが何て返事をするか、オレたちは緊張して聞き耳を立てていた。
「セブン・フォーティスリー、ピックアップ・トラックに異常は発見されなかった。直ちに合流する」
ふうぅーーっ。オレは遠慮がちに安堵のため息をついた。
免許証その他を手渡し、「退散してよし」と言いながら、オレたちをそこに残したままパトロールカーをUターンさせると、一陣の風のごとく彼らは走り去った。
雨粒が空からこぼれてきて、オレたちの頬を濡らし始めた。
「シャーリーン」
オレは後ろから、彼女の両肩に手をかけた。抱きしめたかったけど、今はその前にしなくちゃいけないことがある。
「乗って、誰か来る前に行こう」
警官に拳銃を突きつけられたところなんて、誰にも見られたくない。幸いにもここはビバリーヒルズの高級住宅街だから、誰も見てなかった。信じられないかもしれないけど、こういう屋敷が並んでるとこって昼間はすごい静かなんだ。ほんと歩いてる人いなくてさ。ハウスキーパーだって、車通勤じゃないかってくらい、いくらでも駐車スペースあるから。おかげで集まってくる野次馬もいなかったんだ。
オレは助手席のドアを開け、もう片方の手を差し出して、ステップバーに足をかけようとする彼女の手を支えた。荷台に回って、棺桶にしっかりとブルーシートをかけ直す。雨から守るのももちろんだけど、また警察に捕まったりしたらたまんないからね。
「ごめん……」
「あなたのせいじゃないわ」
イグニッションキーを回す。
彼女がどんなに怒ってるか想像するのが恐ろしくて、まともに顔を見られなかった。
いや声のトーンは怒ってなかったけど、心の中まではわかんないし。だって仮にオレがシャーリーンの立場だったら、とても平静ではいられない。
くそぉ、ダニエルのやつ……。
オレはまた、サンセット・ブルバードに向けてトラックを走らせる。午後の厚い雲からポツリポツリとこぼれてた雨は、だんだん強くなってきていた。彼女の家はもうすぐそこだ。オレは言葉を探すのをやめて、黙ってひたすら運転を続けた。
「お前さ、なんであんなものをトラックの荷台なんかに放置しとくんだよ?」
寮の部屋に帰ってきたオレは、開口一番にダニエルにつっかかった。
「え、何? ああ、あれ。放置なんかしてねーよ。ちゃんと、言ったじゃん」
「聞いてねえぞ」
「言ったよ、俺の作品が置いてあるから気をつけてって」
「お前、作品ってなあ……」
「だってさ、あのダウンタウンのロスアンジェルス・シアターだよ。すげえだろ。ロミオとジュリエットの小道具だぜ。クラーク先生の仕事なんだけど、セミナーが入っちゃったからって俺にやらせてくれたんだ。それでさぁ……」
LA最大とも言われる劇場の小道具作りの仕事を、クラスの教授に臨時でもらったことを、熱く語り始めるダニエル。まあ確かに将来レジュメに書けるほど誇っていい仕事だから、こんなに喜んでるのも理解できなくはない。だが、だがなダニエル……。笑ってる場合じゃないぞ。
さっき警官に銃を突きつけられたばかりのオレは、いささかイライラしていた。シャーリーンのこともあるし……。
「その続きは後で聞く。その前に、今日オレたちの身に何が起こったか話してやるよ。お前の、素晴らしい手作り棺桶のおかげでな……」
全部聞き終わると、ダニエルのやつは口をぽかんと開けたままでいた。
「……それは、なんて言ったらいいか……」
「オレのことは、百歩譲ってまあいい。……としてもだ。シャーリーンには謝っとけよ」
「彼女、怒ってた?」
「怒ってないわけねえだろ。かわいそうに無実のか弱い女の子が、銃を突きつけられたんだぞ」
「だ、だよね……申し訳ない、彼女を巻き込んじゃって。すぐにお詫びしとくよ」
彼はスマホの画面を開き、さっそくメッセージを打ち込み始めた。
まもなくシャーリーンから返信があったらしく、ダニエルは「ほんとに!?」と驚いている。
すぐにオレの電話が鳴った。
「キャメロン、いま寮のお部屋? ダニエルと一緒?」
