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第11話とても平和で日常的で緩やかな話だが、その代わりストーリーがあんまり進んでいないように感じるが、きっと気の所為である

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 日曜日の夜、俺達三兄妹がトランプで遊んでいるとドアから覗く半分の顔。
 俺がドアに近寄り、ドアを開けて西園寺に要件を問う。

「拓海君。テレビゲームに興味ありませんか?」

 そう問うて来たので、愛海達に応えを問う。
 海華が興味津々だった。

 西園寺が俺の部屋に入り、テレビに何かを接続している。
 大きなテレビ、1度も付けた事がなかった。

 西園寺がテレビを付けて色々と設定をしている。

「皆で一緒にスマ〇ラしましょう!」

 スマッシュなんたらを行う事になった。
 ゲーム機でゲームをした事がない俺達は西園寺に操作方法を聞きながらプレイする。
 最初の方は当然のように、手も足も出ないで西園寺に3人掛りでフルボッコにされる。

 10回戦目で西園寺に少し攻撃が当たるようになった。
 20回戦目で稀に西園寺を倒す事が出来るようになった。
 30回戦目で西園寺を普通に倒せるようになった。
 40回線目で残機を全て削って勝てるようになった。
 50回線目で立場が逆転した。

 西園寺のコントローラーがプルプル震えている。

「(おかしいでしょ! 麻美に付き合って貰って前から遊んでいたゲームなんだよ! 1度も勝った事ないけど! なんでも負けているの? 勝てないの? 悔しイイ!)」

「ゆ、雪姫さん、私達はまだ雪姫さんに勝ってませんから」

「うんうん。雪姫お姉ちゃんつよーい!」

「ありがとうございます2人とも」

 あれ? 俺が悪いの?

「拓海君、本当に本当にほんとーに初めてやったんですか? こんなにすぐに負けるようになるとか思っていなかったんですけど!」

「まぁ、色々とバイトしてると色々とすぐに覚える癖が出来たんだよね」

「どんな癖ですか、普通に羨ましがられそうな癖ですね。ごほん。麻美来てちょうだい」

「はいなんでしょうかお嬢様」

 俺達三兄妹は漠然として麻美と言われた人を見る。
 見た目的に西園寺の側近の人である。
 ドアを開ける素振りも、音も何もなかったのに背後に現れたのだ。

「(あーどこから来たって顔してますね。天井から来たって言えないか)」

「麻美、拓海君とコレで戦って私の仇を打って!」

「お嬢様ゲーム下手ですもんね」

「そんなグッサリと」

 麻美と言われた人と俺はゲームをする。

 時間が経ち、サドンデスとやらに持ち込んだ。

「(おかしい。数百時間とオンライン対戦で特訓したこの私がたかだか数時間程度やった高校生に負けるなど、世間が許しても私が許さない)」

 サドンデスで戦い、俺が1発入れると麻美のキャラが吹っ飛んだ。
 サドンデスとやらは一撃与えれば勝てる仕様らしい。

「な、なんで、この私が」

「麻美が負けるなんて」

「お兄ちゃん、凄い」

「ずこーい」

「まぁ。必要な時に必要なコマンド押すだけだからな」

「「え」」

 麻美と西園寺が同時に俺を見てくる。
 麻美が俺の両肩をがっしりと掴み、問い詰めて来る。

「では、相手がどのような行動を取るとか、どうやって攻めて来るのか、全く予想してないと!」

「え、まぁ。そうですけど」

 麻美と西園寺はガックリしながらとぼとぼ自分達の部屋へと戻って行った。
 途中で麻美が来て、ゲーム機は差し上げると言われた。

 なんかやってしまったようだ。
 後でなにかフォローを入れておこう。
 そうだな? もうすぐ晩御飯だしオムレツの練習がてら作ってみようかな?

 俺が晩御飯を作ったと言われた西園寺は既に机にスタンバっていた。
 作ったのはオムライスで、オムライスを西園寺の前に出す。

「愛海にやり方を聞きながら作ってみたんだけど、口に合わなかったら言ってくれ」

「そんな、滅相もない。頂きます」

 ケチャップでオムライスにハートを描いて、1口スプーンに掬い、口に運んだ。
 小さく、一言「美味しいです」と俺に顔を向けて言って来る。小さく笑みも浮かべてくれた。

「そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとう」

 俺と西園寺の間に花が咲き乱れ、愛海がスプーンで断ち切る。

「お兄ちゃん、私達も食べようよ」

 笑顔の目と口元。だけど、なんだろうか。
 愛海から感じる気配と言うか雰囲気と言うか、それらしいのが西園寺に似ている。
 冷気を放つ怖い気配。

 晩御飯を食べて風呂に入り、部屋に戻る。
 部屋には既に3人が居た。
 ここに半強制で来てからそこそこ日にちが経つ。
 この生活にも慣れ、この光景にも慣れ、自分の生活が変わった事を感じる。

 大きな部屋、3食腹一杯に食べれて、電化製品が使える生活。
 母親が居た時と同じような生活。
 母さん、今頃天国で笑ってくれているかな。
 きっと驚いているだろうな。母さんの為にも、俺が頑張らなくちゃな。

「お兄ちゃんどうしたの?」

「いや、なんか「そんな訳あるか!」ってツッコミされた気がして⋯⋯いやまぁ気がするだけなんだけど」

「拓海君大丈夫ですか?」

「心配してくれてありがとう。大丈夫だよ」

 翌日、西園寺と再び登校する。
 途中で神威と合流するが、朝の図書当番により神威は先に行った。

「雪姫さんなんか嬉しそうだね」

「そうですね。拓海君が緊張とか何も無く、私を隣に歩かせてくれるのがとても嬉しいのです」

「そうか? ⋯⋯明日から梅雨だね」

「そうですね。⋯⋯登校や下校で相合傘が沢山合法的に出来るとても素晴らしい時期ですよね」

「⋯⋯」

 西園寺の屈託のない笑みを見ると、どうして言えない。
 洗濯物は干しても乾かないし傘がボロいのが1本しか無くて俺は途中から傘無しで登校する事になる。
 帰りでは愛海も海華もびしょ濡れで、風邪を惹かないか心配な時期であった。

 でも、西園寺のお陰でそれもなくなるのか。
 傘、傘か。

「傘、持ってないや」

「なら、今日はシフトも無いようですし、放課後に行きましょう」

 なんで俺のシフトを知っているのか、それを聞きたいが、きっと使用人から聞いたんだろう。
 料理等の関係からシフトはきちんと伝えているのだ。うん。そうだろう。

「付き合ってくれるか?」

「ん? 12年間のお試しですが、私達はお付き合いしてますよ? おかしな事を言うんですね拓海君って」

 その意味じゃねぇ!
 なにかに付き添いをすると言う意味だよ!
 愛海と海華も誘って皆で各々の傘を探そうかな?
 傘くらいなら買える余裕はある。

「ラインでお2人にはお2人で買って貰うように言いましたから、もう中3ですしね、問題無いでしょう。なので、『2人っきり』で行きましょう」

「分かった」

 西園寺、やる事が速くない?
 愛海と海華は食材の買い出しも良くやってるし、問題はないだろう。
 さーて、今日も乗り切りますか。
 国語の時間を。
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