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過去の追憶
はじまる日々
しおりを挟む悪魔はボロく狭い部屋で全身を縄で縛られ、口を布で塞がられている。ジャンプをして圧をかければ壊れてしまう椅子に座り、冷えた室内で虚無になっていた。
動けないように魔法をかけられているのだ。
口を塞いでいる布は、涎で濡れている。
3時間近く放置されている。
ふざけんな。なんだこれは。
この俺がなんでガキの魔法でこんな事になってるんだ。
アイツが俺より強いってことか?
認めたくねぇー。
もっと痛めつければよかったぜ。
悪魔はガキが入ってくるはずの扉を睨む。
そのあと何分かして、やっとガキが扉を開けて入ってきた。
ガチャ
「‥」
なんか言えよ。
悪魔は無表情のガキを鋭い目つきで睨みつける。ガキは頭を包帯で巻いている。切り傷も何箇所かある。
制服の下は包帯ぐるぐる巻きだろう。
ニヤリと口角を上げた。
布で塞がれた口からは涎が出ているため酷いツラになっていることだ。
しかし、ガキの姿を見て目が三日月の形になる。
「何笑ってんだよ。お前のせいで必要最低限の治療魔法しかしてくれなかったんだぞ。」
「フフフゥヴゥヴゥ~~」
なんとか喉の力を使ってバカにした笑いをだす。
「やな悪魔だな。口の布外すから会話してくれるか?」
「ヴ」
少年は悪魔に近づき、口を解放する。
口が自由になった途端、悪魔は少年の顔に唾を飛ばして、相手を不快にすべく喋り出した。
「あーー。やっとしゃべれるぜ。おいクソガキ。クソチビ。俺様を召喚するとは何事だ?俺様に魂をくれるのか?お前の魂なんて味のしないパンみたいに不味そうだぜ。砂糖をのっけて甘くしようとしたって無駄だ。お前の魂ほど味のしないものは初めて会うぜ。砂糖で隠せるような器じゃねぇ。わかったら早く俺様を解放しろ。クソチビ。」
「ハァ。」
少年は顔にあたった唾を拭き、悪魔を睨みつける。
「俺はお前と仮契約を結んだ。逃げたいならお前が俺を半殺しにするしかないぞ。あと俺はまだ成長する。今は162センチしかないが175センチまでは伸びる予定だ。」
「俺様は178センチだ。成長しても俺よりチビじゃねぇか。クククッ」
「チビじゃない。テオだ。」
「誰がお前の名前を呼ぶかよ。」
「また雷をくらいたいか?」
「‥」
それを言われてしまうと何も言えん。
あれは懲り懲りだ。
「この俺様は高貴な悪魔だ。そんな俺をこんな汚い部屋に置くなんて主人失格だな。」
名前を呼びたくないので話題を変える。
「ここに召喚された場所は広く聖心な場所だった。それに俺が目覚めた空間も広く綺麗な記憶がある。それなのに、この学園は見習いの魔法使いにこんなにもお粗末な部屋を与えるのか?」
「この学園は実力主義だ。実力のある者は豪華な部屋や食事を与えられ、ない者は必要最低限の物しか与えられない。俺はドベだ。」
「ハァ??んなわけねぇだろ。この俺様を召喚して、気絶させるほどの雷魔法を使えるお前がドベなわけねぇだろが!!」
悪魔は吠えた。
悪魔の言葉を聞いたテオは先ほどから続いている無表情をキョトンと変化させた。
「ハッ。俺は魔法が制御できない。お前に打った雷もまぐれだ。今、かけてる硬直魔法も今日初めて成功した。」
テオは悪魔から視線を外し、見られないように口元を隠した。
隠された口元は緩んでいる。
「あぁ?まぐれで俺様も召喚されたってのか?んなわけねぇだろうが!!お前はすげぇ魔力を持ったすげぇ魔法使いなんだよ!‥‥!?」
悪魔は口を結んだ。
なんで俺はガキを褒めてんだ?
罵り忘れた‥。
先程までの険悪な雰囲気が気まずいものに変わった。
「‥‥なんか言いやがれ!気持ち悪い空気を出すんじゃねぇ!!」
口元を隠していたテオは咳払いをして無表情に戻る。
コホン。
「今からお前の名はルビーだ。」
何可愛らしい名前つけてんだ泣かすぞ。
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