「あ、うん」
「だったらあなたからも伝えてあげて、彼のせいじゃないから気にしないでって」
「あ、いや……」
「キャメロン、彼に何か言ったの?」
「えっとぉ……」
「だって、誰のせいでもないもの」
逆にオレのほうが、彼女から諭されてしまった。
「ほんと、ごめん」
「あなたのせいでもないけど……」
彼女の言う通りなんだ。運が悪かったんだよ。たまたま近くで事件が起こらなかったら、警察はオレたちに注意を向けなかったはずだ。
「うん、そだね」
優しいんだね。シャーリーン。
そりゃ確かに君の言うとおりかもしれないけど、あんなに怖い思いをしたことを八つ当たりされたってこっちは文句なんて言えないんだ。なのに……、それどころか危うくルームメイトと喧嘩しそうになったオレは、自分が間違つていたことを、彼女に教えられた。
オレはダニエルを振り返り、親指を天に向けて突き立てる。
ルームメイトの顔が、みるみる明るくなっていった。
災難に遭わせてしまった女の子に、シンパシーを伝えるのは大切なことだ。
この部屋の緊張した空気は、シャーリーンの声のおかげで緩み始めたみたいだ。
シャーリーン、今日はありがとう。そんなに長い時間会えたわけじゃないけど、そこにいてくれるだけで心が休まる――彼女はそんな特別な存在になりつつあった。
シャーリーンに言われるまでもなく、オレは道路の右端に車を寄せる。
たった今ミラーに映った後方のパトロールカーは、サイレンを鳴らして通り過ぎて行った。銃声が聞こえてくるのは、そんなに至近距離からじゃない。でも、何が起きるかわからない。いやオレ自身が、いったい何が起こってるのか見当すらつかないんだ。
「シートベルトしたまま、身を低くして! シャーリーン。バックパックを体の前で抱えて、プロテクター代わりに」
オレは道の脇で車を止めて、頭の中を整理しようとした。ふと二〇一六年のときの、UCLAの卒業生がキャンパスで教授を狙撃し、自分も撃って自殺した事件が頭をよぎる。オレはまだ入学してなかったけど、テレビのニュースは一日中キャンパスの様子を中継していた。結局死者は二人だけだったが、頭やべー生徒とかが銃を持ってクラスに突入乱射する事件はアメリカじゃめずらしくなかったから、あの日は事件の詳細が明らかにされるまで大学は閉められた。ものすごい数のLAPDとSWATチームが一度に押し寄せてきて、キャンパス中をくまなく捜査してたんだ。テレビ画面に映る、防弾設備を施した装甲車にしがみついて、それを盾にキャンパスを移動する重装備の警官たちの姿は、並々ならぬ迫力だった。
『セブン・シックスティワン、狙撃してきた!』
『前に、回り込め!』
『サンセット・ストリップに出る前にくい止めろ!』
ヴァンからの拳銃音!
覆面カー、アウディのウインドシールドに、銃弾がめり込む。
アウディの警官から二発の反撃!! 白いヴァンは、車体を大きくスイングしてそれを避ける。
『ナインティーフォー・ナインティーワン、サンセット・ブルバード。次の角は三叉路だ、曲がるつもりだぞ!』
『セブン・トゥエンティシックス、エルム・ドライブ、南から回り込みます』
『ラジャー、全車に次ぐ、メイプル・ドライブにも応援を配置せよ』
ヘリコプターからの指令は、付近の全パトロール車両に無線で送られた。
お、落ち着け! キャメロン。一番大切なことは……シャーリーンを守ること。深呼吸……。ヘリコプターの位置が、真上から少し東のほうへ移動したような気がする。
や、やっぱりさっきのホワイト・ヴァンだよね、怪しいのは。ここからシャーリーンの住むウエスト・ハリウッドまで、回り道をするなら南のサンタモニカ・ブルバードを通るか、北の坂道へ入るかだ。
いや待て、犯人もオレと、全く同じことを考えているとしたら……。もう一度息を深く吸って、オレだったらどうするか……、犯人の立場に立ってよく考えるんだ、キャメロン。
よーし、オレは犯人だ!
