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最強スライムはテイムされる1

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スキル移転。

 失われた古代魔法の一つ。

 スキル移転の登場は神話の時代にまで遡る。

 今や誰もスキル移転の方法を知るものはいない。

 もちろんスキル移転を復活させるための試みはあった。
 
 だが、ことごとく失敗し、呪いの黒魔法と化して多くの人々が犠牲になったと聞く。

 いや、そんなことより……

 変化を感じる。

 体の変化によってもたらされた驚きが、僕の理性を追い越した気がしる。

 僕はぷるんくんをそっと置いて、ぷるんくんが倒したキングレッドドラゴンに向けて手を伸ばした。

 それから目を瞑って頭に中で鑑定をイメージした。

「おお……見える……」

 魔力覚醒した状態だと単なる茫漠とした薄い雲しか頭に浮かんで来なかったが、今はちゃんとした形が見える。

 複雑だが、整っていて規則正しくて美しく、幾何学的で精緻にできているイメージ。
 
 見て感じることは出来るが、決して説明はできない。

 この世の根源を表しているようだ。

 僕は小さく唱える。

「鑑定……」

 すると、目の前に文字が浮かんできた。

ーーーー

名前:レッドドラゴン(死亡)
レベル:246
属性:火
HP:0/100,000
MP:0/50,000
スキル:溶岩炎、鋼爪、鋼の鞭
称号:上級ドラゴン、溶岩より熱い火を操りし者
説明:SSランクのダンジョンに生息するレッドドラゴン。牙や鱗で武器や防具を作れば強力な火耐性の効果が付与される。防御力は高い。肉は食べられる

ーーーー

 手が震えてきた。

「え?本当に鑑定できてる。ていうか、レベル246!?しかも食べられるし……」

 鑑定スキルが使える人は100万に一人と言われているほどレアだ。

 本当に魔法が使えている。

 すごい……

 これは凄すぎる……
 
 ってことは収納も異世界料理もテイムも使えるってことか!?

 異世界料理ってのがどういうスキルかは分からない。

 だけど、僕があれほど夢見ていたテイムが使える。

 僕が感嘆しているとぷるんくんは目を潤ませて僕を見上げた。

「ぷりゅん……」

 地面にぷるんくんは僕にひれ伏した。

「ぷるんくん……」

 ぷるんくんが何を望んでいるのかはわかる。

 痛いほど分かる。

 けれど、

 今の僕はぷるんくんをテイムできない。

 僕は物憂げな表情でぷるんくんに言う。

「ごめんよぷるんくん。僕は弱いままだ。だから強くなったぷるんくんをテイムすることはできない」

 そう。

 弱い人間が強いモンスターをテイムする事はできない。

 自分の主となる人が自分より強いか同等の強さを持っていないと、モンスターは決してテイムされてくれない。

 Fランクのテイム使いがSSランクのモンスターをテイムするのは常識的に論理的に魔法学的にあり得ない話である事は小学生でも知っている。

 アランの使い魔であるウルも彼の強さに反応してCランクのモンスターになったのだ。

 せっかくテイムというスキルをもらったのに……

 僕は苦やしそうに唇を噛み締めた。

 すると、

「ぷるん!!ぷるぷる!!」

 ぷるんくんが頭を横に振って、死んだキングレッドドラゴンを一瞥したのち、手を生えさせ僕を指差した。

「ん?ぷるんくん?」
「ぷりゅん!」

 ぷるんくんはドヤ顔をして僕をまっすぐ見つめる。

 言葉は通じないが、なんとなく僕を鑑定して見てと言っている気がした。

「僕を鑑定すればいいのか?」

 僕の問いに

「んんんんんん!!!」

 ぷるんくんが激しく頭を縦に振った。

「……分かった」

 僕はぷるんくんに言われるまま、自分に鑑定を使う。

 すると、僕のステータスが表示された。

ーーーー

名前:レオ
レベル:5
属性:無属性
HP:200/200
MP:100/100
スキル:鑑定、収納、テイム、異世界料理
称号:最強スライムの寵愛を受けるもの

ーーーー

「やっぱり最弱だな……」

 アランのやつのレベルは30、カリナ様のレベルは40。

 だが、無という属性が加わってスキルも追加された。

 最弱の僕からしてみれば天の恵というものだ。

 まあ、ぷるんくんからスキルをもらったからといって、ぷるんくんをテイムできないことには変わりないが。

 と、自嘲していたら、僕は一つ不思議な点に気がついた。

 称号に何かが追加されている。

「最強スライムの寵愛を受けるもの……」
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