僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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ぼく、ぽて




 ぴかぴか緑に光ったので、ミハの認可を得た僕は、アィクおじちゃんのお薬を、丁寧に小さな布に包んだ。
 お薬用のちいさな、おさじと一緒に、アィクに渡す。

「あさ、ひゆ、ばん、この、おしゃじで、ひとしゃじ、じゅつ。ごはんの、ぁとに、にょんで、ね!」

 おっきい手で、そうっと受け取ったアィクが、うなずいた。

「おお、わかった。飯の後だな。このちっさい匙で、すくえばいいのか」

「すりきり一杯です。山盛りにしないように」

 ムニャが教えてくれるのに、おじちゃんが、もしゃもしゃの眉をさげる。

「おぉう、むつかしいな……」

「しゃって、しゅゆの!」

 お薬を山盛りにすくった匙のうえで、僕はちっちゃな指をすべらせる。

「おお! なるほど!」

「飲み忘れないように、気をつけてくださいね」

 ムニャのやさしい注意に、アィクは、こくこくうなずいた。

「わ、わかった!」

「ぉしゃけ、がまん、がんばて、アーおじちゃん!」

「がんばるよ!」

 涙の瞳で、僕の手をにぎってくれる。

「ありがとうな、ぽて」

 ちいさな両の手で、大きな分厚い手をにぎりかえす。

「むーちゃんと、チタしぇんしぇーと、がんばたの」

「むーちゃんも、チタせんせーも、ありがとう」

 アィクが笑ってくれる。



 僕は、ただ、おかねを稼ぎたいと思っていた。

 むーちゃんに、おいしいご飯を食べさせてあげたいと。

 でも、がんばって働いたら、笑ってくれる人がいる。

 僕の手をにぎって『ありがとう』をくれる人がいる。


 それは、なんて、しあわせなことなんだろう。



 アィクが大きく手を振って帰る背を見送ったら、チタが慣れた声で呼んでくれる。

「番号札、2番の方~」

 そう、薬士実習は、はじまったばかりなのです!





 むーちゃんとチタ先生と一緒に、たくさんの人を診て、たくさんお薬を作りました!

「元気になりますように」

 ささやくたび、ぴかぴか薬は輝いて、ずっと隣で見守ってくれたミハの僕を見る目も、きらきらに──!

「緑のきみ──!
 おとぎ話の存在に、まさか、お目にかかることができるなんて……!」

 涙目になってる!

 僕は、うるうるのミハを見あげる。

「あにょ、あにょ、ぼく、ぽて」

 もじもじしたら、ミハは申しわけなさそうに細い眉をさげた。

「あ、ああ、うん、ごめんね。取り乱したね。もちろん、誰にも言わないよ!」

 今、ちょっと叫んでたけど……!

「……みんな、薬が、ぴかぴかするの、見ちゃいましたね……」

 ムニャの眉も、心配そうにさがる。

「患者さんに、魔法陣が緑に輝くところを見てもらいたかったのですが──そうですね、明日からは後ろで誰にも見えないように、ひっそり調合しましょう。
 ぽてさんは、患者さんとお話しないように」

「……ぁい……」

 しょんぼりする僕の頭を、ミハの、ほっそりした手がなでてくれる。

「ぽてさんを守るためです。さみしいかもしれませんが、我慢できますか?」

「あい! ぼく、むーちゃん、まもゆ、の!」

 きゅう。

 抱きついたら、朱い頬で、とろける頬で、むーちゃんが笑ってくれる。


 そう、きっと、これが、しあわせなのです。





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