右へ曲がるか、左へ行くか。
右はビバリーヒルズの市街地、左は丘、まっすぐ行けばサンセット・ストリップの繁華街……、人の多い道は車も多い。だが丘の坂道は曲がりくねっている。
ビバリーヒルズ警察は、人混みへ向かう犯人を必死でくい止めようとするに違いない。サンセット方面も同じこと、その先にはハリウッドの観光地が続いてる。そっちへ逃げるのも、警察のまっただ中に飛び込むようなものだし。
残る道は丘……、え、丘だって? この辺って、本当に曲がりくねってる?
オレはカーナビの画面を見た。ここは丘のふもと、だから道もまだ、そんなに複雑じゃない! 丘と丘の間には……。
あった、一本だけ! 縦にまっすぐ走ってる道がぁる! それを使えば、北へ抜けてシャーマン・オークスに出られる。そこにあるのは――ハイウェイ101(ワン・オー・ワン)!!
これだ、犯人の選ぶルートはこれしかない。だとすれば、オレの進むルートは……、その真逆。
「シャーリーン、つかまってて! ヒア・ウィー・ゴー!」
パラパラパラパラ
『ナインティシックス・フィフティ、サンセット・ブルバード。たった今ウィル・ロジャース・メモリアル・パークで右折したピックアップ・トラック、荷台に奇妙な物体あり、追跡を頼む。色はシルバー・メタリック、現在ビバリー・ドライブ、サウス・バウンドを走行中。運転席はダークヘアの男、ブラックジーンズ。助手席はブロンドヘアの女。推定年齢は大学生、シボレー、ライセンスナンバーはファイブCZTワン・シックス……』
『こちらセブン・フォーティスリー、ラジャー』
「キャメロン!」
「……」
「ねえ、聞こえる?」
「聞こえてる」
「私の声じゃなくて……サイレン」
「それも聞こえてるよ。いやもう、さっきから耳にがんがん」
オレは思いっ切りハンドルを回す。
「でも……」
「なに?」
「なんかサイレンが近づいてくるの。ほら、すぐ後ろ」
パトカーのサイレンは、真後ろに迫ってきた。トーンを変えて短く、ヴィッウィッウィッって切れるように何度か鳴らされる。
えええっ、なにこれ!? つまり、止まれってこと?
『シボレー、ピックアップ、路肩に停車しろ!』
げっ、シボレーって、オレの運転してるトラックのこと!? やべー、パトカーからの最後通告だよ。しかもスピーカーから大声で。たとえ犯人だって抵抗しちゃいけないやつ。いえ抵抗するつもりなんて、さらさらありませんけどっ!
オレがトラックを止めると、パトロールカーは一定の距離を置いて停車し、中から拳銃を持った警察官が二人降りてきた。
「LAPD、フリーズ!」
野太い声に、オレたちは震えながらじっとしていた。頭の片隅に、あいつの声が聞こえる。「僕の父はLAPDに顔が効くんだよ」ってセリフが……。う、うそだろ!? ほんとにこれが、奴のリベンジ!?
ど、ど、ど、ど、どうしよう……。
え……と、イグニッションを完全に切る。窓をロールダウン。インテリアライト点灯……っとこれは昼間だから必要ない。
「手にはなにも持たないで、向こうから見えるように、両手を上げてシャーリーン」
こういう時は、何かをつかんだだけで武器だと思われて警官に打たれることもある。警察は「危険を感じた。正当防衛だ」と言い張れば何のお咎めもないんだ。だから絶対に抵抗しちゃダメ。
黒い制服を身につけた雄牛のように豪胆な二人のオフィサーが、銃を構え一歩一歩足を踏みしめて近づいてくる。
おお、神さま!
