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第26話ある種の新たな妹

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 テストを無事に終え、今日はその結果が帰って来た。
 家に帰って、俺の部屋に西園寺と桜井姉妹、愛海に海華も居る。

「テスト点数見せ合い会!」

 と、海華が言った瞬間に一斉に返って来たテスト用紙を机の上に置いた。

「な、んだと」

 愛桜がそう言って、ガックリと肩を落とした。

 順位と共に書いてある表が来た。
 開いてみると、俺には1と0しか数字が書いてなかった。

 土日を挟んで月曜日には順位表が貼ってあった。
 1位は俺、2位に西園寺、3位に凛桜、9位に神威、112位に愛桜が居る。
 この学園の1年生は336人居るので、愛桜は丁度3分の1の順位なのだ。

「⋯⋯拓海達って、頭良かったんっすね」

「そんな意外だったか? まぁ、主席だと学費が免除されるから、頑張ってんだよ」

「成程。噂が少ない主席の正体は拓海でしたか」

 俺のテストは全教科100点であり、堂々の1位となっていた。
 西園寺は所々が98点になっていた。
 今日は雨。シャー芯が無くなったので、買いに行く。
 隣には西園寺がおり、朝は雨が降っていなかったようで、西園寺は傘を持ってない。

 ニュースで雨だとあり、麻美さんが傘を持たせようとしていたが、西園寺が断固拒否していた。
 今日は遅刻しそうになった。

「ふんふん」

「今日はテンション高いな」

「一緒の傘に入れる。相合傘。ちょっとした夢が叶いましたから。それに、買い物で寄り道も出来ますからね」

「そっか。にしても桜井姉妹は何処に行ったんだろうな」

「部活では?」

「部活は今日ないだろ」

 ◇

 傘を閉じて文房具屋に入った。
 シャー芯を選んで買い、外に出て帰路に着く。
 しかし、少し歩くと不思議な光景、いや人を目にする。
 何も感じてないような虚無の目、服はボロボロで汚れている。
 雨の中、屋根も無い場所でただ突っ立っている。

「⋯⋯」

 俺達はその子に近づいた。
 傘が大きいので、中に入れる。

「⋯⋯ん」

 傘が来たからか、相手が顔を上げる。
 顔付き的に女の子だった。

「どうしたの?」

 俺が話し掛ける。
 流石にこの子の姿を見た西園寺は苦い顔をしている。

「捨てられた」

「誰に?」

「親戚に」

「え!」

 見た目的に捨てられた、或いは逃げて来たと思った。
 隠せてない痣があるからだ。
 だが、親戚に捨てられたは流石に驚きだ。
 理由を、聞いても良いだろうか?

「理由、聞いても大丈夫?」

「うん。どうせ行く当てないし、傘貸してくれてるし。私は、私の両親は事故で死んだ。多分、殺された。ママとパパ、大きな会社の社長、だった。親戚、毎日金をせがんで来た。ママパパ優しい。毎日金をあげた。それでも、私に対して、優しく、した。両親、死んだ。莫大な遺産、私に、入る。狙った親戚、私を引き取った。金、全部、奪われた。会社、資産、不動産、全部全部奪われた! そして、育てるのが億劫な私は、捨てられた!」

 段々と泣き出す女の子。
 俺は、西園寺の方を見た。
 どうしても、この子は見捨てられない。
 俺と似たような境遇でありなが、俺よりも酷い目にあっている。
 こんな子を、俺は見捨てる事が出来ない。

「ええ。持ち帰りましょう」

「ありがとう。ねぇ、俺達と一緒に来ない?」

「家に、身代金要求、しても、意味、無いよ?」

「しないよ! お腹、空いてるだろ。雪姫さんの家だけど、来て。お腹いっぱいご飯食べるし、暖かい風呂に入れるよ」

「私、汚い。ダメ」

「良いですよ。拓海君が望むように、私もそうしたいのです」

「お姉さん、誰?」

「西園寺、雪姫です」

「いいの?」

 俺と西園寺は目を合わせる。
 そして、女の子の目を見る。

「ああ」「ええ」

 ◇

 家に連れ帰って、風呂に入れてもらう。
 今、俺の部屋には西園寺と愛海、そして麻美さんが居た。

「どんだけ家に人を連れ込んだら気が済むんですかお嬢様!」

「失敬ね。桜井姉妹は勝手に来て、お父様が決めた事よ。それに、あの子は見てられなかったわ」

「⋯⋯ですが、流石にこれ以上増やすのは⋯⋯」

「だったら、ここで働かせれば良い」

「あの子今年で15歳らしいですよ。つまり、中3です。働けませんよ」

「大丈夫よ。ここならバレル心配も無いし、バレても権力で握り潰すわ!」

「はぁ~(旦那様も同じ事やりそうで否定出来ない)分かりました。お風呂上がりに食事を与えながら話してみます」

「助かります」

「良いですよ。お嬢様の意向なので。あと、あの子について調べてみますね」

 麻美さん超優秀。
 拝んでおこう。

「成程。歳が同じだから私が呼ばれたんですね」

 愛海が納得する。

 風呂から上がって着替えた女の子は椅子に座り、バクバクと食べ始める。
 中3とは思えない程に小柄で、普段使っている椅子だと高さが合わなかった。
 少し盛っている。

「美味しい」

 バクバク食べているが、マナーはしっかりしていた。
 両親が社長だったからか、育ちはとても良かった。
 西園寺が今後の事について話している。
 名前は、御剣みつるぎ天月あまらしい。

「天月ちゃんの部屋は何処にしましょうか」

 働く事を条件に、ここに住む事を承諾した。

「私、拓海お兄ちゃんと寝たい!」

「「「ダメ!」」」

 西園寺、凛桜、愛海が同時に叫んだ。
 綺麗なシンクロで俺と愛桜、海華が驚く。

「でも、なんで俺?」

「なんか、同じ匂いがする」

「⋯⋯だったら、愛海達も同じなんじゃないか?」

「年上に甘えたい」

「「「ッ!」」」

「睨むなよ」

 天月の強い要望により、何故か一緒の部屋で寝る事になった。
 まぁ、妹と同い年の人に対して何かを思う訳も無く、普通に寝る。
 寝る前に数回会話をしていた。
 愛海も来ようとしていたが、天月が「最初は、2人が、いい」と言って、諦めてくれた。

「両親は優しかった?」

「うん。とっても。楽しかった。あの頃は。2人は、忙しくて、なかなか遊べなかった、けど。遊べる、時は、いっぱいバカな事をした! 時々母に怒られる時もあったけど」

「そっか」

「拓海お兄ちゃんの両親は?」

「俺、か。俺は『母親』しか居なかったよ」

「そうなの?」

「そう。母さんは辛い事があっても、俺達3人を泣かせないように、毎日無理して、それでも泣く姿を見せなかったんだ」

「立派だね」

「ッ! あぁ、ほんと、尊敬出来る立派な母さんだったよ」

「亡くなったの?」

「ああ。事故にあってな」

「ごめんなさい」

「いいよ」

「悲しいね」

「そうだな。だけど、母さんが居たから、今の俺が居る。俺はそう思ってる」

「そっか。私、明日から中学生になる。愛海、ちゃんと、同じクラスが良いな」

「俺も、そっちの方が安心出来るな。眠いし、寝ようか」

「⋯⋯うん」

 この日、俺は珍しく夢を見た。懐かしい、夢を。
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