「外に出ちゃダメだ。言われるまで絶対に」
そういうオレの声は、ものすごく震えていた。警官は銃を構え、オレたちと車の中をにらんでいる。
「ドライバーズ・ライセンス、車両登録証と車両保険証券」
「は、はい」
片手は上げたまま、オレはそろそろともう片方の手をポケットに突っ込んで財布を取り、そこから運転免許証を出して渡した。
「登録証と保険証券は、コンパートメントの中に……あります」
通常、自分では絶対に開けてはいけない。犯罪者が銃を隠すとしたら、この中が一番可能性が高いからだ。許可なく手を突っ込もうものなら、背中から蜂の巣にされるだろう。オフィサーは「開けろ」とオレに顎をしゃくった。まだ右手は上げたまま、コンパートメントからそろりそろりと封筒の中に入った紙を取り出して渡した。デバイスに番号を入力していた警官は「ふむ」とつぶやく。おそらく、盗難車でないことが確認できたのだろう。
オレは、深いため息をつく……つもりだった。
「外に出ろ。ひとりずつだ」
ぎょええっ! これで終わりじゃないんですかぁあ!?
やむをえず言われるままにドアを開け、オレは足を踏み出した。銃口はこっちの動きを、一挙一動のがすことなく追っている。ことはオレだけじゃ済まなかった。シャーリーンまでも外に出るように言われてしまう。二人は、二人は……、いま並んで後ろ向きにホールドアップさせられている。
「ゲット・ダウン・オン・ユア・ニーズ」
じ、地面に膝をつけって……。信じられない。ああ、ごめんシャーリーン、こんなことに巻き込んじゃって。口を聞くことが許されないオレは、心の中でそう唱えた。言われるままに膝をつく。警官の一人が銃を向けたまま、もう一人はオレたちの体を調べて、武器を持ってないか確認した。
うぁ、こういう時ってアクシデントで銃が暴発してしまう、最も危険な瞬間でもあるんだ。たとえ向こうに撃つ気が無くても……だ。
「前を向いて、そこに座れ」
武器を所持してなかったオレたちは、とりあえず地面に座らされた。
もうひとりの警官は、車の中を調べている。彼の目が、とある物体の上に止まった。
「何だ?」
助手席にあった細長い包みを銃で指している。警官は怪しいものには決して手を触れない。
うへっ、やっば、見ようによってはライフルにも見えるよね。
「バ、バゲットです」
シャーリーンが答える。
「開けろ」
彼女が立ち上がり、銃に震えながら車の中の袋を開ける。いちおう武器を持ってないことは証明されたから、オフィサーは銃に手をかけているが銃口は彼女に向けられていない。とはいえ、すぐにでも発射できる体勢ですごまれれば、普通の女の子だったら怖がって動けないかも。
包みの中には……、こんがりときれいな焼き色のバゲットが店の紙袋に入っていた。不幸中の幸いというか、彼女は地面に座らずそのまま立っていることを許された。その後バックパックの中身も確かめ、オフィサーは荷台にまわる。
そこで……! 端が少し剥がれかかってたブルーシートを完全にめくった。
「これは……?」
警官が聞く。
「え?」
オレは立ち上がらされ、トラックの後ろまで誘導された。荷台にあったのは……、木製の箱だ。
「し、知りません。これって……オレ、いや僕の車じゃないんです。寮の友人、ダニエルから借りていて……」
オレは、財布からUCLAのIDを取り出して渡した。運転免許証と車両登録証のファミリー・ネームが違うから、借りてるって話の裏付けにはなるはず。それで学生証を見せたら、ここの近くの寮に住んでるって証明にもなるかと思ったんだ。警官は車両登録証の名前と見比べ、またデバイスに何か入力していた。車両登録証はダニエルの親父さんの名前だけど、大学生の息子がいそうな年齢だということは立証されただろう。
オフィサーは荷台に視線を戻した。
「その中身は何だ?」
「き、聞いてません」
「開けろ」
だって、どうしよう、オレ怖いよ。
「オ……、僕が、開けるんですか?」
「彼女に開けてもらうか?」
「い、いえ、自分でやります」
まさかシャーリーンにやらせるわけにはいかない。
中身は爆発物かもしれないから、必ず持ち主が自分で開けさせられるんだけど、こんな大きな箱の中が爆発物だったら、まちがいなく全員、いや近所中ぶっ飛んでるよぉ。それにオレ、持ち主じゃなくてただの友人だし。匂いはしないけどさ、この箱に入ってる中身っていったら、決まってるじゃん。
「早くしろ!」
「は、はい」
ああ、だめだ。オレが焦らすから、よけい怪しまれてる。ええいっ、どうにでもなれっ!
恐る恐る、木の蓋に手をかけた。
――怖いのは、危険物が入ってることを疑ってるからじゃない。
――怖いのは……。
ああ、ダニエル、何だってこんなもの、トラックの荷台に置いとくんだよ。
か……、棺桶なんて。
指先に力を込めて持ち上げる。……と意外にも蓋は軽く上がり、カランと音を立てて荷台の上に落ちた。な、中は、中身はぁ……ぁああ!
「か、か、か……」
空っぽだった。カラだ、空っぽだよ、何も入ってないっ! うわぁああ!
心の中で思いっきり叫んだおかげで少し落ち着きを取り戻したオレは、その内側をぐるりと目で追った。ん? 角んところの接合が妙にぎこちないな。木の板の内側は、材木がそのままむきだしの部分もあって、シルクがすげえ雑に張ってある。普通はシルクにギャザーを寄せて、丁寧な内装のはず……。それに、端から木工用ボンドがはみ出して、透明に固まってるし。ああ、なんだろう、ひしひしと伝わって来るこの手作り感……。
「あっ……!」
オレの反応に、オフィサーのサングラスがキラリと光る。
「そういえばダニエル、劇場の小道具を作る仕事を引き受けたって……」
確かに、外側だけそれらしく見えればいいんだし。観客席からなら、これでも十分本物の棺桶に見えるだろう。
警官はしばらく手で触れていたが、どう見てもプロの手による売り物の棺桶ではないと納得したのだろう。ようやく銃をフォルダーに収めてくれた。
ごめん、シャーリーン。さっきまで地面に座らされて……きっと冷たかっただろうね。
そのとき、パトロールカーに無線が入った。オフィサーは外から頭を突っ込んで応答する。
『セブン・フォーティスリー、こちらセブン・トゥエンティシックス、ホワイト・ヴァンの男二人を逮捕した』
それにオフィサーが何て返事をするか、オレたちは緊張して聞き耳を立てていた。
「セブン・フォーティスリー、ピックアップ・トラックに異常は発見されなかった。直ちに合流する」
ふうぅーーっ。オレは遠慮がちに安堵のため息をついた。
免許証その他を手渡し、「退散してよし」と言いながら、オレたちをそこに残したままパトロールカーをUターンさせると、一陣の風のごとく彼らは走り去った。
雨粒が空からこぼれてきて、オレたちの頬を濡らし始めた。
「シャーリーン」
オレは後ろから、彼女の両肩に手をかけた。抱きしめたかったけど、今はその前にしなくちゃいけないことがある。
「乗って、誰か来る前に行こう」
警官に拳銃を突きつけられたところなんて、誰にも見られたくない。幸いにもここはビバリーヒルズの高級住宅街だから、誰も見てなかった。信じられないかもしれないけど、こういう屋敷が並んでるとこって昼間はすごい静かなんだ。ほんと歩いてる人いなくてさ。ハウスキーパーだって、車通勤じゃないかってくらい、いくらでも駐車スペースあるから。おかげで集まってくる野次馬もいなかったんだ。
オレは助手席のドアを開け、もう片方の手を差し出して、ステップバーに足をかけようとする彼女の手を支えた。荷台に回って、棺桶にしっかりとブルーシートをかけ直す。雨から守るのももちろんだけど、また警察に捕まったりしたらたまんないからね。
「ごめん……」
「あなたのせいじゃないわ」
イグニッションキーを回す。
彼女がどんなに怒ってるか想像するのが恐ろしくて、まともに顔を見られなかった。
いや声のトーンは怒ってなかったけど、心の中まではわかんないし。だって仮にオレがシャーリーンの立場だったら、とても平静ではいられない。
くそぉ、ダニエルのやつ……。
オレはまた、サンセット・ブルバードに向けてトラックを走らせる。午後の厚い雲からポツリポツリとこぼれてた雨は、だんだん強くなってきていた。彼女の家はもうすぐそこだ。オレは言葉を探すのをやめて、黙ってひたすら運転を続けた。
「お前さ、なんであんなものをトラックの荷台なんかに放置しとくんだよ?」
寮の部屋に帰ってきたオレは、開口一番にダニエルにつっかかった。
「え、何? ああ、あれ。放置なんかしてねーよ。ちゃんと、言ったじゃん」
「聞いてねえぞ」
「言ったよ、俺の作品が置いてあるから気をつけてって」
「お前、作品ってなあ……」
「だってさ、あのダウンタウンのロスアンジェルス・シアターだよ。すげえだろ。ロミオとジュリエットの小道具だぜ。クラーク先生の仕事なんだけど、セミナーが入っちゃったからって俺にやらせてくれたんだ。それでさぁ……」
LA最大とも言われる劇場の小道具作りの仕事を、クラスの教授に臨時でもらったことを、熱く語り始めるダニエル。まあ確かに将来レジュメに書けるほど誇っていい仕事だから、こんなに喜んでるのも理解できなくはない。だが、だがなダニエル……。笑ってる場合じゃないぞ。
さっき警官に銃を突きつけられたばかりのオレは、いささかイライラしていた。シャーリーンのこともあるし……。
「その続きは後で聞く。その前に、今日オレたちの身に何が起こったか話してやるよ。お前の、素晴らしい手作り棺桶のおかげでな……」
全部聞き終わると、ダニエルのやつは口をぽかんと開けたままでいた。
「……それは、なんて言ったらいいか……」
「オレのことは、百歩譲ってまあいい。……としてもだ。シャーリーンには謝っとけよ」
「彼女、怒ってた?」
「怒ってないわけねえだろ。かわいそうに無実のか弱い女の子が、銃を突きつけられたんだぞ」
「だ、だよね……申し訳ない、彼女を巻き込んじゃって。すぐにお詫びしとくよ」
彼はスマホの画面を開き、さっそくメッセージを打ち込み始めた。
まもなくシャーリーンから返信があったらしく、ダニエルは「ほんとに!?」と驚いている。
すぐにオレの電話が鳴った。
「キャメロン、いま寮のお部屋? ダニエルと一緒?」
「あ、うん」
「だったらあなたからも伝えてあげて、彼のせいじゃないから気にしないでって」
「あ、いや……」
「キャメロン、彼に何か言ったの?」
「えっとぉ……」
「だって、誰のせいでもないもの」
逆にオレのほうが、彼女から諭されてしまった。
「ほんと、ごめん」
「あなたのせいでもないけど……」
彼女の言う通りなんだ。運が悪かったんだよ。たまたま近くで事件が起こらなかったら、警察はオレたちに注意を向けなかったはずだ。
「うん、そだね」
優しいんだね。シャーリーン。
そりゃ確かに君の言うとおりかもしれないけど、あんなに怖い思いをしたことを八つ当たりされたってこっちは文句なんて言えないんだ。なのに……、それどころか危うくルームメイトと喧嘩しそうになったオレは、自分が間違つていたことを、彼女に教えられた。
オレはダニエルを振り返り、親指を天に向けて突き立てる。
ルームメイトの顔が、みるみる明るくなっていった。
災難に遭わせてしまった女の子に、シンパシーを伝えるのは大切なことだ。
この部屋の緊張した空気は、シャーリーンの声のおかげで緩み始めたみたいだ。
シャーリーン、今日はありがとう。そんなに長い時間会えたわけじゃないけど、そこにいてくれるだけで心が休まる――彼女はそんな特別な存在になりつつあった。
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